アナログレコード用フォノイコライザアンプの深い話 (2) MMカートリッジ編

はじめに

フォノイコライザアンプの続き、今回はMMカートリッジ用フォノイコの話をします。
とはいっても普通のフォノイコライザアンプ自体の話はどこにでもあるので、(大胆にも)省略して、ここではフォノイコの入力インピーダンスの話に特化して話を進めます。

最近はフォノイコライザアンプ自体に新しい改良が無いためか、フォノイコライザアンプにやたらに付加機能を付けた物が増えているように感じます。MMカートリッジを受けるインピーダンスは昔から47kΩと決まっているのですが、最近何故かこの抵抗値と負荷容量を大幅に変える機能を付けたEQアンプが増えてきて、しかもそれが良いみたいな風潮があるのが気になっていました。

MM用フォノイコの入力インピーダンスとは

そもそも何故47kΩになったかというのは、おそらく真空管アンプ時代に実用的に受けられる最低インピーダンスだったのではないかと推測しますが、特に明確な意味は知りません。ただMMカートリッジ自体が47kΩで受けることを前提として設計されているはずなので、47kΩで受けなければいけないはずなのです。もちろん抵抗を変えれば音(周波数特性)は変わるでしょうが、それは本来のカートリッジの特性ではないのでは?というふうに思っていました。

あらためて負荷インピーダンスの変化に対する周波数特性を探してみたら、手持ちの本に結構詳しい記載がありました。それは「プレーヤーシステムとその活きた使い方」(誠文堂新光社)です。プレーヤーシステムと言ってもCDではなくてレコードプレーヤーです(つまりそのくらい古い時代、40年前の本です)。

V-15Ⅲの入力抵抗・容量依存性の実測値

その本に記載されている、シュアーV-15Ⅲの入力インピーダンスを変えて測定した周波数特性がこれです。

MMV15確かに入力抵抗を下げた方が高域のピークが下がっています。また入力容量も大きくしたほうが高域のピークが抑えられています。MMカートリッジはコイルの巻き数が多いのでインダクタンスが半端ないのです。このV-15ではインダクタンスが434mHとあります。他のカートリッジも同様ですが、このインダクタンスは電子回路のインダクタンスとしては非常に大きく、よく高周波用にもちいるコイルでは数十uHていど(1/10000)、スピーカーのネットワークのコイルでも数mHですから、その100倍位あることになります。これでは電子回路のピークもできるし、MM特有の音の癖が出てもしかたないかなと思います。

測定系はこちら

ただMM_rev気になるのはその信ぴょう性で、測定系はB&K社のもっとも信頼性の高い測定系で計測しているのですが、すべてのMMカートリッジで同様のピークが出ているので、測定系のアンプかレコードにそもそもピークが出る要因もあるのでは?とちょっと疑ってしまいます。
測定系の説明はこちらです。このページにはその入力抵抗と入力容量を変えた時の周波数特性の一般的な変化も記載されています。

この本の内容はすごくてトーンアームを変えた時の周波数特性の変化もいろいろなアームに対して実測しています。なんとトーンアームによって5-10Hz当たりにできる共振の周波数特性を測定しているのです。この本をパラパラめくると、改めて当時のオーディオが極めて工学的で、男の子(今ではおじさん)がハマるのも無理はないな~と感慨にふけってしまいました。

昨今の特に高価なフォノイコが入力抵抗や容量をやたらに変えるのも、確かにF特がよくなる場合もあるし、それで音が変わって本人がよく思えればいいので、商品としてはそれで良いのかなーと考えなおしたりしています(宣伝に書ける能書きも増えるしね)。

p.s. タイトルに深い話と銘打っている割には、たいして深くなかったかな(めんご)。

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