イコライザアンプの販売予定とエッセンスの解説

アナログレコード用のイコライザアンプを作っていますとお知らせしましたが、いくつかお問い合わせをいただきましたので、今回もう少し詳しく説明させて頂きます。

販売予定に関してはこんな感じです。

<販売予定・価格等>

アナログレコード用イコライザアンプ
型名:DCEQ-100
市販予定:7月中旬
予定価格:20万円前後

<進捗状況>
現在回路の調整改良・特性検討を終え、基板の再発注・再組立を終了した所です。また今回ケースデザインに関しても、グレードを上げるべくいろいろと検討しています。そのため当初考えていたよりも1ヶ月位遅くなっています。

<プリアンプ内蔵EQアンプとの違い>
プリアンプDCP-EF-105にもオプションでイコライザアンプユニットが有るのですが、こちらはフラットアンプのNFB素子をRIAAカーブにした、いわゆるNF型です。こちらは構成上MMカートリッジにしか対応できません。MCカートリッジの場合はヘッドトランスを使用する必要があります。今度の単体イコライザアンプはCR型でかつMCカートリッジもダイレクトに接続可能です。
DCP-EF105のイコライザアンプも評判が非常に良かったのですが、今度の単体イコライザアンプはさらに上を狙ったものと言えます。

<仕様>
仕様は以下のとおりです
入出力
入力1系統
出力1系統(通常出力)
ヘッドアンプ出力1系統(MCヘッドアンプとしても使用できます)。

機能
MM,MC切り替えスイッチ
入力抵抗切り替えスイッチ30Ω/100Ω(MC時)

イコライザアンプの種類
CR型イコライザアンプになります。

性能
ゲイン:40dB(MM),60dB(MC)@1KHz
歪率:0.003%
残留ノイズ:-136dBV(A)
(特性などはプロトタイプの暫定値です)

技術的なエッセンス
詳細は技術解説のページで説明していますが、イコライザアンプの設計において重要なノイズ特性に関してはいろいろと検討しました。

イコライザアンプで重要な点は初段の設計でノイズ特性はまずここで決まってしまいます。
通常イコライザアンプにはFETはを並列接続するのですが、最近はこの辺に適した高GmのFETが廃番になっているので、初段をトランジスタで構成しました。下手に現在のFETを使用するよりも適したトランジスタを使用した方がノイズ特性の点で有利なのです。この辺をわかりやすく図示したものがこちらです。


       イコライザアンプ用トランジスタのノイズ特性

この図からわかるように高Gm・FETよりもトランジスタのほうがノイズ特性はいいのです。ただトランジスタの場合は入力インピーダンス、あるいはバイアス電流の関係でそのまま使用出来ませんので、pnpとnpnの対称形アンプにして使用し、さらにオフセット電流の補正をして使用しています。

この辺の理屈は技術解説のページで詳細を説明していますのでそちらを参照して下さい。

さらにトランジスタを使用した場合、トランジスタ自信が持つベース抵抗が小さいことが重要で、その辺の選別をした結果がこちらです。

トランジスタ品種によるノイズ依存性

参考書にも書かれているのですが、この辺のトラジスタ選択はいわゆる低ノイズトランジスタを使用しても駄目で、イコライザアンプに適した品種を見つけて採用することが重要です。

この辺の初期検討を終えて現在最終的な製品化を進めているところですのでもう少々お待ち下さい。

アナログレコード用イコライザアンプ作っています

今回は久しぶりにアナログレコードの話をしたいと思います。
新しいプリアンプ(DCP-200)にはイコライザアンプを搭載していません。ですのでアナログレコードを聴くには別途イコライザアンプが必要になります。

そこでアナログレコード用のイコライザアンプを製作中です。そこそこ出来てきましたので現状をさらっと報告させて頂きます。

基板の感じはこの様な感じです。アンプ回路、電源回路そのものは表面実装になっています。アンプ回路は2段構成になっていますが、1段目のアンプはノイズ低減に影響する重要なところですので、今回各種検討を行なって専用回路を組みました。
イコライザアンプ基板
手前が安定化電源、右に初段アンプ、左がRIAA補正後の2段目のアンプになります。プリアンプ、DAC等と同じ大きさのケースに収まります。

基本仕様
入力1系統
MM,MC切り替えスイッチ
入力抵抗切り替えスイッチ(MC時)
ゲイン:40dB(MM),60dB(MC)@1KHz
歪率:0.003%
残留ノイズ:-136dBV(A)
さらっと測定した結果はかなり良い数値になっています(といいますか良くなるようにいろいろやってますので・・・)。

特徴
・音質的に良いとされているCR型RIAA補正回路を使用しています。
・MCアンプもダイレクトに接続できます。
・SN比向上のためノイズ低減検討にも力を入れました。
・初段アンプにはトランジスタでDCでアンプを構成しています。
・信号部はすべて個別素子で構成しています(OPアンプは使用していません)。
・パッシブDCサーボ回路を使用してDCゲインを抑えています。
・表面実装を使用して全体がコンパクトにまとまっています。
(この基板だけでDCP-EF105と同じ回路規模があります)

音質
聴感上の特徴としてノイズが圧倒的に少ないです(そうなるように入念に設計・検討したので)。通常レコード再生では多少のサーノイズが聴こえるのが当たりまえと思っていましたが、このイコライザアンプを使用するとノイズが気にならないと言うよりも聴こえません。
スピーカーの前まで行って耳を近づければ聴こえますが…。

音質はというとこれはレコードプレーヤーその他もろもろの影響を受けるので評価は難しいと思いますが、情報量はまるでCDをの様に多いのに意外と高音域がおとなしく聴こえます。ジャズもクラシックもいい音だなーと聞き惚れてしまう様な音になっています。
レコード特有の音の厚み・柔らかさの様な良さも出ていますし、これは相当いいんじゃないかと思います。

いろいろ細部の調整など行いますが、早ければ6月に販売できると思います。アナログレコードを聴く方は是非お試しいただければと思います。

こちらではこんなプレーヤーを使用しています。
アナログプレーヤーはパイオニアのリニアトラッキングPL-L1です

アームはこんな感じです。アームベース毎横にスライドします。

最近購入したオーディオ機器(3) -レコードカートリッジ- 

今回はレコードカートリッジについて紹介します。
最近はアナログレコードにミニブームが来ている様でカートリッジやイコライザアンプの記事も増えている様に見えますが、カートリッジにしろ、ヘッドアンプなどにしろやたらに高価で、しかも値段に見合う品質かどうかは???な物が多い様に感じます。オーディオ雑誌が評価する分にはデモ機として借用するので費用がかからないので良いのですが、実際購入する立場から見ると有益な情報が少ないように思えます。最近2,3のカートリッジを買って損した、得したという思いがあったので、紹介させて頂き、皆様の参考にしていただければ幸いです。

評価環境は前のブログで紹介したとおりです。
MC用のヘッドトランスはいまだにAU-320というデノンのものを使用しています。

カートリッジの写真
右からAT-15E、DL-103、AT33、AT-13E、2M Blue(気に入っている順番でもある)

DL-103
いわずと知れたMCの名機です。何十年も前に放送用に開発されたものです。非常にダンピングの効いた低音が心地よく響き、JAZZなどではこれより気持ちいい低音を聞かせるカートリッジは無いのではないでしょうか。ダンパーが2重構造になっているのが特徴で、温度変化によって弾性が変化しないようにとの開発意図と思いますが、心地よい低音に貢献している気がします。ダンパーを制するものはカートリッジを制すとおっしゃっていた方がいたような気がします。唯一の欠点は丸針だからかと思いますが、レコード内周で高域が若干歪っぽくなる事があることです。
実測周波数特性も付いてます(見事)。
DL-103の周波数特性

AT33PTG(pcOCC6N)
これもMCカートリッジのロングセラーですね。DL-103に比べると低音の心地よさはありませんが、高域がきれいなった気がします。高域が3dB程持ち上がっているのが残念です。このF特通りの音ですね。
AT33の周波数特性

AT13EVM型(MM型)
30年くらい前に購入して残っていたものです。なぜ購入したかも忘れました。何かに付属していたのかも知れません。このカートリッジの音質はかなり落ちます。一応ちゃんと音が出ますよ程度のもの。と思っていましたが、弊社のイコライザアンプで聞くようになってビックリ。音が格段に良くなりました。情報量、トレース能力が上がった気がします。DL-103などとくらべても、同じ土俵で比較できるかも?位の音になりました。弊社のイコライザアンプは(他のものと比べると)MCカートリッジも良くなりますが、それ以上にMMカートリッジの音が格段によくなるような気がします。MCカートリッジは汎用のヘッドトランスを使用していますので、そのせいもあるかもしれません。

AT15Ea/G VM型
最近このカートリッジを購入しましたが、このカートリッジには驚きました。音質が良くて安いからです。AT-13を昔から所有していましたので、ATシリーズはこんなものだろうと思っていたのですが、AT-15は格が違いますね。VM型のリファレンスというだけの事はあります。AT33よりずっといいと思います。どういいかというと帯域バランスです。低音域厚く、重心が下がったピラミッド型のバランスでレコードの良さが存分に発揮されています。もう一つの美点は高音が静かな事です。レコードはどうしても高域が歪っぽく聴こえたり、パチパチノイズが耳障りになったりしますが、そういう音が他のカートリッジに比べるとかなり抑えられています。というか、こういう音にもなるんだ~と感心させられていしまいます(ちょっと大げさに言っていますが)。アンプでもそうですが、性能をかなり上げていくと音が静かになります。弊社のイコライザアンプはパチというレコードの傷から聞こえるノイズが目立たなくなったといわれる事があるのですが、それと似ています。
情報量も多く、出すべき音はきっちり出し、出さなくていいものは出さないという感じで、トレース能力も非常に高いと思います。
これでマグネシウムヘッドシェルが付いて、プレーヤーにさせば使用できて、今は1万円ちょっとで売られているのですから、コストパフォーマンス的にもビックリです。MM型に分類されると思いますが、こちらの環境では他のMCよりいいです。
ただこのカートリッジ、本当にいい装置(イコライザアンプも含めて)でないとそれだけの力量が出ないというか、装置なりの音を出すという結果になるかもしれません。

オルトフォン2M Blue
これは失敗しました。AT-15Eを購入する前にこれを買ってだめだったのでAT-15Eを購入したのです。オルトフォンは昔MC-20Wを使用していてこれはクラッシックは絶品だったので、間違いないメーカーだとずっと思っていました。このカートリッジのだめな点
・音が悪い
・ヘッドシェルを選ぶ(取り付けられないものが多い)
・デザインはおしゃれだが実用性が悪い
という事で全部だめです。
音がどう悪いかというと、一言で言うと「トンシャリ」です。「ドンシャリ」ではありません。ドンシャリならまだ高域と低域のバランスが取れている(両方ですぎだが)のでまだ聞けると思うのですが、このカートリッジは低音が出ていないんじゃないか(例えば100Hz以下をカットしてる様な)と疑いたくなるバランスで、高音ばかりが目立ちます。高域は確かにはっきりと聞こえて明快なのですが、いかんせん低音が出ていない(様に聞こえる)のでどうにもなりません。プレーヤーを変えても同じ音の傾向でした。この帯域バランスのせいでAT-13より悪いです。がっかりです、子供だましの音です(子供に失礼か)。このカートリッジには何か重要な欠点があるのではないでしょうか?ダンパーの設計ミスでF0が数十Hzに来てしまっているとか…。
欠点は音質だけではありません。このカートリッジネジ穴が上に貫通していないので、上からネジとめるタイプのヘッドシェル(ほとんどがそう)が使用できません。なので同社のヘッドシェルも後から購入する羽目になりました。
さらに、カートリッジの保護カバーが非常に取り付けにくく、プレーヤに装着した状態では、見えない位置にある保護カバーの爪を指ではずす動作を要求されます。一歩まちがえるとカートリッジはおしゃかです(日常使用していればたぶん時間の問題でしょう)。

というわけでこのカートリッジにはがっかりさせられました。でもおかげでAT-15Eにめぐり合ったので、良しとしましょうか。

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最近購入したオーディオ機器(2) -レコードカートリッジの前振り- 

最近購入したオーディオ機器編第2弾として、レコードカートリッジについて紹介したいと思います。

アナログレコードは通常は聞いていません。聞きたいと思うソースがレコードでは(中古を除けば)発売されていませんし、いちいちホコリを拭いてからたった30分で終わってしまうというのは今の生活スタイルに合いません。ただプリアンプのイコライザアンプのテストに定期的にレコードを掛ける事になるので、聞くたびにレコードの音はいいと思うのです。

レコードの音がそこまでいいと思えるようになったのは、手前味噌ですが自社のイコライザアンプを使用してからです。どういいかというと、音の厚み、中低音に重心を置いたピラミッド型の帯域バランスという点です。レコードによっては録音の悪いものも多いのですが、そこそこいい録音のレコードでは例外なくバランスの良い音ができてきます。またプリアンプのイコライザアンプ、パワーアンプなどアンプの性能を良くしていけば良くしていくほど比例して音が良くなるのもアナログレコードの特徴です。

以前他社製のプリメインアンプ付属のイコライザアンプでレコードを聴いていた際はレコードの音には特に良いと思える部分が無く、すべてにわたってCDに負けている感じでした。今のイコライザアンプにしてからレコードの情報量、帯域バランスなど非常に良い点が引き出されて来た感があります。

何故かはわからないのですが特にMMカートリッジの音が抜群に良くなりました。レコードカートリッジといえばMCで、MMはどうしても1-2ランク落ちた音質というのが常識かと思うのですが、弊社のイコライザアンプを使用するとMMがMCクラスに仲間入りします。MCももちろん良くなるのですが、音質向上がMMの方がずっと大きいのでほとんど差が無くなった感じです。MCは汎用のMCヘッドトランスを使用しているのでそのせいもあるかもしれません。
たまたま手元にあったMMカートリッジはオーディオテクニカのAT-13Eという安物で、以前でしたら音が出るというだけでとても音楽を鑑賞する代物ではなかったという認識だったのですが、これが結構聞けるようになりました。(もともと何かの間に合わせで購入したか、おまけについてきたもの)

ここからやっと購入した機器(カートリッジ)の話になるのですが、その前にレこードプレーヤーについてお話します。通常使用しているのはパイオニアのリニアトラッキングプレーヤーPL-L1です。このプレーヤーは現在使用されている方はほとんどいないと思いますが、30年位前に(学生時代?)にメカにほれ込んで中古で購入したものです。
パイオニアPL-L1
これのいいところはもちろんリニアトラッキング(カートリッジが常にレコードの接線方向に向く)という事はもちろんですが、実はアーム長が短いという事もあるのです。通常トーンアームはトラッキングエラーを小さくするために長く設計されていますが、リニア式の場合その心配が無いのでアーム長が20cmくらいしかありません。通常の2/3の長さですから慣性モーメントにすると半分以下になるはずです。
短い上にストレートのカーボンアームでしかも通常のヘッドシェルが使用できます(通常のプレーヤーではストレートアームではオフセットしたヘッドシェルが必要になります)。

リニアトラッキング式プレーヤーのいい点はそのほかにレコード内周で音質が悪くなってきた場合、接線速度が小さくなったためと結論付ける事ができるという事もあります(オフセット角の問題から開放されているため)。まあそんな事に満足感を覚えるのは私くらいのものでしょうが。

加えてこのリニアトラッキングプレーヤーのアームは針圧をスプリングでかける方式で、通常の傾いたヤジロベーの様な方式と違って、レコード盤が多少うねっていても常に一定の針圧を掛けようとする(ほんと?)方式も気に入っています。

このPL-L1プレーヤーは壊れたら修理不能なのでオーディオショーに持っていく気がしません。それに26Kgと重いのです。奥行きがあって遠くを持たなくてはいけないので余計に重く感じます。今回ハイエンドショー向けに軽いプレーヤーをオークションで購入しました。それがこれ。

ビクターQL-Y66F

何とフルオートマチック(ボタン一つで勝手にレコードに針を落として終わると戻って来る)、電子制御のトーンアームがついています。もっとシンプルなプレーヤーが欲しかったのですが、手ごろな物が見つからなかったので、これになりました。又も電子制御になりましたが、別にこの電子制御が欲しかったのではないのです。いいナーと思うものはみんながいいと思うので、20年前のプレーヤーが一部部品欠け・保証無し・個人出品で、定価の半値以上価格で取引されています。そうなるといくら何でも買う気になりません。どうしても不人気品に落ち着いてしまいます。
購入した実物は傷が無くしかも感動品で非常に程度の良いものでした。20年経って電子制御が感動というのはしっかりした設計・製造をやっていたんだなーという事がうかがい知れます(同機種のほとんどが感動品として出品されています)。ただ音質はやはりPL-L1に比較すると落ちます。アナログレコードの良さがそぎ落とされてしまった感じでCDに対する音質の優位性をあまり感じる事ができないかもしれません。ハイエンドショーではレコードの良さ(イコライザアンプの良さ)をお聞かせしようとしたつもりでしたが、今ひとつCDとの差が感じられなかったかもしれません。

レコードカートリッジの事を書こうと思っていたら、その前置きで1ページ分になってしまいました。次はいよいよ(といってもたいした事は無いが)カートリッジ編です。