ダンピングファクターとは


現代アンプにおけるダンピングファクターの意味

 

ダンピングファクター(DF)と聞くとDFが大きければ低域のダンピングがよくなると想像しがちですが、一般にそんなことはありません。

DFが大きくなると低域が締まって聴こえたのは真空管アンプの時代の話です。真空管アンプではDFが1-10程度のものも多くありましたので、この時代は確かにDFが大きいと出力抵抗が小さいのでウーハーの電磁制動がより効くようになって音が締まって聴こえていたのです。

トランジスタアンプではDFは最低でも100程度はありますので*、こうなると低域の締り方とはそれほど効かなくなります。

それではダンピングファクターDFは無意味な指標かというと、そうではありません。これはこれである重要な指標となります。次のセクション以降で詳しく説明していきたいと思います。

*ただし、トータルのNFBを掛けない半導体アンプではDFが10程度になります。この程度のDFですと低域がかなりゆるくなる可能性はあります。


ダンピングファクターの定義と測定方法

ダンピングファクターの定義

ダンピングファクターは以下の式で定義されます。

ダンピングファクター(DF)=Zsp(Ω)/Zamp(Ω)
ここでZspはスピーカーのインピーダンス、Zampはパワーアンプの出力インピーダンスです。

スピーカーのインピーダンスは一般に8Ω程度ですので、アンプの出力抵抗が80mΩであればDF=100となります。

ダンピングファクターの測定法

ダンピングファクターの測定方法で最も一般的なのはON-OFF法です。 これはパワーアンプの出力にダミー抵抗を接続したときと接続しないときの電圧差をΔVとし、測定電圧をVとすると、
DF=ΔV/V
で計算されます。例えばDF=100の場合、3V出力時(約1W@8Ω)、負荷の有無によって30mVの電圧差が生じるという事になります。
弊社のパワーアンプDCPW-100(DF>1500)では3V出力時に8Ω負荷をつないだ際の電圧降下は2mV以下という事になります。こう書くと簡単に聞こえますが実際には3.000Vと2.998Vを正確に読み取る必要があるので、有効桁数の多い測定器が必要になります。

例えばオーディオアナライザーでAC電圧を測定すると、この辺は既に測定値の最小桁に近く誤差が大きくなってしまうことがあります。

左はAC電圧を6桁の精度で測定できるACボルトメーターです。これを使えばある程度の精度でDFを測定することもできます。

ダンピングファクターの測定法(その2)低抵抗接続法

ダンピングファクターが1000程度に大きくなると、測定自体難しくなることを説明しました。

もう一つのDFの高精度な測定法はON/OFF法で使用する負荷抵抗を小さくすることです。例えば、通常の8オームの代わりに0.8Ωの抵抗を使用してON/OFF 法で測定するのです。負荷抵抗が1/10になったのでON/OFF時の電圧変動は10倍になりますので、精度も10倍に上がります。

さらに精度を上げてDFを測定するには、例えば出力段のエミッタ抵抗として使用している0.22Ω(5W)を使用して、1V出力で測定するとよいでしょう。0.22Ωを負荷に接続して大丈夫かと心配されるかもしれませんが、1V出力であれば電流値は5Aですので、パワーアンプには問題ありません。

余談ですが、パワーアンプに接続するスピーカーの最低負荷インピーダンスが低いのですが大丈夫でしょうか?と質問してくる方がいらっしゃいますが、2Ωでも1Ωでも大丈夫です。負荷インピーダンスが小さくても、その時の出力電圧が普通であれば問題ないのです。ただ発振器で特定の周波数を入れて、最大出力で連続運転すれば、パワーアンプの破損に至る可能性は在るのですが、普通の音楽で最大出力で聴いていても全く問題ないのです。

ダンピングファクターの要因解析方法

ダンピングファクターが大きくなってくると測定が難しくなってくることを話しました。そこでより高精度な測定法を紹介しましたが、ここではさらにどの要素が効いているかを計る方法を紹介します。

ON/OFF法でDFそのものを高精度に測定することは難しいのですが、どこがDFを決定しているかを判断することはさほど難しくはありません。8Ω接続した状態で数V出力し、それぞれの内部配線のAC電圧を測定すればいいのです。

つまりパワーアンプ内部での、

パワートランジスタ出力部からコイルまでの配線抵抗、
コイル抵抗、
リレー抵抗、
リレーから出力端子までの配線抵抗

の出力電圧を測定します。そうすると配線を十分に太い線を使用した場合は、コイル抵抗とリレー抵抗が主な出力抵抗であることがわかります(アンプの内部抵抗ではないのです)。


ダンピングファクターは何を表しているのか?

ダンピングファクターは何を表しているのか

当社のDFが大きいので、昔そちらのアンプはNFBをたくさんかけているのですか?(だったら音が悪いのでは)?

という質問を何度かもらいました。

トランジスタアンプではNFBの量とDFの大きさは全く関係ありません(真空管アンプでは関係在るのですが)。

トランジスタアンプではどういった回路を使用しても、普通であれば出力段直後の端子部ではDFは5000くらいあります。それがコイル、リレー、内部配線でどれだけ劣化しているかでDFが決まるので、アンプ内部は関係ないのです。

現代のアンプではダンピングファクターは、ズバリ、出力配線の立派さを表しています。

現代の半導体アンプに於いてはダンピングファクターは、ズバリ、出力配線の立派さを表しています。

出力配線の線径が太く、リレーが低接触抵抗で、コイルの抵抗が小さければダンピングファクターが大きくなります。

当社のパワーアンプでは出力部の配線は8mm□の極太の線材を使用しています。これは手でなかなか曲がらないくらいのもので線径が6mmΦ位あります。これをすべて圧着端子で配線しています。大手メーカーのアンプではせいぜい2mm□くらいで線径は3mmΦくらいです。

オーディオデザイン社のパワーアンプDCPW-240の配線、極太配線と圧着端子で接続されています。

これがシングル出力相当でDF=1500を生み出す原動力です。

出力配線部にはプリント基板や半導体を使用しないほうがいい

出力配線部のリレー部に半導体スイッチを採用しているものがありますが、これは辞めたほうが良いのです。半導体スイッチはどんなに抵抗が小さくても非線形な抵抗になりますので歪の原因になります。

アンプの終段でしたらNFBで非直線性はまったく問題になりませんが、出力配線部はNFBの外ですのでここに非直線性が有るとそのまま出力歪として出てしまいます。

それと出力リレーのところにプリント基板を使用しているメーカーが多いのですが、プリント基板はどんなにパターンを大きくしても、厚さはたった35μm(0.035mm)です。ここでプリント基板を使用するとすべてが台無しになってしまいます。

要するに、ダンピングファクターというのは、出力配線をどのくらい真面目にやっているかを表す性能指数です。

ただ最近では設計技術者の能力が著しく低下しているので、そんなことは全く考えずにアンプを作っているメーカーもあるかもしれません。


ダンピングファクターに関わるあれこれ

ダンピングファクターの統計解析

市販のパワーアンプについて、ダンピングファクターのカタログ値を価格に対してプロットしてみたのがこちらの図です。■が海外製、○が国産アンプです。三角はDCPW-100の値になります。市販のアンプではダンピンファクターはおよそ100-1000の間に分布しています。
当社のアンプのダンピングファクターが以下に優れているかわかります。

(点線はダンピングファクターを価格で割ったおよそDF価格対比を表すものです。ご参考までに)

高ダンピングファクターDFのアンプには危ないものもある

ダンピングファクターDFが大きいことは一般に悪いことではありません。

DFは出力部の配線の太さ、リレー、コイル抵抗の低減で決まるので、真面目に作ったアンプは結果的にDFが大きくなります。したがってDFが大きいアンプを選ぶというのは結果的にはそう悪いことでもないのです。

ただ、DFが大きいアンプには単に在るべき部品を省略していて、その結果DFが大きくなっていますものが有ります。

例えば出力部のリレーを省略したアンプ、これだと電源をON/OFFした際にボコッとSPから大きな音がしますから、こういったアンプを(DFが大きいからといって)単純に良いと判断してはいけません。

また、極稀に出力部のコイルを省略したパワーアンプもあります。設計者が出力部にコイルを入れる必要があるという基本を知らないのです。こういったアンプですと使用条件によっては発振する可能性があるので危険です。

ダンピングファクターで部屋のブーミーさは治らない

以前に当社のアンプを試聴したいということで、あるお客様のところに持ち込んだことがあります(通常はこう言ったっサービスはしておりません)。何でも低音がブーミーだということで弊社にご相談いただいのです。実際に行ってみると、4畳半くらいのスペースにPMCのSPを設置されていました。PMCのSPはミッドレンジ位のトールボーイ鋳型のモデルで小さくはありません。PMCのSPはTLCとか言ってSPユニットの背面から出た音を音響管を通して吹き出す方式で、低域がすごく伸びる特性があります。

そこで聴いた音はまさに低域がすごく出すぎていて、低音がいつまでも全く止まらないという音で、流石に誰が聴いてもバランスが良い音とは言えませんでした。そこでDFの大きな当社のアンプをという発想だったようですが、流石にこういったケースではいくらアンプがウーハーを制動しても全く効果はありませんでした。ウーハーから出たあとに音が減衰しないこと、さらには定在波が乗っていることが原因ですからどうしようもないのです。

部屋に低域を吸収する素材を設置するか、SPシステムのポートを上手に塞ぐことは重要です。

ダンピングファクターで音はどう変わるか

DFの値が音質に直接比例するわけではありません。DFが1と10では音質も大きく違うかもしれませんが、100を超えると例えば低音の締りが良くなるということを必ずしも実感できるわけでないかもしれません。 というのもDF=100とDF=1000の違いはアンプの出力インピーダンスが80mΩか8mΩということで、この差はスピーカーケーブルの抵抗、あるいはウーハーに直列に入っているコイルの抵抗(数百mΩ)によって、実際には見えなくなってしまう可能性が高いからです。
ただ数百以上のDFの効果というのは低音域の大信号に対して高音域が濁らないですとか、低音域の音階がはっきりわかる、低音が静かに聞こえるという様な聴感上の効果があるように感じます。DF=1000というのはスピーカーからの反作用がインピーダンス分返ってきたとしても、それによる電圧変動が1/DF(=1/1000)に抑制できると 考えたほうが妥当なのだと思います。
DFが100のアンプからDFが1000のアンプに変えても、数値から単純に想像する10倍の効果は無いと思ったほうが正解です。

当社のDFが1000アンプを使ってDFを変えたときに音質がどう変わるかを実験した結果では、DFを小さくしていくと段々普通の音になります。DFが1000以上の音というのは良いというよりも強い音で、中高音域がはっきりしています。装置全体のクオリティーが高いときにはまるですぐそこで演奏しているかのような生々しい音です。DFを10位にしても結構聞ける音ですが、やはり生々しさがない5-10m離れて演奏している様な音になります。

BTLアンプではダンピングファクターは半減する

パワーアンプで通常2CHで使用するが、BTLモードでモノーラル仕様になるアンプがあります。ここで注意してほしいのはBTLモードで使用するとDFがほぼ半減(実際には60%)位になることです。

BTL接続でない場合、左の図のようにアンプの出力抵抗で支配的なのはリレーとコイルです。

 

BTLモードでは左図の様に+-の両方にリレーやコイルが挿入されるので出力抵抗が約2倍程度に増加するからです。

通常BTL時のダンピングファクターはカタログには記載されていませんが、この点はメーカーによらず同じですので覚えておきましょう。

尚、当社のパワーアンプDCPW-240は最初からBTLモードになっているのでダンピングファクターDFは850となっていますが、通常のBTLではない接続ができるとするとDFは1500程度になるはずです。