YouTube始めました 初回動画はオーディオ講座(第1回)「SN比って何?、基礎編」です

これまでホームページやブログで様々な情報をお伝えしてきました。より多くの情報を正確にお伝えするためにYoutube動画を始めてみました。

動画の内容は製品紹介・会社紹介などはもちろんですが、技術的な内容をオーディオ講座としてお伝えしていこうと考えています。

最初の動画は、オーディオデザインのオーディオ講座(第一回)「SN比って何?基礎編」です。

オーディオデザインのオーディオ講座

第一回SN比って何?基礎編

SN比についてどこよりも詳しく、しかもわかりやすく紹介していますので、ぜひご覧ください。

コメントもお待ちしております。

MMカートリッジの周波数特性   -負荷容量はマイナスが正解-

MMカートリッジの周波数特性は負荷インピーダンスによって大きく変わります。その影響で音質も大きく左右されるので、実際の特性がどうなっているかを調べることは重要です。今回新型フォノイコDCEQ-200を使用してMMカートリッジの負荷依存性を測定してみました。

使用機材と測定方法

プレーヤー パイオニア PL-50LⅡ カートリッジ オーディオテクニカ VM-750SH

測定方法レコードで周波数特性を実測しました。テストレコードにオシロで周波数特性を直視できるスイープ信号がありましたのでこれを利用しています。

測定結果

負荷インピーダンス

47kΩ -100pF

マイナス100pF負荷は当社フォノイコのみの新技術です

気持ちがいいくらい平坦になっています。

47kΩ +100pF

7-10kHzが盛り上がっています

47kΩ +300pF

2kHzあたりから盛り上がり始めています

考察

測定結果ではマイナス100pFが最適となっています。マイナス100pFといってもプレーヤーからのケーブル容量100pFが加わりますので、これで負荷容量がキャンセルされて0となります。その結果LCRの共振がなくなって平坦になるというわけです。

肝心の音質は・・・

肝心の音質ですがマイナス100pFのフラットの状態ですと、MM特有の高域のギラギラがなくなって、非常に高品位な音になります。MCカートリッジと比較しても何ら遜色はありません。

測定に使用したVM-750SHは非常に高解像で繊細な音もでるのですが、反面通常のフォノイコでは高域が強く聞こえて聴きにくいという面もありました。マイナス100pFで受けると、高解像で非常にバランスの良い音になっています。MCカートリッジを含めて考えても最上位の音質になります。

最近のカートリッジの音質評価

レコード用のカートリッジを探す際に、特に最近のカートリッジについては意外と参考になる音質評価が見当たらないようです。ここ数年最近のカートリッジを購入して試してみました。それらの音質をまとめてみましたので参考にしていただければ幸いです。

以下のカートリッジは実際に購入して聴いたもので、メーカーからの貸し出しなどではありません。ですのでユーザーとしての正直な感想になります。カートリッジの音質はイコライザアンプによって大きく変わります。あくまで当社の最新フォノイコによる試聴結果ですので、一般的なフォノイコとは傾向が異なるかもしれません。

試聴結果まとめ

外観メーカー型式価格音質お薦め度(5点満点)
SUMIKO
perl(MM)
14,800円中庸だが変な
癖なく万能 
3.5 
価格を抑えたい時に
オーディオテクニカ
VM520EB(MM)
16,000円昔のAT-13相当?3
悪くはないです
オーディオテクニカ
VM720SH(MM)
50,000円凄まじい解像力4.5
システムによっては高域よりに
GRADO Statement Sonata 2(MI)64,200円ゴリゴリした低音が魅力4.5
一度聴いてほしい
オーディオテクニカ AT33PTG(MC)40,000円華やかな音4
装置で音が変わります
フェーズメーション PP-300(MC)135,000円細みの音3 
GOLDRING Ethos
(MC)
185,000円弦の音が美しい5
隠れた名器
(隠れてないが)
カートリッジの評価一覧(価格も考慮したお薦め度であくまで筆者の好みです)

試聴装置

試聴時に使用したシステムです。

  • プレーヤー GT-2000 YAMAHA
  • イコライザアンプ DCEQ-1000
  • プリアンプ DCP-240
  • パワーアンプ DCPW-240
  • スピーカー Dynaudio Confidence C4

カートリッジの試聴評価

SUMIKO Pearl

価格14,800円(税抜)
方式MM型
出力電圧3.5mV
針圧2.0g
楕円針

SUMIKOのカートリッジはあまり馴染みがないかもしれません。このパールというモデルは1万円程度で買えて非常にリーズナブルです。その音は特に変な癖がなく、非常に聴きやすいものです。解像度が特に高いというわけではありませんが、バランスよくレコードの音を再生します。予算に限りがある場合にはお勧めのモデルです。突出している部分はないものの非常に良く出来ていて好感の持てるモデルでした。 SUMIKOというメーカーのもっと高級なカートリッジも聞いてみたいと思うような良い出来映えでした。

オーディオテクニカ VM520EB

オーディオテクニカ
VM520EB
価格16,000円(税抜)
方式MM型
出力電圧4.5mV
針圧2.0g
接合楕円針

一言でいうとまっとうな低価格帯のMMカートリッジの音です。特におかしな音は出さず、ただ全体的におとなしく感じます。当社のイコライザアンプをもってしてももう少し情報量か迫力というものが欲しくなります。半面きつい音、嫌な音は出さないという点では優等生です。昔の型番でいうとAT-13に相当する音ではないでしょうか?その上のAT-15クラスではもっと解像度と迫力、そして繊細さがあったように感じます。


オーディオテクニカ VH750SH

価格50,000円(税抜)
方式MM型
出力電圧4.0mV
針圧2.0g
シバタ針

ボディーが金属になって針が柴田針になったモデルです。 このカートリッジの音は VM 520とは大きく異なります 。情報力が圧倒的に多くなり、非常に細かい音まで拾います。 ただし全体のバランスが低域よりも高域寄りになります。 使用しているオーディオシステムの 再生音が全体的におとなしい場合、非常によく合うでしょう。逆に再生家のシステムが高解像度の場合(あるいは通常のバランスでも) 少しうるさく聞こえるかもしれません 。そういった相性はありますが、この解像度、繊細さの表現というのは圧倒的で、非常に魅力的なモデルです


GRADO Statement Sonata 2

価格64,200円(税抜)
方式MI型
出力電圧1.0mV
針圧1.7g
楕円針

GRADはあまり知られていないかもしれません。ところがこのカートリッジものすごく魅力的な音です。このカートリッジは M M 型というよりも、MI型に分類されます。磁気回路の中で鉄の円盤がカンチレバーについていて、それが動くことによって電圧を発生するという仕組みです。その音は一言で言うとゴリゴリした 非常に力強い音です。よく DL-103の音を低域よりの安定感のある音と言いますが、これはさらにはるか上を行くものです。音の輪郭を極太のマジックで書いたような音で、聴いていて気持ちがいいのです。こういった音の傾向は他のカートリッジでは聴いたことがありません。ただ少し高域の方に若干のキラキラ感といいますか数 kHz 以上を1,2dBレベルを上げたような きらびやかさがあるのですが、それが若干耳につくかもしれません。とはいえ、このカートリッジの魅力は聞いてみれば虜になるほどのもので、もっと広く知られてもいいモデルだと思います。それとこのカートリッジのインダクタンスは通常のMM型の1/10程度ですので、いわゆるキャパシタンスを変えても音質は変わりません。



オーディオテクニカ AT33PTG

価格40,000円(税抜)
方式MC型
出力電圧0.5mV
針圧1.8g
マイクロリニア針

PT 33は皆さんもよくご存知のモデルだと思います 通常非常に繊細な音が得意で低域の力強さは 少し劣るというのが今までの感触だったのですが、イコライザーアンプを当社のDCEQ-1000にしてからその評価はガラリと変わりました。結構力強い低音も出るのです。低音から高音まで常にバランスよく出て、どちらかと言うと高域が華やいだ感じに聴こえる様になりました。この値段でこれだけの音というのは非常にコストパフォーマンスが良いですし、この価格帯のMCとして抜群のコストパフォーマンスだと思います。


フェーズメーション PP-300

価格135,000円(税抜)
方式MC型
出力電圧0.28mV
針圧1.85g
ラインコンタクト針

フェーズメーションのカートリッジは最高位モデルの PP-2000などがよく雑誌の試聴室などで使われており、業界の標準となっている感があります。今回下位のモデルですが PP- 300というものを購入して聞いてみました。ボロンカンチレバー にラインコンタクト針で、高級カートリッジのお手本のようなモデルです。またボディは金属切削で作られているようで比較的重いカートリッジになっています。比較的繊細な音で細かな音も拾いますし、音が澄んでいて濁らないのは長所です。ただ若干、音の線が細い傾向があります。それとわずかではありますが、高域に独特のキンキンした音がかすかに乗っている感じで、おそらくこれはボディが共振していると思います。 試しにボディに防振テープを貼ってみるとそのキンキンした感じが少なくなりますので・・・。金属のボディというのは何らかの ダンピングしないと、いくら固いといっても鳴いてしまうのでしょう。 ゴールドリングのEthosの方がすごく魅力的に感じます。値段は10万円とリーズナブルだと思いますが(むしろ上位機種と比べると安く感じますが)、特に強い魅力は感じません。

また残念なのはパッケージングで、取り出しにくいだけでなく、カートリッジのカバー蓋が ちゃんと収まらないので(使用しないときは)いつも輪ゴムでカバーを取り付けています。


GOLDRING Ethos

価格185,000円(税抜)
方式MC型
出力電圧0.5mV
針圧1.75g
ラインコンタクト針

ゴールドリングの ethosという最上位の MC カートリッジになります。無線と実験誌で先生が非常に褒めていたので試しに購入してみました。このカートリッジの特長として、本体の磁気回路にネジが打ってあって、接着剤ではなく機械的に締め上げられていることが挙げられます。その効果でしょうか、 その音は弦の音が大変綺麗です。大音量の音溝も難なくトレースし、また高音から低音までのバランスが素晴らしいです。余計な脚色は一切せず、本来の楽器の音を正確に再現し、低域の制動力もあります。大音量で混濁もなく、音が躍動するようで迫力も出ます。という全く非の打ち所がないようなカートリッジです。私は普段このカートリッジを使用しています。現在市販しているなかで一番気に入っています。少し高価ですがその 値段の価値は十分にあるカートリッジです。

またゴールドリングのカートリッジは非常にパッケージングが丁寧な作りで、(価格のせいもあるのでしょうが)お客様を大事にしとしているという姿勢がよくわかりました。カートリッジの世界ではパッケージングと音質に強い相関があるのは興味深いところです。

磁気回路をビスで固定している

以上ここ数年聴いたカートリッジの感想でした。参考にしていただければ幸いです。

良いレコードクリーナーは、ゴミが取れるのではなくて、音質が”変わる”

最近はレコードをポチポチ聴くようにしています。ただ最近どうもレコードの音質が以前ほど良く聴こえない。一度レコードカートリッジを随分前にMC-30Wにしてから、だいぶ良くなった気がしていましたが、最近またレコードの音が不調です。

全般的に音がミシミシとしたかんじで高音よりになっているのです。他の場所にイコライザアンプを持っていくといい音で鳴るので、こちらのシステムの何処かがおかしいのでは?と、ずっと思っていました。

そんなこともあって、最近導入したのがこのクリーニングマシンです。

新潟のアイコール社 がつくっているバキューム式レコードクリーナー Clean Mate IQ1100Aです。このタイプとしては相当安価です。

レコードクリーナーをどれにするか、ちょっと迷ったのですが、この辺に詳しい方がただ洗うだけじゃなくて、自動で乾燥できるものが良いよと教わったので、これにしました。結果は予想以上。実際に買ってわかったのですが、この装置はク

リーニングは半自動(ほとんど手動)で、液を垂らして回しながらブラシで(手で)こすります。そして乾燥過程が自動で行えるというものでした。バキューム乾燥しているしているところがこちら。

このブラシはレコード溝のRよりも毛先のRが小さいのでホコリを全部書き出せるそうです。

そしてもう一つ、買ってみてわかったのは、結構大きいということ。そらそうですよねレコードを回すという意味ではレコードプレーヤーと同じ大きさになるわけですから。

肝心の聴いた結果はというと、ゴミが取れるというのは当初から予想していたわけですが、実際やってみるとゴミが取れるだけではなくて、音質も変わりました。ミシミシ言って全体的に高音域にバランスが寄っていたのが、低重心になって(戻って)大変よろしくなりました。ひょっとしたら、静電気の除去が効いているのかもしれません。

レコードクリーナーは結構大きい

これは下手にカートリッジを交換するよりも大きな音質変化かもしれません。このクリーナーを使っても、1回トレースすると、かすかには針先にゴミが溜まるので(以前はゴミがてんこ盛りになっていた)、2回クリーニングをするとか、もう少し工夫すればもっと良くなるかも知れません。

クリーニングした後元の袋に戻すとまたゴミが付着するので、両面クリーニングしてから、(買ってきた)新しいレコード袋に入れるということになります。

やっぱりレコードは手間が掛かります。でもこれから少し本腰を入れることにします。

 

 

アナログレコード用フォノイコライザアンプの深い話 (2) MMカートリッジ編

はじめに

フォノイコライザアンプの続き、今回はMMカートリッジ用フォノイコの話をします。
とはいっても普通のフォノイコライザアンプ自体の話はどこにでもあるので、(大胆にも)省略して、ここではフォノイコの入力インピーダンスの話に特化して話を進めます。

最近はフォノイコライザアンプ自体に新しい改良が無いためか、フォノイコライザアンプにやたらに付加機能を付けた物が増えているように感じます。MMカートリッジを受けるインピーダンスは昔から47kΩと決まっているのですが、最近何故かこの抵抗値と負荷容量を大幅に変える機能を付けたEQアンプが増えてきて、しかもそれが良いみたいな風潮があるのが気になっていました。

MM用フォノイコの入力インピーダンスとは

そもそも何故47kΩになったかというのは、おそらく真空管アンプ時代に実用的に受けられる最低インピーダンスだったのではないかと推測しますが、特に明確な意味は知りません。ただMMカートリッジ自体が47kΩで受けることを前提として設計されているはずなので、47kΩで受けなければいけないはずなのです。もちろん抵抗を変えれば音(周波数特性)は変わるでしょうが、それは本来のカートリッジの特性ではないのでは?というふうに思っていました。

あらためて負荷インピーダンスの変化に対する周波数特性を探してみたら、手持ちの本に結構詳しい記載がありました。それは「プレーヤーシステムとその活きた使い方」(誠文堂新光社)です。プレーヤーシステムと言ってもCDではなくてレコードプレーヤーです(つまりそのくらい古い時代、40年前の本です)。

V-15Ⅲの入力抵抗・容量依存性の実測値

その本に記載されている、シュアーV-15Ⅲの入力インピーダンスを変えて測定した周波数特性がこれです。

MMV15確かに入力抵抗を下げた方が高域のピークが下がっています。また入力容量も大きくしたほうが高域のピークが抑えられています。MMカートリッジはコイルの巻き数が多いのでインダクタンスが半端ないのです。このV-15ではインダクタンスが434mHとあります。他のカートリッジも同様ですが、このインダクタンスは電子回路のインダクタンスとしては非常に大きく、よく高周波用にもちいるコイルでは数十uHていど(1/10000)、スピーカーのネットワークのコイルでも数mHですから、その100倍位あることになります。これでは電子回路のピークもできるし、MM特有の音の癖が出てもしかたないかなと思います。

測定系はこちら

ただMM_rev気になるのはその信ぴょう性で、測定系はB&K社のもっとも信頼性の高い測定系で計測しているのですが、すべてのMMカートリッジで同様のピークが出ているので、測定系のアンプかレコードにそもそもピークが出る要因もあるのでは?とちょっと疑ってしまいます。
測定系の説明はこちらです。このページにはその入力抵抗と入力容量を変えた時の周波数特性の一般的な変化も記載されています。

この本の内容はすごくてトーンアームを変えた時の周波数特性の変化もいろいろなアームに対して実測しています。なんとトーンアームによって5-10Hz当たりにできる共振の周波数特性を測定しているのです。この本をパラパラめくると、改めて当時のオーディオが極めて工学的で、男の子(今ではおじさん)がハマるのも無理はないな~と感慨にふけってしまいました。

昨今の特に高価なフォノイコが入力抵抗や容量をやたらに変えるのも、確かにF特がよくなる場合もあるし、それで音が変わって本人がよく思えればいいので、商品としてはそれで良いのかなーと考えなおしたりしています(宣伝に書ける能書きも増えるしね)。

p.s. タイトルに深い話と銘打っている割には、たいして深くなかったかな(めんご)。