はじめに
オーディオ機器の性能を最大限に引き出す上で、電源の品質は極めて重要です。
今回は、DCアダプター(直流電源)の種類と、音質に直結する性能指標について、実際の測定結果を交えて解説します。
DCアダプターの種類と基本原理
DCアダプターは、家庭用コンセントの交流(AC)を安定した直流(DC)に変換するための装置です。主に以下の2種類があります。
1.スイッチング電源
コイルを開閉(スイッチング)することで、大きな電圧を発生させて整流し、DCを得る方式です。
ノイズが大きく、高周波ノイズを多く含みます。
一般的に普及している黒いアダプターはこれにあたります。
2.リニア電源
電源トランスを介して交流の正弦波を取り出し、それを整流し、安定化回路を通すことで安定したDCを生成する方式です。
電源トランスを使用するため、スイッチング電源よりも複雑な作りになりますが、オーディオ用途として特性を良くしたものが存在します。
DCアダプターの性能を測る2つの指標
DCアダプターの性能は、主に以下の2つの指標で評価されます。
1.ノイズ(雑音)
電源に含まれる不要な雑音成分で、機器に混入すると音質に悪影響を与えます。
・一般的なスイッチング電源:数10mV(ミリボルト)レベルのノイズがあり、高周波成分を多く含みます。
・一般的なリニア電源:50μV(マイクロボルト)程度と、スイッチング電源に比べて桁違いにノイズが少ないのが特徴です。
2.出力インピーダンス(出力抵抗)
DCアダプターの内部抵抗を示す値で、これが小さいほど、接続された機器側で電流が変化した際に電源電圧が安定します。
インピーダンスが大きいと、電流変化に応じて電圧が変動し、オーディオ機器の動作が不安定になります。
またノイズ成分を除去するフィルター(LCフィルター)を追加する際にも、コイルの抵抗が大きすぎるとインピーダンスが増加してしまうため、注意が必要です。
リニア電源の出力インピーダンス比較
良質なDCアダプターとは「ノイズが小さい、そして出力インピーダンスが小さく供給電圧が安定しているもの」だと説明してきました。
ここでは、過去に直流電源を開発する際、様々な電源のインピーダンス特性を実際に測ったデータを紹介します。
グラフは横軸が周波数、縦軸が出力インピーダンス(Ω)です。
| 種類(グラフの色) | 特徴 | インピーダンス特性 |
|---|---|---|
| ツェナーダイオード(水色) | 単純な構成 | 最低で0.1 Ω程度 |
| 3端子レギュレーター(ピンク) | 一般的なIC (7805など) | 最低で0.1 Ω程度 |
| ディスクリート構成(緑) | 個別部品で構成 | 低域まで低インピーダンス |
| オーディオデザイン開発品(青) | オペアンプを使用した誤差増幅回路によるディスクリート構成 | 更に低インピーダンス、20 mΩ(0.02 Ω)程度 |
この結果から、安定化電源の性能を高める工夫(誤差増幅回路の工夫、ディスクリート構成)が機器の性能に大きく影響することがわかります。
オーディオデザインの安定化電源は、他の方式に比べて極めて低い出力インピーダンスを実現しています。
スイッチング電源とリニア電源の実測比較
次に、一般的なスイッチング電源とオーディオデザイン製リニア電源(DCA-5V)との比較データです。
| 一般的なスイッチング電源 | オーディオデザイン製 安定化電源(DCA-5V) | |
|---|---|---|
| ノイズ特性 | 数mVレベルのノイズが残留 | ほとんどノイズが見られず、非常に安定 |
| 負荷変動時の電圧変動 | 負荷が0.2A変動した際に約100mVの電圧変動が発生 | 負荷が変動してもほとんど電圧が動かず、極めて安定 |
一般的なスイッチング電源が負荷変動時に約100mVの電圧変動を示すのに対し、オーディオデザイン製リニア電源はほとんど変動せず、その安定性の高さが示されました。
安定化電源は、ノイズレベルだけでなく、負荷変動に対する電圧の安定性においても、一般的なスイッチング電源とは一線を画す性能を持っていることが証明されました。
iPowerのノイズ表記について
スイッチング電源の中でもオーディオ用に改善されたものでiPowerという製品がありますが、そのパッケージに気になる表現があったので最後に紹介したいと思います。
パッケージに"1μV" "Silent noisefloor"と記載されています。
中には小さな紙が入っており、ノイズフロアの定義として「ランダムなノイズでAC起因成分とスイッチング周波数(<30uV)を含みません」と非常に小さい文字で書かれていました。
しかし、オーディオ用電源におけるノイズ測定の目的は、まさにACハムノイズやスイッチングノイズを測ることにあるため、これを除外するのは電気工学的に見て不自然ですし、誤解を招いてしまいます。
実際に測定すると、聴感補正(A補正)で測定した結果は23μVであり、公称値の1μVとは大きく異なっています。
さらに、信号とノイズの測定方法の違いを混同しており、ノイズ電圧に換算する際の計算(バンド幅のルートをかける)を考慮していないため、ノイズ表記として不適切です。
このiFi iPower自体は、一般的なスイッチング電源(数10mV)と比較すれば優れており、製品の性能そのものが悪いわけではありません。
ただ製品を選ぶ際には、単に謳い文句の数値だけを鵜呑みにせず、それが技術的に正しい測定に基づいているか、消費者が誤解しない表現であるかを慎重に見極める必要があると言えるでしょう。
まとめ
DCアダプターの性能は「ノイズ」と「出力インピーダンス」の2点で決まり、特にリニア電源の安定化回路の設計品質が、その性能を大きく左右します。
良いオーディオライフのためには、賢く電源を選択することが重要です。
本コラムは右のYouTube動画をAIを利用して要約し、加筆・修正したものです。
詳細はYouTube動画もご参照ください。