オーディオ的にコンデンサーの特性を評価してみよう -フィルムコンデンサーの鳴きを定量化する-

今回は久しぶりにアンプ部品の特性評価について解説します。

オーディオアンプにおいて使用されるコンデンサーにはいくつかの役割があります。

一つは電源など交流成分(リップル成分)除去の目的で使用される平滑コンデンサ(電解コンデンサ)

2つ目は信号系路上でDC成分除去の目的で挿入されるカップリングコンデンサ(フィルムコンデンサ、電解コンデンサ)

3つ目は位相補正、周波数特性調整に使用される小容量コンデンサ(主にフィルムコンデンサ)
です。

コンデンサの使用場所によっても重要な特性項目は多少異なりますが、 オーディオアンプに使用されるコンデンサの評価項目には次の3点があると思います。
 1.インピーダンス特性
 2.振動耐性(コンデンサのいわゆる「鳴き」)
 3.歪率特性

1のインピーダンス特性に関しては以前に解説記事「アンプの使用部品の特性(コンデンサ編)」で紹介したとおりです。
3の歪率特性は実は測定を試みましたが、簡単に測定できるほど大きくありませんでした(測定器の限界0.0005%以下)。

今回は2の振動耐性についてお話したいと思います。

振動耐性と表現したのは、コンデンサが外部から衝撃を受けたとき、あるいは信号電圧が印加されてコンデンサの電極間に電圧がかかった際に電極間のクーロン力によってお互いが引き合い、電極間隔が変動する事を想定しています。オーディオアンプにおいてコンデンサにかかる交流電圧は数Vから数十Vで、それほど電圧の絶対値は高くないのですが、電極間隔は1μ程度と狭いので結構なクーロン力が働く可能性があります。

オーディオ的な音質上の評価としてはいわゆる特定のコンデンサにはいわゆる「鳴き」と呼ばれる、極端に言えば一種カーンと響くような音が聞こえることがあります。 これは先に述べた電極の振動に由来すると考えられ、この振動耐性(鳴き)を評価することを試みて見ます。

今回測定したコンデンサはプリアンプの出力などに使用されるいわゆるカップリグコンデンサでコンデンサのタイプとしてはフィルムコンデンサになります。

容量は主に2.2uF程度、耐圧は250Vから630Vとなっています。

私に知る限りこの振動耐性を定量的に評価したデータは見た事はなく、したがってその測定方法もこれといったものはありません。

いろいろと試行錯誤の結果、振動耐性を検知できるようになりました(測定方法詳細はノウハウなので秘密です)。

下の図がコンデンサの振動特性の測定波形です。横軸は時間1ms/divで、縦軸はコンデンサの容量変化に比例する(と考えられる)電圧です(1mV/div)。

約3ms(300Hz)周期でパルス上の変動が検出されています。波形がパルス状なので成分に分解するとすうKhzから数十KHzに相当しますので、丁度聴感上の帯域と一致します。デジタルオシロで波形が撮れれば良かったのですが、単発現象でデジタルオシロでの波形保存ができませんでした。波形の形と周期は各コンデンサ間で大きな違いはありませんでした。

この波形の第一ピークの波高値を縦軸にしていろいろなコンデンサ(すべてメーカが異なるもの)の測定値を調べた結果を次に示します。

横軸は市販価格でプロットしてみました。結果的には価格との相関は何らない事がわかります。測定したコンデンサ中にはこの振動耐性が非常に悪いものがあります。いいものと悪いものでは10倍くらい違います。また高くても振動耐性は何ら良くなっておらず、この点からは価格的なメリットがありません。

このようにグラフにするとすごいのですが、聴感上の差はフィルムコンデンサの中で比較するとそれほど大きいものではありません。一般的にはある特定のコンデンサで微かに鳴いているかな?という程度です。 フィルムコンデンサの良質なものの中では瞬時切り替え比較をしても、実際には判別が難しいくらいのものです。

また電解コンデンサの場合、構造的に電解液でダンプ(制振)されているのでこういった鳴きを検出するのはより困難だと思います。
ただこういった音質と関連する定量的な評価手法を確立しておくと、部品の評価も非常に効率的になるかと思います。

弊社のプリアンプパワーアンプのコンデンサはもちろんこういった解析を通じて性能の良かったものを使用しています。音質の向上が期待できるだけでなく、価格の抑制に貢献していると思います。
以上、コンデンサの鳴きの定量解析でした。 (2009/01/19)

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