普段なら買わない製品を買って試してみたら その2・真空管アンプ

はじめに

真空管アンプのことはこれまで、ほとんど書いていませんでした。真空管アンプを使用した経験がまったくないわけではなく、私が中高校生位のころは自作していました。そもそもその頃は真空管アンプが普通だったので、6BQ5、6BG4、6CA7等のシングルアンプを作っていた記憶があります。出力トランスはタンゴのU608型という初心者用の小さいもので、これでコーラルの6CX501という同軸スピーカーを自作BOXで鳴らしていました。真空管アンプは柔らかい音がするとか、そもそもそういう音質評価のレベルに達していないので、今と考えるとただただ貧弱な音でした。

その後トランジスタアンプも造り始め、やがてメーカー製トランジスタアンプを使用するようになり、さらに社会人の頃はオーディオについては全くの空白となり、ついにはアンプメーカーを始めて現在に至っています。

真空管アンプとして代表的な300Bアンプなどはさぞかしいいんだろうなーと思いながら自分で所有したこともなく、じっくり聴いたことがないという状態でした。ユーザーの中には真空管アンプをご使用になっている方もいらっしゃいますが、自分自身としては特に興味がわきませんでした。真空管アンプの場合、回路はほぼ決まっていて、その音質は使用する部品の物量・品質で決まるというイメージがあります。そういう分野では独自性を発揮することも難しいですし、ビジネス的にも興味がないということもありました。

そうはいっても真空管アンプが好きな方もいるので、一度くらいはちゃんと聞いておいた方がいいでしょうということで、今回1台買ってみました。

購入したアンプと組み合わせ

購入したのは300Bのあるメーカーのシングルアンプです。300Bとしてはお手本というか、ちゃんとしたアンプだと思います。ただここでは都合で型名、メーカー名は伏せさせていただきます。

定評ある300Bアンプだが・・・

他社のアンプを購入するとその製品の質云々はもちろんですが、梱包、取説そのほかのサービス面が非常に参考になります。真空管アンプは輸送中に逆さにしたら真空管が抜けてトラブルになるのではと思いましたが、そうならないように上手に梱包されていました。さすが真空管アンプを販売しているメーカーだけのことはあります。

試聴にはいくつかのスピーカーと当社の機材を使用しました。

モニターオーディオ PL-200

B&W 804D3

Harbeth HLCompact 7ES-3

DAC DCDAC-180

プリ DCP-240

聴いた感じ

聴いた感じですが、初めての300Bアンプで期待は大きかったのですが・・・。

良い点

  • 低域の量感が多く、何を聴いても帯域バランスが(低音リッチで)心地良い
  • 耳障りな超高域がちょうどカットされているようで、ソースによっては含まれている耳に痛い成分が目立たない。
  • 弦楽器の音などが独特の聴きやすさでゆったり聴ける(リアルということではない)。金管楽器も木管楽器の様な音質になります。

残念な点

  • この点がまったくの期待外れだったのですが、現代の標準的スピーカーを駆動するには絶対的にパワーが足りません。
  • バスドラム、大太鼓などが入る音源では酷くて、完全に振り切れて音全部が盛大にひずみます。音量的に安全なのはテレビの音量くらいまでで、それよりちょっと大きくすると、派手にひずむことがあります。
  • オーケストラを聴くと音場も全体的に小さく、全体が濁って聞こえます。楽器それぞれの音が聞こえず、一緒にお団子になって何となくなっているという感じです。
  • 特に超低域(50Hz以下)は量が少ないというよりもまったく出ていないのでは?という感じです。特性上はとりあえず20Hz 近辺まで出ているはずなのですが・・・・。出ていないのに超低域が入ると振り切れるてひずむという印象です。

300Bアンプを活かすには

ガンガン鳴らすにはこの倍のパワーでも不足だと思います。そういった用途には送信管のシングルか、プッシュプルでないといけないのかも知れません。このアンプの場合38cmウーハーとホーン型の組み合わせの様な高能率SPでないと楽しめないのではないかと思いました。あるいはマルチアンプの中高音部なら全く問題なく良さを生かせるかもしれません。

こういった事は真空管アンプを知る人にとっては当たり前だったのかもしれませんが、巷の評価ではこのパワーで十分という声も多かったので意外でした。

このアンプ組み合わせるSPとしてはPL-200、804D3では、アンプの欠点を聴いている様になってしまい、よくありません。この中ではHarbethとの組み合わせが一番良かったように思います。とはいってもパワー不足という点は否めませんが。

もちろんこれが真空管アンプの音だというつもりはありません。送信管やプッシュプルアンプもあるので300Bシングルで不満があればそちらを試すべきなのでしょう。

終わりに

ということでせっかく購入した300Bアンプですが、私の環境では使い道がなく、あららという感じになってしまいました。

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