スピーカーシステムの参考書 -これも書店にないが断トツでこれ-

今回はスピーカーシステムの参考書を紹介したい。
といっても残念ながら絶版で中古でも入手困難である。
オーディオ用の本はそういうものが多いが、(オーディオは過去の遺物なのだろうか)何とか大きな図書館では閲覧できる。

それはこの本です。

スピーカーシステム 山本武夫著
1977年 上・下 ラジオ技術社

パイオニアにいらした方の執筆で、内容はすごい。大学の理系の人がやっとこさ理解できる内容で、趣味の本というよりも物理学の専門書といった方が良い。それも入門書のレベルではなく上級者むけである。スピーカーの動作を物理学として捕らえて、かつ当時のすべてのスピーカー様式に関して理論的に解説してある。
例えばスピーカーを定電圧駆動するとある領域で音圧特性が平坦になる理由も本書をたどると理解できる。(そんな事はどうでも言いといわれればそれまでだが)

発売されたのは1977年で、実は18才くらいの時に中身がろくに理解できなかったにもかかわらず買ってしまった本である(買っておいてよかった)。この本で含まれていない内容といえば、最近のTSパラメータだとかパソコンを中心としたシミュレーション関連の話だけである(当時はパソコンでそんなことできなかったしTSパラメータは比較的新しい話なので当たり前だが)。30年前なのでホーン型スピーカーなども結構なボリュームを割いている。表紙を飾るのはあのCS-955だ(今新品であったら聴いて見たい)。最近流行のトールボーイ型(?)見たいなスピーカーの解説は無いが、多数のSPを並べるシステムについてはPA用としての解説がある。

そういえば当時の入門者用の本でも「スピーカーシステムとその活きた使い方」などは相当な技術内容を含んでおり、面白かった。
今書店に並んでいる内容の無いオーディオ本とはまったく正反対だ(そう思っているのは私だけ?)。

当時はオーディオが産業として成り立っていたので、技術・お金・人材、それからこういった図書のような周辺にまでいいものがあったのだと思う。

現在この本が簡単に入手できないのは誠に残念だが、この本を残してくれた事に感謝すべきかもしれない。

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