クラッシックのCDは何故売れないのか? -それはxxが悪いからです-

最近はあたりさわりの無い話題が多かったのですが、久しぶりにごっついネタを思い切って書いてみようと思います(小心者の私は批判が集中したらすぐに削除しますので早いとこ読んどいて下さい)。

以前ハイエンドショウに出展しているとちょくちょくお客様から聞かれたことがあります。それは
「音のいいクラッシックCDは無いですか?」
というものです、さらに、同様の質問に
「小編成の室内楽まではいいんだけど、オーケストラの音質が悪い・・・いいCDは無いのか?」
とアンプのデモをやっている(つもりの)弊社のブースに立ち寄って聞かれていくのです。

弊社のブースでは音楽CDはを販売しているのではなく音響機材を販売しているので、そもそもいいCDあるか?と聞かれるのはちょっと違うのですが、それだけお困りの方が多いということだと思います。

こういった同じ内容の質問を度々受けるので、正直ちょっと驚きました。驚いたのは弊社のブースでCDの質問を受けたからではありません、・・・・・私も全く同じ事を感じていたからです。というか、あーやっぱり皆さんそうなんだなーと思いました。

オーケストラのCDの音質が悪いのは理由があります。今の録り方だとまともな音質にはならないからです。
えーそれは楽器の数が多くて音が濁りやすいからでしょうか?  いえ全く違います。アンプ類の観点から言えば楽器1個だろうが100個だろうが全く音質的には(電気信号を増幅・伝達するという観点から言えば)まったく同じ事ですから。

じゃあなんで音質がわるくなるのか? といいますと、
現在オーケストラ録音をCDにすると必然的に、例えて言えば音質がトランジスタラジオ並になってしまうメカニズムがあるからです(ガーン表現古すぎ)。

どういうことかというと、ここからは実例を使って説明して行きましょう。

次のグラフはチャイコフスキーのバイオリン協奏曲作品35の冒頭部分です。中心の大きな振幅がオーケストラの演奏で冒頭の縦線の部分までがバイオリンのソロになります。

チャイコフスキーのバイオリン協奏曲作品35の波形
(クリックで拡大してみて下さい)

そのバイオリンのソロの部分を拡大するとこんな感じです。
バイオリンソロ信号の拡大図

バイオリンソロの平均音量(RMSパワーで)は-40dBくらいになります。CDはのダイナミックレンジは96dBですので、この内40dBは既に失ってしまいます。言い換えるとこの部分のバイオリンの音は約56dB(630倍、約9bit分)で表現されていることになります。これならなんとかなりそうなものですが、さらに悲劇は続きます。

こちらの図を見て下さい。これはバイオリンのソロ部分のFFTスペクトル(周波数成分に分解したもの)です。
バイオリンのソロ部のFFTスペクトル

一番左の矢印が基音(約350Hz)でそこから右に2次、3次高調波と続きます。楽器の音色を決めるのは高調波成分ですが、例えば5次(一番右の矢印)の音量は基音の20分の1位です(スペクトルの場合はピークの波高値ではなくピーク面積が音量になります)。計算するとこのバイオリンの5次高調波は30dBのダイナミックレンジ(32倍=630/20、5bit)で表現されていることになります。歪のレベルが3%もあるのです。

ですのでオーケストラのCDをいくら高級なステレオで再生してもどうにもならないという結論になってしまいます。

これはCDの歪というかダイナミックレンジの下限が16bit(-96dB)にあって、歪のレベルがそこに固定されてしまうという原理に由来します。これがアナログレコードだったら音量の小さい音に対しては自動的に歪も小さくなるのですが、CDはなどのデジタル音源の場合は小信号に対してひずみが大きくなるので根本的に音質が悪くなります。

クラシック音楽のCDが売れない理由の一因は(もちろん他にもあると思いますが)デジタル録音(CD媒体)にあると考えています。

他にも思い当たる事はあるのですが、長くなりましたのでとりあえず今回はここまでということで。

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