アンプの性能を表す指標にダンピングファクターがあります。実際のダンピングファクターの値はアンプによって様々です。
ところで、ちょっと意地悪で申し訳ございませんが、ダンピングファクターを大きくするために次の内で有効な項目はどれでしょうか?
- トランジスターなど出力段素子の出力抵抗が小さいものを使用する
- トランジスターなど出力段素子を並列接続して出力抵抗を小さくする
- 出力段のエミッター抵抗を小さくする、もしくはエミッター抵抗を無くす
- NFB量を大きくする
- 上記すべてが効く
- 上記すべてが効かない
答えはこちら
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正解) 6. 上記すべて効かない
です。それでは何がダンピングファクターを決めているのでしょうか?
実は出力部の配線抵抗です。出力段の出力部からアンプの出力端子までの抵抗分をいかに減らすかが重要で,実際にはここでダンピングファクターの値が決まっています。
何故こんな説明をするかというと、ダンピングファクターについて誤解している人が多く、弊社のアンプのダンピングファクターが大きいのはNFBを大量に掛けているからでしょ(だから音質には良くないですよね)という人が結構いるからです。
出力段のトランジスターやエミッタ抵抗は、確かに出力に影響するのですがNFBのループ内にあるのでその影響が1/1000以下に低減されています。出力段の出力抵抗が1ΩあったとしてもNFBのおかげで実質的には1mΩになっているのです。ですので実際にはダンピングファクターに影響しません。実際出力段直後の点でダンピングファクターを計測するとどんなアンプでも5000位にはなっています。
反対にNFBループの外にあるコイル、リレー、それらの配線材の抵抗はそのまま出力抵抗になるので、ここでダンピングファクターが決まっています。リレーなどをプリント基板に実装して配線したりすると(ほとんどのパワーアンプがそうですが)、すぐに500位に低下してしまします。
コイルは実際にスピーカーを使用する環境で高域のインピーダンス上昇を抑えるもので、アンプの安定性を確保するためには必須です(と教科書に書いてあります)。実際にはコイルに抵抗(10Ω位)を並列接続してダンピングして、コイルの影響でピークができるのを防止します。
当社のパワーアンプ(DCPW-100)はリレーに超大型のものを使用して、極太のケーブル5.5-8mmスクエアの配線材を使用していますので1500という値になるのです。
DCPW-200の場合はリレーを出力部から取り去って(電源供給側に移して)3000という値を達成しています。
ちまたのアンプでは大胆にも(本来必要な)コイルや保護回路を設けていないものもあり、そういったアンプでは4000-5000という表示になっています。
ダンピングファクターが音質に与える影響
ダンピングファクターと聞くと大きい方が低音のダンピングが効くというイメージが有りますが、数百以上であればそうとも言えないと思います。ダンピングファクターという名前が付いたのは真空管アンプ時代の話で当時はダンピングファクターが1とか10という時代だったので、その時は実際にダンピングに効いたのだと思います。
逆にダンピングファクターは小さくするのは簡単で、出力に抵抗を挿入すれば小さくなります。実際にダンピングファクターを小さくして聴いてみると、高域がおとなしくなって若干聴きやすい感じにはなります(それがいい音かは別にして)。
現代の半導体アンプではダンピングファクターは出力配線の立派さを表しており、必ずしもスピーカーのダンピングに直結するものではありません。ただDFがいい方がまじめに作ってあるアンプということは言えます。
ただし無帰還を謳うアンプではNFBループが形成されないものがあり、こういったアンプでは極端にDFが小さくなり、低域の質感が悪くなります。かわいそうなのはこういったアンプだけを聴いていても本人はその弱点に気づかないことが多く、DFのよいアンプを聴いて初めてその違いに驚かれた方もいらっしゃいます。
まとめ
要するにダンピングファクターというのは(出力部の)配線をどれだけ真面目にやったかという証なのです。ダンピングファクターはダンピング(制動)ではなく、配線のダンピング(不当廉売)ファクターと言う方があたっているのかもしれません。