半田付けのぬれ衣 -半田付けは悪者か?-

アンプやCDプレーヤーといった半導体を使用したオーディオ機器には、必ずプリント基板が用いられています。このプリント基板による配線は基材に通常35μm厚の銅箔パターンがあって、この銅箔パターンによって電気的に接続されています。この銅箔パターンと各部品は当然のことながら半田付けによって接続されています。メーカーの製品では部品を実装してから半田槽につけるので均一に半田付けがされるわけですが、手で組み立ている場合は半田付けを忘れた箇所がまれにあったりします。(もちろん、これは正常に動作しないのでそういった製品が外に出ることはないのですが)

プリント基板で半田付けを忘れた箇所

たとえばこんな感じです。

さて、ここで問題です。

半田付けを忘れた箇所の電気的な接続は次の内どの様な状態でしょうか?

1.リード線と銅パターンが接触しているので、一応導通はある。

2.半田付けがされていないので導通があったり、なかったり不安定な状態になっている。

3.導通は一切ない状態になっている。

答えは3です。

導通はありません。

部品を指で少し倒せば導通が取れた状態になりますが、何もしないと98%導通はありません。

もちろんここで言いたいのは「半田付けを忘れてはいけません」 ということではありません。そうではなくて、

「すべての回路は半田付けによって接続されている」

という事実です。まあパワーアンプの出力側などは圧着端子で接続されていたりしますが、それでもパワートランジスタは基板に接続されているので結局半田付けなのです。

よく入出力端子に半田付けを使わないとか、そういったことが売りの非常に高価なコネクターなどがありますが、そういったものに凝っている方が実際のアンプ内部の実情を知ったら、卒倒してしまうのではないでしょうか。

アンプ回路の中でもNFBループのあたりは特に敏感で、もともと100万倍位あるアンプのゲインを数十倍に押さえているのはNFBの2本の抵抗ですから、ここは他の信号回路と比べても100倍敏感な場所といってもいいくらいです。

話は変わりますが、自動車のばね下重量軽減は通常の重量軽減のの3倍の効果がある とかいいますが、アンプの場合はNFBのところが100倍効果があるといってもいいのではないかと思います。

その敏感な部分ですら所詮半田付けでつながっていますから、他のところは、たとえそれが目に付いたとしても、あまり神経質になっても仕方がないのではないかと思います。もしやるとすればすべての接続を半田付けを使用しない方法で試さないと半田付けによる劣化とういのは検出できないはずです。

半田付けを使用しない配線方法に関してはアイデアはありますが、あまりにも大変なので将来余裕ができたときに道楽として試してみたいと思っています。 (2008/07/08)