使用機器紹介 −スピーカー編−

現在使用している再生装置を紹介します。(使用しているといっても必ずしもお薦めということではありません。)

スピーカーはB&Wの805Sを使用しています。もともと同社のCDM 7NTというのを持っていたのですが(今もある)、これはバランスの取れたコストパフォーマンスも良い優れたスピーカーです。805Sはある方に薦められたこともあり、雑誌の評価も高く、また立ち聞きはしていたので購入しました。ただこれは大失敗でした。805Sは高音にものすごい癖があり、すべての音がカーンと響くような音なのです。それにつられて全体の帯域バランスが悪く、すべて中高音が耳について、非常に聞きづらい音になります。低音は1年くらいたって少しは出るようになりましたが、それでも全体のバランスは聞けたものではありません。(どうりで新品同様のものがオークションにたくさん出ているわけです)。

いいところは、解像度が高く、定位も7NTに比べていいので、Jazzなどで、特に中低音の厚みがある録音は聞けないこともありません。7NTは全体のバランスはいいのですが、805Sに比較すると全体的にもやっとしたところがあり、805Sを聞いてしまうとちょっと物足りないところがあります。本来はもう少し上位機種にしないといけないのかも知れません。ただ、いいスピーカを使用していい音がでても(弊社の)アンプが良いと思ってもらえないので、比較的貧弱なスピーカーをすごい音で鳴らすのが目標です。

805Sの写真805Sの写真(なんだかんだいって結局使用している)

805Sの耳に付く中高音は、その聴こえるとおり、周波数特性が中高音のレベルが高いことにあります。

加えて28KHzに強烈な共振(+14dB)があるので、その影響だと思います。 +14dBというのは約25倍の大きさの音が出るということで(聴こえれば)、これは可聴帯域外とはいえ影響が無いほうがおかしいでしょう。そこで、この共振を打ち消すためにピークキャンセラーを作ってTw側にいれました。またTwは約2dBレベルを落としています。ピークキャンセラーの効果は微妙ですが、レベル調整によってある程度聴けるようにはなってきました。

805Sの周波数特性(無響室特性)雑誌に載っていた805Sの周波数特性(無響室)28KHzピークがすごい

805Sに取り付けたピークキャンセラーツイーターにつけたピークキャンセラー/28Khz、-14dB、半値幅も合わせてあります。

CDM 7NTCDM7NT買うならこの断然このタイプの方をお薦めします

805Sは室内の周波数特性を図ってみるときっちり40Hzまでフラットに出ていて、この点は大型SP並です。もう少しアンプ側からのアプローチで手を入れてやれば、素晴らしい音になる可能性があるので、結局手放せないでいます。できの悪い子供ほどかわいいということでしょうか?

スピーカーシステムの周波数特性(その2)

はじめに

前節でスピーカーシステムの周波数特性が得られるようになりましたので、SPシステムの置き方などを探ってみたいと思います。

スピーカーの設置高さ依存性

さて、ここでも一度得られた周波数特性を見てみます、全体的にフラットでバランスの良い特性が得られているといえます。

(SP:B&W805S、45cm高のSP台上において測定、マイク高さ1m)

(SP:B&W805S、45cm高のSP台上において測定、マイク高さ1m)
ただ気になるのは150Hz近辺に大きな谷があることで、全体的に低音の量感が物足りないことを裏付ける結果となっています。いろいろ調べましたが、この谷は床からの反射が大きく影響しています。そこで床からの反射の影響を低減するために床に直においてみました(下図)。

床直置きでの周波数特性、RCH)

床直置きでの周波数特性、LCH)
150Hz 付近にあった谷は消え、かつ100Hz以下のレベルも若干上がり低音域のバランスも改善されました。全体的なバランスは床直おきの方が優れていますが、ただ逆に中高音域での暴れが目立つようになってしまいました。床に置くと床からの反射波との距離差が 20-30cmになりますので、 干渉の影響で中高音が乱れる結果になり、根本的な解決策にはならないことがわかります。

スピーカーの後壁面からの距離

次にSPの後ろ壁面からの距離を変えた結果について見てみましょう。

上の図面はスピーカーの後壁面からの距離Dbを変えて周波数特性を測定したものです。45cmの台に乗せた状態で測定しています。Dbが大きいほど壁から遠いことを意味しています。後壁面からの距離に関しては低音域で大きな違いがでました。距離を離すほど120Hz以下の全体的なレベル(線で示しているあたり)が下がってしまっているのがわかります。一般にSPのセッテイングは壁面から離す方が良いと言われたりしますが、必ずしもそうでないことがわかります。周波数特性から言うと、50cmか35cmが好ましいといえるのです。ちなみに35cmというのはSPを後ろの壁にほぼ付けた状態になります。理想を言えばSPを壁に埋め込んだ形で無限大バッフルの様な感じにした方が周波数特性の暴れもなくなっていいかもしれません。またDb=80cmのグラフは中低音域(100-1000KHz)の特性にも鋭いピークが生じていることがわかります。特に小さいSPシステムの場合はあまり後壁面から離さないで、低音域のバランスを取ったほうが好ましい結果になるといえます。

スピーカー試聴距離依存性

次にSPと試聴位置との距離(Dl)の依存性について調べた特性を下図に示します。試聴距離Dl依存性は試聴でも最も明確に認識できる周波数特性の変化です。 距離2mではほぼフラットで低域がかまぼこ型に低下しているのに対して3mになるとやや低域が持ち上がります。4mの距離になると100Hz以下が強烈に持ち上がってきます。 聴感上全体のバランスが整っている様に聞こえるのは3m付近です。2mですと低音不足に聞こえます。 一般に中高音は直進する性質がありますので、間接音が低音域に比べて少なくなるため、試聴位置でのレベルが下がっていて自然なバランスになるのだと思います。 いずれにしろ試聴距離依存性が非常に大きく周波数特性を左右していますので、この影響を平均化する工夫をしないといけないかもしれません。

スピーカーシステムの周波数特性の測定方法

はじめに

スピーカーシステムの周波数特性はオーディオシステムの中でも最も音質に大きな影響を及ぼす大切な特性と考えられます。 ここではスピーカーシステムの実際の試聴状況における周波数特性の測定方法と実測結果について紹介したいと思います。

スピーカーシステムの周波数特性の測定方法

測定方法には大まかに分けて次の2つの方法があります。
・FFTによる周波数特性測定
・サイン波による測定
一つ目の方法はホワイトノイズをSPから出力し高速フーリエ変換(FFT)することにより周波数特性を測定するものです。この手法はFFTのフリーの解析ソフトもありますので比較的手軽に実施できます。メリットはほぼリアルタイムで特性が把握できることです。欠点としてはノイズ、あるいは統計誤差により周波数特性上のピーク、ディップがあることと特に低域の精度が出にくいことです。測定中のレベル変動を低域成分としてカウントしてしまい、低域の特性が実際よりも大きく見えてしまったり、再現性に乏しかったりすることがあります。
(ホワイトノイズ+FFTで解析求めたスピーカーシステムの周波数特性)
このグラフは実際にスピーカーにホワイトノイズを入力し、応答波形をFFT解析して周波数特性を求めた結果です。
原理的に分解能が一定なので高域程ノイズが目立つようになります。全体的にノイズが目立ちます。ノイズは平均化回数を多くすると改善されるはずなのですが、そうすると本来あったピーク・ディップも平均化されなめらかな特性になってしまう様です。もちろんプログラム・ソフト上で工夫すればこれらの問題はある程度改善されると思いますが、そこまでできるもので安価なものは無いようです。
2番目の方法はサイン波を直接入力して測定するもので、無響室ではよく用いられますが、実際の試聴環境下で測定される例は少ないようです。しかし実際にこ の方法で測定してみると、細かな周波数特性上のピーク・ディップがはっきり把握でき、FFTよりも高い精度で信頼できるデータが得られやすいのです。次に実際にサイン波による測定方法を2例紹介します。

サイン波のスイープによる自動測定(その1)

まず最初にパソコン(とマイク)だけで周波数特性をはかる方法を紹介します。RightMark社というところがRMAAというDAコンバーター用の自動測定ソフトを提供しています。
http://audio.rightmark.org/products/rmaa.shtml
フリーソフトですがかなりの機能が使用できるので試してみました。もともとDAコンバーターのテスト用ですのでSPの測定には向かないのですが、何とか特性を計る事ができました。ただし測定時のレベル設定に非常に敏感でレベル設定は何度もやり直しました。またあまりに周波数特性が悪い場合は測定結果がおかしいと思われることも多々あり、決してお薦めはできませんが、スイープによる測定方法の可能性を見るものとして紹介します。

SP:B&W805S、45cm高のSP台上において測定、マイク高さ1m
この特性は正面2mにおける左右の周波数特性を測定した結果です。SPはB&W805Sです。測定時間は一つあたり数秒で終了し、この様な見やすいグラフにしてくれるので大変便利ですが、実際には先に述べたように何度も測定しなおしています。また全体的に細かなピークディップが少なく測定されています。SP向けにもっと細かくゆっくり測定できると理想的なのですが・・・。特性は全体的にフラットで非常にバランスが取れていることがわかります。 16cmのSPで50Hzまで低域が延びているのは立派です。

サイン波のスイープによる自動測定(その2)

次にもう少々本格的なスピーカーの周波数特性の測定方法を紹介します。使用するのはオーディオアナライザーです。 オーディオアナライザーは低周波発振器、AC電圧計、歪率計が内蔵されたオーディオアンプ用の測定器です。発振器とAC電圧計がありますので、これを用いて自動測定のシステムを組んでみました。 使用したオーディオアナライザーはPanasonicのVP-7723Aというものです。 この測定器にはGPIBという汎用的な通信制御機能がありますので、GPIBを利用してこの測定器をパソコンから自動制御するシステム/プログラムを構築しました。

サイン波の純音をスポット出力し、音圧を測定した後、周波数をずらして測定を続けます。周波数の可変ステップは5%とし20Hz-20KHZまでを143点を5分で測定します。以下に測定結果を示します。
5%きざみで測定すると連続的にスイープしたかのような周波数特性が得られていることがわかります。先のRMAAを用いた測定結果と比べると次のことがわかります。
・RMAAと全体の周波数特性の傾向は似ている
・ただしRMAAでは狭いディップが広がってかつ浅く、平均化されて測定されてしまっている
(4KHzの谷が広がり、150Hzの谷はかなり浅くなっている)
RMAAによる測定も第一近似としては良いのですが、やはり実際の周波数特性を見てしまうと力不足であることがわかります。 RMAAの測定は全帯域を数秒でスイープすることに無理があり、SP用に数十秒かけて測定できれば同等精度で測定できると思います。
オーディオアナライザーとGPIB制御による測定の問題点はやはり測定装置が大掛かりになることと、スポット測定のため、比較的時間がかかる(5分)ことです。 5分間ブーとかピーという音を出すので近所迷惑でもあります(ある程度レベルを上げないと騒音の影響を受けます)。

(SP:B&W805S、45cm高のSP台上において測定、マイク高さ1m)

(SP:B&W805S、45cm高のSP台上において測定、マイク高さ1m)