SN比とは


オーディオにおけるSN比の意味


一般にSN比とは文字通りSignal(信号)とNoise(ノイズ)の比率で、これが大きいほどノイズが小さいことを表しています。

オーディオアンプでも昔の基本性能が十分でなかった時代では、サーというノイズが聴こえたりするので、ノイズの少ないということがオーディオアンプの重要な指標の一つでした。

現代のオーディオアンプでは、通常の試聴状態で(レコードを除けば)ノイズが気になることはないでしょう。

ただ、SN比という性能は製品の完成度やエンジニアの資質を推察する指標として現代に於いても重要な性能だと考えています。そのためにはSN比に関する最低限の知識が必要です。そこで、ここではオーディオ機器のSN比について、どこよりも詳しく解説します。


SN比の基礎知識


ここではSN比の定義、基礎について説明します。

SN比の定義

SN比(Signal to Noise ratio)の定義
 SN比の定義そのものは簡単で、信号(S)とノイズ(N)の比です。

オーディオアンプでは一般に、次式で定義されます。

・ SN比=20LOG10(S/N)

SとNの単位はVoltです。対数は底が10になります。
例えば信号レベルがノイズの10倍のときは(Log10(10)=1なので20を掛けて)20dBになります。
同様に100倍のときは40dB、1000倍のときは60dBとなります。
さらに、2倍のときは約6dB、3倍のときは約10dBなので、これを応用すると
20倍(=10x2)なら26dB(=20dB+6dB)、300倍(=100x3)なら50dB(=40dB+10dB)という風に計算できます。

SN比は実は条件によって大きく変わる

SN比は信号とノイズの大きさが決まれば一義的に決まるはずです。ところが、実際には信号、ノイズともに条件によって値が大きく変わってきます。

実際に各社のオーディオアンプのSN比に関しても、条件が混在していて単純に比較できない場合も多いのです。

ではなぜその様になるのか解説していきましょう。

SN比のカタログ値を大きく左右する要因はこれ

1. ノイズを計測する際の帯域が異なる

ノイズの成分がホワイトノイズの場合、実は測定する帯域幅で測定されるノイズの大きさは異なります。
測定器の帯域幅が10倍広くなると、約3倍(10dB)変わります。
フィルターの有無でも当然変わります。
多いのは帯域幅も使用したフィルターも記載していない場合で、これではSN比が良いのか悪いのか判断できません。

2. 基準となる信号レベルが異なる

SN比は当然基準とする信号レベルが変わると変わります。基準とする信号レベルは、最大出力電圧でとるか標準的な使用条件にするかで、条件が異なっている場合があります。

3. 中には最新の測定器を使用したために根本的に間違っているケース という冗談の様な・・・

最近の技術者はアナログ技術にめっぽう弱いので、根本的に勘違いしているケースがあります(かわいそうに)。
次節で実際にある、そういったケースを紹介します。
(やたらと良い数値を出しているので大変迷惑な話です)


SN比は測定する帯域で変わる

ノイズは測定系の帯域の√に比例する

SN比の測定にフィルターをかけることはオーディオに詳しい方ならご存知かと思いますが、実は測定器の帯域幅も大いに関係します。一般にアンプのノイズのスペクトルはハムを除けば(半導体アンプではハムが無いのが当たり前なので)、ノイズ電圧として測定されるのはホワイトノイズ成分です。すなわちすべての周波数で一定の振幅のノイズがランダムに発生していると考えて良いのです。測定系の帯域が広ければ広いほどノイズ成分は大きく測定されます。

抵抗の熱雑音

例えば抵抗から発生する熱雑音(ホワイトノイズ)は以下の式で表されます。

Vn=√(4kTBR)

ホワイトノイズは(4KTBR)のルートに比例します。Kはボルツマン定数、Tは絶対温度、Rは抵抗値、Bが測定系の帯域幅です。アンプで使用している抵抗の値が100倍になればノイズは10倍に、測定している電圧計の帯域が100倍になればノイズは10倍になります。

アンプのノイズ測定時の帯域

半導体プリアンプなどでは出力で観測されるノイズはほぼホワイトノイズ成分ですので、同様にノイズの測定値は測定系の帯域幅Bのルート√Bに比例します。

SN比の測定条件で帯域幅、あるいは使用したフィルターについて

1. 記載なし、
2. Unweighted、
3. 20-20kHz、
4. A 

などの表現がありますが、1と2に関しはノイズレベルが果たして大きいのか、小さいのかわかりません。 

Aフィルターは聴感補正するフィルターですが、同時に有効な帯域も制限されます。オーディオアンプは耳で聞く装置なのでAフィルターを使用してノイズを表現する場合が日本では多く、妥当な測定方法と思います。


SN比の実際の測定方法

オーディオ機器におけるSN比の測定法

オーディオ機器のSN比の測定方法について解説します。

オーディオアンプのSN比の測定方法は次のとおりです。

1. 測定するアンプの入力をショートする。
2. アンプの出力を測定器に接続する。 

接続する測定器としてはノイズメーターかオーディオアナライザーを使用します。ノイズメーターと言うのはACボルトメーターの一種で、微小信号の測定に特化されていて、かつ各種フィルターを装備しているものです。オーディオアナライザーはこのノイズメーターの機能も内蔵しています。

3. ノイズを適切なフィルターを選択して測定する。
4. ノイズと想定する信号レベルと比較してdB表示に変換する。

となります。オーディオアナライザーの場合には信号レベルとノイズレベルを測定して、直接SN比を計算・表示してくれます。

ここで、注意しなければいけないのは基準とする信号レベルで、慣例的に以下の信号レベルが使用されているようです。

プリアンプでは 出力1Vまたは2Vに対するSN比
パワーアンプでは 最大出力電圧(20-30V)に対するSN比

プリアンプでは通常最大出力を基準としてSN比を算出するのではなく、1又は2V出力を基準とすることに注意してください。一方パワーアンプでは最大出力基準です。なぜこの様な基準になっているかというと、決まった経緯は知らないのですが、おそらくそれが実使用条件に近いからだと思います。


SN比でよくある間違い これはひどい


SN比で注意すべき点で、測定する帯域幅でSN比が変わるということは説明しました。もう一つ間違えやすい点があります。機器を設計しているエンジニアでも勘違いしていて、実際よりも100倍以上良いと自慢しているケースもあります。

スペクトルからSN比を考えるときは要注意

さてココで問題です。この図はアンプである信号を入れたときのFFTスペクトルです。SN比はどのくらいでしょうか?

信号レベルが0dBV(1V)ベースラインのノイズレベルが-120dBVですから、SN比は120dBです。

というのは正しいでしょうか?

実はこれが大きな間違いです。ノイズレベルは例えば20kHzまで取ったとすると、その140倍になります、dBでいうと+43dBです。ノイズレベルは-120dB+43dB=77dB になります。なんとSN比はたったの77dBです。

なぜこうなるかというと、スペクトルで考える際は信号レベルは面積で考えなければいけません。歪率のような2つの信号レベルの比較では波高値で比較すれば良いのですが、ノイズの場合周波数の左から右まで一定の値なのでその積分で考えなければいけません。

具体的には帯域幅を20kHzとすると√20000の約141(43dB)を掛けることになります。

実際こういった基本的なことを間違えて、直流電源のノイズレベルを100倍良く表示しているもの(としか思えない例)がありました。