最近購入したオーディオ機器(3) -レコードカートリッジ- 

今回はレコードカートリッジについて紹介します。
最近はアナログレコードにミニブームが来ている様でカートリッジやイコライザアンプの記事も増えている様に見えますが、カートリッジにしろ、ヘッドアンプなどにしろやたらに高価で、しかも値段に見合う品質かどうかは???な物が多い様に感じます。オーディオ雑誌が評価する分にはデモ機として借用するので費用がかからないので良いのですが、実際購入する立場から見ると有益な情報が少ないように思えます。最近2,3のカートリッジを買って損した、得したという思いがあったので、紹介させて頂き、皆様の参考にしていただければ幸いです。

評価環境は前のブログで紹介したとおりです。
MC用のヘッドトランスはいまだにAU-320というデノンのものを使用しています。

カートリッジの写真
右からAT-15E、DL-103、AT33、AT-13E、2M Blue(気に入っている順番でもある)

DL-103
いわずと知れたMCの名機です。何十年も前に放送用に開発されたものです。非常にダンピングの効いた低音が心地よく響き、JAZZなどではこれより気持ちいい低音を聞かせるカートリッジは無いのではないでしょうか。ダンパーが2重構造になっているのが特徴で、温度変化によって弾性が変化しないようにとの開発意図と思いますが、心地よい低音に貢献している気がします。ダンパーを制するものはカートリッジを制すとおっしゃっていた方がいたような気がします。唯一の欠点は丸針だからかと思いますが、レコード内周で高域が若干歪っぽくなる事があることです。
実測周波数特性も付いてます(見事)。
DL-103の周波数特性

AT33PTG(pcOCC6N)
これもMCカートリッジのロングセラーですね。DL-103に比べると低音の心地よさはありませんが、高域がきれいなった気がします。高域が3dB程持ち上がっているのが残念です。このF特通りの音ですね。
AT33の周波数特性

AT13EVM型(MM型)
30年くらい前に購入して残っていたものです。なぜ購入したかも忘れました。何かに付属していたのかも知れません。このカートリッジの音質はかなり落ちます。一応ちゃんと音が出ますよ程度のもの。と思っていましたが、弊社のイコライザアンプで聞くようになってビックリ。音が格段に良くなりました。情報量、トレース能力が上がった気がします。DL-103などとくらべても、同じ土俵で比較できるかも?位の音になりました。弊社のイコライザアンプは(他のものと比べると)MCカートリッジも良くなりますが、それ以上にMMカートリッジの音が格段によくなるような気がします。MCカートリッジは汎用のヘッドトランスを使用していますので、そのせいもあるかもしれません。

AT15Ea/G VM型
最近このカートリッジを購入しましたが、このカートリッジには驚きました。音質が良くて安いからです。AT-13を昔から所有していましたので、ATシリーズはこんなものだろうと思っていたのですが、AT-15は格が違いますね。VM型のリファレンスというだけの事はあります。AT33よりずっといいと思います。どういいかというと帯域バランスです。低音域厚く、重心が下がったピラミッド型のバランスでレコードの良さが存分に発揮されています。もう一つの美点は高音が静かな事です。レコードはどうしても高域が歪っぽく聴こえたり、パチパチノイズが耳障りになったりしますが、そういう音が他のカートリッジに比べるとかなり抑えられています。というか、こういう音にもなるんだ~と感心させられていしまいます(ちょっと大げさに言っていますが)。アンプでもそうですが、性能をかなり上げていくと音が静かになります。弊社のイコライザアンプはパチというレコードの傷から聞こえるノイズが目立たなくなったといわれる事があるのですが、それと似ています。
情報量も多く、出すべき音はきっちり出し、出さなくていいものは出さないという感じで、トレース能力も非常に高いと思います。
これでマグネシウムヘッドシェルが付いて、プレーヤーにさせば使用できて、今は1万円ちょっとで売られているのですから、コストパフォーマンス的にもビックリです。MM型に分類されると思いますが、こちらの環境では他のMCよりいいです。
ただこのカートリッジ、本当にいい装置(イコライザアンプも含めて)でないとそれだけの力量が出ないというか、装置なりの音を出すという結果になるかもしれません。

オルトフォン2M Blue
これは失敗しました。AT-15Eを購入する前にこれを買ってだめだったのでAT-15Eを購入したのです。オルトフォンは昔MC-20Wを使用していてこれはクラッシックは絶品だったので、間違いないメーカーだとずっと思っていました。このカートリッジのだめな点
・音が悪い
・ヘッドシェルを選ぶ(取り付けられないものが多い)
・デザインはおしゃれだが実用性が悪い
という事で全部だめです。
音がどう悪いかというと、一言で言うと「トンシャリ」です。「ドンシャリ」ではありません。ドンシャリならまだ高域と低域のバランスが取れている(両方ですぎだが)のでまだ聞けると思うのですが、このカートリッジは低音が出ていないんじゃないか(例えば100Hz以下をカットしてる様な)と疑いたくなるバランスで、高音ばかりが目立ちます。高域は確かにはっきりと聞こえて明快なのですが、いかんせん低音が出ていない(様に聞こえる)のでどうにもなりません。プレーヤーを変えても同じ音の傾向でした。この帯域バランスのせいでAT-13より悪いです。がっかりです、子供だましの音です(子供に失礼か)。このカートリッジには何か重要な欠点があるのではないでしょうか?ダンパーの設計ミスでF0が数十Hzに来てしまっているとか…。
欠点は音質だけではありません。このカートリッジネジ穴が上に貫通していないので、上からネジとめるタイプのヘッドシェル(ほとんどがそう)が使用できません。なので同社のヘッドシェルも後から購入する羽目になりました。
さらに、カートリッジの保護カバーが非常に取り付けにくく、プレーヤに装着した状態では、見えない位置にある保護カバーの爪を指ではずす動作を要求されます。一歩まちがえるとカートリッジはおしゃかです(日常使用していればたぶん時間の問題でしょう)。

というわけでこのカートリッジにはがっかりさせられました。でもおかげでAT-15Eにめぐり合ったので、良しとしましょうか。


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4/5 2015年 追記
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このブログを書いてからだいぶ月日が経ってしまった。
最近はオルトフォンのMC-30Wという一昔前ですがオルトフォンのMCシリーズ最高位の物を使用しています。すでに新品は入手できなくなっていますが、幸いにも少し前に未使用品を購入出来ました。

以前にMC-20Wを使用していた事があって、それより少し良いレベルかなと思ったらまったく違った。MC-30Wは別物でした。システム構成が変わっているのでなんとも言えないのですが、このカートリッジは完璧といえるものでした(もちろん他にも良い物があるのだと思いますが)。
クラシックに合うのではと思っていましたが、クラシックだけでなくロック系、POPS系等ガツンとした曲にもとても良いのです。
低音域に厚みがあって、量感もとても良く、高音域も歪み感なくトレースします。これを聴いてしまうと他のカートリッジが淡白で面白みがなくなった様に感じてしまうくらいです。
これを使用してからは他のカートリッジが欲しくなくなりました。

素晴らしい音です

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最近購入したオーディオ機器(3) -レコードカートリッジ- 」への5件のフィードバック

  1. 御社のアンプ・スピーカーセレクターを、愛用しています。わが家のシステムの要です。
    Ortofonの2Mblueを購入したので、検索をかけたら、こちらにたどり着きました。普通と順番が異なりますが、でもこちらを先に見ていたら買わなかったかもしれないので、逆順が正解でした。
    私が使っているプレーヤーは、Pro-ject製でストレートアームがついています。シェルを使うユニバーサルタイプと違って、カートリッジの交換が面倒で、髪の毛のような細いリード線を切ってしまったら、どうにもなりません。それでMC型は敬遠せざるを得ませんでした。
    これまで使っていたのは、オーディオテクニカのAt-7Vで、MC型そこのけの分解能と明るい音調が持ち味でしたが、残念ながら製造中止となり、交換針も手に入らなくなってしまいました。
    説明書が英文しかついておらず、「オルトフォン・ジャパン」が販売するには、お粗末だと思いました。でもその説明書を見ると、針を外せば板にねじ穴が切ってあるようなシェルにも取りつけ可能なようです。また配線の配列も、標準的な配列とは違っているので、注意が必要です。オーディオデザインさんは、大変失礼ながら、つなぎ間違えはありませんか?
    さて肝心の音ですが、REGAと同じタイプのアームのせいか、けっこう良いです。高域の伸びがハンパではなく見通しの良い音ですが、ウェルバランスです。音の広がりもS/N感も良いのですが、キレが鋭すぎて聴き疲れするという人もいるかもしれません。エージングでしっとり感が出てくれれば、最高です。

  2. コメントありがとうございます。
    AT15Eは本当にすばらしいと思います(その割りにそういう評価が無い様な・・・)。MC20は私も使用していたことがありますが、弦楽器とかオーケストラでは秀でた物があったと記憶しています。
    ただオルトフォンも最近は昔の様な音ではなくなっているそうで、そう思って聴くとがっかりするらしいです。時代の流れかもしれません。
    確かに同じ音源だとCDよりレコードの方が音の質は良いと思います。ただ実際には私などは最近はPCのHDDの音源を掛け流しという感じですが・・・・。今後ともよろしくお願いします。

  3.  私もAT15EをリンLP12+リンITTOK-LV2(ダイナミックバランス式アーム)で使っています。
     30年前に購入したころは厚みはあっても抜けの悪いパッとしない音という感じで、ずっと仕舞い込んでいました。最近ふとしたことで再起用したところ、素晴らしい音が出て驚きました。
     あまりにいい音なので他の人の評価が気になり、ネットであれこれ調べているうちにこのブログに出会いました。(非常に率直に書かれた面白いブログと思います。AT15Eが取り持ってくれた縁と喜んでいます。) 
     うちの周辺機器は30年前と全然違っており、ようやく真価を発揮したのかなと思います。それにしても30年経ってもバリバリの音を出すとは、AT15は耐久性に関しても一級品なのかもしれません
     音質はブログで書かれている通りで、自分のシステムと耳にとっても自信になりました。ちなみにうちにある他のカートリッジ(DL103、オルトフォンMC20MK2、ビクターMC-L10、イケダ9C2、シュアV15TYPE3など)には圧勝です。同じ音源であればCDに負けません。
     針音が極小でSN感が良く、内周部でも歪みが少なく感じられることなども、このカートリッジの基本性能の確かさかと思います。

  4. コメントありがとうございます。
    そうだったのですか、ご教授ありがとうございます。確かにアームとの相性はおっしゃるとおり疑わしいところですよね。メインで使用しているのがリニアトラッキングアームでアーム長が通常のアームの2/3くらいで(ベースが平行移動するのでアームが短くてよい)、しかもカーボンなので、通常のものよりもかなり軽いのです。f0が上がってしまってそう聞こえたという可能性もあります。そう思ったので念のため、スチールアームの通常のレコードプレーヤーにつけて聴いてみたのですが、同じ傾向の音でしたのでブログの様な結果となったのですが、確かにあの音の状態で製品にするわけはなく、一ユーザーの結果として受け取っていただければよろしいかと思います。

  5. オルトフォンの2Mは英国REGA社のアームに特化したような設計になっていますので上手く合わなかったのだと思います。
    特異に見えるデザインもREGAを使う場合オーバーハングゲージを使用しなくともカーリッジ取り付け面と同じ形状のアーム先端に合わすだけ適正な状態にセットできるようになっている合理的に考えられたものです。
    日本では滅多に見ることはないのですがREGAはここ30年近く欧州でのスタンダードアームの地位を維持し続けている傑作アームで欧州製のカートリッジ開発にも大きく影響を与えています。
    REGAで2Mを使用するとボトムエンドまでフラットに伸び解像度が高い大変バランスの良いカートリッジなのですがカートリッジとアームの関係は音の好みだけでなく物理的な相性が大きく左右しますのでどの環境でも同じ結果となるわけでもなくアナログの難しいところだと思っています。

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