7月 09 2010

JBL4429を使ってスピーカー配置を検討してみました(解析編)

今回は測定した4429の周波数特性について解析してみたいと思います。周波数特性についてはディップの出方と帯域バランス(ここでは主に1KHz以上と1KHz以下の平均レベル)で考えてみたいと思います。

また最初にお断りしておきますが、一部に周波数特性が荒れているものも有りますが、これはJBLの特性が悪いわけではありません。JBLの無響室の周波数特性は30年前から郡を抜いてよく、ほぼフ ラットに仕上がっていました。今回の測定結果でも配置による周波数特性の傾向がこれほど綺麗に出ているのは、JBLの基本特性が優秀だからだと思っています。周波数特性の荒れはSPシステムそのものではなく、主に置き方(レイアウト)が原因であることも多いのです。それぞれのおき方に対するコメントは以下の通りです。

パターン1.後ろ壁から離し、台の上に置く(最も一般的な置き方) D90cmH35cm

d120h35l.jpg

まず後ろ壁面から90cm離し(後ろ壁面からSPバッフル面までは120cm)、SP台の上に置いた時の特性ですが、最も一般的な置き方ではありますが、今回の測定の中で最も悪い特性です。何が悪いかというと大きなディップが周期的に存在する事で、これでは音階によっては低音域がまったく聴こえない場合が合っても不思議ではありません。この様なディップは鋭すぎてイコライザーでは補正できませんし、ちょっとした要素で周波数も動くので補正できたとしても試聴位置をちょっと変えただけで逆効果になるでしょう。ディップが発生する理由は後ろ壁面からの反射波が逆位相で合成される事による、いわゆる干渉によるもので、この置き方をする限り避けられません。
パターン2.後ろ壁から離し、床の上に直接置く D90cmH0cm

d90h0l.jpg

後ろ壁から離した上体で、床に直接スピーカーを置いてみると、やや特に低域のディップの出方が多少改善されている事がわかります。多少改善された理由はSPの後ろに回りこむ低域の内、下側から回り込む成分が無くなったためと思われます。ただ逆に400~1KHz付近のディップが激しくなって締まっています。これは床面からの反射の影響が大きくなったためです。また良くみてみると1KHz以上と1KHz以下の帯域のバランスを比較すると、床に置いた方が低域側の平均レベルが上昇している事がわかります。聴感上も床に置いた方が力強くなり音質的にはいいのですが、如何せん下から(床から)声が聞こえてくるので、気味が悪いというかやはり不自然です。
パターン3.後ろ壁まで下げて、台の上に置く D0cmH35cm

d0h35l.jpg

この特性は非常に綺麗です。周波数特性に大きなピーク・ディップが有りません。まるで無響室特性の様とまでいったら大げさでしょうか?難を言うと100Hz以下にわずかに定在波効果の影響がでている事と中低域のレベルが若干下がり気味なことでしょう。この設置位置は現在の試聴のセッティングになっています。
パターン4. 後ろ壁まで下げて床の上に直置き D0cmH0cm

d0h0l.jpg

後ろ壁まで下げた状態でさらに床に置くと500-1KHz近辺で特性に荒れが生じてしまいました。ただこの状態が低域が力強く気持ちよい音になっていました。この4429よりもひとまわり大きな4338などは一般により評価の高いSPですが、もちろん38cmウーハーを使用していることもありますが、それよりもウーハーの位置が下に来ているので、ぽんと置いたときに低域のレベルが上がっている分力強く聴こえているからではないかと思います。4429でそういった(ウーハーを下面まで下げる)セッティングをすると自動的に中音部も下に来てしまって、床面との反射の影響が大きくなって必ずしも好ましくないのですが、ウーハーを床に近いところに置くというのは改めて大事な事だと思いました。

帯域バランスと呼んでいるのはこういうことです
これまでの説明でディップの有無はすぐにわかると思いますが、低域と高域のバランスとはこういうことです。

d0h35lana.jpg

この特性はパターン3.(後ろ壁まで下げて、台の上に置く D0cmH35cm)の周波数特性ですが、青が低域の平均レベル、緑が中高域の平均レベルです。中高域(緑)に比べて低域(青)がややレベルが下がっている事がわかります。これを私は帯域バランスと呼んでいます。これはオーディオ装置のセッティング、選択において非常に重要だと思っています。普通の置き方をすると低域の平均レベルが下がってしまい、線の細い、うるさい音になります。特に最近のようにCDが主流になると、CDP自体がうるさい音を出す傾向があるためより顕著になります。アンプなどで聴感上補正するには電子工学的には不自然なほどに高域をつぶす方向にもって行くしかありませんし、結果的にそうなっているものも多いと思っています。まともなアンプを使用して心地よく感じる音にするにはSPのセッティングを工夫して帯域バランスを整える事が非常に重要です。以前はSPにアッテネーターが付いていたので、皆さんが各自の環境において自然とやっていたと思うのですが、最近はATTが付いていないものの方が多いので、バランスを取ることが難しくなり、結果的に残念な音質になっている場合も多いのではないかと思っています。

定在波効果の影響
さらに赤で示したピークが定在波効果の影響です。ちなみに他の特性で100-500Hzにみられたディップは定在波効果の影響ではなく干渉による影響です。この状態では中高域が少し勝った状態だったのでMidとHighのATTを少し下げてみました。

アッテネーターを調整すると、
d0h35latt.jpg

だいぶスムーズになりました。スピーカーのアッテネータをいじったおかげで、(いろいろセッティングを変えながら異なる日に測定しているので若干再現性に難も有りますが)低域と高域のレベル(私が帯域バランスと呼んでいるもの)が合うようになりました。 そして何よりも低域と高域の帯域バランスが丁度良く、低音が心地よく聞こえるようになりました。 今はこの状態で聴いていますが、いろいろな音楽が心地よく聞こえ、かなりいい状態だと思っています。

スピーカーのレイアウトを変更し ながら周波数特性を計って検討してきましたが、この様な調整はオーディオ再生装置の音質の変化という意味では一番大きく効くので、皆さんも是非試してみてください。

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7月 02 2010

JBL4429を使ってスピーカー配置を検討してみました(測定編)

JBL4429を使用してスピーカーの置き方についていろいろ調べてみたので報告します。

JBL4429というスピーカーについて

JBLについては私がとやかく言うまでも無く皆さんの方が詳しいかもしれません。 私が実際にJBLを購入所有したのは実は初めてです。JBLを購入した理由は

・ホーン型が欲しかった(最近はソフトドーム+トールボーイ型のSPシステムが多いので自然と同じ様なSPばかり所有しているので、毛色の違うものも置きたかった)

・弊社アンプを購入いただいたなかでもJBLをお使いの方の評価が特に良かった

・水平方向に無指向性(上下方向に指向性があるもの)がハイエンドショーの会場に合うのでは?と思ったから

(結果的にこの目論見は正しくありませんでした)

等です。

4429と4428の違い

実は4429を購入する前に4428の中古品を試す機会があったのですが(2,3日置いただけなのでどれだけ正確かはわかりませんが)、音質は4428の方があくまでもおとなしく、アンプが良ければ良いだけ音質が良くなるというか、アンプの実力がそのまま出てくると思います。4428は店頭で聞いた事はあったのですが、自分のシステムで聴くと印象がことなり、とにかくホーンくささのまったくしない、でも定位がびしっと決まるすばらしいものでした。

その後4429を購入したのですが、まず最初にビックリしたのが音だししたときの音の悪さです。高音がやたらとキンキンして硬い音で、内部のネットワークの接続が間違っているのではないかと疑ったほどでした。 その音の悪さはエージングの問題とはとても思えませんでしたが、不思議な事に1週間、1ヶ月と鳴らしている内にすっかりまともになってきました。私はエージング云々にはあまり興味が無い方ですが、これはさすがにまったく違うというか、まったく違うSPになると思った方がいいでしょう。

4429の音質は4428のどこまでもおとなしい鳴り方とはちょっと変わって、結構よく言えば解像度のいい音、下手をするとうるさく聞こえるいえない事もない感じになっています。まあ普通のハードドーム的な質感で、定位が抜群に良いといえばいいでしょうか。一般受けするのは4429の方かもしれませんが、私個人としては4428の方が好きでした(中古を聴いたせいもあるかもしれませんが)。

理想的なスピーカーシステムの周波数特性とは

リスニングルームにおける理想的な周波数特性はと聞かれればこんな感じだと思っています。

sp-response.jpg

中低域がフラットで高域がなだらかに減衰していく感じ。何故高域が減衰していくのかというと、中高音は周波数が高くなるほど後ろに音が回り込まないので後ろ壁の反射がない分減衰していくのが妥当だからです。実際リスニングルームの試聴位置では高域ほど減衰していっている事が統計的には多いですし、その状態が心地よく聴こえるそうです。この点はリスニングルームの著書をかかれていらっしゃる加銅鉄平先生のコラムにもそういう記述があったと思います。

周波数特性はこうなりました

周波数特性の測定条件はこんな感じです。事務所は1辺が8mくらいあり普通の部屋よりは大きい方だと思います。マイク設置位置は4mのところです。

尚4429のアッテネータはNORMALの位置で測定しています。
sp-layout320.jpg(上が天井、左右が壁面になります)

4429をJBLのスタンドに置いたとき(SP下面まで35cmの高さ)と床にベタ置きの2種類の高さ、それとSPを後ろ壁につけた場合と後ろ壁から 90cm離したとき(フロントバッフルで120cm離れた時)の2種類、計4種類で測定しました。

sp-layout4.jpg 測定位置は4つのパターンでこんな感じです(上が天井、左右が壁面になります)

以下測定結果です。
パターン1.後ろ壁から離し、台の上に置く(最も一般的な置き方)

d120h35l.jpgD90cmH35cm

パターン2.後ろ壁から離し、床の上に直接置く

d90h0l.jpg D90cmH0cm

パターン3.後ろ壁まで下げて、台の上に置く

d0h35l.jpg D0cmH35cm

パターン4. 後ろ壁まで下げて床の上に直置き

d0h0l.jpgD0cmH0cm

どうでしょうか?結構、傾向が綺麗に出ています。聴感上どれがもっとも好ましかったかというと4,3,2,1の順番です。

普通の置き方(後ろ壁から離し、台の上に置く)が私の好みでは最も悪かったのです。1が最も力なくすかっと低音が抜けた感じ、1がもっとも力強く低音がゴリゴリ来て心地よいです。ただし4の床直置きの場合声が地面から聞こえて来るようで気味が悪いので3で妥協しています。

1-4についてもう少し詳しく見てみたいと思いますが長くなりましたので次のコラムで解説します。

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5月 11 2010

スピーカーFocal /Chorus 826Vの音質と特性

<はじめに>

昨年フォーカルのコーラス826Vというスピーカーを購入して使用してきた。このスピーカーは2009年の春のハイエンドショーでロッキーインタナショナルさんからお借りして鳴らしてみたら凄くよかったので、新たに購入したのだ。このフォーカルのスピーカーはちょっと調べてみると結構面白い(私の場合なんでも調べてみる癖がある)。今回はその辺のところを紹介したい。測定結果などもでてくるが、ざーとやった結果なので中には測定ミスの部分もあるかもしれないが(なかには矛盾する内容もある)その程度だという事を念頭において見て欲しい。

<コーラス826Vの音>

このスピーカーの音はどういう音かというと、「低音が分厚いでもちょっと膨らみすぎ、高音はぎすぎすしないのに綺麗な音がする」ということになる。

コーラス826Vのスペックはこちらを参照してください。

focal-826v.jpg 外観はこんな感じです。

このスピーカーの特徴は豊かな低音に裏打ちされた綺麗な高音という事になるのだが、通常の家庭で使用すると低音が出すぎるかもしれない。

まあ、出すぎる分にはバスレフポートをちょっとふさげば調節できるのでどうということはないし、もう一つ上のウーハーが3つ付いている836Vの方が低音の量感は少ないので普通の使用方法としては836Vの方がバランスが取りやすいと思う(ウーハーが3つ付いているほうがなぜか低音の量感は少ない)。弊社の場合、ハイエンドショーでのデモを念頭においているので、低音が出すぎるくらいのSPでないとあの会場ではバランスが取りづらいのである。普通のスピーカー鳴りっぷりの次元が違うのには理由がある。

以下は私の勝手な解説である。
<低音の鳴りっぷりがいい理由>

写真ではわかりにくいかと思うがこのスピーカはバスレフポートが2つ付いている。一つはフロント、もう一つは下側から360度全方位に放射するようになっている。

弊社事務所での周波数特性を取るとこんな感じである。

focal-826v-freq.jpgFocal826Vの周波数特性

さらに、いろいろ探ってみると

focal-826v-freqtw.jpg ツイーターの周波数特性

ツイーター部の周波数特性は単に測定マイクをツイーターの直前に置いただけで他のスピーカーからも音は出ている状態で測定している。

綺麗だー。

focal-826v-freqmid.jpgこれは中音用スピーカーの特性

結構下まで延びているのは測定時の干渉(全SPなっているので)かわざと低音を伸ばしているのか不明。

focal-826v-freqport.jpg バスレフポート(フロント)の周波数特性

これはバスレフポートの中にちょっとマイクを入れて測定した。驚くのはバスレフポートからの放射音の帯域が異常に広い事だ。これはバスレフポートの音というより、もう一つ別のウーハーを構成しているといっていいくらいだ。バスレフポートが二つあるのでお互い干渉しあって広帯域になっているのか?これが分厚い低音の理由なのではないかとも思っている。

<高音が綺麗に鳴る理由>

このスピーカの高音部はソフトドームではなくハードドーム、正確にはドームをひっくり返した(凹になった)インバーテッドドームだ。だがこの高音部はまるでソフトドーム型のような柔らかい音を出す。カタログによればインバーテッドドームのメリットは振動版の中央をボイスコイルで駆動するので超高域の共振が抑制できる事だそうだ。 そのメリットは十分に出ている音だ。それともう一つおとなしいのに綺麗に鳴る高音はその周波数特性にあると思っている。下図に示す様にこのスピーカシステムは7,8kHz当たりが少し盛り上がっている。この特性はどの条件で捕ってもこうなるのでこのSPの特徴ではないかと思う。リスニングルームで周波数特性を取るとある程度はなれると高音域がだら下がりになるのが普通だが、それをだら下がりにならない様にフラットにしている(持ち上げている)のがB&Wなら、ちょっとだけ7,8KHzだけを持ち上げているのがFocalで、Focalの方がうるさく聴こえる事も無く音が常に綺麗に聴こえるというノウハウなのではないかと勝手に推測している。
focal-826v-freq2.jpg

 <終わりに>

以上、フォーカルのスピーカーについてその音質と特性の自分なりの解釈を紹介したが、特性を調べるとある程度そのスピーカーの性格付けができるので、再生システムを構築する上でも参考になると思っている。

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4月 06 2010

CDプレーヤーが言いました「私脱いだら凄いんです」 -知っているようで知らないCDプレーヤーの怖さ-

CDプレーヤー(CDP)の歴史はもう長い、30年近くなる。なので相当進化したはずだ・・・と思ったら大間違いで、いまだ16ビットの淵をさまよっているというか、ひどい事になっているような気がする。

そんな事はない、ハイエンドのDACチップはダイナミックレンジが120dB以上あるし、最近は32ビットのDACチップもでてきた、FIFOでジッターを減らす技術も取り入れられているものもあるし、マスタークロックを入れればもっと良くなるetc.。

でも調べてみるとCDPの動作は目も当てられない状態になっているというしかない。調べているこちらの装置の状態がおかしいのじゃないかとまず疑わなければいけないくらいだ。一番すごい事になっているのはDAC以降の回路動作だが、そこはまだおしゃべりできないので、今回はデジタル回路の部分について紹介する。

ここで問題です。

これは何の波形でしょうか?

wave.jpg

ここでご愛読のお礼におまけを一つ、
ずばり当たった方は弊社製品購入の機会がありましたら2割引きします。–>締め切りました。

(ただし最大割引料金3万円まで、2割引の有効期限1年間、コメント欄に正解を記入していただいた方に限ります。先着3名様まで、次回執筆時までの期限限定で)—>締め切りました。
注:コメント欄に個人情報は書かないで下さい。
答えは次回執筆時に。答えはマスタークロックです。出題後、1時間もしないうちに正解の回答をいただき正直面食らいました。

同じ波形を時間軸も入れて見せるとこうなります。

clk320.jpg マスタークロックの波形11.3MHz, 40ns/div

CDのサンプリング周波数(Fs)は44.1Khzですが、CDPのデジタル出力をDACに入れると専用に設計されたレシーバーICがこのFsの256倍の11.2896MHzのマスタークロックを作ってくれて、DACチップに渡すようになっています。本来マスタークロックは矩形波のはずですが、実際にはこんなに鈍っていた。11MHzの矩形波を綺麗に伝送するには最低でも5倍できれば10倍以上の帯域が必要で50-100MHzの帯域がないと矩形波にならない。なので結構難しい事なのかも知れない。CPUやメモリーの様に0、1が伝わればいいならば鈍っていて問題ないので簡単だが(といっても最近のようにGHz帯になると簡単ではないだろうが)、ジッターを問題にするとなると立ち上がり、立下りが急峻でないといけないので事態は深刻になる。

使用したレシーバーのクロックに対するジッター性能の仕様は0.2nsで上図の1目盛り(DIV)の1/80だ。本当にそれだけのジッター性能があったとしても波形がこれだけ鈍っていたらDACで受けたときにジッターは100倍くらい悪くなってもおかしくない。そもそもデジタル回路はトランジスタのON・OFFだけを取り扱うので、そのON・OFFをどの閾値で行うかは極めてあいまいなのだ。

何が言いたいかと言うと、マスタークロック周りで重要なのは発振部のジッターの小ささではなく、波形の質(立ち上がり、立ち下がり)、伝送経路の高周波領域の完全性という事だ 。言い換えればジッターを抑制するのにジッターの小さな発信器を使用しても必ずしも効果は期待できず、むしろ波形の質、ドライブ能力などに着目した方がジッターが抑えられるという事だ。

ついでにいただいたコメント(クイズの回答)に対しても解説しておく。乱れた矩形波信号ではないかという回答があったが、CDPの矩形波応答はこんな感じだ。

sa1lpf-1khzsq.jpgCDPで再生した1KHz矩形波信号波形

sa1lpf-5khzsq.jpg CDPで再生した5KHz矩形波信号波形
CDの場合、20KHz以上がスパッとなくなっているのでリンギングがある様に見えるがこれは正常で仕方が無い事なのだ。5KHzになると5KHzと3倍の15KHzの合成波になるから、もう正弦波丸出しという感じになる。

実を言うとこの波形はかなりいいほうで、実際にはCDPのアナログ周りはもっと悲惨な事になっている。その辺の事情は自社製DACを出す際に紹介するつもり。

 【内容の修正とお詫び】

内容に測定上の誤りがありましたので修正させていただきます。コメントを頂き再度調べてみましたが、測定時に初歩的な間違いをしていました。

オシロのプローブを1:1(プローブの入力Z1MΩ、46pF)で測定していたのですが1:10(10MΩ、12pF)で再測定したら、システムクロックはこの様になりました。

sclkx10prb11p3mhz.jpg 11.3MHzのシステムクロック波形(この波形は48Khzfs入力時のシステムクロックです)

プローブ:TEXAS製250MHzプローブ

オシロ:200MHz(5Gs/s)SDS200A
波形は綺麗とはいえませんが立ち上がりはそこそこ鋭くデジタル信号としては十分だと思います。10MHz帯になると10pFの容量でも数KΩの負荷になるので重たくなってしまうのです。1:10のプローブでも真の波形が取れているかは怪しいかもしれません。オーディオアンプなどですともともと駆動能力があるので、数pFの容量では影響を受けないのですがロジック系のICは負荷が軽い事を前提に作られているので、この辺はもっと気をつけて調べなくてはいけませんでした。お詫びと共に訂正させていただきます。 100MHzのアナログオシロだと上図の波形を少し丸くした感じなります。

ちなみに96Khzのサンプリング周波数に対するシステムクロック波形は次の通り。

sclk96hzx10prb22p6mhz.jpg  22.6MHzのシステムクロック波形(この波形は96Khz fs入力時のシステムクロックです)

かなり怪しい形だが何とかいけそうな感じです。

今後ともよろしくお願いいたします。

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3月 30 2010

アンプの音質・特性は回路構成で決まりますか? -いいえそんな単純ではありません-

久しぶりに回路の中身を解説してみたい。というのもxx回路はこういう音がするとか、弊社のアンプ回路を掴まえて回路に新規性が無いのでどうたれこうたれとか、あまりにも単純な事を言っているのを目にすることがしばしばあった。実際にどの様な事を考えて回路設計をしているかを紹介しなければと思ってこのコラムを書いてみました。

最初に一言いわせてもらえば、アナログ回路はもう成熟しきった分野なので、そもそも新回路なんて必要ない場合がほとんどで、xx回路を考案したなんてキャッチフレーズを謡っている事自体(あるとすればの話だ)が非常に不自然な話だ。

それでは各社同じ様な回路を使用していて、それでは同じ結果になるかというとまるで違う。自動車だって、xx社のyyモデルはFFのノンターボでマクファーソンストラット・サスペンションだからこういう走りのはずだなんていったら笑われるだろう。もちろん、構造、様式などは重要だがそれだけで決まるというよりも設計・技術次第でどうにでも変わるので、実際に試乗してみないとそのパフォーマンス・特徴がわからないのと同じ事だ。

回路設計について解説するにはまず基礎的なことを説明する必要がある。

パワーアンプにしろプリアンプにしろ半導体式のアンプ回路は次の3段構成となっているのが普通だ。
ycyoyoiyoyiyayth320.gif<アンプ回路は3段構成>

初段はいわばバッファアンプで利得はあるものの小さく、終段は完全にバッファアンプだ。増幅器としての中核を担うのは中段で初段と終段は中段のために存在するようなものだ。その中段の回路構成は以下の組み合わせがある。

ycyoyoioaae.gif

<中段の回路構成>
トランジスタアンプ自体は非常にシンプルなのだが、それを理想的な条件でここで解説したいのはカスコード回路である。カスコード回路はトランジスタの寄生容量がミラー効果で数百倍に増加してしまう事を回避するために用いられる回路で、高性能半導体アンプでは必須といっていいだろう。

このカスコード回路は2種類あってそれぞれ回路は次のようになる。
ycyoyoieaeoth.gif

<カスコード回路を使用したアンプ回路(中段)2種>

下の四角で囲った部分がカレントミラーと呼ばれる回路でどちらも同じく能動負荷として働き、ゲインを稼ぎかつ差動トランジスタの出力を合成する働きもする。また、カスコード回路は縦につながっているという様な意味だが、差動アンプの電流が信号によって変調されてもQ1、Q2のコレクタ電位を固定する役目をするため、ミラー効果と呼ばれる寄生容量が数百倍になることを防止する事ができる。右の回路はそのカスコード接続と増幅の役目を1人2役でこなしたような回路で、ベース電位を固定して、エミッタから信号を入力してやることが回路上の特徴となっている。
ここまでは電子回路の教科書に普通に書いてある事で、電子回路がわかる人にとっては何の変哲も無い記述だ。ここから先はオーディオ様のアンプ回路について熟考したもので、教科書には書いてない(といってもわかってしまえば当然というか簡単な事だが・・・)。

左の通常のカスコードに対して右のフォールデッドカスコード回路は、差動アンプとカスコード回路を一人二役でやってのけて回路を簡略化できたすばらしい回路のようにも見えるが、実際はそれだけではすまない。

この2種のカスコード回路はそれぞれ長短があってまとめるとこういう事になる。
ycyoyoioaa-yyyyeeaeo.gif

<カスコード回路の特徴の比較>

重要な事項を青で記述したが、回路設計者でもここまでは一般に考えていないのではないかと思う。というのもフォールデッドカスコード回路を使用して貧弱な電源を使用したり(電源ノイズがそのまま入力を変調しているとも知らずに)、あるいは100万円するパワーアンプ回路にフォールデッドカスコード回路を使用していたりするからだ(出力インピーダンスが高いのでパワーアンプにはそもそも向かないのに)。

弊社の場合プリアンプの回路にフォールデッドカスコードを使用しているが、当然の事ながら極めて良質の安定化電源と組み合わせている。まあ、ゲインはほぼNFB抵抗で決まるので、決定的な問題ではないが、内部でノイズまみれというのは気持ち悪い。ちなみによく用いられる3端子レギュレーターは100uV程度のノイズを常時発生させている。

フォールデッドカスコード回路をあるメーカーでは多用しているのだが、おそらくここまでは考えていないと思うし(わかっていたら3端子と組み合わせて使用しないはず)、そのメーカーのアンプ・CDの音質は全体的に高域が妙に目立つ結果となっている。

カスコード回路は使用しないと帯域が狭くなって高域の歪率が悪化するので必須だと思うが、カスコード回路はミラー効果による寄生容量Cobの増幅を抑制するもので、Cob自体は残るのである。Cobは通常数pFなのでもう同でもいいじゃんと思うかもしれないが、実際にはCobの変動が歪を発生する主要因なので、この変動分を抑える必要がある。Cobキャンセル回路というのもあるのだが、そこまでやると回路数がさらに増えて凄い事になる。弊社アンプではCobが小さいトランジスタを選び(もちろ他の性能も良いものだが)、さらにそのCobの変動が小さい領域で動作せている。下の図はトランジスタのCobと電圧の関係だが35V以上でCobが一定となっていることがわかる。プリアンプの電源電圧がプリアンプとしては高い+-35Vになっている理由もここにあって、Cobの変動を抑制したいが為である。+-35Vという電圧は20V以上の交流出力を発生する事もできるので、安全のためにプリアンプには7V以上の出力が発生した場合には瞬時遮断する保護回路も搭載するという凝った回路になってしまった。

cob-vccdata.jpgあるトランジスタのCobの電圧依存性

ここまで考えて設計しているのがプリアンプの中段の話で、もちろんこれ以外にも考慮している事はいろいろある。ここまで来ると相当こみいった話になったと思うが、既存のアナログ回路の中でできる事は無限ともいえるほどあるので、そもそも新規回路という発想は必ずしも必要ないという雰囲気はお伝えできたのではないかと思う。

少なくとも「このアンプの音質はxx回路だからこうだ」とかそういう単純な話ではないという事だけ理解していただければ、このコラムを書いた甲斐があるというものだ。

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3月 01 2010

これだけは知っておきたい音響工学(その5) -スピーカーセッティングへのこつ-

これだけは知っておきたい音響工学というタイトルで書き続けてきたら、ちょっと内容がそれてきた感がないでもないが、興味深いスピーカーセッティングのコツがFocal社スピーカーの取扱説明書に書いてあったので紹介する。

ちなみに弊社ではフォーカルのCHCHORUS 826V を購入し常用スピーカーとして使用してる。この会社のスピーカーは本当に綺麗な音がするので相当なノウハウのある会社だと勝手に思っている。

その取り説の内容だが普通のスピーカーの取り説よりもちょっと詳しくセッティングの要領が述べられていた。主な項目は4つあり以下の通りである(図面は取り説から抜粋しました)。

非常にわかりやすい絵なので解説の必要もないと思うが・・・・。
(1)試聴位置は正三角形の頂点より後方で

試聴位置

やっぱり後ろで聞きなさいと書いてある。
(2)試聴高さはツイーターより高く

試聴位置は高めに

一般にSPの軸上聞けと薦める場合が多いが、それより上のほうがいいらしい。

(3)コーナー、壁からは離して設置する

コーナーセッティング  「コーナーに近いのはだめ、またなるべく後ろ壁からも離す方が良い」(「」内は取り説の英語の記載内容を私が要約したものです)

とある。理由は低音が3dB、(壁2つで)6dB増強されるからと理由も明快。ただしこれこのスピーカーだから言える事で、貧弱なウーハーの場合は壁やコーナーを利用しないとバランスが取れないことも多いと思う。この826Vは特に低音がぶんぶん過剰と思えるくらい出ているのでこれはその通り。(ただしこの取り説の内容はすべてのシリーズ共通のものなので小SPではドウなの?と思ってしまうが)。

(4) 後壁、左右の壁、床の距離の最適値

距離の関係 「SP中心から最も近い壁までの距離をA,その次をB、最も遠い壁をCとすると(すなわちA<B<C)、B*B=A*Cとなるのが理想的」

この記載、言っている意味はわかるがなぜそうなのか見当がつかない。シミュレーションを一応してみたが(シミュレーション自体が実態にそれほど合わないので当てにならないが)、上記関係にしても特に改善されなかった。フォーカル社は結構なノウハウ(おそらく+理論も)のある会社なので、何か根拠が有るのだと思う。

興味のある方は是非試してみると良いと思う。

(結果が出たらご一報いただけるとうれしいです。)

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1月 20 2010

これだけは知っておきたい音響工学(その4) -スピーカーセッティングへの応用-

これまで基礎的なことを解説してきたので、次のステップとして少し実践的な事について説明してみたい。

というのがこのコラムの主旨だが、その前に気になることが・・・・、

「杓子定規に正三角形の頂点で聞こうとする人が多すぎる」ということだ。

今は多忙なのでお断りしてるのだが、事務所に試聴に来る人の何割かは正三角形の頂点で聞こうとする。

現在の事務所で試聴用の椅子はSPからある程度離して置いてあるが、わざわざSPの方へ近づいていって聞く人がいるくらいだ。丁度こんな感じで、

iaiaonayiyycyye.gif
スピーカー(SP)の設置の仕方に関しては、よくオーディオのHow to本で解説されている。

が、それとは違ってちょっと逆説的にまとめると、

  1. 2つのSPとの正三角形の位置では聴かない
  2. 左右非対称に設置する

という事を実践した方が良いと思う。
1を説明する前に、2はどういう事かというと、

  • 直接波と1次反射波の距離差が分散するように、SPの後ろの壁、左右の壁、床、天井、試聴者の後ろの壁との距離を調節する

という事である。
まず1について、実例を挙げて説明しよう。下の図は右側が壁、左側半分が空きスペース(部屋の右半分にSPを設置している)のレイアウトである。結果を見やすくするために、反射は1回で計算し、試聴者の後ろの壁(図の下側)は反射無しとした。

sp-layout-hitasihsow.jpg部屋の左半分は使用していないことに注意

sp-hitaishougraph.jpg

この場合の周波数特性をシミュレーションしてみると上図の通りとなる。見ていただきたいのは左右の合成波(青)の特性が平均化されて大きな山谷が抑制されている事である。ステレオは左右の音量・位相差が大事だから左右の差(黒と赤との差)があるのでだめと思われるかもしれないが、実際には500Hz以下の低周波領域は聴感上指向性が小さいので左右の和が重要である。左右の壁の状況を変えることで山谷の周波数を分散させる事によって左右の合成波の特性を平坦化しているのである。

実はこの部屋のレイアウトは現在の事務所のレイアウトに近い。以前はどちらかというと左右対称になるように設置していたが、実際その時よりも定位はずっと良くなって、ボーカルの口の大きさが小さく聴こえて、しかも真ん中に定位するようになったと思う。定位が良くなったのは上記の影響だけとは言い切れないが、狭い常識に捕らわれず、上記の考え方を試す価値はあると思う。

最悪なのは左右厳密に壁からの距離も対称にしてあるレイアウトで、こうなると山谷の周波数が同じなのでそれがそのままの形で周波数特性となって荒れたままになることである。例えばこんな風に

sp-taishousp.jpg 上記のレイアウトの左半分が無い場合

実を言えば、話の順序としては、現在の事務所に引っ越して、採光だとかもろもろの事情で右半分に配置するレイアウトになったのだけれども、結果的には音が良くなったので「何〜でだ」と考えて上記理由を思いついてみたという程度だが。おそらく、もっともな話なのでかなり一般性があると思う。

一応補足しておくと、現在の事務所を選ぶ際に、条件の一つとして床がじゅうたんではない事を必須の条件とした(じゅうたんがあると高音が吸収されてきつい音になるので)。定位が良くなったのは単にこのせいかも知れない。
話を戻すとマニュアル本、定説などは気にせずいろいろやってみた方がいいということだ。いわゆるオーディオの定説はほとんど意味のないことが多いので・・・・(ってこれも定説か)。
関連して、フォーカルの取扱説明書に面白い事が書いてあるので次にそれを説明しよう。

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12月 03 2009

これだけは知っておきたい音響工学(その3) -壁の影響は壁に聞け-

前回は壁(床、天井も同じ)の反射の影響を説明したが、ここでは実際にその影響を実際の部屋で調べる方法を紹介する。

壁の反射の影響をざっと調べる方法は意外と簡単である。

どうするかというと、
「影響を調べたい壁に耳を近づけて見る」

ということだ 。

そうすると、その壁が音響特性にどの様な影響を与えているか壁が教えてくれる、のである。

これ、冗談ではなくほんとの話です。

もう少しまじめに解説すると、例えば床の反射による周波数特性への影響を調べてみたいと思ったら、スピーカーから音楽を流しながら、耳を床に近づけるのである。そうすると床からの反射の影響がなくなり(正確には高域に移動するだけだが)、床の反射による周波数特性の乱れのない音が聞こえるという仕組みである。

シミュレーションで説明するとこうなる。

次の様な床の反射があるだけの環境で通常の高さ(1m)と耳を床に付けた(0.1m)状態の周波数特性を計算してみると、こうなる。
yukakabe-layout.jpg

yuka-kabe-simu420.jpg

青は耳の高さ1mでの周波数特性、ピンクは高さ0.1mでの特性である。ピンクの場合低域の谷が見事になくなっていることがわかると思う(実際にはなくなっているのではなく、高域側に移動しているだけだが)。実際にマイクを通常の高さから床につけて測定してみると、低域の落ち込みが一部減少し(実部屋では壁がたくさんあるので谷が解消する事は無い)、高域が荒くなる結果となる。聴感上も床に耳を付けた方が低域の力強さが向上する、ただし高域がちょっと荒くなるが・・・・。耳を床につけるのは、実用性がないが、小型SPであれば床に直置きした方が力強さは増す。というよりも、通常の設置方法では床からの干渉効果で低域に谷ができて音がへなへなになっている場合が多いというのが実情だろう。

同様にして、天井、左右の壁、後ろ壁の影響も耳やマイクで確認する事ができる。

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10月 23 2009

これだけは知っておきたい音響工学(その2) -反射による干渉効果-

前回はコレだけは知っておきたい音響工学(その1)として1/r²の法則を紹介したが、今回は「これだけは知っておきたい音響工学(その2)として、音の反射による周波数特性への影響を考えてみたい。

この反射による影響がオーディオ再生装置の中で最も大きな影響をもたらす重要な現象だ(と思っている)。壁でも床でもいいのだが反射面があると反射した音波が元の音波と混ざる。元の音と反射音は距離差があるので周波数によって強めあったり、弱めあったりして周波数特性がうねる。下の図は後ろの壁から70cmの距離にSPを置いて、リスナーからみて前の壁(SPから見て後ろの壁)の反射波の影響を見たものである。計算には定在波シミュレータ StndWave2使用した。このシミュレーターはフリーソフトだが非常に良くできていて、多くの人に使われている。定在波シミュレータという名前がついているが(おそらく)鏡像をおいて合成和を取っているので、一回反射についても計算できるいわば反射シミュレータだと思う(多重反射にすれば結果的に定在波シミュレーターになるだけ)。

ここで壁の反射率は1とした。反射波の影響で最大値は約3dB大きくなる(音が約2倍になる) 120Hzあたりに干渉による最初の谷が生じる。ディップが−∞にならないのは反射波の大きさが1/r²に減少していると計算しているからである。実際の部屋では他の壁の影響もあって1/r²にはならないのでもっと影響が大きい可能性がある。この谷の影響は最低周波数で最も影響が大きい(幅が大きい)ことに留意して欲しい。さらに100Hz-200Hzの周波数帯域は、オーディオ再生において力強さ、音の厚みに影響する最も重要な周波数帯域だ。その領域に最大の谷が来るので非常に始末に悪い。もっとSPを壁から離せばよいと思われるかもしれないが、谷の周波数が低いほうに移動するだけなので、しかも2番目の谷も下のほうに降りてくるので根本的な解決にはならない。
sp-reflection60cm-2.jpg壁の反射による干渉効果(SP-壁距離60cm)

実際の部屋には前の壁の他に床、左右の壁、後ろの壁、天井など、さらにいろいろな壁があるが、ここで左の壁と(リスナーの)後ろの壁だけ追加してみよう。レイアウトはこの図の通りだ。
sp-listen-layout2.jpg(実は最悪の)仮想リスニングルームのレイアウト

右の壁、床、天井は考慮せず(反射率0とし)、上記壁の反射率はすべて1として、わかりやすくするため一回反射のみとして計算した。

そのときの周波数特性の計算結果がこれである。
sp-worst-listning-position60cm-147cm.jpg仮想リスニングルームの周波数特性のシミュレーション結果

どうですこれ、ひどいでしょ。オーディオ再生で最も重要な帯域(100-200Hz)が「ごそっ」となくなっている。-10dBって1/10の音量になるって事だ。 この帯域はゴールデン帯域といっていい重要な帯域だ。それが、あらら・・・てことになっている。ここで再度レイアウト図を見て欲しい。丁度コレくらいの配置、きわめて一般的ではないですか?。壁とSPの距離が0.6mくらい、ついでにリスナーとその後ろの壁の距離も0.6m、SPの左壁からの距離が1.4m(左壁からの反射波との直接波の距離差が0.6mx2=1.2mになる)というこの配置、実はわざと最悪の特性になる様にねらったものだ。

実際この通りではなくても、一般にオーディオ愛好家の周波数特性が100-200Hzに大きな谷になっている事は非常に多い。「無線と実験」という雑誌が読者(もちろん相当のオーディオマニア)のリスニングルームを訪ねて周波数特性を採る記事が連載されていたが、ここまで顕著ではなくてもこの傾向がある場合が多かったように記憶している。

それと補足しておくと、実際には一回反射ではなく多重反射の影響があるので周波数特性はもっと複雑怪奇な結果になる(なのでここではあえて1回反射の結果を見せた)。それとこの定在波シミュレータで周波数特性をどう計算しても、実際に測定した特性とは残念ながらぴたりとは合わない(なんとなく雰囲気が出るという程度)。このシミュレーターは多分SPの指向性や壁の反射率の周波数特性を考慮していないので、その辺が効いてるのだと思う。もちろんこのシミュレータは非常に役に立つ超優れものだが、その辺は頭において使用した方が良いと言うことだ。

上記の特性だと聴こえる音はそのままでは寂しい音になるので、何をするかというとアンプなどで音色の調整をしたがる(私は安易にそういうこうとはしない)。メーカによっては低域が厚く出る様にわざと音色をつけていると思えるところもある。とはいっても低音を強調する事はできないので、実際には高域が出にくくなる方向に調整する。意識してそうしなくとも多くの意見を取り入れて回路・部品を選択していくと結果的にその方向に落ち着くのだろう。もちろんスピーカーから出た音が心地よければそれでいいのだが、リスニングルームの特性が改善された場合、逆に今度は低音がもやもやするとか、高域の伸びや明瞭さがが足りないように感じてきてしまう事だろう。

以上の話は反射による干渉効果の影響で、最近よく言われる定在波効果とは異なる。定在波効果は壁を傾けたり、聴取位置を定在波の節に位置をずらすと改善されるので、まだ手がないわけではないし、むしろ反射による干渉効果のほうが 音質に与える影響は大きいと思っている。

それではこの反射の影響を緩和するにはどうしたらよいのか?という事についはまだこれだという決定打は残念ながらない。ないが多少の助けになるアイデアはあるので次回はこの続きを紹介できればと思う。

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10月 05 2009

これだけは知っておきたい音響工学(その1) -1/r²の法則-

<1/r²と干渉効果>

コンサートホールにしろ家でのスピーカーシステムの設置にしろ、音響工学の知識で覚えておくと有益な法則がある。原理自体は工学を学んだものにとっては当たり前のことではあるが、多少オーディオ的に拡張して紹介したいと思う。一つは1/r²則でもう一つは音の干渉効果である。まずここでは1/r²則について説明する。
<自由空間>

    I ∝ 1/r²

球
”1/r²の法則”というのは勝手にここでそう呼んでいるだけだが、音響工学に限らず電気・物理で良く出てくる法則である。音響の分野で言うと、音の大きさが距離の2乗に比例して小さくなるという事である。つまり音源から1mの距離の音にに対して10mの距離の音の大きさは(1/10ではなく)1/100になるという事がミソだ(2乗になると大きさが劇的に変わる事を感じて欲しい)。なぜこうなるかかというと、距離rの球の表面積は4πr²/3になるからで、よって単位面積当たりのエネルギーが1/r²になるからである。この法則はエネルギー保存則からも直感的に把握できる。ただしこれは自由空間と呼ばれる状況で、周りに壁が何も無いときである。例えば無響室等がこれにあたる。

<半自由空間>

hnakyuu2.gif

床だけのある場合も自由空間と同じになる。例えば屋外とか、サントリーホールのように近くに壁が無い場合もその状況に近いだろう。1/r²の法則は同じだが床があると強度は2倍になるので正確には2×1/r²になる。もちろん音の大きさがが1/r²に比例する関係は変わらない。

< 天井高さが低い、あるいは幅が狭い場合>

    I ∝ 1/r 
kukei.gif幅の狭い部屋    kukei2.gif低い天井の部屋

ただし、天井や壁があるほとんどの場合は状況は変わってくる。 比較的低い天井がある場合とか、天井は高いが幅の狭い部屋があって、天井や壁の反射率が高い場合(硬い材料でできている場合)には、音が拡散する空間が限 られてくる。表現をかえれば距離rに対する表面積の増加が制限されているという状況である。

kukei3.gif例えばこの図のように低い天井で壁が近くにない場合は音が横方向だけに拡散するので音が通過できる断面積の面積は、hx2πrになる。ここでhは天井高さである。反射がある場合は本来干渉効果も考慮する必要があるが、ややこしくなるのでここでは考えない。したがって今度は音の強さは1/rに比例する事になる。2乗ではなくて1乗に反比例する点が大きく異なる。1mと10mの距離での音の大きさの違いは今度は(100倍ではなく)10倍である。

< 天井が低く、幅が狭い場合(うなぎの寝床タイプ)>

1/rº (=1)

kukei4.gif

さらに壁、または天井などの反射面が2面ある場合はどうなるかという事を考えてみる。例えば幅が狭く天井があって、奥行きだけがあるようなうなぎの寝床の様な部屋である。この場合奥行きに対して断面積は増えないので音の大きさは奥行き方向に対して変化しないという事になるはずである。数学的には1/r º (=1)に比例するといえる。こういう部屋は実際にはほとんど無いかもしれないが、他の話で言えば光ファイバーや導波管などはこのタイプだといえる。

以上3タイプの部屋の形に対する音の大きさを考察してみたが、形によって劇的に変わるという事をご理解いただけたと思う。音の大きさが1mの距離で100だったとして、今度は10mの距離では自由空間では1(=1/100)になってしまうし、天井があれば10(=1/10)、左右に壁もあれば元と同じ100になる可能性があるということだ。もちろん実際の天井や壁の反射率は1ではないので、そうはならないにしても大変大きな影響があるという事だ。

< コンサートホールに当てはめてみると>

コンサートホールの音質についてはこちらのブログで紹介してる。私の場合、コンサートに行って音楽を聴くと演奏者や指揮者よりも実際に届いてくる音質(ホールの音質)の方が大きく気になるし、ホールによって劇的に変わってくるので、気になってしかたがなかった。上記の法則をコンサートホールに当てはめてみると、音響効果(音質の良さ)との相関が結構みえてくる。サントリーホールは私は非常に反響の悪い(無いという意味で)ホールだと感じているが、それもそのはず周りに反射壁がまったく無いので(あるのは床だけ)、音が非常に小さくなってしまう。こうなるとわずかな反響音の残響時間がどうのこうの言っても始まらない。超高級オーディオ装置を蚊の鳴くような音量で再生しているのと同じで、大音量のラジカセにすら負けてしまうのである。もちろんこれだけでホールの音質を完全に説明できるものではないが、あるい程度の説明ができてしまう(と思っている)。

反対にJTホールの音質がすばらしく良かったのは天井が高いものの、幅が比較的狭いので音が後方にまで非常に豊かに届くからだと思っている。

次にもう一つの非常に重要な干渉効果について次回に紹介したい。こちらの方はスピーカーのセッティングに非常に重要なポイントとなる。

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