■DACチップの比較
今回用いたDACチップのスペックとその解釈について比較してみました。単純にスペックを比較すると圧倒的に差があるのですがよくよく見るとそうでもないのです。
■DACチップのスペック比較
チップ型名
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ES9018
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PCM1704
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コメント
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原理 |
ΔΣ型
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マルチビット
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フォーマット
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PCM
DSD |
PCM
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Fs/bit
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384kHz/32bit
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768kHz/24bit
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1704はx8 オーバー・サンプリンク・゙フィルターと組合わせると96kHzまで
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CH数
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8ch
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1ch
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THDN DR
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-120dB 135dB(mono)/120dB(8ch)
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-102dB 112dB (Shibasoku725C) |
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出力電流
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3.903mAp-p
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+-1.2mA
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電源
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Digital 1.2V, 3.3Vx3 Anaolg 1.2Vx2, 3.3Vx2 |
Digital +-5V Anaolg +-5V |
9018の電源供給端子はさらに多い
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組み合せチップ
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通常 8x digital filterDF-1704とセットで使用 |
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入力(PCM)
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BitCLK LRCLK Data |
BitCLK LRCLK Data |
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OSC
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100MHz (384kHz使用時) |
なし
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1704は水晶発振器は必要なし
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発売
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2009年
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1999年?
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価格
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約10,000円
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5,000円(流通当時)
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1704は1chなので2、4(XLR)個必要
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標準回路
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ESS社の標準回路はアナログ部が貧弱 | アナログ回路に長けている | ESS社の標準回路だと高周波だらけになる |
チップ端子レイアウト
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アナログとデジタル端子が交互に並ぶので基板設計しにくい | デジタル・アナログに別れている | |
備考
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基板設計次第で音質が大きく変わるむづかしいチップ | デジタルフィルターとセットで96kHzと謳っていたが実は高速・高性能
既に廃番です |
■PCM1704は実は超高性能
PCM1704は古いDACチップで今では生産中止となっています。流通時でも1個5000円位して、しかも1CHですからステレオでは最低2個、バランスにすると4個必要ですので相当高額なデバイスです。単に高価であるということではなく高価にならざるを得ない理由がありました。このDACチップはラダー抵抗に電流を流してアナログ信号を発生させるのですが、最小ビット付近の抵抗値に非常な高精度が要求されます。半導体は抵抗の精度が出しにくいので製造後にレーザーでトリミングして抵抗値を校正していました。そのため高価にならざるを得なかったのです。
PCM1704のデータは古い測定器で測った控えめなスペック
それとデータシートをよく見ると、どう考えても実際のスペックは公称値よりもいいのです。スペックはよくても実際の性能は悪いのというのはよくあることですが、なんとこの場合は逆ではないか?と思えるのです。PCM1704は元々Barbrouwn社が開発したもので、この会社は結構j控えめにデータを出す会社だったのではないかと。それとデータはPCM1704が開発された時代は古いのです。データシートによると、何しろ測定データをとっていたのが、この古いShibasokuの歪率計725Cです。今ならAudioPrecision社の高性能オーディオアナライザーを使って、あるものも見えないことにしてしまうくらいお手の物ですが、この頃は逆に歪率系の残留歪を見ているようなものだったかもしれません。
現にデータシートをよくよく見てみると,ベースラインは-140dB程度で確かに最新のDACチップと比べると若干見劣りがします。ただ最近のDACチップ測定では
・測定器が進歩している
・測定器で平均化している
・IV変換部の出力電圧を高くして測定している 等、測定結果がよくなるように条件を微妙に変えているので1対1での実力比較にはなっていないのです。
この図は-90dB の信号を再生した時の信号スペクトルですが、ノイズレベルは-140dBで歪のレベルでも-126dB位です。現代の最新DACチップと比べても遜色ありません。
一方こちらは-120dBを再生した時のオシロの波形です。-120dBが再生できていているのですからかなりの実力です。
■基板レイアウトに改良の余地がある
PCM1704の時代が古かったのか、データシートの実装は今なら常識の当たり前のレイアウトが出来ていません。普通デジタル入力部とアナログ出力部は基板のベタアースの部分を別にして、ノイズが混入しにくくするのは現在では当りまえなのですが、PCM1704のデータシートの標準パターン例ではアナログもデジタルも区別がありません 。この点に留意して実装すればスペックよりも更に良くなる可能性があります。
■OPアンプにも改良の余地がある
データシートで推奨しているOPアンプは当時は高性能でも今となっては古く、現代の最高性能のOPアンプを使用すれば、ノイズレベルは-6dbくらいになる計算です。そうなると実力は現在のDACチップ比べても相当なものです。