はじめに
前コラムではアナログレコード用イコライザアンプのノイズ特性を初段の半導体素子の相互コンダクタンスGmの観点から議論しましたが、ここではノイズに関係するもう一つの要素について述べてみます。
ノイズ特性を表すNF値を決めるもう一つの要素
NF値について前コラムで解説しましたが、実はNF値を考えるにはもう一要素、考慮しなくてはいけない項目があります。それはトランジスタの内部抵抗から発生するノイズです。
ノイズのもう一つの原因
前コラムのNF値の解説ではカートリッジの内部抵抗から発生するノイズに対して初段の素子がどれだけSNを稼げるかという観点からNF値を考えていました。実際の半導体素子は内部抵抗がありますので半導体素子自身がその抵抗分によって発生するノイズも考慮しなくてはいけません。
通常のアンプではこの程度のノイズは問題になりませんが、イコライザアンプではそこまで問題になると考えればよいでしょう。
この内部抵抗によって発生するノイズは半導体のカタログスペックからはまったく知ることができません。一番いいのは実測することで、その手法も黒田先生の参考書(1)に載っています(この本は本当に素晴らしい本です)。
実際に低ノイズになりそうなトランジスタを集めて測定してみました。 その結果がこちらです。
トランジスタが発生するノイズの品種依存性
よく使用される小信号トランジスタ2sc1815などは40uv程度のノイズを発生して初段には向かないことがわかります。
初段で発生するノイズを抑えるコツは内部抵抗の小さいトランジスタを探すことで、小さいものでは20uV以下のノイズに収まっています。イコライザアンプDCEQ-100ではこの中で最もノイズの小さかったものを使用しています。
参考文献
(1)基礎トランジスタアンプ・設計法,ラジオ技術社,黒田徹著p146
(2012/8/13)