今回は、ドイツのCAMERTON(カマートン)社が手掛ける超規格外のフルレンジスピーカーシステム「BINOM-1(バイノム・ワン)」を試聴・測定する機会を得ましたので、その詳細なレポートをお届けします。
ペアで約300万円(税込)という非常に高価な製品ですが、実際に測定器にかけ、じっくりと音を聴き込んでいくと、音響工学の常識を覆す数々の発見と感動がありました。
※評価の前提について 私はオーディオ評論家ではありませんので、メーカーや代理店様から評価料などの金銭を一切いただいておりません。YouTube動画やブログにおきましても、案件としての利益誘導はなく、技術者・オーディオファイルとしての客観的かつ正直なインプレッションをお伝えしています。(今回は国内輸入代理店である飯田ピアノ様より実機をお借りして評価を行いました)
1. CAMERTON BINOM-1 の外観と構造的アプローチ
まずは実機の外観と、その独特な仕様から見ていきましょう。


一見すると上質なピアノブラック塗装が施されたコンパクトなブックシェルフ型スピーカーですが、細部を観察すると一般的なスピーカーとは根本的に異なる設計思想で作られていることが分かります。
- 仕上げ・キャビネット: 積層合板を採用した高剛性キャビネットに、美しい黒のピアノ塗装仕上げ。
- 振動板(バッフル): バルサ材を使用した平面バッフル。裏面から補強用のカーボンリングが配されています。
- ダクト構造: リア側には金属製の極太バスレフダクトを装備。
- 重量・サイズ: 1台あたり約8kg。ブックシェルフとしてはずっしりとした存在感があり、ディナウディオ C1 や ELAC 330CE などと比較しても引けを取らないスケール感があります。
最も特筆すべきは、13.5cm口径のシングル・フルレンジユニットである点です。
2. 独自ユニット「BINOM-A2」の怪物級スペック
このスピーカーの心臓部であるユニット(BINOM-A2)の仕様を読み解くと、通常のフルレンジ設計では考えられない贅沢なアプローチがなされています。
① 磁気回路と超重量級構造
13cmクラスのユニットでありながら、ユニット単体での重量がなんと2.5kgもあります。(通常の13cmユニットは重くても1kg程度です) アルミ削り出しと見られる重厚なフレームに加え、磁気回路には「積層ケイ素鋼板+パーメンジュール」を組み合わせた極めて凝った構造を採用。強力な駆動力を誇ります。



② 駆動系と振動板の絶妙なバランス
- ダイアフラム重量: 2.6g(表面のバルサ部分)
- 動質量(Mms): 6.5g
- 駆動力係数(BL): 7.0 T・m
動質量6.5gというのは、13cmウーファーとしても重い部類に入ります。この比較的重い振動系を、強靭な大型ダンパーと一般的なユニットの2倍以上に達する強力な電磁力でガッチリと制御・駆動する設計になっています。
3. 当社における測定結果:常識を覆す「驚異のF特」
当社(オーディオデザイン)の測定環境において、周波数特性および歪み率の計測を行いました。結論から申し上げますと、「フルレンジの限界を超えた恐怖すら覚えるフラットさ」です。
■ 周波数特性(F特)

- 超低域まで伸びる再生能力: 13cmフルレンジでありながら、リアダクトのチューニング(同調点約40Hz)と相まって、40Hzまでほぼフラット、実質30Hz付近までしっかり低音が出ています。20cmクラスのウーファーに匹敵する帯域幅です。
- 高域の分割振動を感じさせない伸び: 通常、13cmほどのサイズでフルレンジを作ると、高域(高周波)領域で激しい分割振動を起こし、暴れが生じます。しかしBINOM-1は、20kHz〜28kHzまで目立った乱れなく美しく伸び切っています。2WAY/3WAYの高級機と比較してもトップクラスの素直な特性です。
※聴感上の凹み(3k〜5kHz帯)について 測定距離50cmでは3k〜5kHz付近に若干の落ち込みが見られますが、1m離れると干渉が消えてフラットに近づきます。また、人間の耳の感度(フレッチャー・マンソン曲線)を考慮すると、この帯域が僅かに抑えられている方が聴感上は自然で疲れにくい音になります。
■ 歪み率特性

2次高調波歪みは0.1%以下、3次高調波歪みに至っては0.01%〜0.1%レベルに抑え込まれています。大型の優秀なスピーカーと比較しても同等以上に低歪みであり、分割振動を抑えた素直な挙動が数値としても裏付けられました。
4. 試聴インプレッション:ボイスメモに残された「至高の音」
文章で綺麗にまとめすぎると伝わらないと考え、試聴時にそのままリアルタイムで吹き込んだボイスメモの内容を箇条書きでご紹介します。
- サブウーファーやフロア型を思わせる重低音: 目を閉じると、30cmウーファーやフロア型スピーカーが鳴っているかと錯覚するような40Hz帯の深みと豊かな響き。
- ニュートラルで極めて自然な中高音: 耳障りな刺さりや刺激的な音は一切出さないが、情報量が不足する感覚もない。ジャズボーカルやピアノのアタック音が極めてナチュラル。
- 聴けば聴くほど引き込まれる音: 一瞬の派手さでハッとさせるスピーカーは聴き疲れしやすいですが、BINOM-1は逆です。時間を忘れて音楽に没頭でき、「これ1台があればもう他には何もいらない」と思わせる凄みがあります。
- 得意なジャンルと苦手なジャンル: ジャズ、ボーカル、小編成のクラシックや室内楽は完璧なバランス。一方で、超大編成のフルオーケストラを大音量で鳴らしきるような用途では、マルチウェイの大型システムに分がある印象です。
セッティングのアドバイス
直進性と解像度を最大限活かすため、スピーカーを少し耳に向ける「内振り(トーイン)」のセッティングを強く推奨します。 6畳〜12畳(あるいは20畳程度まで)の一般的な部屋であれば、部屋の音響特性に合わせてデジタルEQなどで低音を微調整してあげるだけで、極上のリスニング空間が完成します。
5. 結論:300万円という価格をどう評価すべきか?
ペアで約300万円という価格を聞くと、多くの人が「高すぎる」と感じるかもしれません。しかし、以下の背景を考えると決して不当な価格設定ではないことが見えてきます。
- 物価感とハンドメイドの原価: 欧米の物価感や賃金水準(日本の約3倍感覚)から換算すると、現地での感覚は「100万円クラス」のイメージに近いです。
- ユニットやキャビネットにかかる製造コスト: パーメンジュールを使用した専用ユニット、削り出しのパーツ、少量手作業による生産工程を考慮すると、原価率は極めて高くなります。
- 20年愛用できる「唯一無二」の存在: 車を1台買う価格(カローラクラスでも300万円前後の時代です)と考えたとき、5〜10年で乗り換える車に対し、このスピーカーは20年以上にわたって「至高の音楽体験」を与え続けてくれます。
買わない人が外側からとやかく言う必要はありません。ハンドメイドで少量生産されるこのスピーカーは、「試聴してこの音に心底惚れ込んだ極一部の人」のために作られた特別な製品です。
13cm平面フルレンジという、技術者なら誰もが避けるようなアプローチで見事にここまでの完成度を達成したことには、驚愕と尊敬の念を禁じえません。
イベントやショップ等で試聴できる機会があれば、ぜひ一度その音を体感してみてください。オーディオの常識が変わるはずです。
【製品仕様概要】
- 型式: 1ドライバー スタンドマウント・スピーカー(バスレフ型)
- 使用ユニット: BINOM-A2(13.5cm平面フルレンジ)
- 周波数特性: 35Hz – 28,000Hz (-6dB: 32Hz)
- インピーダンス: 8Ω
- 出力音圧レベル: 88dB (2.83V/1m)
- サイズ / 重量: H200 × W385 × D300 mm / 8kg(1台)
- 価格: 約3,000,000円(ペア・税込)
より詳細な内容をお知りになりたい方はYouTubeをご覧ください。
*本記事はオーディオデザインのYouTubeの内容をAI使用して要約し、編集したものになります。