チップ部品の表面実装に適した拡大鏡はこれだ -さんざん試した結果、ついに見つけたー

はじめに

最近の電子部品は小型化されている。性能の良いDACチップはピッチの狭いパッケージだし、高周波特性の良い部品も必然的に表面実装部品です。表面実装というのは基本的に自動実装でハンダを付けるもので、最低でも2000個作る必要があります。

試作レベルでも自動実装機にセットするのに最低100個は作らないとだめと言われるので、最初のテスト機は手ハンダということになります。手で半田付けをする際はいくら目が良くても拡大鏡が必要です。DACチップなどは0.5mmピッチで0.2mm幅の端子の隙間が0.3mmと極小だからです。

拡大鏡として必要なこと

ここで拡大鏡が必須になるのですが、いままでさんざん試してこれというものがありませんでした。拡大鏡に要求される要件は次のとおりです。

倍率 倍率は7-20倍が必要です。倍率が大きすぎるとチップ全体が見えないので、半導体チップ基板に位置を合わせる際には7倍、端子の半田付けの状態を確認するにはx20以上が適切です。

対物距離 対物レンズと観察物の距離が取れないと、コテが入らないので半田付けが出来ません。最低でも5cm位欲しいところです。

焦点深度 焦点の合う幅がないと斜めにして半田付けの状態などを確認する際にしんどくなります。

視野の広さ 視野が光学顕微鏡の様に狭いと、目標の位置を探すだけでも大変です。

 

 

 

 

 

 

 

試したいろいろな拡大鏡

1. ルーペタイプ

ルーペもほとんどすべて試したが万能のものはありませんでした。真ん中下のレンズは京葉光器のワイドフィールドアクロという収差補正をしたルーペで(約1万円した)、倍率はx7。収差も小さく、一般のルーペとは次元が違いました。非常に良く見えたのですが、いかんせんハンダコテがなかなか入らなくて惜しい。

2. ヘッドルーペ・メガネルーペ

左から
ヘッドルーペ(目を近づけないと見えないので使いづらい)
ハズキルーペ(倍率が足りないx1.8)双眼ルーペ。口腔外科用のメガネですが、これは焦点距離が長く、背筋を真っ直ぐにしても見る。但し倍率が足りないのと(x3.5)、ちょっと頭を動かすと視点が大きくずれるので実用性がありません。

3. 顕微鏡タイプ

顕微鏡タイプの拡大鏡で試したのはこの3つのタイプです。

左から
ズーム式(x7-45)実体顕微鏡
Artech実体顕微鏡(x10)
USB顕微鏡(7千円位)

ズーム式(x7-45)実体顕微鏡はズーム倍率を変えても焦点がほとんど変化しないので非常に便利。焦点深度(焦点の合う範囲)が深いので基板を斜めにしても見やすい。

ただしズーム式顕微鏡はガタイがこんなにでかい。x7でチップ全体が見えるので、基板への位置合わせに丁度よい。端子の半田付けの際は倍率のツマミを回すだけで(焦点のツマミは触らず)端子部がZOOMされるので使い勝手が非常によろしい。一度使うと手放せない一品です。ただし日本製を新品で購入すると10万円近くします。写真の物は中国製の直輸入物で新品で1万5千円、送料5千円くらいでした。一部ネジが無かったり(ネジ穴だけある)、一部のネジが曲がっていたり、更には取説が入っていないなどひどいのですが、これでも立派に見えました。LEDの調光リングもついていて、これも非常に具合が良いです(日本のメーカーさんごめんなさい、こうして日本は負けていくのですね・・・、でも価格差7倍の魅力にはわたしは勝てない・・・・・ので、製品で還元します)。

 

 

こんな感じで使います。この顕微鏡はメガネを掛けたまま観察できるので、老眼でもまったくOK。

 

低倍率、カメラの撮影上視野が狭いのですが、実際にはチップ全体が見えています。

 

 

 

高倍率、半田付けの状態がよく見えます。ココから基板を傾けて、端子とパターン間のハンダの状態も確認可能。

4. ミラータイプ

 

ちょっと変わったものとしてミラー式拡大鏡があります。公称x10ということで購入してみましたが、実際の倍率は2,3倍がいいところ。レンズと違って色収差がないのでよく見えるのですが、いかんせん設定がむづかしい(レンズと違ってまっすぐ置いたら見えない)。それに位置をちょっと外れると猛烈に歪む。決定的なのはミラーなので反転して映ること。上下正しく見るために、ミラーを2つ繋いで試しましたが、ミラーの設定が難しすぎて実用性なしでした。

 

結論

挟ピッチ半導体の表面実装を何度かやる必要がある方は、迷わずズーム式実体顕微鏡を購入することをお薦めします。

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