フォノイコライザアンプの入力インピーダンスとカートリッジのいけない関係

アナログレコードの用のMM,MCカートリッジについて、フォノイコライザアンプの入力インピーダンスはどうあるべきかという点について技術的な記載はあまり見当たらないので考えてみました。

一言で言うと
MMカートリッジの場合、47KΩで受けるべき、また入力容量は大きくしないこと
MCカートリッジの場合、MCカートリッジの内部インピーダンスの数倍で受けるべき
ということになります。

最近はよくMMカートリッジに容量を変化させるスイッチが付いているものもありますが、本来こんなものは必要ないと思うのですが(お寿司に焼き鳥のタレをつけているようなものです)、最近はこういう変なものが流行ってきているので、あーあ残念と言った感じがしています。

次に、技術的な観点からその理由を紹介します。


1.MMカートリッジの場合

MMカートリッジはコイルの巻数が多いので結構なインダクタンス成分を持ちます。したがってフォノイコライザアンプの入力インピーダンス(抵抗+容量)とで共振回路を形成するとして考えなければいけません。ちょっと古いカートリッジですがV-15?の場合で計算すると以下の様な周波数特性となります。
これはカートリッジ自体の周波数特性は考慮せず(フラットとして)、電子回路としての周波数特性になります。
MMカートリッジ使用時のフォノイコの入力容量を変化させた時の周波数特性

入力容量を大きくすると500pF以上でピークが発生します。当然音質も変わると思いますが、わざわざ高域にピークを作るのは(そうしないと音質が良くないという場合は)おかしな話です。

2. MCカートリッジの場合
MCカートリッジの場合、巻線のインダクタンスは小さいのでアンプ側の入力容量は影響しません。ただしアンプ側の入力インピーダンスは適切な値を選択する必要があります。入力インピーダンスが小さいとアンプ側に入力される信号電圧が小さくなるため(カートリッジの抵抗で損失するため)、カートリッジの数倍の抵抗値で受けるのが適切とされています。Ref1
これにさらにノイズ成分として、カートリッジとアンプ入力部で形成されるループの誘導電圧による影響を考慮すると以下のような結果になります。

MCカートリッジ使用時のSN比の負荷抵抗依存性

ここではDL-103を想定して内部インピーダンス40Ω、出力電圧0.3mVの値を使用しています。パラメータとして誘導電流を1nV,10nV,100nVで計算しています。
負荷抵抗が大きくなると誘導電流によるノイズの影響が大きくなるため、負荷インピーダンスはやはり数倍程度に留めておくべきということになります。

弊社のフォノイコライザーアンプDCEQ-100ではDL-103用に100Ω、オルトフォンの様な低インピーダンスMCカートリッジ用に10Ωのインピーダンスが選択できるようになっています。
ちなみにMMカートリッジのインピーダンスは47KΩ固定です。

Ref1) p117,基礎トランジスタアンプ設計法、黒田徹著、ラジオ技術社

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