ラズパイ4で音楽サーバーを組んでみたら

ラズパイを音楽サーバーとして使ってみたら、結構面白かったのでご報告します。

ラズパイとは

ラズパイとはもともと格安のワンボードコンピューターで当初は5000円くらいだったと思います。その後機能が増えて、CPUも高性能になって現在のラズパイ4は(メモリーにもよりますが)1万円くらいします。ただ現在の半導体不足の影響で在庫が少なく一時的に2万円位で流通している様です。

このラズパイを音楽再生に応用することは一部のマニアで以前から盛んに行われていたようですが、特にハイエンド向けとしてはあまり知られていなかったように感じていました。

現在のラズパイ4はコンピューターとしての基本機能はほとんど盛り込まれています。ただし基本的にLinuxをインストールしますので、windowsのソフトは使用できません。

これが実際の基板ですがここにLAN、Wifi、Bluetooth、USBx4、HDMIモニター出力x2、アナログ出力、USBtypec電源入力などがついています。これだけでリナックス系のPCとして機能するのですから大したものです。

音楽サーバーとしてのラズパイ

音楽サーバーとして使用するには、専用OSがあるのでそれを使用するのが手っ取り早いと思います。最も有名なのがVolumioというもので最新版はVolumio2となっています。

Volumio2をダウンロードしてSDカードに焼き、ラズパイ4に差して電源を入れれば音楽サーバーの完成です。

ラズパイ音楽サーバーの機能

ラズパイの接続ブロック図

で何ができるかというと有線、または無線LANで接続した家庭内LANに接続されているHDDやNASなどの音源を画面上で選べば再生してくれます。ラズパイのアナログ出力からももちろん音は出ますが、これはおまけみたいなものなので、プラグインのDACボードを重ねるか、USB端子にUSB-DACを接続すればハイエンドの音が期待できます。

機能的にはDELA N100に近いと思います。

操作性は

ラズパイを操作するには、ラズパイ本体にマウスなどを接続して操作できることはもちろんですが、他のパソコンやタブレット、スマートホンからも遠隔操作できます。インターネットのブラウザが開ける端末であればなんでもOKです。

PCのブラウザで開いたラズパイのアルバム画面

ただアルバムアートはwindowsでは正常に表示されていたものが、フォルダ構造のせいか表示されないものが多くなりました。またアルバムアートの絵そのものもフォルダに保存したjpgではなくて、メタデータからインターネットでそれらしい画像を拾ってきているらしく、今まで見たジャケットと異なるものを示している様です。

ラズパイ本体に5インチタッチパネルを付けたところ
タッチパネルで操作も簡単 、PC・タブレットからの遠隔操作も

演奏中の曲名にタッチしてこのような表示にすると曲名が文字化けします。windowsとlinuxでの日本語表示では使用している文字コードが異なるからだそうです。

Volumio2を使用した再生方法に関する解説は五万とあるので、詳しい情報は検索してください。ただこの辺に詳しい方はどちらかというともっぱらPCに詳しい方で、我々の想像するオーディオマニアとは少しカテゴリーが違うように思います。つまり音質の評価基準、ほんとにどのくらい良いのかがわからないのです。

肝心の音質は?

このミュージックサーバーを当社のDCDAC-180にUSB接続して再生してみました。そしてはオーディオマニアを自称する私の音質に対する評価ですが、解像度の高さは感じさせるものの、何か後ろでガチャガチャ余計な音がしている様で、高級な音ではないように思います。

ラズパイ4の消費電力は最大5V1.8A程度で、周辺機器の接続も含めると3Aが推奨されています。ですので通常スイッチングDCアダプターを組み合わせます。スイッチング電源を使用したときの音質はまあこんなもんでしょ、なのです。解像度は高く情報量が多いのですが、同時にうるさく、妙ににぎやかな感じがして解像度の高さを邪魔しています。質の悪いデジタル機器を使用した時特有の悪さもあるのです。このままではハイエンドオーディオ用途としては使用するのはちょっと厳しいかもしれません。

ところが

ところがこれをスイッチング電源ではなく、アナログ電源で試してみると話は一変します。

長くなりましたので続きは別編その2でお話しします。

ジッター特性を実測してみました その2 PC出力のジッターは?

はじめに

前ブログではCDプレーヤーのSPDIF信号についてジッターを測定してみました。今回はパソコンとSPDIFアダプターの組み合わせについて調べてみました。

使用装置

使用したのはこのHifaceではDellのラップトップInspiron14(corei7,win10)の組み合わせです。

Hiface

測定結果

話が前後しますがオーディオアナライザーSYS-2722ではまずデジタルオシロの様に波形観測ができます。これは実際にSPDIF信号(44.1kHz)の出力波形を測定したもので44.1kHzの64倍の2.82MHzをベースに1、0の信号が出ていることがわかります。

ジッター信号のヒストグラム

この信号の本来の周期からのずれを測定したものがジッターとなります。その時間誤差の値を頻度で表示したものがこちらのヒストグラムです。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image-18-1024x908.png
Hifaceのジッターヒストグラム

前ブログのCDプレーヤのもの(下図)と比較するとほぼ同じ形に見えますが、実は縦軸がこちらは10%と2倍になっていますので、誤差の頻度は2倍に大きくなっています。時間の誤差(横軸)は+-1nsで、SD-9500のジッターと同程度であることがわかります。

CDプレーヤーのジッターヒストグラム

PC+Hifaceのジッターは安価なCDプレーヤーよりはよいものの、最上位機種のプレーヤーには劣っています。

ジッター信号のFFTスペクトル

こちらはHiface出力のジッターのFFTスペクトルです。その下のCDプレーヤーのジッター値と比較すると、ほぼSD-9500(ピンク)と同じであることがわかります。ただkHz帯にSD-9500では見られないピークが多数出現していてこれらがジッター値悪化の原因になっているのかもしれません。kHz帯のピークはPC由来のノイズかもしれません。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image-16-1024x723.png
Hifaceのジッタースペクトル
CDプレーヤーのジッタースペクトル

終わりに

ということで、PC+デジタルインターフェースの組み合わせについてジッター特性を測定してみましたが、単純に機器の形態(プレーヤーかPCか)ということではなく、その機器の品質・性能に左右されているのかなと感じました。

また、再度お断りしておきますが、一般にジッター特性は機器の再生音質を左右する重要な要素ではありますが、今回の機種に関しては再生音質とジッター性能にあまり相関が無いように思います。
この辺がオーディオの奥が深いところで、常に模索する日々が続いています。

オーディオ機器のジッター特性を実測してみました 結構意外な結果が……

はじめに

DAコンバーターなどでジッターが小さいということがよく謳われていますが、実際にジッター特性を計測した例はほとんど見たことがありません。水晶発振器のカタログ上のジッター値を掲載してxxpsとか、はたまたxxフェムトsなどと言っていますが、実際のところは謎です。

オーディオプリシジョン製のオーディオアナライザーSYS-2722にはジッターの測定機能がありますので、ジッター特性を計測してみました。SYS-2722単体ではSPDIF信号のジッター解析が可能です。この測定器にはSPDIFのデジタル出力(XLR、光、同軸)とデジタル入力があり、SPDIF出力をSPDIF入力に接続すると測定系のジッターが計測できるのです。

その前に、オーディオアナライザーSYS-2722の構成について

そもそもこの測定器単体は測定だけを行っていて、その制御は別のPCで行います。windows10用の測定ソフトがダウンロードできますので、それを自分のPCにインストールして計測システムを構築します。またSYS-2722との接続には専用のインターフェースボード(GPIBボードのようなもの)をデスクトップPC内に増設するか、USB接続アダプターを使用して接続します。USBアダプターがあるとノートPCでも測定・制御が可能です。

測定系の接続としてはこれだけ

複雑な測定ではこう(ご参考)

SPDIF信号のジッター解析(測定器)

まず最初に測定系のジッター解析を調べます。 この測定器にはSPDIFのデジタル出力(XLR、光、同軸)とデジタル入力があり、SPDIF出力をSPDIF入力に接続すると測定系のジッターが計測できます。

測定した結果がこちらです。縦軸の目盛が切れていて申し訳ありません。縦軸はUI(ユニットインターバル)になっていて、サンプリング周期(sec)となります。今回48kHz(赤)と96kH(青)で測定していますので、それぞれ1UIが21usecと10usecになります。この測定ではXLRコネクタで接続しています(AESか?)。

SPDIF信号のジッタースペクトル

結果を見ると1kHz以下で周波数が低くなるにつれてなだらかに上昇していますが、1kHz以上でほぼ一定となっています。さらに2kHz以上で周期的にスペクトルの上昇がみられます。SPDIF信号に1kHzの正弦波を使用したので、その影響かもしれません。96kHz(青)が全体的に2倍になっていますが、これは縦軸の基準がUIなので、見かけ上そう見えるだけです。

いよいよCDプレーヤーのジッター特性の測定結果

次に実際CDプレーヤーでのジッター測定してみます。今度はCDプレーヤーのSPDIF信号をSYS-2722のSPDIF入力にいれて、同じ測定をしてみます。CDプレーヤーは手持ちの2台DV-600AVとSD-9500を使用しました。


測定したプレーヤ
DV-600AV簡易DVDプレーヤ


SD-9500
東芝のフラッグシップDVDプレーヤー
ついにSACD(DV-600AV)購入: 地蔵の気まぐれブログDVD-VIDEO TOSHIBA SD-9500 | Hi-Fi.ru

測定結果はこちらです。

ピンクがSD-9500、赤がDV-600AVです。測定時は音楽CDを入れて演奏しています。ピンクのSD-9500ではなんと測定系のバックグラウンドまでスペクトルが低下しているというか、それよりもいいくらいです。一方赤のDV-600AVではジッターが全体的にジッターがてんこ盛りになっていて、はっきりとした差(10倍以上)が出ました。

今回SPDIF信号のジッターを測定しているわけですが、実際にDV-600AVのSPDIF信号をDACに入れて再生しても、特に音質は悪くはないので、これをもって音質と直接の相関があるとは言い切れないのですが・・・。ただ測定結果としては興味深いと思います。DACのクロック系のジッターとSPDIF信号のジッターでは音質へのインパクトが異なるのかもしれません。

ジッター信号のヒストグラム

SYS-2722は上記のジッタースペクトル(FFT)以外にも様々な観点から観察できます。

以下は信号の時間のずれのヒストグラムになります。横軸が時間で縦軸が確率です。DV-600AVでは+-4nsec、SD-9500では+-1nsecに収まっていることがわかります。またその頻度は最大2、3%です。

ジッター信号の時間経過

こちらはジッター成分の時間経過を観測したものです。SD-9500が圧倒的にジッター成分が小さいことがわかります。この図でみるとジッター成分はほぼ周期成分に見えます。

終わりに

以上、オーディオアナライザーを使用してジッター特性を測定してみました。今後さらにいろいろなジッターを測定してみようと考えています。

Harbethハーベスを試してみました

(普段なら買わない製品を買って試してみたら その3)

経緯

最近のスピーカー(SP)は箱をがちがちに固めて振動しないようにして、ユニットはレスポンスの良くガンガン駆動するのが主流です。その一方で、逆に箱なりを利用しているかのような主流と反対路線のSPもあり、これもまた人気があるようです。たまにはこういったSPも試してみましょうということでHarbethの compact 7es-3というSPを中古で入手して聴いてみました。

印象

中古でスタンド込みで入手しました。中古とはいえ傷もなく、オーディオショップから購入して4年程度の良品でした。このSPはウーハーが20cmあり、そこそこの大きさです。ただ持ち上げてみるとびっくりするほど軽く拍子抜けします(13kgしかないのです)。最近のSPは見た目よりもずっしりと重いことが多いのですが、さすが路線が違うという感じです。スタンドもまるで小学校の椅子のような趣で、これまた非常に軽く設置はしやすいのですが、高さ調整がないので単に置いただけだとカタカタとします。

軽いのは非常に設置上ありがたく、腰も痛くならないので私としてはこれはこれで好印象です。

聴いてみて

見た目に反して中高域はやや硬いともいえる音がします。全体の外観からソフトドームと思い込んでいましたが、これハードドームでした。最近の超低歪のSPを聴いてきたからでしょうか、これ中域が結構濁る感じがします。

低域ですが箱が鳴るタイプですのでスパッと切れないんじゃないかと心配していましたが、そんな心配は無用でした。中低域は普通のSPよりも量感はけっこうあり、心地よいバランスになっています。ただ50Hz以下がほとんど出ていないように聞こえ、普段なら聴こえるバスドラムがスカッとなくなっている様です。感覚的には13cmウーハーです。量感は出るが低域が伸びないというちょっと残念な結果です。

アンプも種類を変えてみましたが、真空管アンプ(300B)で駆動した時にこのSPの良さが一番出るように思いました。

このSPをしばらく聴いてから、804D3やPL-200に戻すと音質自体はいいものの、かなり淡白な音で物足りない様にも聞こえるから不思議です。

ただHarbethの音というのは中高域の歪感や濁り、超低域の迫力不足がどうしても気になって、これを使い続けるのはアンプメーカーとしてはちょっと?という気がしました。

こういった箱の鳴りを利用するのは(というよりそこまでこだわらずに作ったら、結果的にこうなったということかもしれませんが)悪いことではなく、例えば中低域のミッドウーハーなどはこういった”鳴る箱”もいいかもしれません。現在のオーディオ界は何でもよく考えずに極める悪い癖があるので、反面教師としては面白いSPですし、もう少しセッティングに凝って、これに合うソフトなどをそろえるところまでやると、このSPの良さを満喫できるかもしれません。

最初は箱の鳴りというのは音源(楽器の音)に「響き」がすでに含まれているので、SPでさらに鳴りを加えたらおかしくなるのでは?と思っていましたが、実際にはそんなことはなく、魅力的な方向かもしれません。ただこのSPユニット自体の特性(特に高域)や超低域が出ないバスレフセッティングに、ちょっといただけないかなと私は感じてしまったということです。

おわかれ

アンプメーカーとしてはレファレンスあるいはサブとして使用できるようなタイプではなく、性能の良いアンプで鳴らすと逆にSPの粗が目立ってしまうような結果でした。

というわけで、このSPは1か月もたたない内に旅立つことになりました。趣味の合う人の下で余生を過ごしてほしいと思いました。

勉強になりました。

普段なら買わないかも?というオーディオ製品を色々と試してみました その1・ヘッドホンアンプ

こんな事情で買ってしまった

6月は当社の決算月で、ここで1年間(令和2年度)の締めとなります。皆さんコロナで家にいる機会が多くなっていることも幸いしてか、お陰様で売り上げはなかなか好調でした。となると利益の34%は法人税として納めることになります(他にも税金はたくさんありますが)。

消費税も考慮すると、何か買うと44%得するので、買うべきものがあったら購入しておいた方がお得です。しかも中小企業は特例で一個33万円(税込)まで、計10個分は資産ではなく消耗品として購入できる(全額経費になる)のです。

ということもあって、買ってもいいかな?(普段なら買わないかも)というオーディオ製品をいくつか購入して試してみました。また、なぜか結果的に、普段の嗜好とむしろ逆の製品も購入していました(なぜかは分からない・・・)。

第一弾 ヘッドホンアンプ

ずいぶん前に聞いたときは、良かったのだが・・・

この機種は聴きたいというよりも、現在の標準機器のレベル・音質を知っておいた方がいいだろうということで買ってみました。30万円クラスのヘッドホンアンプです。業界の標準アンプといっていいい機種かと思います。ずいぶん前ですがこの機種のだいぶ前のモデルを1日聴いている機会があり、なかなかいい音だったとの認識がありました。

今回改めて最新型を聴いてみて驚いたのですが、今回はあまりよく感じません。ヘッドホンはAKGのK-701を使用しました。全体の帯域バランスはいいのです。K701はオープン型で、ともすると低域が不足気味になることも多いのですが、低域の量感も十分でいいバランスです。

何がよくないかというと中高域が冴えないというか、濁ります。ヘッドホンというのは普段スピーカーの音を聴いている人が聴くと驚くほど繊細で細かい音が聞こえるはずなのですが、そういうことがなくて逆に驚きます。普段聞いているSPの方がむしろ繊細な音が聞こえるくらいです。大切なものをたくさん失ってしまった様な音です。

音に透明感がないというか、弦の音が濁り、オーケストラがお団子になって聞こえてきます。当社で以前DCHP-100というヘッドホンアンプを出していましたが、こちらの方がヘッドホンの良さを各段に出しているように思います。ただしDCHP-100は低域の量感が出にくいので、組み合わせを選ぶということはあるのですが。

このアンプを聴くと複数の方が当社にヘッドホンアンプを造ってと連絡されてくる理由がわかる気がします。順番があるのですぐにヘッドホンアンプの新製品を出せるわけではないのですが、いつかヘッドホンの良さを最大限に発揮するアンプを造ってみたいと思います。

次はこれらを予定しています。

300Bシングルアンプ

たまには真空管アンプでも聞いてみますか

そして第3弾はスピーカー

とあるスピーカーの名器?

しばらく聞いてみたが今はソファの後ろに

第4弾はサブウーハー

KEFのサブウーハーKC62