さかなクンもびっくり、「ギョギョ」っと驚くヘッドホンの聴感・周波数特性

はじめに


ヘッドホンの周波数特性は通常、耳の特性を模した人工耳にマイクを装着しヘッドホンを付けて測定するのが普通です。ただこの方法ですと発生した内耳・外耳の形によって発生する高域での周波数特性の暴れなどが、実際に個人のものと同一である保証はありません。高域のピークは結構派手に測定されるので、本当の所はどうなっているのか気になるところです。高域ばかりではなく低域もどのくらい伸びているのか、そのレベルはどうかなど(低域は肌の弾性によって低下するので当然個人差がある)、通常のダミーヘッドによる測定では必ずしも十分ではありません。

そこで実際の聴感上の周波数特性を自分の耳で測ってみました。スピーカーでは部屋の壁などからの反射の影響で周波数特性が激しく乱れるので、マイクと測定器を使用しなければ測定できませんが(それにマイクを使用して測れば、ヘッドホンと違ってなんの問題もないので)、ヘッドホンの場合は周波数特性が比較的スムーズなので、各周波数ごとに音量を記録していけば結構な精度で測れるのではないかと思ったからでした。

測定方法


測定方法を以下に示します。

ヘッドホンの周波数特性測定方法
ヘッドホンの周波数特性を自分の耳で測定する方法

発振器を2つ用意しました。ひとつは基準音として1KHzの信号をずっと出し続けます。もう1つで20-20KHzの信号を入れて、ヘッドホンアンプで信号を切り替えながら同時にヘッドホンアンプのアッテネーターを調節して、2つの信号音の音量が同じになる減衰量を記録して周波数特性を算出しました。この方法ですと実際に自分の耳で聞こえる音量で判断しているので、間違いなく自分にとって正しい周波数特性となります。

ヘッドホンアンプのアッテネーターはこのように1dBステップで20dB可変できる機構(外側ツマミ)と0~-54dBまで可変できる機構(内側つまみ)があるのですが、実際には外側のツマミ(1dBステップで20dB可変できる)とフラットアンプ(15dB)の有無(スイッチで入れたりスルーしたりできる)を組み合わせて行いました。また測定前にあらかじめ全体域をスイープして特にピーク、ディップがある周波数近辺は詳細に調べました。

ヘッドホンアンプに搭載した新型アッテネーターの写真 ヘッドホンアンプに搭載したアッテネーター

測定結果


それではお待ちかねの測定結果です。まずはゼンハイザーから

(1)ゼンハイザーHD-595


   ゼンハイザーのHD-595の聴感周波数特性(低域の伸びが素晴らしい)

このヘッドホンは非常に帯域のバランスが良くきこえます。高域にこれだけ派手なピークがあってもバランスがいいのは6KHz以上で落ちていっているのと、低域がとにかく30Hzまでフラっトに伸びているので、非常に力強さを感じられるからかも知れません。また8KHzに音がほとんど聞こえなくなる領域がありました。

(2)ソニーMDR-Z1000
次はソニーです。ごめんなさい。
ソニーファンの方は見ないほうがいいかも知れません(閲覧注意)。


   ソニーのMDR-Z1000の聴感周波数特性(けっこうかまぼこ)

ゼンハイザーに比べるとフラットに見えますが、結構低域、高域とも早く切れます。かまぼこって言うんですか。ゼンハイザーほどではありませんが1KHz以上の高域のレベルが高めです。このヘッドホンは聴感上はかなり高域に寄っているように私には聞こえますが、それはこの辺から来ているのではないかと思います。このヘッドホンは歯切れの良さは抜群にいいのですが、低域が比較的早くから切れている事の影響もあるのかもしません。

(3)AKG K-702
AKGのこのヘッドホンの特性は見事です。ほぼフラットで帯域も広いです。ほとんどピークはありません。低域については超低域は落ちていますが、50Hzまではほぼフラットに出ています。高域も一番伸びています。13KHz位までなんとか聴こえます。このヘッドホンのカタログに「ダイアフラムを2層に分割したバリモーションシステムを導入した」とありましたが、そういったことをしないと中々ここまで伸びないのでしょうね。ヘッドホンの振動板は通常40mmΦ位ありますし、それが仮に分割振動なしに駆動できたとしても、耳に達する距離が振動板位置で異なるので打ち消し合ってしまいますから。AKGは非常に繊細な音が得意なので中高音域が多少持ち上がっているのかと思ったら、3種の中で最もフラットで優秀な周波数特性でした。素晴らしいです。きっと相当な技術力とノウハウがあるのでしょう。これにゼンハイザーの様なフラットな低域が実現されたらさらに素晴らしいのではないかと思います。このヘッドホンは開放型ですが、密閉型のモデルは低域がもっと伸びているかも知れません。

   AKG-K702の聴感周波数特性(フラットで帯域も広く申し分ない特性)

おわりに


ヘッドホンの聴感周波数特性を測定してみましたが、意外ときれいに測定できました。またヘッドホンの特徴もよく出ていると思いました。もちろん、ヘッドホンの音質は周波数特性だけで決まるものではなく、他にも音質に影響する数々の要因があると思います。またヘッドホンを愛用されている方は皆さん特に高域を欲しがる方が多いのですが、ひょっとするとヘッドホンの超高域が実際にはあまり出ていないので、アンプなどに多少キンキンしたものと求めているのかも知れないなーという気がしました。今回紹介した周波数特性の測定は測定器が無くても、パソコンなどで工夫すれば測定出来ると思いますので、興味のある方はご自身で一度お試しになってはいかがでしょうか?

(2011/05/23)