スピーカーをいじっていたら、はまってしまいました(その2)ドはまり編

当社はアンプメーカーなので、スピーカーは皆さんもよく知る、どちらかというと癖のないスピーカーを使わなければいけません、という立場です。

それでも、ちょっといじりだすと、とことんはまってしまう癖があります(根がマニアなので・・・)。

私は1985年から2005年位までの間、完全にオーディオから遠ざかっていました。ですので、この間のオーディオ情報が完全に欠落しています。ふとした時に、そういえばダイアトーンのスピーカーを全く聞いたことが無いなーと思ったのです(ちょい聞きしたことはある)。今ではたくさんの中古品がオークションなどで出品されています。そこで目についたのがこれDS-9Zです、これはダイアトーンの代表作ではないかもしれませんが形が非常に気になりました。ちょうど小型なので、サブサブSPとしてちょうどいいかなーと、気になってしまったのです。

オリジナルのDS-9Z、形のバランスがいいです

そこで完動品をみつけてリサイクルショップから購入してみました。そしたらなんと実物が相当でかい。普段、脇に置いとける寸法ではありませんでした。写真で見るとわからないのですが、相当迫力あります。20cmウーハーというのはわかっていましたが、実寸ではエッジまで18cm、外寸は23cmあります。それに結構重いし。

とりあえず、聴いてみると、これが酷い。どう酷いかというと、高音がキンキンして、とても聞いていられない音です。中古ですので所有者がNWを改造しているかもしれませんし、ユニットの状態も相当劣化しているかもしれません。もちろんダイアトーンのウーハーはエッジが固くなることはしっていましたので、軟化剤を入手して処理しています。

オリジナルの状態で特性を計ってみたのがこちらです。このSPのクロスオーバーは1.5kHzです。1.5kHz付近が凹んでいるのはマイクの位置の関係で(50cmという近距離で計っているので)、本来の特性とは関係ありません。ツイーターのレベルが6dB位高くなっています。音圧で6dBというのは4倍の大きさですから、聴感上高域が目立っていたことも当然です。ダイアトーンのSPが初めからこのような設計であるわけがないので、おそらく経年変化でツイーターの特性が変化したのではないかと思いました(本来ダンプされているはずの振動板が無制動になっているという様な・・・)。

とても聞ける音ではありませんでしたので、ツイーターを強制的に制動した方がいいのではと思い、ボルトを外した途端にボルトが振動版に飛んでいき(それだけ磁気回路が強かったのです)、あえなく振動版がボロンと割れてしまいました。

ということで、すぐにオリジナルの音で聴けなくなりました(聞きたい音ではなかったのですが)。これで踏ん切りがつき、ツイーターを替えてみようということになりました。ボロンツイーターを替えるというのはこのSPの特徴の半分を失ったようなもので、意味がないと思われるかもしれませんが、乗りかかった船です。

ということでここから、さらにドツボにはまったのです。

落とし込む形のスペーサー

ツイーターにハイルドライバー型を付けたら面白いのではと思い探しましたが、1.5kHzで使用できるものは大型で寸法的に入りきらないので、結局通常のソフトドームにしました。サイズを合わせるためにスペーサを作る必要があります。当初真鍮で作ろうとしましたが、価格があまりに高くなるので木で我慢することにしました。材料は花梨という硬い木を木材屋さんから購入しました。

 

単純化したスペーサー

CADで図面を描き、NCフライスで加工したところ、設計に無理があり割れてしまいました。ここまで十時間以上かかっています。

仕方がないのでツイーターが少々出っ張るのを覚悟でスペーサの形を簡略化して作ったのがこちらです。ようやくうまくいきましたのでツイーターを取り付けました。

 

使用したツイーターはSB Acoustics SB26STAC-C000-4 26mm ソフトドーム ツィーターでペアで1万円程度のものです。

 

 

 

全体としてはこんな感じになりました。C-4と並べても高さはありませんが、堂々としています。

NWに関しては一切変更していません。そのままユニットを取り換えただけです。

さらに特性を計ってみるとこうなりました。 悪くありません。若干中高域が落ちていますが問題ないレベルです。

さて肝心の音はどうでしょうか?

 

 

肝心の音ですが、これが素晴らしいのです。高域が前に出てきて、非常に良く鳴っているのです。高域が鳴るケースは一般には悪い方向に目立っていることが多く、好きではないのですが、このSPの音は本当に心地よく響いてくるので、聞いていて快感です。特にピアノの音・響きが素晴らしく、こんなに実在感のある音は今まで聞いたことがありませんでした。低域は密閉なので不足すると思いきや、下の方までしっかり出ているように聴こえます。

数百万円クラスのSPと比較しても、こういう鳴り方をするSPには出会ったことがありません。見栄えがよければ、この音なら150万円でもバンバン売れていくのではという出来です。

ソフトドームユニットは何の変哲もないユニットですので、おそらく逆にウーハーの性能・音質がそれだけ素晴らしいのだと考えています。高域には鳴りがいい反面ちょっとがさつというか、雑な面もありますので、その辺はこの安いツイーターの限界なのだと思います。ちなみにこのウーハー軟化剤を塗布するために一度外しましたが、ものすごい造りです。

フレームの強度、磁石の大きさが凄い

しかもセンターキャップまで振動板と同じ素材で構成されています。このウーハーはごついただけでなく、あらゆるところに振動防止が対策されています。留め具のボルトにキャップをしてあるくらいです。おそらく耳障りな泣きを防止するためにあらゆる対策をしているのだと思います。不思議なのはツイーターで、ツイーターにも磁気回路にフェルトを張ったりして泣きの防止をしているのに、耳障りな音が(中古品の状態では)取れていなかったことです。

おそらく、こういったハードドームでは振動板そのものを直接制動しないと、音響制動だけでは耳障りな音が残るのだと思います。そこまで踏み込んでいれば、おそらく素晴らしいスピーカーシステムになっていたことでしょう。高域のうるささが邪魔をしてウーハーの良さが全く出ていなかったということかもしれません。(ボロンユニットは技術的には素晴らしいユニットだと思いますが・・・)。まあ新品で購入していないのであくまで憶測でしかないのですが。

この改造したDS-9Zですが、何を聴いても素晴らしく、普段聞いていなかったCDまで持ち出して聴いている次第です。

今度展示会などで機会があれば皆さんにも聞いていただいて、手前味噌かどうか判断してもらおうかと思います。

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