ケーブルのインピーダンスはあわせてはいけません

今回はオーディオケーブルのインピーダンスについてお話します。

電気の事に詳しい方には当たり前の事ですが、オーディオケーブルに関していえばインピーダンス整合を考える必要はありません、というより合わせ様としてはいけません。

よく高周波用同軸ケーブルで50Ωとか75Ωのモノが市販されています。一方プリアンプでもマークレビンソン(弊社もそう)など出力インピーダンスが50Ωのものがあります。このアンプの出力インピーダンスとあわせるために50Ωの同軸ケーブルを使用する方がいるのですが、これはまったく意味がありません。そもそも50Ωの同軸ケーブルの特性インピーダンスが50Ωというのは数十MHzの電波帯での周波数の話で、音声帯域では50Ωよりずっと大きいのです。また仮に音声帯域で50Ωの特性インピーダンスのケーブルがあったとして(無理に作れたとして)、それをプリアンプに接続してはいけません。なぜなら50Ωというのはプリアンプにとっては駆動できないくらい低い負荷であり、確実に歪率が大幅に悪化するからです。
 
 いずれにしても、音声周波数領域ではケーブルの特性インピーダンスは考慮する必要がありませんし、考慮できません。そもそもケーブルの特性インピーダンスという概念は分布定数回路というところから出て来ています。オーディオケーブルの1-2mという長さは、音声帯域のケーブル中の波長に対してはるかに短いので集中定数として扱うべきなのでケーブルのインピーダンスという概念が出てきません。

ただし、スタジオとかPA設備の様に下手をするとケーブル長が100mにもなるような場合は別です。この場合は可聴帯域といえどもはインピーダンス整合も考慮しないと反射波あるいは定在波の影響を受ける恐れがあると思います(この辺の実情はよく知りませんが・・・)。

ついでに言えば、ケーブルの話ではありませんが、パッシブプリとして使用するアッテネーターに600Ωの物を使用している方がいらっしゃいますが、これもやめた方がいいです。600Ωという負荷はCDプレーヤーにとって非常に重い(抵抗が小さすぎる)負荷で通常のOPアンプ(CDプレーヤーのほとんどはOPアンプ出力です)では確実に歪率が悪化します。600Ω負荷を駆動できるOPアンプ(5532など)もありますが、こういったOPアンプは600Ω駆動を前提として設計してあるからで、むしろ珍しいのです。通常のOPアンプに600Ω負荷を接続すると特に高域の歪率が悪化して、CDの音がより硬く感じる様になると思います。

以上、電子工学科の出身の人には当たり前過ぎる話ですが、この辺を混同されていらっしゃるお客様もいらっしゃるので、念のため説明させていただきました。

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