アンプの歪成分のFFTスペクトル解析

はじめに

アンプの性能を表す方法のひとつとして歪率特性があげられます。ここでは、通常議論される高調波歪率よりも一歩踏み込んだ議論を紹介したいと思います。

 

測定方法

歪率の測定には、発信機と歪率計を内蔵したオーディオアナライザー(VP-7223A)を使用しています。測定条件にもよりますが残留歪率は 0.0005%-0.001%です。歪率計には歪波形をモニターするための基本波除去後のモニター用出力端子がついていますので、この歪波形をFFTで解析して高調波歪の成分を調べてみました。FFT解析にはパソコンを使用し、現状最も高解像度、広帯域のサウンドボード(192KHz,24bit)を使用しました。周波数は約90KHzまで測定可能です。歪率計で基本波が100dB程度除去されていますので、FFT解析装置の解像度100dBと組み合わせて原理的には200dBくらいの分解能になります。ただし実際にはノイズなどの影響で170dBくらいがいいところでしょう。また注意していただきたいのは歪率系のモニター出力の絶対値は、勝手に内部でATTが動作するため当てになりません。歪率の絶対値はスペクトルからではなく、別に記した全高調波歪率を参考にしてください。あくまでFFTスペクトルは歪の周波数分布を見るために使用してください。一応測定されたFFTスペクトルのY軸はは、歪率系で測定された歪率の値にあわせて規格化しています。また、FFTスペクトルの縦軸はV・sでスペクトルのピークの値が直接歪率の絶対値を示すわけではありません。ですのでFFTスペクトルを見る際はあくまで相対的に比較して下さい。

測定条件は10KHz、1Vです。

アンプ歪率のFFT解析ブロック図


歪率のFFT解析結果

結果は下表の通りです。

横軸は周波数、縦軸は歪成分のスペクトルの大きさになります。AVアンプ、プリメインアンプで10KHzの基本波が除去し切れていないように見えますが、これはわずかなハム成分(50Hz)が乗った10.05Khzなどのスペクトルです。オーディオデザインのアンプはSNが良いのでこの成分がありません。

プリアンプの歪成分の周波数解析

 

アンプ

 

歪成分のFFTスペクトル

 

コメント

AVアンププリアンプ部
THD+N=
0.011%

AVアンプの歪成分のFFTスペクトル

・3次高調波成分(30KHz)が最も大きな歪成分です。

・3次高調波の他に7.5次(75KHz)にも大きな歪成分がありますが、これは発信器の出力にわずかに含まれる歪がなぜか強調されているようです。

・他に40-60KHzに無数の非高調波の歪成分があります。

プリメインアンプ
プリアンプ部
THD+N=
0.0054%

アンプの歪成分のFFTスペクトル

高調波歪の主成分は2次と3次成分ですが70-80KHz付近の歪も大きくなっています。

オーディオデザイン
プリアンプ
THD+N=
0.0023%

アンプの歪成分のFFTスペクトル

基本的に目立った歪成分がありません。非常に優秀です。

歪成分が無いだけでなく、10KHz以上のベースライン(基底)部分も大きく減少しています。

 

FFT解析のまとめ

歪成分のFFT解析を行うことで、アンプの性能をより詳細に知ることが出来ました。また周波数特性の優れたオーディオデザインのアンプが結果的に歪率特性も非常に優れており、歪成分をほとんど発生していない事がわかりました。

(2007/08/20)

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