昔のオーディオ本は凄かった

昔のオーディオ関連の本は凄かった。今見ても凄いというか、今のオーディオ本とは次元の違う内容といえる。
例えばこれ、「名器から実用機まで プリアンプの自作」近代科学社発行の電波技術誌の別冊(Stereo Annual)、37年前位の本だ。


実はこの本、私にとても大きな影響を与えた一冊でもあります。この本を買ってから急速にステレオに対する興味が高まった、いわばきっかけの一冊でした(記憶が正しければ小学6年生のとき)。
内容はこんな感じ、

最初のトランジスタプリアンプの内容はこれ。このころは真空管の呪縛から抜け出して、ようやくトランジスタの特徴を生かした回路が出始めたころで、3段直結アンプが主流だった。その中でこのプリアンプは出力段をSEPP型にしたところに進歩性がある。


回路図はこれ

面白いのは、親切にも部品表が掲載されていて、しかも価格まで記入されている。トランジスタが1個200円と今の百倍しているトランジスタが偉かった(?)時代だ。これだけのものをそろえても合計金額で2万円いかないのだから、これまたすごい。

さらに、配線した後の実体配線図が描かれている。こういった絵を描く専門家が見やすい様に工夫して描いてあり、これもまたプロの仕事だ。


 
とどめは、性能の測定結果で、丁寧にすべての特性が載っている。ひずみ率特性が無いのは当時は歪率計が一般的ではなかったからだろう。

さらにこのころ既に演算増幅器(OPアンプ)を使用したプリアンプの製作例があった。OPアンプがなんと一個2000円で、大分安くなったと紹介している。このOPアンプを使用したプリアンプ回路なんて今とほとんど同じなんですけど・・・・。
このOPアンプの回路は既に差動増幅回路とカレントミラーは使用しており構成的には今の汎用OPアンプとさほど変わらない(性能は大分落ちるけれど)。


とどめはこのマランツ#7のレプリカの製作記事。全回路図はもちろん掲載されているが、真空管を後ろに横に並べておくレイアウトも本物と同じにしている。実態配線図はこれ。今だったら著作権がどうたらこうたらで問題になるかもしれないが、そういう意味でもいい時代でした。

また最初のトランジスタプリアンプとこの真空管プリアンプの製作者は同じです。真空管からトランジスタに移行した時代だったのでトランジスタアンプ設計者といえども真空管アンプを熟知していたのだろう。

それにしてもその内容は圧巻で、今見ても凄いと思う。これが普通の本屋さんに普通に並んでいたんだから。今本屋さんにあるオーディオ本なんて妙に初歩的なことしか記述してなくて幼児向けの本かと思ってしまう。子供だってコレみたいにものすごい内容のほうが、子供ながらに凄い事がわかってかえって興味を持つようになるのではないだろうか・・・って、そんな事はないか。

<お願い>本の内容の問い合わせなどを出版社になさらない様お願いします。(バックナンバーも当然の事ながらありませんので)

コメントを残す