以前にスピーカーシステムに関してすばらしい本としてスピーカー・システム(ラジオ技術社)を紹介しました(ただしもう絶版なのでどうしても見たい方は図書館等を検索してください)。
この中にヘッドホンの動作に関しても一章さかれているので、その中からいくつかトピックを紹介します。
ヘッドホンの周波数特性
ヘッドホンの実測周波数特性はたまに雑誌などでも見る事がありますが、ヘッドホンの周波数特性は基本的にはこんな感じになってしまうそうです。
ヘッドホンの周波数特性は基本的にこうなります。
この測定ではマイクロホンを逆にイヤホンとして使用し、プローブチューブマイクロホンというものを人間の外耳道の入り口に挿入して測定しています。
低域が下がっているのは、なんと肌の弾性によってだそうです。年を取って張りが無くなった肌ほど低域が聞こえなくなるって事でしょうか(そりゃまずい)。高域の山谷は外耳道の共振によるものだそうです。
耳を近似したものとしてIEC標準の人口耳があり、測定にも使用されていると思いますが、単純な円筒形カプラーで測定した場合にヘッドホンに要求される周波数特性としては、次の様な特性が必要だそうです。
低域を多く、高域を少なく、こういう周波数特性が必要という事はわかりました。でもヘッドホンでそんな事ができるのでしょうか?これ結構難しいですよね。この本ではさらに低域を盛り上げる方法として密閉型のチャンバーを利用する方法など理論的に記述されていました。他にも高域の下げ方もいくつか記述がありました。構造が単純なだけに周波数特性を調整するのに一苦労(というより苦労しても完全にはならないのかもしれない)ですね。
ヘッドホンって簡単な様で実は大変な世界なんですね。
イヤー、ホンと。
この記事のおかげで、私が長年感じていた疑問が解消されたように思います。
機械的に測定した周波数特性がフラットに近いモニターヘッドホンを使用した時に『低音が弱い・高音が刺さる』と感じる人が多いのは、『人間の外耳道の周波数特性』が主な原因になっているのかも知れませんね。
人間の外耳道の周波数特性がこの記事のグラフどおりだと、完璧なフラット特性のモニターヘッドホンでは『低音が足りなくて高音過多』に感じるのは当然の結果でしょうね…