イコライザアンプのノイズ特性

はじめに

アナログレコード用イコライザアンプに要求される重要な特性の一つとしてノイズ特性があると思います。アナログレコードのカートリッジ出力は0 . 数mVから数mVと小さいため、アンプの発生するノイズを小さく設計することが非常に重要になってきます。 今回このノイズの点からイコライザアンプを解説してみたいと思います

ノイズ特性を表すNF値とは

イコライザアンプのノイズは一般にはSN比などで表されますが、これはアンプ全体の性能を表しており、回路技術的にはノイズフィギュアーNF(NoiseFigure)で議論されます。 NF値は意味としてはSN比の劣化の度合いで(dB)単位で表されます。例えばNF=6dBだとSN比が6dB悪くなり、ノイズが2倍に増えるということです。

ノイズの原因

実際のアンプにおいては実装上の理由から来るノイズもありますが、回路そのものから発生するノイズはなんと計算で求まるのです(理論的にわかっているというのだから凄い)。 ですので、逆にどうしたらノイズを低減できるかということもわかります。ノイズの計算式は次のとおりです(1)
ここで
Rs MCカートリッジの内部インピーダンス
gm FETの相互コンダクタンス
N 並列接続数
です。 FETを並列接続にするとgmが大きくなるため特に低インピーダンスのMCカートリッジカートリッジ(オルトフォンなど)を使用した場合にノイズが低減されます。 もう少しわかりやすく図で示したのが次のグラフです。

NFとgmの関係図
(低gmのFETのでは低ZMCカートリッジ使用時にNFが急激に悪化します。)

縦軸はNF指数、横軸はFETのgmを示しています。また回路構成が差動FET入力の場合はN=2とすればそのまま使用できます。 内部インピーダンスはMMカートリッジの場合2KΩ程度、比較的高出力のMCカートリッジ(DL-103)では40Ω、低出力のMCカートリッジ(オルトフォンなど)は6Ωです。

ここで言っているのはカートリッジの内部インピーダンスでイコライザアンプの入力インピーダンスとは異なります。イコライザアンプの入力インピーダンスはMMでは47KΩ、MC型ではカートリッジ内部インピーダンスの2-5倍にするのが良いとされています(DL-103の場合100Ω、MC30の場合は20Ω程度の入力抵抗)。

低出力MCカートリッジの場合がノイズ的に一番厳しく、gmが60mS(ミリジーメンス)でやっとNFが6dB(ノイズが倍に増える)で収まります。 gmが60mSという値は実は現代では非常に厳しい値で、現在市販されている数少ないデュアルFETはせいぜい10ms程度ですから、少なくとも6個(差動なら3個づつ)は並列に使用しなければいけません。 (よく知られている2sk30などではgmは1.2mS程度ですので50個並列に使用しなければいけません) MCヘッドアンプ用の高gmFETというのも(50mSクラス)昔はあったのですが今は廃番です。

高gmFETというのはMOSFETではあるのですが、MOSFETというのはエンハンスメント型であるため、この場合はバイアス電圧を与えなければいけません。 バイアス電圧にはどうしても数十uVのノイズが乗るので結局MOSFETは事実上使用出来ません。 接合型FETをパラに使用してMC対応のイコライザアンプを作るというのは現在では大変な事になってきてしましました。

発想を変えてトランジスタを使用した場合はどうでしょう? トランジスタを使用した場合のノイズ特性も基本的には同様の式が適用できますので(正確には第2項が付加されるますが)、グラフに同時に示してあります。 トランジスタの場合はgmはコレクタ電流に比例しますので、比較的電流を流せば数百mSくらいにはなるので圧倒的に有利です。 ただしトランジスタの場合にはベース電流が流れますので、これをキャンセルメカニズム(回路構成)が必須となり、回路の難易度は上がります。

今回設計したイコライザアンプはMCカートリッジのダイレクト接続対応で初段のgmは400mSになっていますので高gmの並列接続よりもノイズの基本特性の点では有利になっています(図中赤印)。

以上イコライザアンプの初段についてノイズの点から解説してみました。

参考文献
(1)基礎トランジスタアンプ・設計法,ラジオ技術社,黒田徹著p146

(2012/6/11)

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