オーディオと音楽を結ぶ本   -ためになります-

久しぶりにオーディオ関連の本を紹介します。
オーディオ関連というより音楽と聴覚の本というべきでしょうが、オーディオ機器にとっても、大変参考になります。

その本は「音律と音階の科学」小方厚著、講談社 ブルーパックス
という本です。

この本はピアノなどの調律(純正律、平均律etc.)等について、あるいはどの様にドレミが誕生したのかが書かれているのですが、その中にオーディオ的に面白い記述があるのです。

人間が不快に感じる2重音(2つの周波数の純音)として不協和という概念が説明されています。この不協和という概念は、オーディオ機器で通常用いる高調波歪率よりも聴感上の歪率と相関が高い指標だと思うのです。

例えば
・真空管アンプとトランジスタアンプで歪んだと感じるひずみ率は1桁程度違う
・歪むと感じるのはなぜか高域で、低域はあまり歪んだと感じない
・そもそも楽器や自然音は高調波から構成されているのに、高調波が1%増えただけで不快に思うのはなぜか。ドミソドの4和音で高い方のドの音(低い方のドの音の2倍の周波数)を1%強く弾いても不快にならないのに。
などに説明がつく(かもしれない)。

もちろん、本書はオーディオについて書かれているわけではないので、上記のオーディオ的考察は私が勝手に拡張しているだけですが。

また著者は研究者なので音楽関連の内容にもかかわらず、非常に読みやすかったです(といっても音律という話は結構ややっこしい話なのですが)。

この本で紹介されている内容に不協和度という概念があります。人間が不快と思う2音(二つの正弦波音)の関係は次の様な関係があるそうです。
不協和度曲線不協和度曲線
不協和度というのは一般の人が不快と思う割合です。2,3,4倍の整数倍では不快と思わないが、その他の割り切れないところでは調和しないので不快に思う傾向があります。特に2音が比較的近い周波数のとき1.08倍くらいの比率のときに一番不快と感じる割合(不協和度)が大きくなるのです。

一般にアンプの高調波ひずみというのは電気的に測定しやすいので指標として測定しているだけで、人が歪んでいると感じる度合いと比例する保証はありません。
一方この不協和度という尺度は反対に人間の生理現象に基づく指標なので、聴感上のひずみ率としてはこちらの方が望ましいのです。ただし不協和度を測定するのは難しいので、これから不協和度をひずみ率の測定しましょうなどと提案するつもりはありませんが。

本の内容はもっぱら音律の方に内容が割かれています。とはいえ一度読んでおくとオーディオの参考になる本だと思います。

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