オーディオデザインの最近について

<このところ暇なのに忙しい>
もっと頻繁に更新すればいいのだがどうせ文章にするのなら、まとまりのある話にしたいと思ってしまって、どうしても間が空いてしまいます。

全体的に受注は負の圧力を受けている気がします。まあ製品というのはほおっておくとだんだん売れなくなるものなので、魅力を増すように常に努力しないといけないし、新しい製品も出さなくはいけない。売れ行きが悪いのは景気とかいった外因によるものではなく、製品の競争力が原因である事に気づかずにいるケースも考えられます。たとえば汚く美味しくない飲食店主が「ヤーやっぱり景気が悪くて客が来ないなー」なんて言ってるのと同じではいけないと思います。とはいってもやっぱりこのところ渋いですね。

売れ方にも変化があり、以前は問い合わせがあっても一点だけ疑問点を聞いて、即購入という事が多かったのですが、最近は問い合わせをいただいてもそう簡単にご購入いただけず、慎重に慎重をきすお客様が多くなった様な気がする。

景気が悪い事は確かですし、総務省の家計消費動向をみてもオーディオ製品の欄は悲惨です(あまりに酷いので図は出しません)。

<事務所の移転>
ただし景気が悪いといい事もあります(なくても無理やりでも探しましょう)。たとえばビルのテナント募集が増えてきた事。条件的にも借主に優しくなってきています。

という事で、来月事務所を移転します。現在の事務所は自社の事務所・作業場としては問題ないのですが、スペース的にパンパンで、お客様のご来訪に対応できる状況を作れませんでした(試聴に予約しろとは不便ですよね)。
現在の事務所より広く、間取りも使いやすいところを見つけました(今よりちょっと古い建物だが・・・)。3月初めの移転を考えています。今度はいつでも試聴に対応できるように環境を整えるつもりです。商品も多少展示して事務所兼簡易店舗の様なかたちにしてアンプ類の購入をしやすくしたいと考えています。場所的には便利な五反田から少し引っ込みますが(+私鉄2駅)、その分便利になる点もあるので、全体的にはサービス向上になっていると思います。

<オーディオ雑誌へパワーアンプの評価をお願いしました>
最近パワーアンプをオーディオ雑誌へ持ち込んで評価をお願いしています。早いものでは今月販売される雑誌に掲載される(と思う)。今まで製品を送って記事掲載をお願いした事はありましたが、今回はより丁寧に編集長にお会いして製品の特徴なども説明してきました。今回、オーディオ雑誌、オーディオ評論家の先生などに関して認識を新たにした部分もありますので別途詳細に報告させて頂きたいと思います。

スピーカーシステムの参考書 -これも書店にないが断トツでこれ-

今回はスピーカーシステムの参考書を紹介したい。
といっても残念ながら絶版で中古でも入手困難である。
オーディオ用の本はそういうものが多いが、(オーディオは過去の遺物なのだろうか)何とか大きな図書館では閲覧できる。

それはこの本です。

スピーカーシステム 山本武夫著
1977年 上・下 ラジオ技術社

パイオニアにいらした方の執筆で、内容はすごい。大学の理系の人がやっとこさ理解できる内容で、趣味の本というよりも物理学の専門書といった方が良い。それも入門書のレベルではなく上級者むけである。スピーカーの動作を物理学として捕らえて、かつ当時のすべてのスピーカー様式に関して理論的に解説してある。
例えばスピーカーを定電圧駆動するとある領域で音圧特性が平坦になる理由も本書をたどると理解できる。(そんな事はどうでも言いといわれればそれまでだが)

発売されたのは1977年で、実は18才くらいの時に中身がろくに理解できなかったにもかかわらず買ってしまった本である(買っておいてよかった)。この本で含まれていない内容といえば、最近のTSパラメータだとかパソコンを中心としたシミュレーション関連の話だけである(当時はパソコンでそんなことできなかったしTSパラメータは比較的新しい話なので当たり前だが)。30年前なのでホーン型スピーカーなども結構なボリュームを割いている。表紙を飾るのはあのCS-955だ(今新品であったら聴いて見たい)。最近流行のトールボーイ型(?)見たいなスピーカーの解説は無いが、多数のSPを並べるシステムについてはPA用としての解説がある。

そういえば当時の入門者用の本でも「スピーカーシステムとその活きた使い方」などは相当な技術内容を含んでおり、面白かった。
今書店に並んでいる内容の無いオーディオ本とはまったく正反対だ(そう思っているのは私だけ?)。

当時はオーディオが産業として成り立っていたので、技術・お金・人材、それからこういった図書のような周辺にまでいいものがあったのだと思う。

現在この本が簡単に入手できないのは誠に残念だが、この本を残してくれた事に感謝すべきかもしれない。

オーディオ的にコンデンサーの特性を評価してみよう −フィルムコンデンサーの鳴きを定量化する−

今回は久しぶりにアンプ部品の特性評価について解説します。

オーディオアンプにおいて使用されるコンデンサーにはいくつかの役割があります。

一つは電源など交流成分(リップル成分)除去の目的で使用される平滑コンデンサ(電解コンデンサ)

2つ目は信号系路上でDC成分除去の目的で挿入されるカップリングコンデンサ(フィルムコンデンサ、電解コンデンサ)

3つ目は位相補正、周波数特性調整に使用される小容量コンデンサ(主にフィルムコンデンサ)
です。

コンデンサの使用場所によっても重要な特性項目は多少異なりますが、 オーディオアンプに使用されるコンデンサの評価項目には次の3点があると思います。

  1. インピーダンス特性
  2. 振動耐性(コンデンサのいわゆる「鳴き」)
  3. 歪率特性

1のインピーダンス特性に関しては以前にコラム(アンプの使用部品の特性(コンデンサ編))で紹介したとおりです。
3の歪率特性は実は測定を試みましたが、簡単に測定できるほど大きくありませんでした(測定器の限界0.0005%以下)。

今回は2の振動耐性についてお話したいと思います。

振動耐性と表現したのは、コンデンサが外部から衝撃を受けたとき、あるいは信号電圧が印加されてコンデンサの電極間に電圧がかかった際に電極間のクーロン力によってお互いが引き合い、電極間隔が変動する事を想定しています。オーディオアンプにおいてコンデンサにかかる交流電圧は数Vから数十Vで、それほど電圧の絶対値は高くないのですが、電極間隔は1μ程度と狭いので結構なクーロン力が働く可能性があります。

オーディオ的な音質上の評価としてはいわゆる特定のコンデンサにはいわゆる「鳴き」と呼ばれる、極端に言えば一種カーンと響くような音が聞こえることがあります。 これは先に述べた電極の振動に由来すると考えられ、この振動耐性(鳴き)を評価することを試みて見ます。

今回測定したコンデンサはプリアンプの出力などに使用されるいわゆるカップリグコンデンサでコンデンサのタイプとしてはフィルムコンデンサになります。

容量は主に2.2uF程度、耐圧は250Vから630Vとなっています。

私に知る限りこの振動耐性を定量的に評価したデータは見た事はなく、したがってその測定方法もこれといったものはありません。

いろいろと試行錯誤の結果、振動耐性を検知できるようになりました(測定方法詳細はノウハウなので秘密です)。

下の図がコンデンサの振動特性の測定波形です。横軸は時間1ms/divで、縦軸はコンデンサの容量変化に比例する(と考えられる)電圧です(1mV/div)。

capacitor-shindou-wave.jpg

約3ms(300Hz)周期でパルス上の変動が検出されています。波形がパルス状なので成分に分解するとすうKhzから数十KHzに相当しますので、丁度聴感上の帯域と一致します。デジタルオシロで波形が撮れれば良かったのですが、単発現象でデジタルオシロでの波形保存ができませんでした。波形の形と周期は各コンデンサ間で大きな違いはありませんでした。

この波形の第一ピークの波高値を縦軸にしていろいろなコンデンサ(すべてメーカが異なるもの)の測定値を調べた結果を次に示します。

capacitor-shindou.gif

横軸は市販価格でプロットしてみました。結果的には価格との相関は何らない事がわかります。測定したコンデンサ中にはこの振動耐性が非常に悪いものがあります。いいものと悪いものでは10倍くらい違います。また高くても振動耐性は何ら良くなっておらず、この点からは価格的なメリットがありません。

このようにグラフにするとすごいのですが、聴感上の差はフィルムコンデンサの中で比較するとそれほど大きいものではありません。一般的にはある特定のコンデンサで微かに鳴いているかな?という程度です。 フィルムコンデンサの良質なものの中では瞬時切り替え比較をしても、実際には判別が難しいくらいのものです。

また電解コンデンサの場合、構造的に電解液でダンプ(制振)されているのでこういった鳴きを検出するのはより困難だと思います。
ただこういった音質と関連する定量的な評価手法を確立しておくと、部品の評価も非常に効率的になるかと思います。

弊社のプリアンプパワーアンプのコンデンサはもちろんこういった解析を通じて性能の良かったものを使用しています。音質の向上が期待できるだけでなく、価格の抑制に貢献していると思います。
以上、コンデンサの鳴きの定量解析でした。

パワーアンプのダンピングファクターに関する解説

ダンピングファクターの音質に与える影響

一般的にダンピングファクターに関する認識は次の様なことではないでしょうか。

  1. DFが大きいほうが低音に締りが出てくる
  2. DFが極端に小さいと(<10)低音の量感は増す(実際に低音の音圧レベルも上がることが知られています)
  3. トランジスタアンプの出力段を並列にするとDFが良くなる

ただし3の項目は以前のコラムにも書いたとおり、実は間違っています。トランジスタアンプの場合、同じ放熱器に出力段を並列にして並べると、1段当たりの電流量が半分になるためトランジスタの出力抵抗も2倍になるので、出力段を並列に並べる事に意味はありません。 DFは実際には他の要素で決まっています。

ダンピングファクターとは

話を基本に戻しますが、ダンピングファクター(DF)とは、一般にパワーアンプのスピーカーに対する制動力を表すと考えられている指標で(だからこの名前が付いた)、パワーアンプの出力インピーダンスとスピーカーのインピーダンスの比で表されます。

DF=Zsp(Ω)/Zamp(Ω)
ここでZspはスピーカーのインピーダンス、Zampはパワーアンプの出力インピーダンスです。
一般的なに半導体アンプで100程度の値を示します。この場合スピーカーのインピーダンス8Ωに対して、パワーアンプの出力インピーダンスは80mΩである事を意味しています。

ダンピングファクターの測定方法

ダンピングファクターの測定方法で最も一般的なのはON-OFF法です。 これはパワーアンプの出力にダミー抵抗を接続したときと接続しないときの電圧差をΔVとし、測定電圧をVとすると、
DF=ΔV/V
で計算されます。例えばDF=100の場合、3V出力時(約1W@8Ω)、負荷のある無しによって30mVの電圧差が生じるという事になります。
弊社のパワーアンプDCPW-100(DF>1500)では3V出力時に8Ω負荷をつないだ際の電圧降下は2mV以下という事になります。こう書くと簡単に聞こえますが実際には3.000Vと2.998Vを正確に読み取る必要があるので、有効桁数の多い測定器が必要になります。弊社ではこの目的のために有効数字が6桁のデジタルマルチメーターを購入しました。
dvm320.jpg
0.01mVの単位まで測定できるデジタルマルチメーター

ダンピングファクターの統計解析

市販されているパワーアンプの価格とDFの関係をプロットしてみました。
ピンクの四角印が海外製、丸印が国産アンプで、三角が弊社のパワーアンプです。
power-statisticsdf300.jpg
ピンクの四角印が海外製、丸印が国産アンプで、三角が弊社のパワーアンプです。
(データはハイエンドショー・インターナショナルオーディオショーで集めた半導体パワーアンプのカタログデータから拾いました)

一般に100-1000位に分布していて特に価格に対する依存性は無い様です。中にはDFが3000というパワーアンプがありました(実はこの数値は非常に怪しい)が、他のハイエンド機と比較しても弊社のアンプのDF=1500が非常に優れている事がわかります。
一般にDFが大きく、価格が安い方がいいと考えると、DFを価格で割ったDF/P(/万円)の数値が大きいほど(左上に行くほど)いいアンプと考える事もできます。価格も考慮したDF/Pファクターで考えると弊社のアンプは断トツです。

power-df-statistics-2.gif

ダンピングファクターが音質に与える効果についての考察

とはいえDFの値が音質に直接比例するわけではありません。DFが1と10では音質も大きく違うかもしれませんが、100を超えると例えば低音の締りが良くなるということを必ずしも実感できるわけでないかもしれません。 というのもDF=100とDF=1000の違いはアンプの出力インピーダンスが80mΩか8mΩということで、この差はスピーカーケーブルの抵抗、あるいはウーハーに直列に入っているコイルの抵抗(数百mΩ)によって、実際には見えなくなってしまう可能性が高いからです。
ただ数百以上のDFの効果というのは低音域の大信号に対して高音域が濁らないですとか、低音域の音階がはっきりわかる、低音が静かに聞こえるという様な聴感上の効果があるように感じます。DF=1000というのはスピーカーからの反作用がインピーダンス分返ってきたとしても、それによる電圧変動が1/DF(=1/1000)に抑制できると 考えたほうが妥当なのだと思います。
DFが100のアンプからDFが1000のアンプに変えても、数値から単純に想像する10倍の効果は無いと思ったほうが正解です。

オーディオ養生所 -JBL43xxを聴き易くしたい-

3番目のケースはもう少し一般的なケースです。

ケース3:「JBL4343を使用しているが音がきついので柔らかくしたいのだが、お宅のアンプはそういう効果はないか?」。

-うちのアンプは逆効果です-

こういったお問い合わせも結構な頻度でいただくのです。まず最初に弊社のアンプはどちらかというと解像度が高く、音ががんがん前に出てくる傾向があります(他のアンプと比較してですが)。パッシブプリもその方向で、決してきつい音、硬い音ではないのですが、音が柔らかくなるわけでもありません。強引にそういう方向(柔らかくする方向)にするなら、トランスを入れるとか、真空管アンプあたりを当たってみるしかないと思います。というわけでこういったお問い合わせをいただいた際は「うちのアンプは逆効果です」とお断りしています。

-レコードとCDでは出てくる音が結構違います-
注意していただきたいのはレコードとCDでは出てくる音の傾向が異なり、極端にいうと逆になります。レコードを再生すると自然と音に厚みがあり、重心が低音域にあって自然と心地よい音になります。アンプにしてもスピーカーにしても高性能・高解像度にすればするほど音は良くなります。こういった場合は弊社のアンプは何もしなくても威力を発揮します。
CDの場合は一般にどちらかというと中高音が目立ってしまうことが多いのです。私の場合レコードはほとんど聴きませんが、プリアンプのイコライザアンプのチェック時に実際にレコードかけるのですが、そのたびにレコードの方が音質そのものは数段上だなあーと思ってしまいます。CDの場合はセッティングにコツがあるのです。

-レコード時代のオーディオ製品を使用する際は注意しましょう-
(その1:SP編)

JBL4343はまさにレコードの時代のスピーカーです。レコードを聴く分には丁度よくても(というよりだからこそ)、これでCDを聞いたら中高音がきつくてどうにもならなくなっても当たり前です。昔聞いた4343の音がよかったからといって、何十年も前のスピーカーで(仮に初期の性能を維持していたとしても)、今CDを聞いたらどうにもならないことがあっても不思議ではありません。JBLの今のSPはホーン型という形式こそ同じでも、その素材はダンプされたものに変わってますし、全体の音質もCDにあわせて聞きやすくなっていると思います。スピーカー全体の傾向もホーン型やハード系のツイーターよりも、シルク系のソフトドーム型が増えているのも、ソースがCDになったからだと思います。

(その2:アンプ編)
アンプの方はどうかというと、これも実は内容的には音がソフトになるように若干味付けは変わっていると思います。たとえば抵抗は、昔の高級機ではは解像度が高い金属皮膜抵抗を使用していましたが、今はオーディオ用のカーボン抵抗を使用することが多いと思います。電解コンデンサも今は”シルミック”の様に電解コンデンサにシルクをわざわざダンプ剤として入れて音を落ち着かせるものが、高級機では多く使用されています。
ただ昔のアンプは20-30年も経つと音がだんだんと精細さを欠いて、情報量が落ちた(つまらない音)に変化していく傾向があるので、結果的にCDを聞くと丁度良かったりする事はあると思いますが・・・・。
(その3:組み合わせ編)
ですので大昔のSPと大昔のアンプで組み合わせた場合、SPだけ古いよりはひょっとしたらバランス的にまとまるかもしれません。ただこの状態で新しいアンプと入れ替えると、どれを試しても「今のアンプの音質は良くない」ということになってしまうと思います。こうなるともう悲劇でどんどん極端に狭い楽しみしかできなくなっていってしまうと思います。

-今の機器でCDを心地よく聞くコツ-

CD時代にバランスの取れた音質にするコツはまずスピーカーの低音域がたっぷりと出る設定にすることです。小型のスピーカーを壁、床から中途半端に離して置く設定が最悪で(こういうセッティングは実は多い)、もうどうにもなりません。CDは中高音がきついので、それ負けないくらいの低音をどーんと出してあげないと帯域のバランスが取れないのです。

今回、ちょっと話があちこちに飛びましたが、レコードとCDでは実際の音の聞こえ方が結構違う事、したがってその時代の機器の音も結構傾向が違う事、アンプの音質も劣化すること、CDは普通に聞くと結構聞けない音になってしまうことなどを知っておくと機器選定にも少し役立つのではないでしょうか?

なまじ昔の高級SPを安く購入して、それにアンプ類を合わせていくと、結局高くついて、しかもにっちもさっちも行かなくなってしまったという人が多いように思えるのは気のせいでしょうか?

<追伸>JBLの43XXと書きましたが、4338の様な現代(CDの時代)に設計されたSPであれば上記の様な事はなく、弊社アンプともよく合う事は言うまでもありません。