電源の高周波ノイズについての解析

はじめに
私自身は電源ケーブルや電源タップにやたらと凝る方ではないのですが、少しこの辺の事情を調べてみました。

家庭用のAC電源には現在では様々なノイズが乗っています。デジタル機器が普及したためとスイッチング電源が使用されるようになってきたためです。
高級なAC電源ケーブルにはたいていノイズフィルターも内蔵されていて、この辺が効いていると思われます。
ただ定量的にこの辺を調べた例はあまり見たことがないので、実際に電源に含まれるノイズを観測してみました。

測定方法(の難しさ)

まずここが肝心なところなのですが、AC電源のノイズを測定・観測するのは実際には結構難しいのです。電源関係の製品はたくさんあるのに、AC電源関係の実測データが非常に少ないのは測定が難しいからではないかと思います。
まぜ難しいかというと、AC100Vを直接観測することは(測定器が高級であるほど)実はできないことが多いのです。
テスターで電圧を見ることはできます。またオシロスコープで波形を見ることも一応できます(プローブで1/10に落とせば)。

ただAC100Vの波形を直接見ても高周波ノイズは見えません。
100Vという元の波形があるので1V以下のノイズは隠れてしますためです。
したがって(ノイズを拡大して見るために)基本波の100V50Hzを除去する事が必要です。
ノイズ成分は高周波なので能動的なフィルターは簡単には使用できません

スペアナなどの高精度な測定器は入力がアース基準なので(オシロのフローティング入力と異なります)、AC100Vを例え分圧して10Vに落としたとしても
スペアナに直接入力できません。それとスペアナなどの高周波測定器は入力インピーダンスが50Ωくらいなので、電源ラインの測定には直接使用できないのです(ショートした状態になってしまうので)。ですので高周波まで特性が伸びたバッファアンプが必要になります。

整理すると、測定系は次の3点を満たす必要があります。
・AC100Vを基本的には除去できること
・ACラインとはアイソレーションがと入れていること
・高周波帯域まで伸びたバッファアンプを用意すること

この辺が結構難しく、なかなか測定できなかったのですが、最近やっと波形が取れるようになりました。


測定系の概略
実際にはこれに加えて検出器とスペアナの間にバッファアンプが入っています。

測定した結果

スペアナで見たAC100V電源のノイズスペクトル(0-50MHz)
0-10MHzあたりと20MHzあたりに派手なノイズがはっきり見えています。


オシロで見た電源ラインのノイズ波形
大きな正弦波状のうねりが50Hzの残留分で太くなっているのが高周波ノイズ(縦軸10mV/div)
これでも基本波AV100V50Hzは1万分の1に減衰させてあります

横軸を拡大したのがこちら

高周波が見えてます

10mVオーダーではありますが、電源ラインに混入してきた高周波ノイズが確認できました。

ついで言っておきますが、よくノイズ除去の方法としてアイソレーショントランスを使用している人がいますが、アイソレーション出来るのはDCと低周波成分で、こういったMHz帯のノイズはほとんど通過しますのでこの手のノイズ除去にはほとんど効果が期待できないと思います。

定量的な検出ができましたので、今後高周波ノイズの抑制に関してぼちぼち報告させていただきたいと思います。

この内容は以前にコラムに掲載した内容をブログで紹介したものです。

電源の高周波ノイズについての解析」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: 電源の高周波ノイズに関する解析 -その2- | オーディオデザインのコラム

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