JBL4429を使ってスピーカー配置を検討してみました(解析編)

今回は測定した4429の周波数特性について解析してみたいと思います。周波数特性についてはディップの出方と帯域バランス(ここでは主に1KHz以上と1KHz以下の平均レベル)で考えてみたいと思います。

また最初にお断りしておきますが、一部に周波数特性が荒れているものも有りますが、これはJBLの特性が悪いわけではありません。JBLの無響室の周波数特性は30年前から郡を抜いてよく、ほぼフ ラットに仕上がっていました。今回の測定結果でも配置による周波数特性の傾向がこれほど綺麗に出ているのは、JBLの基本特性が優秀だからだと思っています。周波数特性の荒れはSPシステムそのものではなく、主に置き方(レイアウト)が原因であることも多いのです。それぞれのおき方に対するコメントは以下の通りです。

パターン1.後ろ壁から離し、台の上に置く(最も一般的な置き方) D90cmH35cm

まず後ろ壁面から90cm離し(後ろ壁面からSPバッフル面までは120cm)、SP台の上に置いた時の特性ですが、最も一般的な置き方ではありますが、今回の測定の中で最も悪い特性です。何が悪いかというと大きなディップが周期的に存在する事で、これでは音階によっては低音域がまったく聴こえない場合が合っても不思議ではありません。この様なディップは鋭すぎてイコライザーでは補正できませんし、ちょっとした要素で周波数も動くので補正できたとしても試聴位置をちょっと変えただけで逆効果になるでしょう。ディップが発生する理由は後ろ壁面からの反射波が逆位相で合成される事による、いわゆる干渉によるもので、この置き方をする限り避けられません。
パターン2.後ろ壁から離し、床の上に直接置く D90cmH0cm

後ろ壁から離した上体で、床に直接スピーカーを置いてみると、やや特に低域のディップの出方が多少改善されている事がわかります。多少改善された理由はSPの後ろに回りこむ低域の内、下側から回り込む成分が無くなったためと思われます。ただ逆に400~1KHz付近のディップが激しくなって締まっています。これは床面からの反射の影響が大きくなったためです。また良くみてみると1KHz以上と1KHz以下の帯域のバランスを比較すると、床に置いた方が低域側の平均レベルが上昇している事がわかります。聴感上も床に置いた方が力強くなり音質的にはいいのですが、如何せん下から(床から)声が聞こえてくるので、気味が悪いというかやはり不自然です。
パターン3.後ろ壁まで下げて、台の上に置く D0cmH35cm

この特性は非常に綺麗です。周波数特性に大きなピーク・ディップが有りません。まるで無響室特性の様とまでいったら大げさでしょうか?難を言うと100Hz以下にわずかに定在波効果の影響がでている事と中低域のレベルが若干下がり気味なことでしょう。この設置位置は現在の試聴のセッティングになっています。
パターン4. 後ろ壁まで下げて床の上に直置き D0cmH0cm

後ろ壁まで下げた状態でさらに床に置くと500-1KHz近辺で特性に荒れが生じてしまいました。ただこの状態が低域が力強く気持ちよい音になっていました。この4429よりもひとまわり大きな4338などは一般により評価の高いSPですが、もちろん38cmウーハーを使用していることもありますが、それよりもウーハーの位置が下に来ているので、ぽんと置いたときに低域のレベルが上がっている分力強く聴こえているからではないかと思います。4429でそういった(ウーハーを下面まで下げる)セッティングをすると自動的に中音部も下に来てしまって、床面との反射の影響が大きくなって必ずしも好ましくないのですが、ウーハーを床に近いところに置くというのは改めて大事な事だと思いました。

帯域バランスと呼んでいるのはこういうことです
これまでの説明でディップの有無はすぐにわかると思いますが、低域と高域のバランスとはこういうことです。

この特性はパターン3.(後ろ壁まで下げて、台の上に置く D0cmH35cm)の周波数特性ですが、青が低域の平均レベル、緑が中高域の平均レベルです。中高域(緑)に比べて低域(青)がややレベルが下がっている事がわかります。これを私は帯域バランスと呼んでいます。これはオーディオ装置のセッティング、選択において非常に重要だと思っています。普通の置き方をすると低域の平均レベルが下がってしまい、線の細い、うるさい音になります。特に最近のようにCDが主流になると、CDP自体がうるさい音を出す傾向があるためより顕著になります。アンプなどで聴感上補正するには電子工学的には不自然なほどに高域をつぶす方向にもって行くしかありませんし、結果的にそうなっているものも多いと思っています。まともなアンプを使用して心地よく感じる音にするにはSPのセッティングを工夫して帯域バランスを整える事が非常に重要です。以前はSPにアッテネーターが付いていたので、皆さんが各自の環境において自然とやっていたと思うのですが、最近はATTが付いていないものの方が多いので、バランスを取ることが難しくなり、結果的に残念な音質になっている場合も多いのではないかと思っています。

定在波効果の影響
さらに赤で示したピークが定在波効果の影響です。ちなみに他の特性で100-500Hzにみられたディップは定在波効果の影響ではなく干渉による影響です。この状態では中高域が少し勝った状態だったのでMidとHighのATTを少し下げてみました。

アッテネーターを調整すると、

だいぶスムーズになりました。スピーカーのアッテネータをいじったおかげで、(いろいろセッティングを変えながら異なる日に測定しているので若干再現性に難も有りますが)低域と高域のレベル(私が帯域バランスと呼んでいるもの)が合うようになりました。 そして何よりも低域と高域の帯域バランスが丁度良く、低音が心地よく聞こえるようになりました。 今はこの状態で聴いていますが、いろいろな音楽が心地よく聞こえ、かなりいい状態だと思っています。

スピーカーのレイアウトを変更しながら周波数特性を計って検討してきましたが、この様な調整はオーディオ再生装置の音質の変化という意味では一番大きく効くので、皆さんも是非試してみてください。 (2010/07/09)