CDプレーヤーが言いました「私脱いだら凄いんです」 -知っているようで知らないCDプレーヤーの怖さ-

知っているようで知らないCDプレーヤーの怖さ


CDプレーヤー(CDP)の歴史はもう長い、30年近くなる。なので相当進化したはずだ・・・と思ったら大間違いで、いまだ16ビットの淵をさまよっているというか、ひどい事になっているような気がします。

そんな事はない、ハイエンドのDACチップはダイナミックレンジが120dB以上あるし、最近は32ビットのDACチップも出てきた、FIFOでジッターを減らす技術も取り入れられているものもあるし、マスタークロックを入れればもっと良くなるetc.。

でも調べてみるとCDPの動作は目も当てられない状態になっていると言うしかありません。調べているこちらの装置の状態がおかしいのじゃないかとまず疑わなければいけないくらいです。一番すごい事になっているのはDAC以降の回路動作ですが、そこはまだおしゃべりできないので、今回はデジタル回路の部分について紹介します。

ここで問題です。

これは何の波形でしょうか?

 

答えはマスタークロックです。

同じ波形を、時間軸も入れて見せるとこうなります。

マスタークロックの波形11.3MHz, 40ns/div

CDのサンプリング周波数(Fs)は44.1KHzですが、CDPのデジタル出力をDACに入れると、専用に設計されたレシーバーICがこのFsの256倍の11.2896MHzのマスタークロックを作ってくれて、DACチップに渡すようになっています。本来マスタークロックは矩形波のはずですが、実際にはこんなに鈍っていました。11MHzの矩形波を綺麗に伝送するには最低でも5倍、できれば10倍以上の帯域が必要で、50-100MHzの帯域がないと矩形波になりません。なので結構難しい事なのかも知れません。CPUやメモリーの様に0、1が伝わればいいならば鈍っていて問題ないので簡単ですが(といっても最近のようにGHz帯になると簡単ではないでしょうが)、ジッターを問題にするとなると立ち上がり/立ち下がりが急峻でないといけないので事態は深刻になります。

使用したレシーバーのクロックに対するジッター性能の仕様は0.2nsで、上図の1目盛り(DIV)の1/80です。本当にそれだけのジッター性能があったとしても、波形がこれだけ鈍っていたらDACで受けたときにジッターは100倍くらい悪くなってもおかしくありません。そもそもデジタル回路はトランジスタのON・OFFだけを取り扱うので、そのON・OFFをどの閾値で行うかは極めてあいまいなのです。

何が言いたいかというと、マスタークロック周りで重要なのは発振部のジッターの小ささではなく、波形の質(立ち上がり、立ち下がり)、伝送経路の高周波領域の完全性だという事です。言い換えれば、ジッターを抑制するのにジッターの小さな発振器を使用しても必ずしも効果は期待できず、むしろ波形の質、ドライブ能力などに着目した方がジッターが抑えられるという事です。

ついでにいただいたコメント(クイズの回答)に対しても解説しておきます。乱れた矩形波信号ではないかという回答がありましたが、CDPの矩形波応答はこんな感じです。

 CDPで再生した1KHz矩形波信号波形

 CDPで再生した5KHz矩形波信号波形

CDの場合、20KHz以上がスパッとなくなっているのでリンギングがある様に見えますが、これは正常で仕方が無い事なのです。5KHzになると5KHzと3倍の15KHzの合成波になるので、もう正弦波丸出しという感じになります。

実を言うとこの波形はかなりいいほうで、実際にはCDPのアナログ周りはもっと悲惨な事になっています。その辺の事情は自社製DACを出す際に紹介するつもりです。

【内容の修正とお詫び】

内容に測定上の誤りがありましたので修正させていただきます。コメントを頂き再度調べてみましたが、測定時に初歩的な間違いをしていました。

オシロのプローブを1:1(プローブの入力Z1MΩ、46pF)で測定していたのですが1:10(10MΩ、12pF)で再測定したら、システムクロックはこの様になりました。

 11.3MHzのシステムクロック波形(この波形は48Khzfs入力時のシステムクロックです)

 プローブ:TEXAS製250MHzプローブ
 オシロ:200MHz(5Gs/s)SDS200A

波形は綺麗とはいえませんが立ち上がりはそこそこ鋭く、デジタル信号としては十分だと思います。10MHz帯になると10pFの容量でも数KΩの負荷になるので、重たくなってしまうのです。1:10のプローブでも真の波形が取れているかは怪しいかもしれません。オーディオアンプなどですと、もともと駆動能力があるので数pFの容量では影響を受けないのですが、ロジック系のICは負荷が軽い事を前提に作られているので、この辺はもっと気をつけて調べなくてはいけませんでした。お詫びと共に訂正させていただきます。 100MHzのアナログオシロだと上図の波形を少し丸くした感じなります。

ちなみに96KHzのサンプリング周波数に対するシステムクロック波形は次の通りです。

 22.6MHzのシステムクロック波形(この波形は96KHz fs入力時のシステムクロックです)

かなり怪しい形だが何とかいけそうな感じです。

今後ともよろしくお願いいたします。

(2010/04/06)