カートリッジの振動系について考える
これまで電子回路の観点からMMカートリッジについて考えてきましたが、ここではさらに振動系について考察してみます。
カートリッジの振動系のモデル
左はカートリッジの振動系を簡略化した図です。アーマチュア(MMの場合はマグネット)が
ダンパーで本体に支持されています。カーチレバーの先でレコードに接触しますが、高域ではレコードの弾性が効いてきますので、スプリングで表されています。(ref. レコードプレーヤー 山本武夫著)。
振動系のモデルを考えると
さらにこれらの機械振動系をモデリングすると図のようになります。
カンチレバー、アーマチュアからなる振動系の質量をma、ダンパーの制動をrb、ダンパーの弾性をsb、レコードの弾性をsrをして表しています。
この振動系はちょうど可聴帯域源付近の高域でピークを持った周波数特性を形成します。その周波数は以下のように表されます。
Fn=1/2π√{(Sb+Sr)/ma}
前の電子回路の計算では、キャパシタンスをキャンセルした際に、ちょうど高域でやや落ちる傾向がありました。今度の振動系を考えた結果では高域はややピークを作っているのです。
電子回路と振動系のレスポンスを総合した特性が、実際に測定される(聴こえる)特性になります。それでは、実際の特性はどうかというと、MMカートリッジの場合振動系のピークがやや大きめなので、電子回路系の特性で高域がやや落ちるくらいが(すなわちキャパシタンスをキャンセルした場合が)適切なのです。
電子回路上は高域の落ちるはずの特性が、実際に図ってみるとフラットになっていたのでそれはなぜかを考察したら上記のような状況だったというのが、本当のところです。
まとめると
MMカートリッジの場合電子回路系と振動系の特性が合わさって周波数特性が形成されます。
振動系の特性上どうしても高域にピークを形成するので、電子回路系で少し高域を落とす位にすると周波数特性が平坦になります。
たとえばDCEQ-1000で用いている様な、キャパシタンスのキャンセルを行うと、ちょうどトータルの周波数特性が平坦になります。