オランダ・コンセルトヘボウで音楽を聞いてきました -音質は一番?-

音の良いコンサートホールとして有名なコンセルトヘボウに行って、その音質を確かめてきました。コンセルトヘボウ管弦楽団が奏でる音質は、弦楽器の音色、フワッと広がる音場、音の柔らかさなど通常のコンサートとは異次元の音質と言って良いものでした。

始めに

オランダのコンサートホールであるコンセルトヘボウは音質のいいホールとして有名です。今回このホールの音質を確かめる為に実際に行って聴いてきました。今回聴いた聞いたプログラムは次のとおりです。

9/14(Fri)指揮者 THOMAS HENGELBROCK
ピアノ Evgeny Kissin コンセルトヘボウ管弦楽団
Hector Berlioz, ROMAN CARNIVAL, OUVERTURE, Franz Liszt /PIANO CONCERTO NO. 1
Gioachino Rossini, OUVERTURE FROM ‘IL BARBIERE DI SIVIGLIA’, Felix Mendelssohn SYMPHONY NO. 4
Giuseppe Verdi, BALLET MUSIC FROM ‘OTELLO’

ホールの印象など

アムステルダムの中央駅から路面電車で20分くらいのところに美術館などが集まっている所があって、コンセルトヘボウもその一角に位置します。日本で言うと上野の様な感じでしょうか。外観はいかにも昔の音楽ホールと言った感じで風格は有りますが、かといってスメタナホールのような高尚さはなく、横にある入口などの造りは結構あっさりとしています。

ホールの中にはいると写真で見るよりも小さく感じるます。特に前後は以外と短かく、これで2000人収容出来る様には見えません。

形はほぼ直方体なのですが、特徴的なのは普通はステージの演奏者側がひな壇のように徐々に上がって言っている事で、客席側は平坦なのですが、後の演奏者も見える様になります。それと後ろの角がRになっています。ひな壇型とこのRで演奏側の立体角が絞られていることになります。

 

ドレスコードはブラックタイ って何?

これは撮影のサービス

よくコンセルトヘボウの解説に服装は自由みたいな事が書いてありますが、この日のコンサートはドレスコードが指定されていて、”BLACK TIE”でした。当初ダークスーツでも着ていけばいいのかななどと考えていましたが、何度もドレスコードを念を押すメールが来たので調べてみると、なんとタキシード着用でした。ブラックタイと言うのは蝶ネクタイの事だったのです。

皇室行事などで燕尾服着用が一番フォーマルだそうですが、これを除いて事実上もっともフォーマルな服装指定だそうです。

ホワイエの雰囲気

この日はドレスコードだけではなく、チケットの価格も高くて約4万円でした。演奏の前に食事(walking dinner)が付いていて、6時からディナー、8時から演奏と言うスケジュールでした。私は値段から考えてホテルのバフェの様なものかと思っていましたが、そうではなくもっと簡素なものでした。ホワイエと呼ばれる廊下のような所にbarがあり、好きなだけアルコール類が呑めます。

ただホールの廊下ですがら、参加者全員揃うともう満員状態でそこに時どき小皿料理を持ったウェイターが現れるという程度です。この状態で2時間立ったまま過ごすのですから、むしろ辛いのです。

前菜、メイン、デザートなどが小皿で

オランダ人同士は知り合いも多いらしくあっちで盛り上がり、こっちで盛り上がりしているのですが、まあ日本で言う居酒屋状態ですね。オランダ人は人と話しをするのが大好きなようで、ここに限らずずっと喋っている人が多い気がします。

 

 

 

音質はどうか

席は22列の18番でやや後方の列で、ほぼ中央です。ステージまでの距離は32歩でした。昔造られたので椅子のサイズは比較的小さくて、昔の映画館の座席程度です。オランダの人が座るとひざがほぼ前の座席にとどきます。

ここの音は流石、評判がいいだけの事はあります。中低域が豊かでふっくらとステージ全体を包み込むような雰囲気です。それと楽器の音色が今までに聴いてきた音と次元が違います。たとえばホルン、トランペットとの音色が澄みきっていて、しかも金管なのにやわらかい音で突き刺すような感じが全くしません。まるで木管楽器の様です。このホールは特にコントラバスやチェロなど低域の楽器の音がとてもいい感じになります。ふくよかで、まろやか、しかも艶があってホール全体を包見込みます。

ホールの残響はやや長めですが、非常に自然に聞こえます。

弦楽器は暖かみがありふくよかで心地良い音です。今までに聴いたどのホールとも違いますし、オーディオ装置、録音からもこのような音、音色は聞いた事がありません。

まあ強いて例えればソナスファベールの出す音に似ているかもしれません。(ソナスに似ていると言うよりも、こういった音になるようにソナスが音造りをしているといった方が良いのかもしれませんが)

演奏の音の大きさはこれまで聴いた最大級ではありませんが、充分な音圧は取れていると思います。

演奏はもちろん上手で金管も外す気配もないので安心して聴いていられます。各楽器のパートもバッチリ揃っていて、楽器を弾けない私のレベルからすれば完璧な演奏でした。

ただ一つ気になる所があったとすれば、このホールは残響が長めなので音が切れる前に次の音が始ります。大袈裟に言うならピアノのダンパーを使わない演奏みたいなものでしょうか。また演奏した曲はどれも良い曲だと思いますが、良いとこだけハイライト的に構成したせいでしょうか?、非常に感動したと言う感じにはなりませんでした。

各演奏が終わる毎に観客はスタンディングオベーションでアンコールなどもしていました。ただ私が感じた限りではオランダ人は音楽・芸術を堪能すると言うよりもこういったイベント自体を楽しんでいるのではないかと思いました。Opening Night ということでしたので、前夜祭、余興的要素が強いのかもしません。次の日の演奏はこの日とうって変わってやっとこさの演奏だったのですが、それも全てスタンディングオベーションでしたら。彼らにとってはすべてが最高というか、音楽自体はあまり深くは追求しないのではないでしょうか?そう言えばオランダ人の作曲家とかで有名な人はいなかった様な…。

曲の印象

(以下は聞きながらメモなので、まとまっていません)

リストのピアノ組曲

ピアノの迫力がすごい 低域が力強くて今まで聞いたピアノで一番きれいな音
またここまできれいな絃楽器もきいた事がない
ピアノと弦楽器の掛け合いの気持ちよさがまったくの異次元でした。
ロッシーニになって右にいた4本のコントラバスが中央に移動。
弦の美しさ特に低域が良い
ホルンの力強さもとても良い。ヒステリックな所が全くない。金管が安定している。トランペットが柔らかい。バイオリンよりもチェロ、ベースが美しい音。ソナスファーベルの音場で中高域を思いっきりクリアにしたような音。

メンデルスゾーン

金管が居ないのではないかと思うくらい柔らかい音。強いて言えばもう少し弦のキレが欲しい。
良い曲を少しだけかじるよりも全曲通して演奏したほうが良いのでは?

ベルディー

演奏の人数が増えて大迫力。華やか大音量、叙述的、情景が浮かぶ様。
一つ一つは良いが全体の曲の構成が今ひとつに感じました。
全てスタンディングオベーション。それとピチカートが弱かった。妻によると弦を指で弾かずに、弓で演奏していたとのこと(そういう奏法もあるそうです)。

次の日、9月15日(土)のコンサート

Nederlands Philharmonisch Orkest
conductor Marc Albrecht, piano Dejan Lazić

こちらはドレスコードの指定も無くそういう意味では普通の演奏会です。奏者もコンセルトヘボウ楽団ではありません。そのせいか値段も約8000円とこれまた普通です。ただ曲がいいのです。この値段でもホワイエのアルコールを含むドリンクは全て無料です。

(以下は聞きながらメモなので、まとまっていません)

ヤナセック シンフォニエッタ, JW 6/18

バス8本の構成(昨日はバス4本)、金管楽器がやや乱れる、弦楽器の中低域の厚み、澄み切った音が凄い。技量はコンセルトヘボウに劣る。
ほぼ全楽器が鳴った時の弦楽器の音の美しさは圧巻。
トランペットが柔らかい。ベースが力強い。バイオリンはそれほどでもない。

ラフマニノフピアノ組曲2番

ピアノ 低域が力強いがややこもる。弦が本当にきれい、最初ピアノの演奏がやや早い、指揮者もやっとまとめている感じ。欲を言えばピアノの高域の音色がややつまっている感じで、もう少し伸びが欲しい。ピアノの音量は相当大きい音だが、オケの総演奏には若干流石に音圧で負けている感じがする。こういった点は録音を聴いている限りではミキシングで調整されてしまうので解らない点だ。

それにしても、このラフマニノフの曲は壮大で、これを聴いた後の満足感は格別なものがあります。昨日のコンセルトヘボウ管弦楽団に比べると演奏技量自体がさほどなく、やっとこさ演奏しきったという感じだったのですが、途中、頑張ってという感じで心の中で応援する感じでした。それでもこういった大曲を演奏し切った(聴いた後)の満足感は昨日のコンセルトヘボウを聞いた時よりも大きいのですから不思議なものです。

3. ストラビンスキー 火の鳥

第2楽章の太鼓と共に始まる大音量の迫力がすさまじい。

オランダ人の楽しみ方

2日間演奏を聴いたのですが、ほとんど全てでスタンディングオベーション、たまにアンコールもやってました。ラフマニノフの2番の後にアンコールでピアノのソロをやったりしていましたが、個人的にはかえって”どっしらけ”です。日本でもよくありますが、こういった形だけの悪習はやめてもらいたいものです。

オランダ人はマリファナや売春(いまでも吉原の様な売春宿がある)が公認だそうで、日本の常識からすると、ぶっ飛んだ楽しみかたをする民族の様です。コンサートも楽しむための単なるイベントであって、芸術うんぬんみたいな余計な事は考えていない様に感じました。

コンセルトヘボウは音響工学を知らないとされる建築家が設計したそうで、窓を入れるなど音響的には非常識な設計をしたのに、演奏してみると音が良かったなどと紹介されいました。ただほぼ直方体で演奏者側を絞っていて、私には非常に合理的でまっとうな設計をしている様に見えました。日本にもこういったホールがあればクラッシックファンも数倍になると思いますが、良いとされているホールがまったくだめなので、音で魅了されてファンが増えるというメカニズムがないのが残念です。

最後に

これまでに行ったコンサートホール・演奏で印象を一言で表現すると、

  • プラハスメタナホール  チェコフィル ベートーベン 運命
    完璧の一言 音質、音楽共に最高に感動した極地 いままでに聴いた中でダントツの一曲 本当に酔いしれました。
  • リスト音楽院 モンタナロの指揮が素晴らしかった もちろん音質、演奏も完璧 曲目だけがちょっと残念 (ベートーベンの4番など)指揮(+もちろんそれまでの鍛錬も)が重要だということがよくわかりました。
  • コンセルトヘボウ 音質・音色・音場感が最高 ホールとしてはNo.1かな
  • ウィーン楽友協会 ホール 独特の低域の響きのあるホール 木管一本、1人の声でもすごい迫力の音がしました。
  • ベルリンフィルハーモニーホール 幾何学的に凝った作りですが、音質的には残念なホールでした

ということになります。

コンセルトへボウは行く価値のあるホールですので、機会があればぜひチャレンジしてみてください。

 

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