チップ部品の表面実装に適した拡大鏡はこれだ -さんざん試した結果、ついに見つけたー

はじめに

最近の電子部品は小型化されている。性能の良いDACチップはピッチの狭いパッケージだし、高周波特性の良い部品も必然的に表面実装部品です。表面実装というのは基本的に自動実装でハンダを付けるもので、最低でも2000個作る必要があります。

試作レベルでも自動実装機にセットするのに最低100個は作らないとだめと言われるので、最初のテスト機は手ハンダということになります。手で半田付けをする際はいくら目が良くても拡大鏡が必要です。DACチップなどは0.5mmピッチで0.2mm幅の端子の隙間が0.3mmと極小だからです。

拡大鏡として必要なこと

ここで拡大鏡が必須になるのですが、いままでさんざん試してこれというものがありませんでした。拡大鏡に要求される要件は次のとおりです。

倍率 倍率は7-20倍が必要です。倍率が大きすぎるとチップ全体が見えないので、半導体チップ基板に位置を合わせる際には7倍、端子の半田付けの状態を確認するにはx20以上が適切です。

対物距離 対物レンズと観察物の距離が取れないと、コテが入らないので半田付けが出来ません。最低でも5cm位欲しいところです。

焦点深度 焦点の合う幅がないと斜めにして半田付けの状態などを確認する際にしんどくなります。

視野の広さ 視野が光学顕微鏡の様に狭いと、目標の位置を探すだけでも大変です。

 

 

 

 

 

 

 

試したいろいろな拡大鏡

1. ルーペタイプ

ルーペもほとんどすべて試したが万能のものはありませんでした。真ん中下のレンズは京葉光器のワイドフィールドアクロという収差補正をしたルーペで(約1万円した)、倍率はx7。収差も小さく、一般のルーペとは次元が違いました。非常に良く見えたのですが、いかんせんハンダコテがなかなか入らなくて惜しい。

2. ヘッドルーペ・メガネルーペ

左から
ヘッドルーペ(目を近づけないと見えないので使いづらい)
ハズキルーペ(倍率が足りないx1.8)双眼ルーペ。口腔外科用のメガネですが、これは焦点距離が長く、背筋を真っ直ぐにしても見る。但し倍率が足りないのと(x3.5)、ちょっと頭を動かすと視点が大きくずれるので実用性がありません。

3. 顕微鏡タイプ

顕微鏡タイプの拡大鏡で試したのはこの3つのタイプです。

左から
ズーム式(x7-45)実体顕微鏡
Artech実体顕微鏡(x10)
USB顕微鏡(7千円位)

ズーム式(x7-45)実体顕微鏡はズーム倍率を変えても焦点がほとんど変化しないので非常に便利。焦点深度(焦点の合う範囲)が深いので基板を斜めにしても見やすい。

ただしズーム式顕微鏡はガタイがこんなにでかい。x7でチップ全体が見えるので、基板への位置合わせに丁度よい。端子の半田付けの際は倍率のツマミを回すだけで(焦点のツマミは触らず)端子部がZOOMされるので使い勝手が非常によろしい。一度使うと手放せない一品です。ただし日本製を新品で購入すると10万円近くします。写真の物は中国製の直輸入物で新品で1万5千円、送料5千円くらいでした。一部ネジが無かったり(ネジ穴だけある)、一部のネジが曲がっていたり、更には取説が入っていないなどひどいのですが、これでも立派に見えました。LEDの調光リングもついていて、これも非常に具合が良いです(日本のメーカーさんごめんなさい、こうして日本は負けていくのですね・・・、でも価格差7倍の魅力にはわたしは勝てない・・・・・ので、製品で還元します)。

 

 

こんな感じで使います。この顕微鏡はメガネを掛けたまま観察できるので、老眼でもまったくOK。

 

低倍率、カメラの撮影上視野が狭いのですが、実際にはチップ全体が見えています。

 

 

 

高倍率、半田付けの状態がよく見えます。ココから基板を傾けて、端子とパターン間のハンダの状態も確認可能。

4. ミラータイプ

 

ちょっと変わったものとしてミラー式拡大鏡があります。公称x10ということで購入してみましたが、実際の倍率は2,3倍がいいところ。レンズと違って色収差がないのでよく見えるのですが、いかんせん設定がむづかしい(レンズと違ってまっすぐ置いたら見えない)。それに位置をちょっと外れると猛烈に歪む。決定的なのはミラーなので反転して映ること。上下正しく見るために、ミラーを2つ繋いで試しましたが、ミラーの設定が難しすぎて実用性なしでした。

 

結論

挟ピッチ半導体の表面実装を何度かやる必要がある方は、迷わずズーム式実体顕微鏡を購入することをお薦めします。

DACチップの標準回路について  -意外と音質に影響を与えているかも-

はじめに

DAコンバーターの音質はまずDACチップによって音が変わると考えるのが普通です。ところが実際にはDACチップの性能・音質以外の要因も結構影響していることもあるのではという話です。

DACチップにはデータシートというものが必ずあって、仕様の他に電気特性とか標準的な使用方法(回路)、推奨する実装パターンなどが記載されています。DACチップを使用する側としては、その性能をフルに発揮するために最初に標準回路で装置を設計する事が多いと思います。実はそのデータシートに記載されている標準回路には結構個性があるのです。

DACチップの回路はこんな感じです。

それでは3社のDACチップに記載されている標準回路を比較して見ましょう。

PCM-1704(TI)

古いチップで恐縮ですが、テキサス・インスツルメンツ社のDAC、PCM1704です。ラダー抵抗にスイッチで電流をON/OFFして信号を作る古典的なマルチビットDACです。このチップは+-の電源供給が必要です。その信号出力部はお手本の様な回路です。OPアンプによるIV変換回路の後に、OPアンプによるローパスフィルターで構成されています。

 

ES9018(ESS)

実はES9018のデータシートは開示することは出来ません。ですのでWebで検索して出てきた回路図を示します(この回路図はhttp://www.teddigital.com/ES9008B_tech.htmに掲載されているものです)。一見さっきの回路と同じ様に見えますが、初段のIV変換用OPアンプの基準電圧がREFと記載された定電圧源に接続されています(先程はGND接続でした)。

最近のDACチップは+電源の供給だけになっているので、どうしても出力にオフセットが乗ります。それを補正するためにGND基準ではなく、一定の電圧を載せる必要があります。回路的には安定化電源で簡単に実現できるのですが、安定化電源の出力には50uV程度のノイズがありますので、安易なREF電圧源を使用すると出力電圧にもそのままそのノイズが重畳してしまいます。

それに非常に違和感があるのがOPアンプ(三角)の代わりにロジック回路のシンボル(三角に丸)が使用されているところで、アナログ回路の設計者から見ると非常に違和感があります。例えるならカレーライスにご飯ではなくパンが載っている感じでしょうか。おそらくESS社の設計者はデジタルにはめっぽう強いが、アナログ回路のことはちんぷんかんぷんなんだと思います。

加えて回路定数が妙で、このまま使用すると高周波ノイズだらけになるのでは?という定数なのです。

さらに、チップの端子配置もアナログとデジタルが交互に配置されていて、幾何学的には綺麗かもしれませんが、実装パターンでデジタルとアナログを分離できない、変テコな配置になっています。

ES社のDACチップを使用したDAコンバーターは機器による音質差が非常に大きいのですが、この辺の設計手腕が影響しているのだと思います。

AK4490(AsakiKasei)

この回路図は非常に特徴があります。最初にローパスフィルターが入っているのです。一般にDACチップは電流出力なので、最初にIV変換が来るのですが、このチップは電圧出力なのでこういうことが出来るのでしょう。それとオフセットを補正するのに最初に100uFのコンデンサを接続しています。100uFというと必然的に電解コンデンサーになりますが、非常に敏感な信号部に電解コンというのは、ワタシ的にはちょっと抵抗があります。あるDACではこの大事な部分に積層チップコンデンサを使用しているものがありましたが、そうなるとこの部分で相当な癖がつくんじゃないかと余計な心配をしてしまいます。

以上、ざっと3種のDACチップの回路図について特徴と感想を述べてみました。

DACチップの性能を比較してみました PCM1704とES9018

■DACチップの比較

今回用いたDACチップのスペックとその解釈について比較してみました。単純にスペックを比較すると圧倒的に差があるのですがよくよく見るとそうでもないのです。

■DACチップのスペック比較

チップ型名
ES9018
PCM1704
コメント

原理

ΔΣ型
マルチビット
 
フォーマット
PCM
DSD
PCM
 
Fs/bit
384kHz/32bit
768kHz/24bit
1704はx8 オーバー・サンプリンク・゙フィルターと組合わせると96kHzまで
CH数
8ch
1ch
 

THDN

DR

 

-120dB

135dB(mono)/120dB(8ch)

 

-102dB

112dB

(Shibasoku725C)

 
出力電流
3.903mAp-p
+-1.2mA
 
電源

Digital 1.2V, 3.3Vx3

Anaolg 1.2Vx2, 3.3Vx2

Digital +-5V

Anaolg +-5V

9018の電源供給端子はさらに多い
組み合せチップ
 

通常 8x digital filterDF-1704とセットで使用

 

 

入力(PCM)

BitCLK

LRCLK

Data

BitCLK

LRCLK

Data

 
OSC

100MHz

(384kHz使用時)

なし
1704は水晶発振器は必要なし
発売
2009年
1999年?
 
価格
約10,000円
5,000円(流通当時)
1704は1chなので2、4(XLR)個必要
標準回路
ESS社の標準回路はアナログ部が貧弱 アナログ回路に長けている ESS社の標準回路だと高周波だらけになる
チップ端子レイアウト
アナログとデジタル端子が交互に並ぶので基板設計しにくい デジタル・アナログに別れている  
備考
基板設計次第で音質が大きく変わるむづかしいチップ デジタルフィルターとセットで96kHzと謳っていたが実は高速・高性能

既に廃番です

 

■PCM1704は実は超高性能

PCM1704は古いDACチップで今では生産中止となっています。流通時でも1個5000円位して、しかも1CHですからステレオでは最低2個、バランスにすると4個必要ですので相当高額なデバイスです。単に高価であるということではなく高価にならざるを得ない理由がありました。このDACチップはラダー抵抗に電流を流してアナログ信号を発生させるのですが、最小ビット付近の抵抗値に非常な高精度が要求されます。半導体は抵抗の精度が出しにくいので製造後にレーザーでトリミングして抵抗値を校正していました。そのため高価にならざるを得なかったのです。

 PCM1704のデータは古い測定器で測った控えめなスペック

それとデータシートをよく見ると、どう考えても実際のスペックは公称値よりもいいのです。スペックはよくても実際の性能は悪いのというのはよくあることですが、なんとこの場合は逆ではないか?と思えるのです。PCM1704は元々Barbrouwn社が開発したもので、この会社は結構j控えめにデータを出す会社だったのではないかと。それとデータはPCM1704が開発された時代は古いのです。データシートによると、何しろ測定データをとっていたのが、この古いShibasokuの歪率計725Cです。今ならAudioPrecision社の高性能オーディオアナライザーを使って、あるものも見えないことにしてしまうくらいお手の物ですが、この頃は逆に歪率系の残留歪を見ているようなものだったかもしれません。

現にデータシートをよくよく見てみると,ベースラインは-140dB程度で確かに最新のDACチップと比べると若干見劣りがします。ただ最近のDACチップ測定では
・測定器が進歩している
・測定器で平均化している
・IV変換部の出力電圧を高くして測定している
等、測定結果がよくなるように条件を微妙に変えているので1対1での実力比較にはなっていないのです。

この図は-90dB の信号を再生した時の信号スペクトルですが、ノイズレベルは-140dBで歪のレベルでも-126dB位です。最大信号レベルを2V(+6dB)とするとダイナミックレンジは146から132dBという事になります。

 

 

一方こちらは-120dBを再生した時のオシロの波

形です。-120dBが再生できていているのですからかなりの実力です。

■基板レイアウトに改良の余地がある

PCM1704の時代が古かったのか、データシートの実装は今なら常識の当たり前のレイアウトが出来ていません。普通デジタル入力部とアナログ出力部は基板のベタアースの部分を別にして、ノイズが混入しにくくするのは現在では当りまえなのですが、PCM1704のデータシートの標準パターン例ではアナログもデジタルも区別がありません 。この点に留意して実装すればスペックよりも更に良くなる可能性があります。

■OPアンプにも改良の余地がある

データシートで推奨しているOPアンプは当時は高性能でも今となっては古く、現代の最高性能のOPアンプを使用すれば、ノイズレベルは-6dbくらいになる計算です。そうなると実力は現在のDACチップ比べても相当なものです。

レコードプレーヤの針圧設定が結構当てにならないので注意

レコードプレーヤの針圧設定が結構いい加減かもしれないので注意が必要です。

カートリッジの針圧設定は本来の性能を発揮するために重要な項目です。レコードプレーヤーで設定した針圧を測ってみたら、かなり外れている場合があったので要注意です。

アナログフェアに向けてレコード再々環境をいろいろといじっていました。昔なら天

針圧計

秤みたいな針圧系でしたが、最近はデジタルの針圧系が安く1000円位で出回っていて、試しに買ってみました。付属の5gのおもりで試すとほぼぴったんこ。

 

続いてレコードプレーヤPL-L1で測ってみると、設定針圧1.8gに対して実測時1.74gと「良いではないか、良いではないか」という感じでした。

良いではないか

次に最近中古で入手したPL-50LⅡで測定してみると設定針圧2.3gに対して、実測値3.2gと恐ろしいことになっていました。

2回転しているので2.3gのはずが

このプレーヤーは中古なので本来の性能を発揮していないのだと思いますが、それにしても全レコードを傷つけてしまうかもしれない誤差にびっくり。

皆さんも針圧計で一度は確認したほうがいいと思います。

ちなみにPL-50LⅡは後ろのおもりをくるくる回して針圧を設定する一般的なもので、PL-L1の方は内蔵されているバネ(時計のゼンマイみたいな物が円筒部に内蔵されている)で針圧を掛けるダイナミック式です。

フォノイコライザアンプをマイナーチェンジさせていただきました(そしてこっそりと値上げも・・・)

それと弊社のフォノイコライザアンプをマイナーチェンジしました。DCEQ-100がDCEQ-100SEという型番になりました。主な変更点は

 

・ACインレットを高周波フィルター付きのものに変更
・安定化電源を更に良いものに改良
・実装技術の改良による残留ノイズ低減

になります。
セカンドエディションはパネル面文字に変更はありません。リアパネルのACインレットにより識別できます。(2nd EditionのACインレットは金属ケースに入っています。)

音色も更に良くなり、聴感上のSN比もだいぶ改善されていて、MCカートリッジでもほとんどハム・ノイズ音が気にならないと思います。

そしてお値段も税別250,000円に変更させていただきます。

またアナログフェア(6/10-11)ではDCEQ-100SEを展示(HP試聴)させていただきます。

今度のUSB-DACを紹介します(2)-仕様と性能-

 

USB-DACの仕様は次のとおりです。

USB-DACの仕様

項目 仕様 備考
入力
USB PCM 44.1-192kHz 24bit
DSD 2.8MHz / 5.6MHz
SPDIF 光 44.1-96kHz
同軸 44.1-192kHz
DAC1 ESS ES9018S サンプリングレート 44.1-384kZHz
DAC2 TI PCM1704x4 サンプリングレート 44.1-768kHz  1704はモノなのでバランス用に4ケ使用しています
DAC3 NONE
SRC PCMのみ サンプリングレート
Bypass/96/192/384/768kHz
表示 LCD USB サンプリングレート
PCM/DSD信号表示
出力 DAC1 XLR RCA
DAC2 XLR RCA
Selected: DAC1 or DAC2 XLR RCA

SPDIFとUSBが使用できます。

サンプリングレートコンバーターで768kHzまでアップサンプリング出来ます。

DACチップは現在TI社のマルチビットDAC、PCM1704とESS社の9018が搭載できます。PCM1704モノ仕様ですので基板1枚あたり4ケ必要になります。既に市販されていないので、手持ち在庫の分のみの販売となります。

特性

ここでこのUSB-DACの特性の一部を紹介します。

これらは実際に測定されたTHD(ノイズ含まず)データです(カタログスペックではありません)。

PCM1704はサンプリング周波数を上げると、特に高域の歪率が低下していきます。THD上は384kHzがベストです。

ES9018ではサンプリング周波数を上げても歪率に変化はありません。これはDACチップ内部でオーバーサンプリングしているからと考えられます。

音質の違いもこれらの結果とほぼ一致しています。

今度のUSB-DACを紹介します(1)-その前にDACにとって重要なこと-

今度弊社ではUSB対応のDAコンバーターを発売予定です。

その仕様を説明する前に考えてみたいのですが、そもそも、そのDAコンバーター音質はに左右しているのでしょうか?

考えられる要素として

1. DACチップそのもの/ メーカー、型名、基本性能、構成(モノ/ステレオ)

2. 音源のフォーマット/ DSDかPCMか、 サンプリング周波数、ビット数

3. デジタルソースの影響/SPDIFかUSBか 音源のPCへの依存性

3. クロック(ジッター)/

4. 電源、アナログ回路/

等が挙げられると思います。

こういったことを総合的に勘案してDAコンバーターを製品化することになるのですが、もう一つ考えなければいけない事があります。それは、

「DAコンバーターはすぐ古くなってしまう」

ということです。新しいDACチップが出るたびにDAコンバーター全体を買い換えるのは大変非効率ですが、そうせざるを得ないという現実があります。

またDAコンバーター毎に使用DACチップが決まっているので、DACチップそのものの音質差を、同じ条件で、聴き比べることができないということがフラストレーションではなかったでしょうか? (私はそう・・・)

こんな諸事情を勘案して作ったのが、今度のUSB-DACです(エヘン)。

つまり最初に挙げた1-4の要素を総合的によく考えた上で、

・古くならないDAコンバーター
・異なるDACチップの比較試聴が1台でできる

という、やや画期的なDAコンバーターが今度の新製品になります。

名付けて、Progressive  DA converter, DCDAC-200です。

その仕様は次のとおりです。

項目 仕様 備考
入力
USB PCM 44.1-192kHz 24bit
DSD 2.8MHz / 5.6MHz
SPDIF 光 44.1-96kHz
同軸 44.1-192kHz
DAC1 ESS ES9018S サンプリングレート 44.1-384kZHz
DAC2 TI PCM1704 サンプリングレート 44.1-768kHz
DAC3 NONE
SRC PCMのみ サンプリングレート
Bypass/96/192/384/768kHz
表示 LCD USB サンプリングレート
PCM/DSD信号表示
出力 DAC1 XLR RCA
DAC2 XLR RCA
Selected: DAC1 or DAC2 XLR RCA

(続く)

 

 

オーディオアナライザ~でDAコンバータ~を調べてみました (やっべ~ぞ)

ローデシュワルツのオーディオアナライザーUPLを導入したことを以前お知らせしました。今日はその測定例を紹介します。

オーディオアナライザ~R&SのUPL

このオーディオアナライザーは相当古いものです。基本的にコンピューターで計測を制御していますが、OSが何しろWindows95の前のMS-DOSですから。それで安全か?ですって、まちがいなく安全で安心です。何しろLANもUSBもついていませんから。

その代わりデータの転送に偉い苦労します。付いている媒体はFDDフロッピーディスク、ただこれにデータ保存する手順がテキストコマンドをハッカーのようにバチバチ打たないといけないので、使い物になりません。マウスなんておしゃれなものも(オプションにはあるようだが)付いていません。

とは言えオーディオアナライザーとしての基本性能は極めて優秀で、今でも立派に通用します。これまで使用していたパナソニックのVP-7723Aよりも一桁下のTHDを測定できますし、何よりFFTによる解析機能に優れています。

測定結果は測定器の10インチぐらいのディスプレイに表示されるので、それで不便はないのですが、画像くらいは取り込みたい。やろうとするとこの様なフローになります。

外部モニター用のVGA出力はありますので、これを一度ビデオ信号に変換し、ビデオキャプチャーで今のPCに取り込めます。こう書くと簡単ですが、ここにたどり着くまでに相当の労力を費やしました。

それにこのオーディオアナライザーUPLにはデジタルの入出力もついているので、DAコンバーターの測定にも便利です。

今回はDAコンバーターの測定結果を紹介しましょう。

DAコンバーターDACFA0(PCM1704)のスペクトル  Fs=48kHz

下の画像はこの測定器UPLからSPDIF信号(Fs=48kHz)光で1kHzサイン波を出力して、弊社のDAコンバーターのアナログ出力を調べたものです。 0dB出力時にで約2V(6dBV)の出力が出ていて、THD+Nが0.006%であることがわかります。スペアナ波形(横軸の単位はkHzです)を見ると、THDの主成分は第2高調波であることがわかります。

ノイズも含めて0.006%というのは相当に優秀でカタログスペックの約2倍に収まっています。カタログスペックよりも悪いと思われるかもしれませんが、カタログデータはFs=768kHzで、しかもフィルターを入れ、かつ平均値を取っているようなので(カタログデータと言うものはそういうものです)、この実測データは相当いい感じです。

DAコンバーターDAC-FA0の歪分布

こちらはDAC-FA0の高調波歪み分布です。次数が高くなるに従って減少していっています。

次にもう少し新しいDACチップのTHDを見てみましょう。こちらは試作したUSB-DACで使用したESS社のES9018の特性です。THD+Nは0.0075%でPCM1704と同程度です。ただ、スペクトルを見てもらうとわかるように、高調波歪はほとんどなくむしろノイズの方が主成分に見えます。(ES9018の方がTHDがずっと小さく見えるのは縦軸のスケールが異なるからです)

ES9018のスペクトル、Fs=48kHz

 

ES9018の歪分布

こちらのTHD成分を見たのがこちらで、第2から第9高調波まで同程度に検出されています。ただノイズを除いた全THD成分は0.0013%と非常に小さい値です。ES9018は内部でノイズシェーピングをしているのですが、可聴帯域までノイズがおりてきているのでしょうか?

以上はFS=48kHzのデジタル信号を入力した時のデータですが、残念ながら測定器UPLでは48kHzが上限です(何しろ古いので)。

かわりにサンプルレートコンバーターで96-384kHzまでアップサンプリングして入力した結果がこちらになります。

ES9018/Fs=96kHz

ES9018/Fs=96kHz

ES9018/Fs=192kHz

 

ES9018/Fs=384kHz

サンプリングレートを上げると高調波歪が逆に増加していることがわかります。悪化したといっても0.001%レベルですから、悪化というより”見えすぎちゃって困るの~”という感じですが。

使用したサンプルレートコンバーター(SRC)はAK4137です(実はこのAK4137相当なくせ者です)。THDが悪化したのはDACチップのせいではなく、SRCの影響である可能性もあります。SRCを使う限りTHDの特性上はメリットが無い様です。

とまあ、こんな解析も簡単にできるようになりました。

「わが巨人軍は永久に不滅です」といったのは長嶋さん、「A級アンプも永久にスイッチングします」と言ったのは私です

A級動作のパワーアンプはスイッチング歪がないので音がいいというのはオーディオを趣味とする方にはいわば常識かと思います。

そのA級アンプですが、実はどんなA級アンプも実はスイッチングしているのです。といったら「そんなバカな」と思われるでしょう。それでは、アンプの性能などを見ていてA級アンプなのにやけに歪が多いな(AB級よりも多かったりする)と疑問に思われたことはないでしょうか?

もちろんA級アンプの音質的なメリットは出力段がスイッチングしないというだけでなく、結果的にトランスの容量や出力トランジスタや放熱器も大型になるなどの物量投入の効果もあるので、A級アンプの音質がいいという話があるのはわかります。

最近、よくよく考えてみるとA級アンプもスイッチングしているなーということに気づきました。

パワーアンプの動作を説明する簡単な回路図

この図はパワーアンプの簡略化した回路図です。電圧増幅段の後に電力増幅段があってスピーカーに接続され、トータルにNFBが掛かっています。これで電力増幅段のアイドリング電流が数AあればA級動作することになります。

ただ、実際にはこの回路ではスピーカーを駆動できないのです。スピーカーを駆動することまで考えて描いた簡単な回路図はこちらになります。

A級動作もグラウンドを含めて考えると汚れている

何が違うかというとマイナス側の回路です。最初の回路図ではマイナス側に電流を供給する部分が欠けているのです。マイナス(グラウンド)側は単に入力信号のマイナス(グラウンド)に接続するだけではだめで、大電流を供給できる回路に接続する必要があります(電力増幅回路のリターン側という言ったりもします)。

電源部は電源トランスからの電圧を整流して大型の電解コンデンサに接続して直流化しています。スピーカーのマイナス側はその正負2つの電源コンデンサの中点に接続され、このG点から電流が出ている(入っている)のです。このG点グラウンド部というのは100Hz(電源周波数の倍)の正弦波で充電されたときに発生する脈流成分なので、実際には数kHz位までの成分を含まれています。

この電源部のリップル成分はプリアンプなどでは安定化電源を使用すれば問題になりません。ところがパワーアンプでは安定化しないので、数Aのリップル電流に起因した成分は結構大きなものになります。回路図上では発生するように見えなくても、実際にはアース電位にもリップル成分が混じるので、結果的にこれは残留歪となります。

さらに悪い事にA級アンプは無信号時に出力段に電流が一番多く流れているので、無信号時のリップルノイズ(残留歪)が大きくなる可能性すらあるのです。

A級アンプといえども、その回路(あるいは動作)の原理だけを考えていると、理想的に見えても、実際にはいろいろな事が影響していてそう単純ではありませよという話でした。

測定ソフト「ARTA」を使用したリスニングルームの周波数特性の測定(応用編)

前編では”ARTA”を使用した周波数特性の測定結果を紹介しましたが、今度は少し応用してみましょう。

インパルス応答を利用した特性解析(応用編)

反射波のインパルス第一波の周波数特性

前編でのインパルス応答では観測されたパルス波形5波すべてに対して解析しましたが、今度は特定のパルスだけの周波数特性を測定してみましょう。

imps-fインパルス応答の黄線から赤線までの黒色領域(到達後3msの第1波)のみから、周波数特性を算出してみたのが、左の周波数特性です。
前編のインパルスの全応答は0-400msの全領域でしたが、今度は(黒色の)6msまでの短時間領域でのみ計算していることに注意してください。
この領域は直接波のみで、壁や床天井からの反射波が届いていない時間帯での周波数特性になります。
測定された周波数特性は(10kHz以上を除けば)ほぼフラットで、当然ですが反射波の影響を受けていないことがわかります。300Hz以下でだら下がりになっていますが、この領域は解析波形の長さ(時間)が足りないために誤差が大きくなっているためです(ARTAではこの測定結果に誤差が多い領域は、自動的に横軸に黄色線が表示されます)。

第1波の累積スペクトル特性

第一波の累積スペクトル第一波の累積スペクトル(波数表示)

今度は累積スペクトルを見てみましょう。
左は同じく第1波の累積スペクトラムです(時間軸表示)。中低域の立ち下がりが悪い様に見えてしまいますので、時間軸表示から、波数表示に変更した累積スペクトルがこちらになります。

 

波数(周期)でみると、周波数にかかわらず、すぐに減衰していることが分かります。ただ2kHzから10kHzにかけてピークが移動していくのですが、この原因はよくわかりません。

 

 

第2波の周波数特性

imp2-f次に反射波である赤線近傍の第2波のピークから算出した周波数特性を見てみましょう。前編の総合周波数特性に比較すると、まるで教科書に出てくる干渉波形のようにきれいな周期変動が見えています。
これはSPの後ろ壁(か測定マイクの後壁)からの反射による影響でしょう。

この様にインパルス応答波形の時間を区切って解析すると、反射波一つ一つの影響を(壁ごとの影響を)、分離して解析できる可能性があります。これができると壁に拡散パネル、吸音パネルを設置した影響を正確に把握できるので、リスニングルームの調整も効率的に進めることができる可能性があります。

この時点ではARTAはフリーソフトの状態で使用していました。このときは波形の保存ができないため、後から解析を追加することができません。これまでの、解析結果もちょっと矛盾や不足があるかと思いますが、今回の結果は手始めに、ソフトを実際に使用した感触を見てみたと解釈していただければと思います。

これらの結果を踏まえて、次はより正確な解析にチャレンジしてみたいと思います。

測定ソフト「ARTA」を使用したリスニングルームの周波数特性の測定(基礎編)

DynaudioのC4を導入してから、はや2年が経過しました。導入当時におよその周波数特性はこちらのコラムで測定していましたが、その後多少レイアウトを動かしたので再度特性を測って見ました。

測定方法について

測定に使用するソフトとマイクに今回は新しいものを試してみたので紹介します。

測定ソフトについて
これまで、周波数特性の測定は「Myspeaker」というソフトを使用してきました。このソフトは周波数特性だけでなく、累積スペクトル等の表示もできて優れたソフトでしたが、さらに詳細な解析ができるソフトがありました。それはARTAという測定ソフトです。測定項目はほぼ同じですが、痒いところに手が届くというか、詳細な解析を使用する場合はこちらの方が便利です。今回はその使い勝手も検証する意味で、このソフトを使用して簡単な解析をしてみました。
測定マイクも新しく
測定用USBマイクUMM-6測定に使用するマイクはこれまでベリンガー社のECM800と言うものを使用してきましたが、このマイクは48Vのファンタム電源が必要なため、何らかのミキサーのようなものを別途接続する必要がありました。これはこれで面倒なので今回周波数特性の測定用に市販されている、USBマイクを試してみました。

それがこのDaytonAudioのUMM-6というマイクです。電源部も内蔵されているのでパソコンにUSB接続するだけで使用できます。おまけに周波数特性の校正表がついてくるので、より正確な測定が期待できます。

試聴エリアのレイアウトについて
測定時のスピーカーレイアウトimg_20161105_091944_listningspace試聴スペースのレイアウトは少しずつ変わってきています。最近はJBL4429をしまって、C4だけをやや左右に距離を取って置き、さらに50cm程後ろに下げました。これによって音場が左右に広がり、またスピーカーを後壁に近づけたことで低域の厚みが増して、よりバランスが良くなりました。
以前はSPの後ろを通れるようにあけていたのですが、実用性よりも音質を優先したのです。

測定系の特性について

ラップトップPCの音声入出力部の周波数・歪率特性

ラップトップPCの音声入出力部の周波数・歪率特性

測定はラップトップPCを使用して行います。スピーカーの測定の前に、PCのからのオーディオ出力をそのままオーディオ入力に戻して、PC系統の基本性能をチェックしてみましょう。
使用したラップトップPCのオーディオインターフェースには、スピーカー(イヤホン)出力端子とマイク入力端子がありますが、ライン入力がありません。イヤホン出力をそのままマイク入力に接続して、内部ソフトのミキサーでゲインを調節しました。
その時の周波数特性と歪率特性はこのようになりました。
周波数特性は20kHz近辺で落ち込んでいますが、今回の測定には支障はないでしょう。歪率の方は約0.1%で、スピーカーの歪率よりも悪いくらいです。今回の測定では歪率特性は信用できません。歪率特性を測定するには別途外付けのオーディオインターフェースを使用する必要があるようです。

 

インパルス応答を利用した特性解析(基本編)

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インパルス応答波形

周波数特性を測定するだけでしたら、サインの連続波で測定したほうがきれいに測定できますが、今回は訳あってインパルス応答波形から周波数特性を測定する方法を使用しました。インパルス応答波形の測定結果がこちらです。最初のインパルス応答のあと何パルスか壁からの反射波が続いていることがわかります。

imp1-4-fこのインパルス応答から周波数特性を算出した結果がこちらのグラフです(ボタン一つで計算されます)。測定時のマイク位置はレイアウト図でS0の位置です。

10kHz以上で低下していますが、これは測定系に何らかの原因があると思われます。多少の谷はありますが、非常にフラットできれいな特性が得られています。全体の傾向は(10kHz以上の低下を除けば)以前に、サイン波の連続波で取った特性の類似しています。

次に累積スペクトラムを見てみましょう。
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こちらがインパルス応答から算出した、累積スペクトラムです。一般に、累積スペクトラムを時間軸で表すと高域は早く収束し、低域は収束まで時間がかかるので全周波数帯域を観察することはこんなんです。

ARTAでは時間軸を波数で表示することも可能です。こうすると第何波で収束するかという表示になるので過度特性の周波数特性が見やすくなります。

左のグラフは累積スペクトラムのは数表示ですが、低域の方が若干収束するまで時間がかかっていることがわかります(最大20波程度)。スピーカーの構造上の原理を考えれば当然のことで、合理的な結果です。これでもかなり良好に収束している方でしょう。
また20波を過ぎても単発的にピークがありますが、これは壁などの反射による影響でしょう。

 

以上、USB接続の測定マイクと測定ソフトARTAを使用して周波数特性等をざっと測定してみました。ARTAはもっといろいろな使い方ができるソフトです。次回に応用例を紹介します。