オーディオ機器のジッター特性を実測してみました 結構意外な結果が……

はじめに

DAコンバーターなどでジッターが小さいということがよく謳われていますが、実際にジッター特性を計測した例はほとんど見たことがありません。水晶発振器のカタログ上のジッター値を掲載してxxpsとか、はたまたxxフェムトsなどと言っていますが、実際のところは謎です。

オーディオプリシジョン製のオーディオアナライザーSYS-2722にはジッターの測定機能がありますので、ジッター特性を計測してみました。SYS-2722単体ではSPDIF信号のジッター解析が可能です。この測定器にはSPDIFのデジタル出力(XLR、光、同軸)とデジタル入力があり、SPDIF出力をSPDIF入力に接続すると測定系のジッターが計測できるのです。

その前に、オーディオアナライザーSYS-2722の構成について

そもそもこの測定器単体は測定だけを行っていて、その制御は別のPCで行います。windows10用の測定ソフトがダウンロードできますので、それを自分のPCにインストールして計測システムを構築します。またSYS-2722との接続には専用のインターフェースボード(GPIBボードのようなもの)をデスクトップPC内に増設するか、USB接続アダプターを使用して接続します。USBアダプターがあるとノートPCでも測定・制御が可能です。

測定系の接続としてはこれだけ

複雑な測定ではこう(ご参考)

SPDIF信号のジッター解析(測定器)

まず最初に測定系のジッター解析を調べます。 この測定器にはSPDIFのデジタル出力(XLR、光、同軸)とデジタル入力があり、SPDIF出力をSPDIF入力に接続すると測定系のジッターが計測できます。

測定した結果がこちらです。縦軸の目盛が切れていて申し訳ありません。縦軸はUI(ユニットインターバル)になっていて、サンプリング周期(sec)となります。今回48kHz(赤)と96kH(青)で測定していますので、それぞれ1UIが21usecと10usecになります。この測定ではXLRコネクタで接続しています(AESか?)。

SPDIF信号のジッタースペクトル

結果を見ると1kHz以下で周波数が低くなるにつれてなだらかに上昇していますが、1kHz以上でほぼ一定となっています。さらに2kHz以上で周期的にスペクトルの上昇がみられます。SPDIF信号に1kHzの正弦波を使用したので、その影響かもしれません。96kHz(青)が全体的に2倍になっていますが、これは縦軸の基準がUIなので、見かけ上そう見えるだけです。

いよいよCDプレーヤーのジッター特性の測定結果

次に実際CDプレーヤーでのジッター測定してみます。今度はCDプレーヤーのSPDIF信号をSYS-2722のSPDIF入力にいれて、同じ測定をしてみます。CDプレーヤーは手持ちの2台DV-600AVとSD-9500を使用しました。


測定したプレーヤ
DV-600AV簡易DVDプレーヤ


SD-9500
東芝のフラッグシップDVDプレーヤー
ついにSACD(DV-600AV)購入: 地蔵の気まぐれブログDVD-VIDEO TOSHIBA SD-9500 | Hi-Fi.ru

測定結果はこちらです。

ピンクがSD-9500、赤がDV-600AVです。測定時は音楽CDを入れて演奏しています。ピンクのSD-9500ではなんと測定系のバックグラウンドまでスペクトルが低下しているというか、それよりもいいくらいです。一方赤のDV-600AVではジッターが全体的にジッターがてんこ盛りになっていて、はっきりとした差(10倍以上)が出ました。

今回SPDIF信号のジッターを測定しているわけですが、実際にDV-600AVのSPDIF信号をDACに入れて再生しても、特に音質は悪くはないので、これをもって音質と直接の相関があるとは言い切れないのですが・・・。ただ測定結果としては興味深いと思います。DACのクロック系のジッターとSPDIF信号のジッターでは音質へのインパクトが異なるのかもしれません。

ジッター信号のヒストグラム

SYS-2722は上記のジッタースペクトル(FFT)以外にも様々な観点から観察できます。

以下は信号の時間のずれのヒストグラムになります。横軸が時間で縦軸が確率です。DV-600AVでは+-4nsec、SD-9500では+-1nsecに収まっていることがわかります。またその頻度は最大2、3%です。

ジッター信号の時間経過

こちらはジッター成分の時間経過を観測したものです。SD-9500が圧倒的にジッター成分が小さいことがわかります。この図でみるとジッター成分はほぼ周期成分に見えます。

終わりに

以上、オーディオアナライザーを使用してジッター特性を測定してみました。今後さらにいろいろなジッターを測定してみようと考えています。

Harbethハーベスを試してみました

(普段なら買わない製品を買って試してみたら その3)

経緯

最近のスピーカー(SP)は箱をがちがちに固めて振動しないようにして、ユニットはレスポンスの良くガンガン駆動するのが主流です。その一方で、逆に箱なりを利用しているかのような主流と反対路線のSPもあり、これもまた人気があるようです。たまにはこういったSPも試してみましょうということでHarbethの compact 7es-3というSPを中古で入手して聴いてみました。

印象

中古でスタンド込みで入手しました。中古とはいえ傷もなく、オーディオショップから購入して4年程度の良品でした。このSPはウーハーが20cmあり、そこそこの大きさです。ただ持ち上げてみるとびっくりするほど軽く拍子抜けします(13kgしかないのです)。最近のSPは見た目よりもずっしりと重いことが多いのですが、さすが路線が違うという感じです。スタンドもまるで小学校の椅子のような趣で、これまた非常に軽く設置はしやすいのですが、高さ調整がないので単に置いただけだとカタカタとします。

軽いのは非常に設置上ありがたく、腰も痛くならないので私としてはこれはこれで好印象です。

聴いてみて

見た目に反して中高域はやや硬いともいえる音がします。全体の外観からソフトドームと思い込んでいましたが、これハードドームでした。最近の超低歪のSPを聴いてきたからでしょうか、これ中域が結構濁る感じがします。

低域ですが箱が鳴るタイプですのでスパッと切れないんじゃないかと心配していましたが、そんな心配は無用でした。中低域は普通のSPよりも量感はけっこうあり、心地よいバランスになっています。ただ50Hz以下がほとんど出ていないように聞こえ、普段なら聴こえるバスドラムがスカッとなくなっている様です。感覚的には13cmウーハーです。量感は出るが低域が伸びないというちょっと残念な結果です。

アンプも種類を変えてみましたが、真空管アンプ(300B)で駆動した時にこのSPの良さが一番出るように思いました。

このSPをしばらく聴いてから、804D3やPL-200に戻すと音質自体はいいものの、かなり淡白な音で物足りない様にも聞こえるから不思議です。

ただHarbethの音というのは中高域の歪感や濁り、超低域の迫力不足がどうしても気になって、これを使い続けるのはアンプメーカーとしてはちょっと?という気がしました。

こういった箱の鳴りを利用するのは(というよりそこまでこだわらずに作ったら、結果的にこうなったということかもしれませんが)悪いことではなく、例えば中低域のミッドウーハーなどはこういった”鳴る箱”もいいかもしれません。現在のオーディオ界は何でもよく考えずに極める悪い癖があるので、反面教師としては面白いSPですし、もう少しセッティングに凝って、これに合うソフトなどをそろえるところまでやると、このSPの良さを満喫できるかもしれません。

最初は箱の鳴りというのは音源(楽器の音)に「響き」がすでに含まれているので、SPでさらに鳴りを加えたらおかしくなるのでは?と思っていましたが、実際にはそんなことはなく、魅力的な方向かもしれません。ただこのSPユニット自体の特性(特に高域)や超低域が出ないバスレフセッティングに、ちょっといただけないかなと私は感じてしまったということです。

おわかれ

アンプメーカーとしてはレファレンスあるいはサブとして使用できるようなタイプではなく、性能の良いアンプで鳴らすと逆にSPの粗が目立ってしまうような結果でした。

というわけで、このSPは1か月もたたない内に旅立つことになりました。趣味の合う人の下で余生を過ごしてほしいと思いました。

勉強になりました。

普段なら買わないかも?というオーディオ製品を色々と試してみました その1・ヘッドホンアンプ

こんな事情で買ってしまった

6月は当社の決算月で、ここで1年間(令和2年度)の締めとなります。皆さんコロナで家にいる機会が多くなっていることも幸いしてか、お陰様で売り上げはなかなか好調でした。となると利益の34%は法人税として納めることになります(他にも税金はたくさんありますが)。

消費税も考慮すると、何か買うと44%得するので、買うべきものがあったら購入しておいた方がお得です。しかも中小企業は特例で一個33万円(税込)まで、計10個分は資産ではなく消耗品として購入できる(全額経費になる)のです。

ということもあって、買ってもいいかな?(普段なら買わないかも)というオーディオ製品をいくつか購入して試してみました。また、なぜか結果的に、普段の嗜好とむしろ逆の製品も購入していました(なぜかは分からない・・・)。

第一弾 ヘッドホンアンプ

ずいぶん前に聞いたときは、良かったのだが・・・

この機種は聴きたいというよりも、現在の標準機器のレベル・音質を知っておいた方がいいだろうということで買ってみました。30万円クラスのヘッドホンアンプです。業界の標準アンプといっていいい機種かと思います。ずいぶん前ですがこの機種のだいぶ前のモデルを1日聴いている機会があり、なかなかいい音だったとの認識がありました。

今回改めて最新型を聴いてみて驚いたのですが、今回はあまりよく感じません。ヘッドホンはAKGのK-701を使用しました。全体の帯域バランスはいいのです。K701はオープン型で、ともすると低域が不足気味になることも多いのですが、低域の量感も十分でいいバランスです。

何がよくないかというと中高域が冴えないというか、濁ります。ヘッドホンというのは普段スピーカーの音を聴いている人が聴くと驚くほど繊細で細かい音が聞こえるはずなのですが、そういうことがなくて逆に驚きます。普段聞いているSPの方がむしろ繊細な音が聞こえるくらいです。大切なものをたくさん失ってしまった様な音です。

音に透明感がないというか、弦の音が濁り、オーケストラがお団子になって聞こえてきます。当社で以前DCHP-100というヘッドホンアンプを出していましたが、こちらの方がヘッドホンの良さを各段に出しているように思います。ただしDCHP-100は低域の量感が出にくいので、組み合わせを選ぶということはあるのですが。

このアンプを聴くと複数の方が当社にヘッドホンアンプを造ってと連絡されてくる理由がわかる気がします。順番があるのですぐにヘッドホンアンプの新製品を出せるわけではないのですが、いつかヘッドホンの良さを最大限に発揮するアンプを造ってみたいと思います。

次はこれらを予定しています。

300Bシングルアンプ

たまには真空管アンプでも聞いてみますか

そして第3弾はスピーカー

とあるスピーカーの名器?

しばらく聞いてみたが今はソファの後ろに

第4弾はサブウーハー

KEFのサブウーハーKC62

MMカートリッジの周波数特性   -負荷容量はマイナスが正解-

MMカートリッジの周波数特性は負荷インピーダンスによって大きく変わります。その影響で音質も大きく左右されるので、実際の特性がどうなっているかを調べることは重要です。今回新型フォノイコDCEQ-200を使用してMMカートリッジの負荷依存性を測定してみました。

使用機材と測定方法

プレーヤー パイオニア PL-50LⅡ カートリッジ オーディオテクニカ VM-750SH

測定方法レコードで周波数特性を実測しました。テストレコードにオシロで周波数特性を直視できるスイープ信号がありましたのでこれを利用しています。

測定結果

負荷インピーダンス

47kΩ -100pF

マイナス100pF負荷は当社フォノイコのみの新技術です

気持ちがいいくらい平坦になっています。

47kΩ +100pF

7-10kHzが盛り上がっています

47kΩ +300pF

2kHzあたりから盛り上がり始めています

考察

測定結果ではマイナス100pFが最適となっています。マイナス100pFといってもプレーヤーからのケーブル容量100pFが加わりますので、これで負荷容量がキャンセルされて0となります。その結果LCRの共振がなくなって平坦になるというわけです。

肝心の音質は・・・

肝心の音質ですがマイナス100pFのフラットの状態ですと、MM特有の高域のギラギラがなくなって、非常に高品位な音になります。MCカートリッジと比較しても何ら遜色はありません。

測定に使用したVM-750SHは非常に高解像で繊細な音もでるのですが、反面通常のフォノイコでは高域が強く聞こえて聴きにくいという面もありました。マイナス100pFで受けると、高解像で非常にバランスの良い音になっています。MCカートリッジを含めて考えても最上位の音質になります。

B&W 804D3を導入しました それでどうなの? その3 測定編

804D3にフレーム+スパイクをつけて劇的に良くなったことを報告しました。ここでは特性を測定した結果について報告します。

測定はREWとMyspeakerという2つのソフトを用いて行いました。マイクはUMM-6という測定用マイクです。REWは周波数特性はきれいに測定できるのですが、過度応答の測定結果が極めて疑わしい結果だったため、過度応答のみMyspeakerで測定しました。

周波数特性

マイクの位置はMidとツイーターの中間の高さで50㎝くらいの距離で測定しました。本当は1m以上離した方が良いのですが、あまり離すと部屋の影響が大きくなってしまいます。50cmという距離だと各ユニット間の距離差で多少つなぎ目でディップが出ます。

PL200

見事にフラットな特性です。200Hzのディップは床からの反射波との鑑賞の影響です。それ以外は大きな凹凸もなく、お手本のような特性で、普通の部屋でこれだけの特性が測れることが驚きです。理詰めでキチンと設計されていることがわかります。

804D3

こちらは結構でこぼこ荒れています。200Hzのディップは仕方ないのですが、kHz帯で結構暴れているのです。スピーカーの周りにデザイン上(?)リングを出っ張らせているので、周波数特性にも影響しているのだと思います。測定中に気づきましたが、ツイーターとスコーカーのつなぎ目の位相があっていないので(多分)、マイクの高さをずらした時の方が特性がフラットになります。

804D3(2)

804D3の特性をMyspeakerで測ったのがこちら。ほぼ同じ特性です。

DS-9Z改

参考までに、こちらはDS-9Z改の特性密閉なので低域は落ちていますが、結構フラットでした。

過度応答特性

最初にお断りしておきますが、過度応答特性はどうも測定するたび(日が変わるたびに)に結果が大きく変わる様に思います。どれだけ信ぴょう性があるかわかりませんので、あくまでこんな絵が撮れました程度に考えてください。

PL200

1kHz以上の応答が見事ですぐに消えています。低域はもともと秒を単位にとるとどうしても長く残るので波数で表現したいところです。このツイーターはハイルドライバ型で、トランジェント特性が極めて優秀な点が反映されていると思います。

804D3

PL200に比べるとkHz帯で多少長引きます。ちなみにこの特性はフレーム(台座)を作る前に取りました。

8040D3(フレーム付き)

フレームを追加した後に測定したのがこちらです。なんと高域のトランジェントが大幅に悪化しています。これが測定上の問題なのか、本当にそうなのか不明です。

DS-9Z改

ついでにDS-9Z改のスペクトル応答を。高域はなんと804D3よりも立派です(ほんとか?)。ただの安いシルクドームツイーターなのに・・・。

ということで、興味本位に測定してみましたが、測定上良いものがいい音ということではありませんので、ああこんな特性も取れるのね、くらいに見ていただければと思います。特に過度応答については聴感上とあまり相関がないので、今後も検討していきたいと思います。