(おそらく)嵐をよぶ、バランス・ヘッドホンアンプTempoを発売します

新しいイヤホン、ヘッドホンアンプを発売します。
賛否両論が予想されるので(否否片論だったらどうしよう)、「嵐をよぶヘッドホンアンプ」と名乗っておきます。

その製品はこちら

tempo2 005rev

tempo2 010rev

tempo 034_800

tempo 005_800
一見何の変哲もないバランス入力のヘッドホンアンプですが、何が変わっているのか・・・・。

それはリケーブルなしにすべての3線式イヤホン・ヘッドホンをバランス駆動するからです。
それって当たり前・・・、え?

そんなことできるわけ無いだろ、と。
でも、できるんです。
それは本当にバランス駆動か?
ここが嵐を呼ぶ理由です。
(すでにそういうものが過去にあったらごめんなさい。)

本当にこれでいいと言えるのかわからないので”Temporary”からとって「Tempo」と名付けました。

もひとつおまけに、バランス用にリケーブルした左右独立アースの4線式イヤホン、ヘッドホン(2.5mm4極AK/ 3.5mm4極Sony)も普通にバランス駆動もできます。

入力はXLRバランスのみです。

電源は外部供給となっておりDC12V電源を別途必要とします。

オーディオデザインのDCA-12Vとのお得なセット価格も設定いたします。

内部はこんな感じです。OPアンプLME49860とバッファアンプLME49600という組み合わせで、半導体自体はある種一般的かもしれません。

12Vを分圧して+-6Vの正負電源化して駆動しています。
Tempoの仕様はこのとおりです。tempoSpecrev1R3

その動作原理、音は次のお楽しみです。10月のヘッドホン祭りで製品紹介予定です。
またNetAudio誌でポタアンPEHA-100と合わせて商品紹介の予定です。

Tempoで使用した3線バランス駆動についてFAQを作ってみました。

 

 

3線バランス駆動のFAQ

Q1: 3線バランス駆動はバランス駆動といえるのでしょうか?

A1: 平衡信号(逆相信号)を利用していると言う点ではバランス駆動です。通常の平衡信号に不平衡信号(同相成分)が重畳しているだけでバランス駆動の一種です。

Q2: 3線バランス駆動は通常のステレオアンプ(ヘッドホンアンプ以外)に使用できますか?

A2: 出来ません、そもそも通常のステレオでは3線バランスを利用する必要がありません。

Q3: 3線バランス駆動は通常よりも増幅段が増えるのでしょうか?増幅段が多い場合、それによる音質劣化は考えられますか?

A3: 増幅段を増やさずに処理が可能ですので、原理的に音質劣化の要因はありません。

Q4: 3線バランス駆動は通常のアンバランス駆動に比較して欠点はありますか?

A4: 技術的に設計が難しいこと、これを利用したアンプが限られていることです(現在Tempoのみ)。

Q5: 3線バランスは通常のバランス駆動よりも音質は劣ると考えていいのでしょうか?

A5: 3線である以上クロストーク成分が存在しますが、音質が悪くなるとは限りません。是非、実際に試聴して確認してください。

 

 

 

0.00003%の超低歪率を謳うバッファアンプLME49600、歪率は0.7%でした、アチャー

ナショナルセミコンダクター(今はTIグループ)のLME49600という型番のバッファアンプがあります。バッファアンプと言うのはゲインを持たないアンプの事で、インピーダンスの小さい負荷を駆動する際に出力段に挿入します。最近ではヘッドホンアンプの出力段によく使われています。

このLME49600の歪率の公称スペックが0.00003%ともの凄く、このデバイスを使用したアンプはたいていこの数値を出して自慢しているのを目にします。歪率を測定慣れしている人間からするとものすごい値で、いったいどんな回路なのかと思っていました。

データスペックに掲載されている回路図を見るとインバーテッド・SEPP出力段といえる回路で、通常のSEPP回路に較べて優れていはいるものの、無歪になるような回路ではありません。また、回路構成がB級駆動になる回路でアイドリング電流が小さいことも気になります。
データシートをよくよく読んでみると、後ろの方に上記の歪率はOPアンプと組み合わせた時の測定データだと描いてあります。OPアンプと組み合わせると歪率は1/100から1/1000にはなるのが当たりまえなので、その時の歪率の値を使用するのは、そもそも非常におかしな話です。データシートはデバイスそのものの特性を知るためにあるので、デバイス単体のTHDデータを出すのが普通です。

LME49600のデータシートに出ている全高調波歪率(THD+N)特性
(実はOPアンプ+トータルNFBでTHDを極限まで小さくした時のデータ)

LME49600単体で実際に測定した時のTHD+Nデータ(縦軸のスケールが上のグラフとは100倍違うので注意してください。)
横軸の単位が違いますが。0.1Wが1.8V、0.3Wが3.1Vなので実際にはほぼ同じあたりを見ています。

歪み成分の波形
歪み成分は3倍の高調波成分が主で、素直でした。

実際には1%前後の歪率なのに、その1万分の1以下のデータだけを示すのはどうかと思います。
そもそも0.00003%なんていう値は普通には計測できません。ちなみに所有している高調波歪率計の残留ひずみ率(測定限界)が0.0004%で、上記スペックの10倍でした。最近は歪率が100倍になる回路で計測しておいて、表記するときは実測値の1/100に計算するなんていうトリッキーな方法が多くなっていますので、測定データ自体がだんだん怪しくなっているのです。

LME49600と同等の出力段を個別素子で作るとデバイス10個ぐらいを基板に並べなければいけないので結構大変です。そういう意味ではこの素子は便利な素子です。ただその性能は格段に優れているというわけではなく普通です。

「かあさん、オレオレ・・・」今どきこれに引っかかる人はまずいない。

「お兄さん、いい子いますよ」これも大丈夫だろう。

「0.00003%のLME49600を使用したxxアンプ」皆さんはこれ大丈夫ですか?

というお話でした。

追伸

テキサス・インスツルメンツ(TI)さんの半導体デバイスは一般にデバイスの性能がいいだけではなく、データシートも非常に詳しくてわかりやすく、かつ各種サポートが充実しているので、私は普段から好んでこのメーカーのデバイスを使用しています。
このトピックはそういったTIさんへの信頼を裏切るものではありません。
あくまでひとつの話のネタとして読んで頂ければ幸いです。

CQ出版「トランジスタ技術」での携帯型ヘッドホンアンプの連載はいよいよ最終回です

CQ出版さんの「トランジスタ技術」に携帯型ヘッドホンアンプの製作記事を連載しています。9/10発売の10月号の第4回目の記事(最終稿)で終了となります。6,7,8,10月号と4回に渡りCQ出版さんにはお世話になりました(9月号8/10発売の号は記事がありません)。

以前は、会社で研究開発職についていたので、英文も含めて論文のようなものはたくさん書きましたが、雑誌への記事というものは初めてで、良い経験になりました。

以下感想を簡単に。
トラ技の凄い所・図面はすべてトレースする
原稿を書くようになって初めて知りましたが、図面はすべてトレースし直します。回路図はもちろんスペクトルの様な複雑な図も再トレースしているのです。この図面のトレースだけでも大変な労力、コストで、もちろん記事を見やすくするためだと思いますが、これには頭が下がります。

ただし、音質については一切記述できません
記事の中に音質がxxyyと書くと削除されます。音質というのは主観で客観的なデータでは無いので書かないで下さいと言われます。事実と感想を区別して記述してあれば、問題ないと思うのですが、この辺は結構頑固でした。

10月号の最終稿では携帯型ヘッドホンアンプの特性を計測しています。同時に入力ソースとなるiPodのオーディオ特性についても紹介しています。

皆さん是非トラ技を覗いてみてください。
そしてお読みになった感想をCQ出版社に一言伝えていただけると、著者としてもとても嬉しく思います。
読者アンケートはこちらです(Reader’sForumに掲載されると、もれなく図書カードを貰えるそうです)

ポタアンPEHA-6010

以下トラ技に書いた記事のダイジェストです。


携帯型ヘッドホンアンプの歪率特性(無負荷)  極めて良好

負荷を掛けるとやはり少し悪化します。

携帯型ヘッドホンアンプの歪率特性(24Ω)


工夫(ずる)をするとこのような良好な歪率特性が得られるようになります。


携帯型ヘッドホンアンプの過度特性(良好です)

話は変わってiPod nano 4thの特性です。

iPodの歪率特性


iPodの正弦波信号1kHzの出力波形(高周波ノイズにまみれています)


ヘッドホンアンプを通すとiPodの正弦波信号もこうなります(工夫しているので)

(詳細はお知りになりたい方はトランジスタ技術10月号を是非買って読んで頂ければ・・・・と思います)

CQ出版社WEBでキット完成品を販売中、弊社サイトでも完成品がご購入いただけます。

PEHA-6010のホームページはこちらです

トランジスタ技術にポタアンの連載を始めました

CQ出版社のトランジスタ技術という雑誌に携帯型ヘッドホンアンプの連載を始めました。

トランジスタ技術という雑誌は雑誌の中でも最も技術的に高度で私が読んでも難しいと思う程の雑誌で産業界の技術者が読むものと思っていました。
トラ技

もちろんそうした側面は現在でもありますが、最近は一般の個人の方に向けた記事も多くなってきています。
私が始めた記事も個人の、しかも電子回路をまったく知らない初心者の方にも理解いただけることを目指して書いています。

5/10発売の6月号はヘッドホンアンプの概要と要求される出力電流、電圧について解説しています。ヘッドホン・イヤホンというのはスピーカーと違って、インピーダンスをばらついており、しかも構造が異なるので能率も広く分布しているので、必要な出力を求めるのは簡単ではありません。ポタアンの場合は出力を大きく設計すると、そのまま電池寿命の低下につながるのでこのへんの設定が結構ややこしいのです。

同時にポタアンのキット、完成品も発売開始しましたので、こちらの方もよろしくお願いいたします。
ポタアンPEHA-6010

このポタアンはOPアンプ+ディスクリートバッファの構成ですが、性能、音も結構いいです。(THD+Nで0.005%を切っています)
交換用OPアンプもついてきます。回路自体は極標準的なものですが、自作するとなるとこれだけの部品を集めるだけでも大変だと思います。
回路などもすべて公開して解説していきますので、これをベースにいろいろくふうしてみるのもありだと思います。

CQ出版社WEBでキット完成品を販売中、弊社サイトでも完成品がご購入いただけます。

アンケートのお願い
記事内容に関する感想、ご要望などございましたら遠慮なくお寄せ下さい。
下記サイトにCQ出版社のアンケート用ページが御座います。
(図書カードのプレゼントも有るようです)
アンケートはこちら

PEHA-6010のホームページが出来ました。

携帯型イヤホン・ヘッドホンアンプ(ポタアン)が完成しました -販売開始しました-

お知らせです。
携帯型イヤホン・ヘッドホンアンプ(ポタアン)を発売します。

今度のはちょっと毛色が変わっています。
な、なんと
・組み立てキット
しかも
雑誌の記事でも解説しちゃいます。
その雑誌とは
・「トランジスタ技術」CQ出版社です。
え?知らない、そうかもしれません。
今まではどちらかと言うと、業界のプロが読む雑誌と思ってました、私も。でも最近は一般の方に読んでいただくべく、努力されています。

加えて、今度の春のヘッドホン祭りでは
・席を並べて売っちゃいます、キットも雑誌も
(CQ出版出版さんと弊社で並んで参加します)

今度の6月号(5/10発売)から記事が始まりますので、是非読んでいただければと思います。

お値段も比較的お手頃だと思います。

どんなものかというと、こちらです。

外観

中はこんな感じ

基板の様子

電池は006Pです。中点を作る回路を使用して正負電源、DCアンプ構成、OPアンプにSEPPバッファをつけています。OPアンプの交換も可能で、結構高性能です。
ハンダ付け未経験の方でも作れるように努力しました、はい(最低限のの工具は必要です)。

型名:PEHA-6010

お値段は
キット18,000円(税、送料込)
完成品19,999円(税、送料込)
来週中にCQ出版社のWEB販売に掲載されますので、興味のある方は是非。
キットは作り方を記載したマニュアルが入っていますので、今すぐにでも製作出来ます。
キットは基板への実装をすべて自分でやるので結構作り応えもあります。

弊社でも完成品のみ販売します(近々ご案内させていただきます)。

今度のちびっ子よろしくお願いいたします。

追記(4/18)
CQ出版のWebショップで販売開始されました。
販売サイトはこちらです。
CQ出版のWebショップ(キット)はこちらです

CQ出版のWebショップ(完成品)はこちらです

弊社の販売サイトはこちら(完成品のみ)

今度の春のヘッドホン祭り(中野サンプラザ5/10-5/11)でもこのアンプ販売予定です。

ちなみに弊社独自のポタアン(昨年の秋のヘッドホン祭りに出展したもの)もバージョンアップして登場予定(まだ参考出品ですが)です。こちらの方もご期待ください。