チップ部品の表面実装に適した拡大鏡はこれだ -さんざん試した結果、ついに見つけたー

はじめに

最近の電子部品は小型化されている。性能の良いDACチップはピッチの狭いパッケージだし、高周波特性の良い部品も必然的に表面実装部品です。表面実装というのは基本的に自動実装でハンダを付けるもので、最低でも2000個作る必要があります。

試作レベルでも自動実装機にセットするのに最低100個は作らないとだめと言われるので、最初のテスト機は手ハンダということになります。手で半田付けをする際はいくら目が良くても拡大鏡が必要です。DACチップなどは0.5mmピッチで0.2mm幅の端子の隙間が0.3mmと極小だからです。

拡大鏡として必要なこと

ここで拡大鏡が必須になるのですが、いままでさんざん試してこれというものがありませんでした。拡大鏡に要求される要件は次のとおりです。

倍率 倍率は7-20倍が必要です。倍率が大きすぎるとチップ全体が見えないので、半導体チップ基板に位置を合わせる際には7倍、端子の半田付けの状態を確認するにはx20以上が適切です。

対物距離 対物レンズと観察物の距離が取れないと、コテが入らないので半田付けが出来ません。最低でも5cm位欲しいところです。

焦点深度 焦点の合う幅がないと斜めにして半田付けの状態などを確認する際にしんどくなります。

視野の広さ 視野が光学顕微鏡の様に狭いと、目標の位置を探すだけでも大変です。

 

 

 

 

 

 

 

試したいろいろな拡大鏡

1. ルーペタイプ

ルーペもほとんどすべて試したが万能のものはありませんでした。真ん中下のレンズは京葉光器のワイドフィールドアクロという収差補正をしたルーペで(約1万円した)、倍率はx7。収差も小さく、一般のルーペとは次元が違いました。非常に良く見えたのですが、いかんせんハンダコテがなかなか入らなくて惜しい。

2. ヘッドルーペ・メガネルーペ

左から
ヘッドルーペ(目を近づけないと見えないので使いづらい)
ハズキルーペ(倍率が足りないx1.8)双眼ルーペ。口腔外科用のメガネですが、これは焦点距離が長く、背筋を真っ直ぐにしても見る。但し倍率が足りないのと(x3.5)、ちょっと頭を動かすと視点が大きくずれるので実用性がありません。

3. 顕微鏡タイプ

顕微鏡タイプの拡大鏡で試したのはこの3つのタイプです。

左から
ズーム式(x7-45)実体顕微鏡
Artech実体顕微鏡(x10)
USB顕微鏡(7千円位)

ズーム式(x7-45)実体顕微鏡はズーム倍率を変えても焦点がほとんど変化しないので非常に便利。焦点深度(焦点の合う範囲)が深いので基板を斜めにしても見やすい。

ただしズーム式顕微鏡はガタイがこんなにでかい。x7でチップ全体が見えるので、基板への位置合わせに丁度よい。端子の半田付けの際は倍率のツマミを回すだけで(焦点のツマミは触らず)端子部がZOOMされるので使い勝手が非常によろしい。一度使うと手放せない一品です。ただし日本製を新品で購入すると10万円近くします。写真の物は中国製の直輸入物で新品で1万5千円、送料5千円くらいでした。一部ネジが無かったり(ネジ穴だけある)、一部のネジが曲がっていたり、更には取説が入っていないなどひどいのですが、これでも立派に見えました。LEDの調光リングもついていて、これも非常に具合が良いです(日本のメーカーさんごめんなさい、こうして日本は負けていくのですね・・・、でも価格差7倍の魅力にはわたしは勝てない・・・・・ので、製品で還元します)。

 

 

こんな感じで使います。この顕微鏡はメガネを掛けたまま観察できるので、老眼でもまったくOK。

 

低倍率、カメラの撮影上視野が狭いのですが、実際にはチップ全体が見えています。

 

 

 

高倍率、半田付けの状態がよく見えます。ココから基板を傾けて、端子とパターン間のハンダの状態も確認可能。

4. ミラータイプ

 

ちょっと変わったものとしてミラー式拡大鏡があります。公称x10ということで購入してみましたが、実際の倍率は2,3倍がいいところ。レンズと違って色収差がないのでよく見えるのですが、いかんせん設定がむづかしい(レンズと違ってまっすぐ置いたら見えない)。それに位置をちょっと外れると猛烈に歪む。決定的なのはミラーなので反転して映ること。上下正しく見るために、ミラーを2つ繋いで試しましたが、ミラーの設定が難しすぎて実用性なしでした。

 

結論

挟ピッチ半導体の表面実装を何度かやる必要がある方は、迷わずズーム式実体顕微鏡を購入することをお薦めします。

「わが巨人軍は永久に不滅です」といったのは長嶋さん、「A級アンプも永久にスイッチングします」と言ったのは私です

A級動作のパワーアンプはスイッチング歪がないので音がいいというのはオーディオを趣味とする方にはいわば常識かと思います。

そのA級アンプですが、実はどんなA級アンプも実はスイッチングしているのです。といったら「そんなバカな」と思われるでしょう。それでは、アンプの性能などを見ていてA級アンプなのにやけに歪が多いな(AB級よりも多かったりする)と疑問に思われたことはないでしょうか?

もちろんA級アンプの音質的なメリットは出力段がスイッチングしないというだけでなく、結果的にトランスの容量や出力トランジスタや放熱器も大型になるなどの物量投入の効果もあるので、A級アンプの音質がいいという話があるのはわかります。

最近、よくよく考えてみるとA級アンプもスイッチングしているなーということに気づきました。

パワーアンプの動作を説明する簡単な回路図

この図はパワーアンプの簡略化した回路図です。電圧増幅段の後に電力増幅段があってスピーカーに接続され、トータルにNFBが掛かっています。これで電力増幅段のアイドリング電流が数AあればA級動作することになります。

ただ、実際にはこの回路ではスピーカーを駆動できないのです。スピーカーを駆動することまで考えて描いた簡単な回路図はこちらになります。

A級動作もグラウンドを含めて考えると汚れている

何が違うかというとマイナス側の回路です。最初の回路図ではマイナス側に電流を供給する部分が欠けているのです。マイナス(グラウンド)側は単に入力信号のマイナス(グラウンド)に接続するだけではだめで、大電流を供給できる回路に接続する必要があります(電力増幅回路のリターン側という言ったりもします)。

電源部は電源トランスからの電圧を整流して大型の電解コンデンサに接続して直流化しています。スピーカーのマイナス側はその正負2つの電源コンデンサの中点に接続され、このG点から電流が出ている(入っている)のです。このG点グラウンド部というのは100Hz(電源周波数の倍)の正弦波で充電されたときに発生する脈流成分なので、実際には数kHz位までの成分を含まれています。

この電源部のリップル成分はプリアンプなどでは安定化電源を使用すれば問題になりません。ところがパワーアンプでは安定化しないので、数Aのリップル電流に起因した成分は結構大きなものになります。回路図上では発生するように見えなくても、実際にはアース電位にもリップル成分が混じるので、結果的にこれは残留歪となります。

さらに悪い事にA級アンプは無信号時に出力段に電流が一番多く流れているので、無信号時のリップルノイズ(残留歪)が大きくなる可能性すらあるのです。

A級アンプといえども、その回路(あるいは動作)の原理だけを考えていると、理想的に見えても、実際にはいろいろな事が影響していてそう単純ではありませよという話でした。

アナログ回路のポケットガイドという範疇を超えている -これはもう名作では-

テキサス・インスツルメンツ社(TI)で出したアナログ回路のポケットガイドがすごく良く出来ています。ポケットガイドといっても100ページあるのでちょっとした教科書と言った感じです。

アナログ回路はもちろん、デジタルの補数まで、自分の頭のなかでちょっとあやふやなことまで非常に解りやすく要所々々が解説されています。また、日本語訳もしっかりしています。

TIはデバイスに魅力的なものを数々出していることはもちろんですが、そのデータシートが解りやすく、推奨基板レイアウトも掲載されていて、使用する者にとってありがたい会社です。

この点は逆に日本のデバイスメーカーのものは、デバイスが魅力的でもデータシートが意味不明で、クイズの様になっている事が多いのと対照的です。

是非一度、このポケットガイドをのぞいてみてください。

Analog Engineer's Pocket Reference e-book

こちらからダウンロードできます。

目次は次のとおりです。

目次
Texas Instruments Analog Engineer’s Pocket Reference 5
換算 ....................................... 7
物理定数 .............................................8
よく使われる10 進接頭辞 ......................................9
メートル法の換算 ..........................................9
温度の換算 ........................................... 10
誤差の換算(ppmとパーセント) .................................. 10
ディスクリート部品 ................................. 11
抵抗のカラー・コード ....................................... 12
抵抗値の標準数 ......................................... 13
実際のコンデンサのモデルと特性値 ................................. 14
実際のコンデンサの周波数特性 .................................. 15
コンデンサの種類の概要 ..................................... 16
容量値の標準数 ......................................... 17
コンデンサのマーク表示と許容誤差 ................................. 17
ダイオードとLED ........................................ 18
アナログ ...................................... 19
コンデンサの式(直列、並列、電荷、エネルギー) .......................... 20
インダクタの式(直列、並列、エネルギー) .............................. 21
コンデンサの充電と放電 ...................................... 23
RMS 電圧と平均電圧の定義 .................................... 24
RMS 電圧と平均電圧の例 ..................................... 24
対数計算の公式.......................................... 27
デシベル(dB)の定義 ....................................... 28
対数目盛 ............................................ 29
ポールとゼロの定義と例 ...................................... 30
時間遅れと位相遅れ ........................................ 34
アンプ ....................................... 35
オペアンプの基本構成 ...................................... 36
オペアンプの帯域幅 ....................................... 41
フルパワー帯域幅 ........................................ 42
小信号ステップ応答 ........................................ 43
ノイズの式 ........................................... 44
位相余裕 ............................................ 48
開ループSPICE 解析による安定性評価 ............................... 50
計装アンプのフィルタ ....................................... 53
プリント基板(PCB)と配線 .............................. 55
PCB の導体間隔 ......................................... 56
PCB の内層パターンの自己発熱 .................................. 57
PCB パターンの抵抗(1oz および2oz Cu) ............................. 58
パッケージの種類と寸法 ...................................... 60
PCB の平行平板パターンの容量 .................................. 61
PCB のマイクロストリップの容量とインダクタンス ........................... 62
PCB の隣接する銅箔の容量 .................................... 63
PCB のビアの容量とインダクタンス ................................. 64
一般的な同軸ケーブルの仕様 ................................... 65
同軸ケーブルの式 ........................................ 66
各種配線の単位長さあたりの抵抗(AWG 別) ............................. 67
各種配線の最大電流(AWG 別) .................................. 68
センサ ...................................... 69
温度センサの概要 ........................................ 70
サーミスタ ............................................ 71
測温抵抗体(RTD) ........................................ 72
ダイオードの温度特性 ....................................... 74
熱電対(J とK) ......................................... 76
A/D 変換 ..................................... 81
2 進/16 進変換 ......................................... 83
A/D 変換とD/A 変換の変換特性(LSB、データ・フォーマット、FSR) .................. 84
量子化誤差 ........................................... 90
信号対ノイズ比(SNR) ...................................... 91
全高調波歪み(THD) ....................................... 92
信号対ノイズ比+歪み(SINAD) .................................. 94
有効ビット数(ENOB) ....................................... 94
ノイズフリー分解能と有効分解能 .................................. 95
セトリング時間と変換精度 ..................................... 96

古くて新しいデジタルオシロで開発が加速するかも

今回は測定器の話をさせていただきます。

オシロは大事

アンプなどの解析にはオシロスコープが必須です。オシロは何台か持っていますが、もっぱら使用しているのはアナログオシロです。波形の記録にはデジタルオシロが必要で以前はパソコンに取り込んでサーマルプリンタなどでシール式の感熱紙に印刷していました。その頃のノートはこんな感じです。

DCPMA-parts2 044_ociloold

デジタルオシロの波形をパソコンで取り込んで編集後、 サーマルプリンタで印刷してノートに貼り付けていた

ただこの方法は面倒で、気合が入った時にしかしませんでした。もっと簡単にオシロの波形を残したかったのですが、最近は面倒なので自分で波形を書いていました。超原始的ですが、これが一番早いのです。

DCPMA-parts2 050_note2

その内、波形は手書きになった

オシロの波形記録の変遷

このオシロの波形を残すために、あれこれ試行錯誤してきました。

  1.  USBオシロ(波形データをボタン一つでPC に転送できるもの)–>PC で画像を整えて印刷するのが大変、オシロそのものが使いにくい

2. オシロの画面をでカメラで撮る、その後PCに取り込んで、サーマルプリンタで印刷–>いちいち操作が面倒(写真中央上)

3. チェキ(ポラロイドカメラ)で撮る:画面が小さすぎてダメ–>接写レンズを使う:不鮮明でダメ視界も狭い(写真右)

DCPMA-parts2 041_ocilophoto

左が新しく買ったプリンタ内蔵デジタルオシロの印刷結果、 右がチェキに接写レンズをつけて撮ったアナログオシロの波形 真ん中下がスマフォで撮ってスマフォ用写真印刷機でプリントしたもの

4. スマホ専用の写真印刷機でとる–>これは結構いける(写真中央下)

5. プリンタ内蔵オシロ–>チョベリグ(写真左)

これが一番良かった

最終的に行き着いたのが5のプリンター内臓のオシロスコープです。これがあるのは知っていましたが、結構お高いので敬遠していました。最近だめもとで中古で購入してみたら、これが予想以上に良かったのです。ボタン一つできれいに波形コピーが出来ました(ちょっとサイズがおおきすぎるのですけどね)。YOKOGAWAのDL1540というデジタルオシロで、上部に感熱プリンターが内蔵されています。帯域も150MHzあるので十分です。操作性でアナログオシロにはチョット負けますが、いわゆる4-5万円の安いデジタルオシロよりも遥かに使いやすく、実用に耐えます。

DCPMA-parts2 038_DL1540

オレンジ色の波形のオシロにプリンタが内蔵されていて ボタン一つで波形のコピーが上から出てくる

 

 

今後、製品開発がますます加速するかもしれません。

 

スペアナの電子プローブ(バッファアンプ)を作ってみました

今回は久々にちょっとマニアックな話をさせていただきます。

スペアナは信号の周波数分布を見る測定器で、とても便利な測定器です。
本格的なスペアナは普通数百万円と非常に高価なのですが、GHz帯まで観測できて信号レベルも-140dBくらいまで表示出来る優れものです。

speana 020_speana

HPのスペアナ8561E

ただこのスペアナは残念なことにオーディオアンプにはそのままでは使用できません。入力インピーダンスが普通50Ωなので、そのままオーディオアンプ出力に接続すると、ほとんどショートした状態になってしまうからです。スペアナはもともと無線帯域の高周波回路の測定に使用するもので、オーディオ測定には向かないのです。

こういう用途に、電子プローブといって専用の高入力インピーダンスのプローブもあるのですが、これが中古のスペアナ位の価格(うん十万円)なので、おいそれと買えるものではありません。通常はFET1石等を使用して自作している人も多いのが実情です。FETで作ると簡単とはいえ、当然歪が多くなるので歪スペクトルを観測するなどの用途には向きません。何かいいものはないか?と常々思っていましたが、・・・ありました。

speana 010_amp

イヤホンアンプがスペアナのバッファアンプに早変わり

それはこれです。

そう一見ただのヘッドホン(イヤホン)アンプに見えますが、実は

ただのヘッドホン(イヤホン)アンプです(なんじゃそれ)。

これをちょっと改造すると非常に好都合なのです。イヤホン、ヘッドホンはインピーダンスが数十Ωなので、イヤホンアンプを使用すると丁度スペアナの50Ωを問題なく駆動できます。電池駆動でSNが良く、しかも電源ケーブルもいらないのでプローブとして最適です。唯一心配なのは帯域幅ですが、最新のOPアンプを探すと100MHz位まで帯域の伸びたものがゴロゴロしています。2CHあるので、ちょっと定数変更をして左をゲイン1、右をゲイン10にするとさらに便利です。電子プローブというより、スペアナのプリアンプとして使用できます。ここではOPアンプにTI社のLM6172を選択しました。

測定例1(発信器の歪スペクトル)

speana 007_analyzerオーディオアナライザーの元信号の歪スペクトルを見てみましょう。オーディオアナライザーの発信器の波形を歪率計に入れます。高調波歪率は10Khz、1Vで0.0006%と超低歪率です。この状態で歪率計の出力には基本波を除去した歪成分が出ていますので、それをイヤホンアンプ(プリアンプ)を通してスペアナで観測したのがこの波形です。

speana 006_THD

歪成分のスペクトル(0-100KHz) (基本波は歪率計で除去済み)

 

 

 

 

 

 

 

測定例2(アースラインから混入するノイズ)

speana 016_commonmodenise

アースラインから混入するコモンモードノイズ

アースからくるコモン・モード・ノイズを観測してみましょう。プローブの端子をアースして測定電圧を原理的には0にして、電子機器のアース端子に接触させます。そのプローブ出力をバッファアンプ(イヤホンアンプ、ゲイン10)を通して、スペアナ観測した波形がこちらです。アースラインから混入するコモン・モード・ノイズ信号を見ていることになります。それがこちらです。

帯域は0-1MHzで観測していますがベースライン付近に僅かにノイズが混入している事が分かります。

speana 017_baseline

測定系のノイズ (プリアンプ(ポタアン)を通してもノイズは見られない)

 

ちなみに測定系のノイズレベルはこちらで、先ほどのスペクトルは測定系のノイズではありません。

 

 

 

 

このヘッドホンアンプには帯域フィルタが付いているので、帯域を20KHz位で制限するとホワイトノイズが取れて、極微小なリップル成分なども観測できます。

スペアナだけでなく、オシロスコープのプリアンプとして使用するとさらに便利です。オシロスコープは感度が2mV/divで信号を見るには十分なのですが、uVレベルのノイズ波形を見ることはできないのです。このヘッドホンアンプをプリアンプとして使用すると今まで見えなかったノイズ波形が見えてすごく便利です。

このヘッドホンアンプに限らず、乾電池式でOPアンプを使用したポタアンであれば使用できると思いますので、同様の悩みを持っている方は是非お試しいただければと思います。

 

パワートランジスタの今昔

今回はパワーアンプの出力段に使用するパワートランジスタについて解説してみたいと思います。
以前のコラムでパワーアンプの出力段のトランジスタを並列接続しても意味がない、それどころか特性が悪くなると述べました。しかしながら実際にパラ接続にしたら音質が向上したという経験をお持ちの方も多いかもしれません。また、実際そうだったからこそ、パワートランジスタの並列接続を歌い文句にするようになったのだと思います。

ただしこれにはわけがあります。実際昔(20−30年前)のパワートランジスタは特性が必ずしも十分ではなく、貧弱でした。確かに並列接続する必要がありましたし、そのほうが好結果が得られました。ところが最近のオーディオ用に作られたパワートランジスタはAB級100Wくらいなら一つでも十分な特性が得られるものがあります。一言で言うとパワートランジスタ一つで、昔のパワートランジスタ3つ分以上に優れているのです。

表1パワートランジスタの定格比較

最大定格 古典的パワートランジスタ
2SA627
最近のパワートランジスタの例 備考
最大電圧 Vce 80V 230V コレクターエミッタ間電圧
最大電流 Ic 5A 15A コレクタ電流
コレクタ損失 Vce x Ic 60W 150W 無限大放熱器での値
電流増幅率 60 100

表1は30年ほど前の定番のパワートランジスタ2SA627(2SD188とコンプリメンタリー)の特性を最近のパワートランジスタと比較したものです。コレクタ損失(パワートランスタで消費できる最大パワー=コレクターベース間電圧xコレクタ電流)がは60Wから150Wと2.5倍にに大きくなっていることがわかります。また流せる電流値も3倍の15Aになっています。100W8Ωでおよそ最大5Aの電流が流れることになりますが、現在のパワートランジスタでは一個で十分です。電流増幅率に関しては約2倍になっていることに加え、そのコレクタ電流依存性(リニアリティー)も大きく改善されています。

図1.古典的パワートランジスタの電流増幅率

2sa627.jpg

図1のHfe(上に凸の曲線、右目盛り)特性図は、古典的パワーTr2SA627の電流増幅率をコレクター電流の変化に対して示したものです。1Aを過ぎたあたりから増幅率は低下し始め5Aで30と約1/3に低下します。増幅率30という数値はアンプ設計上小さすぎ、増幅段に大電流が流れ始め歪み率が大幅に悪化するため、トランジスタを並列接続する必然性があったといえます。

一方図2は最近のパワートランジスタの電流増幅率特性です。5Aくらいまでは増幅率の低下は20%くらいにおさえられ、かつその値も100近くあるので(実際の使用状態では結構熱くなる)、パワーTr1個で昔のパワーTr3個分以上の働きをしているのです。

図2. 最近のパワートランジスタの電流増幅率特性

2sa1943.jpg
パワートランジスタのパッケージ形状は2x3cm程度ありますが、実際の半導体の面積はせいぜい数mm単位の大きさなので、そもそも大電流に対応したければ半導体の面積を大きくすればよく、実際にそうなってきているのだと思います。後者のトランジスタはHfeのリニアリティー、帰還容量、放熱特性等他の特性も改善されており、もちろん半導体の構造自体にも工夫がされていると思います。

パワートランジスタを並列接続する技術的メリットがあるとすれば、放熱器が大きい場合に熱源が分散されるので方熱効率が良いということくらいです。 それよりも、並列接続によって帰還容量が増え高域特性が悪化すること、配線長が長くなる悪影響がの方が大きいのが実情です。

この様にパワートランジスタの性能は昔に比べると大幅に向上しており、少なくとも「xxパラプッシュプル」という歌い文句をあまり真に受けない方がいいと思います。

以上、パワートランジスタの今昔物語でした。

アンプの内部を考える -プリント基板の考え方-

今回はアンプの構成要素であるプリント基板についてお話したいと思います。

実際にアンプを作る方でないとプリント基板自体にはなじみは無いと思いますが、回路の性能を実現する上で重要な要素です。オーディオ用アンプの基板には新材料を採用したという宣伝文句が歌われている事もあるのですが、首をかしげたくなる内容も多いのです。

オーディオアンプ用プリント基板の不思議(その1)

  • 金メッキの採用

プリント基板は基板材料に銅のパターンが形成されたものです。通常は銅が非常に酸化しやすいので、表面を保護するのと、半田の乗りをよくする目的で、半田が薄くコーティングされています。最近のアンプで基板のパターンに金メッキをしたものを採用しているものがあります。金メッキはスイッチなどでは高品質の証ですので一見いい様に思いますが、そうではないと思います。

確かに金は柔らかく、腐食せず、しかも比較的電気抵抗が小さいということでスイッチ、コネクターの接点には欠かせない材料です。しかしながら、プリント基板に採用するメリットは無いばかりか、結果的に致命的な欠点になる可能性があります。プリント基板では回路の接続は半田付けです。半田メッキの場合に半田の乗りがいいのは明らかです。じつは金メッキにすると、逆に半田の乗りが少し悪くなるのです。実用上支障になるほどではないのですが、半田付けにとってメリットはありません。

まあメリットが無いくらいなら選択肢としてあってもいいのですが、プリント基板設計上やってはいけないことと関係があるのです。

オーディオアンプ用プリント基板の不思議(その2)

  • ベタ塗りの無い基板?

プリント基板設計上、やってはいけない事、それはベタ塗りの無い基板設計です。ベタ塗りの有無というのは必ずしも正式な技術用語ではないのですが、要するにプリント基板のパターン配線以外の不用な部分をアース部として残すか、不要部分をエッチングしてなくしてしまうかの違いです。

例を示すとこんな感じです。

プリント基板ーベタ有りー1.ベタ有りのプリント基板(青い部分が銅のパターン配線がある部分)

プリント基板ーベタなしー 2.ベタ無しのプリント基板

どちらでも回路図上の結線という意味では同じですが、両者の動作はまったく違うと考えています。

数十MHz帯の高周波設計では 1のベタ有りにするのがあたりまえで、そうしないとまともに動作しません。高域が20KHzのオーディオアンプでは必要ないと一見思われますが、20KHzにおいて他の帯域と同様に十分にNFBをかけようとするとMHz帯までの周波数特性が必須です。それに、そもそも小信号増幅用のトランジスタの帯域幅は数百MHzまであるのでベタ塗り部を設けて回路の高周波特性を安定化することは常識なのです。たとえばアマチュア無線分野の方はどんな初心者でも実践しています。

実は2のベタ無しのプリント基板は(その1)の金メッキと関係が有ると勘ぐっています。金メッキの場合、ベタ部があると金の必要面積が多くなるので当然高くなると思います。そこで回路上不要の(本当は必要と思うが)ベタ部をなくしてしまったのではないか?と思うのです。(その1)でも述べたように基板に金メッキをするメリットは私は無いと思います。ましてや、ベタ部をなくすともう高周波で安定動作は望めません。

では2.の基板を採用しているメーカーはどうやってアンプを作っているかといえば、増幅回路の各部に局所帰還をかけて帯域幅を最初から狭くしているのです(と思います)。オーバーオールのNFBが当然少なくなり、高域の歪率が悪化すると思います。2のタイプの金メッキ基板は、ある老舗のオーディオメーカーのフラッグシップモデルに使用されています。しかも、記憶が正しければプリント基板の母材を代え音を良くしたとか、レジスト(半田の防止層)コーティング材を変えて音質を良くしたとか宣伝しています。私に言わせれば基板によって音が変ったとすれば、まず”ベタ部をとってしまったせいではないですか?”といいたいのです。

弊社のプリアンプパワーアンプはもちろんベタ有りの基板で、それだけではなくパターン配線に関しても相当練りに練っています。上図のパターンは実際プリアンプのフラットアンプ基板の図ですが、なんとなくパターンの模様に設計思想の様な物が感じられませんでしょうか?パワーアンプに関しては1年以上プリント基板の最適化に費やしていますし、そうしないと高周波領域の特性を手なずける事ができないのです。

最近、単にパーツに貴金属を使用して音がよくなったと高額な値付けをしている商品が増えすぎているように思います。

本当に必要な改良をして、性能も音質がよくなり、そのためにコストがかかったというのなら分かりますが、こんなに電気の常識を無視した設計をすると、電気の神様の怒りをかうことになるのではないか?と思うくらい怖いことをオーディオ業界ではやっているように思います。

アンプの実装状態での歪率をチェックしてみよう

一般にトランジスタアンプの高調波歪率は0.0x%から0.00x%程度で、音質には必ずしも影響しないと考えられていますが、実際には恐ろしいことが起こっています。アンプの実際の使用状態での歪率特性が1桁以上悪化していることがあるのです。

信号源インピーダンスの影響
実装状態でアンプ歪率に大きな影響を与えるのは信号源のインピーダンスです。下図を見てください。右側がプリアンプ、左側がCDなどの信号源と考えていただければ結構です。信号源とプリアンプの間にはVRが入り、電気信号を分圧してプリアンプに入力します。分圧するだけならいいのですが、同時にVRの直列抵抗のために、等価的に信号源とアンプを接続するインピーダンスが上昇します。例えば100KΩのVRを接続して半分の音量に絞った場合50KΩの抵抗が直列に接続されたことと同じになります。

信号源インピーダンスの影響を調べるブロック図

この様な状態での歪率特性を調べるために、信号源に直列に抵抗を接続した状態で測定してみたのが次のグラフです。左がオーディオデザイン社のディスクリートアンプ、右側が代表的なOPアンプ5532の歪率特性を信号源インピーダンスを変えて調べたものです。

AmpDistCompRs2

信号源インピーダンスが小さい場合(600Ω)には教科書に出て来る様な歪率特性です。高域においてディスクリートアンプの方が優れていることがわかります(もちろんディスクリートアンプであればすべて性能がいいという事ではありません)。しかしながらその差は少しでOPアンプでも十分実用に耐えると考えられます。

ところが信号源インピーダンスが大きくなると(入力にVRを挿入し絞った場合に相当)、事情は一変します。Rs=4.7KΩの場合、OPアンプでは10KHzの歪率がかなり大きくなります。ディスクリートアンプでも若干10KHzが悪化しています。Rs=48KΩではさらに状況はひどくなります。 OPアンプではなんと10KHzの歪率は0.1%に上昇します。これは明らかに音質に影響するでしょう。音が割れるまではいきませんが、高音域がきつく感じられ、全体的に堅い音になると思います。ディスクリートアンプではそこまで悪くなりませんが、やはり多少悪化しています。

信号源インピーダンスが大きくなった場合に歪率が悪化する理由はアンプ初段のFET(Tr)の入力容量の非線形性によるものです。信号源インピーダンスが-側の入力インピーダンス(この場合1K//4.7K=825Ω)に等しい時に歪率が最も小さくなるといわれています。 信号源がCDでアンプがプリアンプの場合もそうですし、プリアンプが信号源でパワーアンプの入力部にVR(アテニュエーター)がついている場合にもこの状況はあてはまります。

よくVRを入れると(音量を絞ると)音質が変わるという方がいますが、その原因はVRそのものの品質ではなく、実はこういったアンプ回路にかかわる問題であることも多いのではないでしょうか?(ほとんどの場合VRのせいにされていますが・・・)

通常アンプの歪率特性はVRを最大にして測定するので、こういった影響は見えてきませんが、実用状態では必ずしも特性が良くない場合があるということに注意すべきでしょう。 また、この信号源インピーダンス依存性をなくす方法は別途紹介したいと思います。

(ほんとうは恐ろしい)実装状態でのアンプの歪率特性

アンプの実装状態での歪率をチェックしてみよう
一般にトランジスタアンプの高調波歪率は0.0x%から0.00x%程度で、音質には必ずしも影響しないと考えられていますが、実際には恐ろしいことが起こっています。アンプの実際の使用状態での歪率特性が1桁以上悪化していることがあるのです。

信号源インピーダンスの影響
実装状態でアンプ歪率に大きな影響を与えるのは信号源のインピーダンスです。下図を見てください。右側がプリアンプ、左側がCDなどの信号源と考えていただければ結構です。信号源とプリアンプの間にはVRが入り、電気信号を分圧してプリアンプに入力します。分圧するだけならいいのですが、同時にVRの直列抵抗のために、等価的に信号源とアンプを接続するインピーダンスが上昇します。
例えば100KΩのVRを接続して半分の音量に絞った場合50KΩの抵抗が直列に接続されたことと同じになります。
amp-comp-cir.jpg

この様な状態での歪率特性を調べるために、信号源に直列に抵抗を接続した状態で測定してみたのが次のグラフです。左がオーディオデザイン社のディスクリートアンプ、右側が代表的なOPアンプ5532の歪率特性を信号源インピーダンスを変えて調べたものです。

ampdistcomprs2.gif

信号源インピーダンスが小さい場合(600Ω)には教科書に出て来る様な歪率特性です。高域においてディスクリートアンプの方が優れていることがわかります(もちろんディスクリートアンプであればすべて性能がいいという事ではありません)。しかしながらその差は少しでOPアンプでも十分実用に耐えると考えられます。
ところが信号源インピーダンスが大きくなると(入力にVRを挿入し絞った場合に相当)、事情は一変します。Rs=4.7KΩの場合、OPアンプでは10KHzの歪率がかなり大きくなります。ディスクリートアンプでも若干10KHzが悪化しています。Rs=48KΩではさらに状況はひどくなります。OPアンプではなんと10KHzの歪率は0.1%に上昇します。これは明らかに音質に影響するでしょう。音が割れるまではいきませんが、高音域がきつく感じられ、全体的に堅い音になると思います。ディスクリートアンプではそこまで悪くなりませんが、やはり多少悪化しています。
信号源インピーダンスが大きくなった場合に歪率が悪化する理由はアンプ初段のFET(Tr)の入力容量の非線形性によるものです。信号源インピーダンスが-側の入力インピーダンス(この場合1K//4.7K=825Ω)に等しい時に歪率が最も小さくなるといわれています。
信号源がCDでアンプがプリアンプの場合もそうですし、プリアンプが信号源でパワーアンプの入力部にVR(アテニュエーター)がついている場合にもこの状況はあてはまります。
よくVRを入れると(音量を絞ると)音質が変わるという方がいますが、その原因はVRそのものの品質ではなく、実はこういったアンプ回路にかかわる問題であることも多いのではないでしょうか?(ほとんどの場合VRのせいにされていますが・・・)
通常アンプの歪率特性はVRを最大にして測定するので、こういった影響は見えてきませんが、実用状態では必ずしも特性が良くない場合があるということに注意すべきでしょう。
また、この信号源インピーダンス依存性をなくす方法は別途紹介したいと思います。

アンプのSN比に関する解説

はじめに
アンプの特性を示す性能の一つにSN比というものがあります。ノイズと信号の比を表しているわけですが、最近のトランジスタアンプにおいてはイコライザアンプやレコードのカートリッジ用のヘッドアンプを除けば、ノイズなど聴こえないのが当たり前ですので重要視していませんでした。ところが弊社のプリアンプを購入された方からよくアンプのSN比が良いといわれるので、調べてみると市販のアンプのSN比の表示には故意に良く見せかけているものや、電子工学的に考えて理解できないものがあることがわかりましたので、ここで少し解説してみたいと思います。本来トランジスタアンプにおいては(EQアンプヘッドアンプを除き)実用上問題にならないため、性能として議論する必要も無いのですが、逆にこの辺を理解しておくとカタログのスペックを見ればアンプの弱点やメーカーがどういう態度で接しているかが推測できます(誇大広告を見破ることができます)。

SN比の定義
SN比の定義そのものは簡単です。信号(S)とノイズ(N)の比を対数で表します。
・ SN比=20LOG(S/N)
SとNの単位はVoltです。対数は底が10になります。例えばSN比80dBで1万倍になります。ただ信号とノイズの設定値、測定法によって20- 40dB位差が出てきますので、実際にはアンプの性能を表しているよりも、どれだけ良く見せたいか(良く見せなければいけないか)を表していることが多いのです。それでは実際に各種の測定法を見ていきましょう。

ノイズの測定方法
SN比の測定結果を議論するためにまず残留ノイズを測定します。ノイズの測定自体は簡単です。アンプの出力に電子電圧計をつなぐだけです。アンプ入力は通常ショートしておきます。オーディオアナライザーを使用する場合はアンプの出力をアナライザーの入力に入れ、アナライザーの出力をアンプ入力に接続します。SN測定時はアナライザーの発振器出力がゼロになり実質的にアンプを600Ωで短絡した状態で残留ノイズを測定します。ただ残留ノイズ(SN比)測定時には以下の2点に注意する必要があります。・測定時のフィルターの有無・測定系(電子電圧計)の帯域幅B(周波数特性)。SN比の測定にフィルターをかけることはオーディオに詳しい方ならご存知かと思いますが、実は測定器の帯域幅も大いに関係します。一般にアンプのノイズのスペクトルはハムを除けば(半導体アンプではハムが無いのが当たり前なので)、ノイズ電圧として測定されるのはホワイトノイズ成分です。すなわちすべての周波数で一定の振幅のノイズがランダムに発生していると考えて良いのです。測定系の帯域が広ければ広いほどノイズ成分は大きく測定されます。具体的には抵抗から発生する熱雑音(ホワイトノイズ)は以下の式で表されます。

Vn=√(4kTBR)

ホワイトノイズは(4KTBR)のルートに比例します。Kはボルツマン定数、Tは絶対温度、Rは抵抗値、Bが測定系の帯域幅です。アンプで使用している抵抗の値が100倍になればノイズは10倍に、測定している電圧計の帯域が100倍になればノイズは10倍になります。電子電圧計の帯域は通常数MHzオーディオアナライザーの電圧計部帯域も500KHz(VP-7723A)なので、たいして変わらないのですが、問題は意図的に20KHz以上をカットして測定している(表示している)ケースがあることです。その場合はSN比が15-20d位良く見えてしまいます。

残留ノイズの実測値
次に実際にアンプの残留ノイズの測定結果を見てみましょう。
測定に使用したのは弊社のフラットアンプを検査用のケース(プリアンプとほぼ同じ)に収めたものです。測定にはオーディオアナライザーVP7723A(各種フィルターを内蔵している)を使用しています。アンプの入力はショートしています。

測定条件 測定値 コメント
フィルターなし 23.7uV Flat、Unweightedと同じです(B=500KHz)
フィルターA
IHF-A
3.9uV かなり小さくなります
20-20KHz 4.9uV これもかなり小さくなります
(実際には20KHz以上のみカットしています)

当然の事ながら20KHzまでに帯域を制限したものはノイズがかなり小さく測定されています。次にこれらの測定結果を元にSN比を色々な表現方法で表記してみましょう。

整理番号/SN比 信号レベル ノイズレベル コメント
①92.5dB 1V 23.7uV フィルターなし、標準的かつ最も悪く見える表示法
②108.2dB 1V 3.9uV IHF-A、これも良く使われる表示です
③106.2dB 1V 4.9uV 20-20KHz,海外製品に良く使用されている表示
(一見フィルターを使っていないかの様に見せる高等テク?)
④118.5dB 20V 23.7uV フィルターなし、最大出力を基準にしたSN表示
⑤134.2dB 20V 3.9uV IHF-A、最大出力を基準にしたSN。表示最も良い数字になる
⑥132.2dB 20V 4.9uV 20-20KHz,最大出力を基準にしたSN。最も誤解を招きやすい表示

①から③は出力レベルを1VとしてSN比を算出したもので、この様に出力1−2Vを基準としてSN比を表示するのが一般的でした。ところが最近、特に海外製品、あるいは国内製の一部に最大出力を基準としてSN比を表示している(あるいはそうとしか思えない)例があります。たとえば弊社のフラットアンプの最大出力は20Vrmsですから、単純に1と20Vの比である26dB分良くなることになります(④-⑥)。

このような表示が使われるようになった理由として以下の2点が考えられます。
・特に高価な価格設定をしているために、スペックを他の製品より良く見せたい。
・LCD表示、デジタル制御を使用して実際のSNが悪くなっているので見劣りしない様に甘い条件を使用している。
①と⑥の表示では同じアンプでも実に40dBの差が生じてしまいます。こういった裏技を使えば例えば実力50dBのアンプでも90dBと表示できるのです。また条件の表示の無いSN比はまったく意味が無いのですが、実際のカタログの半分ぐらいは条件が特定できないようです。

最も悪質と思っているのが③もしくは⑥の表示で、カタログなどには「Unweighted/20-20KHz」などと条件が表記されています。周波数特性のあるフィルターを使用していないのでUnweightedという表記は正しいのですが20-20KHzという条件がフィルタリングしていることを意味していますので紛らわしいのです。20-20KHzという条件は可聴帯域を表しているので一見当たり前に見えますが、これまでに述べた様に15dB位稼げるテクニックです。 Unweightedと併記しているところが非常にいやらしいです。不動産広告で言えば「駅から車で5分」のところを「徒歩圏内/駅から5分」と書いていいるようなものです。

終わりに
以上SN 比について解説しました。カタログを見る際にはこういった知識を持ってみると、製品の実力もより正確につかめる様になりますし、メーカーあるいは販売店の姿勢といったものが見えてくると思います。

———————————————————————————————————————音質劣化の無いオーディオセレクターHASシリーズ
スピーカーセレクター
ラインセレクター
バランスラインセレクター

おすすめのオーディオ本

ƒI[ƒfƒBƒI_ƒJƒo[

オーディオデザイン社の社長が書いたオーディオの本です。ホームページのブログ、コラムに掲載したトピックの中から50を厳選。オーディオの常識の落とし穴をエンジニアリング的に解説しています。アマゾンのページはこちら オーディオデザインの機器設計のコンセプトを知る上でも役に立つ一冊です。———————————————————————————————————————