スピーカーFocal /Chorus 826Vの音質と特性

はじめに

昨年フォーカルのコーラス826Vというスピーカーを購入して使用してきた。このスピーカーは2009年の春のハイエンドショーでロッキーインタナショナルさんからお借りして鳴らしてみたら凄くよかったので、新たに購入したのだ。このフォーカルのスピーカーはちょっと調べてみると結構面白い(私の場合なんでも調べてみる癖がある)。今回はその辺のところを紹介したい。測定結果などもでてくるが、ざーとやった結果なので中には測定ミスの部分もあるかもしれないが(なかには矛盾する内容もある)その程度だという事を念頭において見て欲しい。

コーラス826Vの音

このスピーカーの音はどういう音かというと、「低音が分厚いでもちょっと膨らみすぎ、高音はぎすぎすしないのに綺麗な音がする」ということになる。

 外観はこんな感じです。

このスピーカーの特徴は豊かな低音に裏打ちされた綺麗な高音という事になるのだが、通常の家庭で使用すると低音が出すぎるかもしれない。

まあ、出すぎる分にはバスレフポートをちょっとふさげば調節できるのでどうということはないし、もう一つ上のウーハーが3つ付いている836Vの方が低音の量感は少ないので普通の使用方法としては836Vの方がバランスが取りやすいと思う(ウーハーが3つ付いているほうがなぜか低音の量感は少ない)。弊社の場合、ハイエンドショーでのデモを念頭においているので、低音が出すぎるくらいのSPでないとあの会場ではバランスが取りづらいのである。普通のスピーカー鳴りっぷりの次元が違うのには理由がある。

以下は私の勝手な解説である。

 

低音の鳴りっぷりがいい理由

写真ではわかりにくいかと思うがこのスピーカはバスレフポートが2つ付いている。一つはフロント、もう一つは下側から360度全方位に放射するようになっている。

弊社事務所での周波数特性を取るとこんな感じである。

Focal826Vの周波数特性

さらに、いろいろ探ってみると

ツイーターの周波数特性

ツイーター部の周波数特性は単に測定マイクをツイーターの直前に置いただけで他のスピーカーからも音は出ている状態で測定している。

綺麗だー。

これは中音用スピーカーの特性

結構下まで延びているのは測定時の干渉(全SPなっているので)かわざと低音を伸ばしているのか不明。

バスレフポート(フロント)の周波数特性

これはバスレフポートの中にちょっとマイクを入れて測定した。驚くのはバスレフポートからの放射音の帯域が異常に広い事だ。これはバスレフポートの音というより、もう一つ別のウーハーを構成しているといっていいくらいだ。バスレフポートが二つあるのでお互い干渉しあって広帯域になっているのか?これが分厚い低音の理由なのではないかとも思っている。

高音が綺麗に鳴る理由

このスピーカの高音部はソフトドームではなくハードドーム、正確にはドームをひっくり返した(凹になった)インバーテッドドームだ。だがこの高音部はまるでソフトドーム型のような柔らかい音を出す。カタログによればインバーテッドドームのメリットは振動版の中央をボイスコイルで駆動するので超高域の共振が抑制できる事だそうだ。 そのメリットは十分に出ている音だ。それともう一つおとなしいのに綺麗に鳴る高音はその周波数特性にあると思っている。下図に示す様にこのスピーカシステムは7,8kHz当たりが少し盛り上がっている。この特性はどの条件で捕ってもこうなるのでこのSPの特徴ではないかと思う。リスニングルームで周波数特性を取るとある程度はなれると高音域がだら下がりになるのが普通だが、それをだら下がりにならない様にフラットにしている(持ち上げている)のがB&Wなら、ちょっとだけ7,8KHzだけを持ち上げているのがFocalで、Focalの方がうるさく聴こえる事も無く音が常に綺麗に聴こえるというノウハウなのではないかと勝手に推測している。

終わりに

以上、フォーカルのスピーカーについてその音質と特性の自分なりの解釈を紹介したが、特性を調べるとある程度そのスピーカーの性格付けができるので、再生システムを構築する上でも参考になると思っている。 (2010/05/11)