40万積の法則から考えた帯域バランス調整方法

以前にスピーカーの40万の法則について  -気ーづいちゃったよ-というコラムを書きました。要約すると「40万積の法則というのは高音と低音の音量バランスが調度良くなることを表しているのではないか」ということでした。

400k_1数学的に表現すると再生帯域が40万積になる時にはスピーカーの再生中心周波数と可聴帯域の中心周波数が一致しているので、高音と低音のバランスが良く聴こえるとも言えます。

 

数学的には2乗根で表される相乗平均(幾何平均)が再生帯域と可聴帯域で一致している時ともいえます。

 

実際のスピーカーシステムでは20kHz400k_2はいいとしても20Hzまで再生できることはほとんど無く、せいぜい30-50Hzまでが限界です。そうなると、一般に低域の量感が不足しがちになります。

 

 

これを補正する方法として二つの方法を考えました。

(1)低域再生限界付近を持ち上げる

20-50Hzが不足しているので、その代わりにすぐ上の50Hzから100Hzくらいまでを持ち上げて、低音域と高音域の量感が同じになるように調整します。結果的にはトーンコントロールで低音域を持ち上げるというのと同じです。

また40年くらい前に流行った3D方式で(といっても今のTVの3Dとは異なります)、100Hz以下の低域に1本のウーハーを加えて持ち上げてあげると、やけにいい音になったことを覚えています。100Hz以下だけを持ち上げると他の帯域には影響せず不足した部分を擬似的に補うので具合が良かったのです。解釈を変えるとこういった帯域バランスの補正効果もあったのではないかと思います。

*3D方式は高価で大きくなる超低域を大型ウーハー一本で行うという方式ですが、モノであるため100Hz以上を急激にカットします(-18dB/oct以上)。単なるトーンコントロールの低音ブーストとはスロープが異なります。

400k_4

 

(2)中心周波数以下の音量を上げる

もう一つはもっと単純に低域全体を持ち上げる(あるいは高域全体を下げる)ことです。トーンコントロールで調整しても同じ様なものですが、一般にトーンコントロールは最高域、最低域付近のみを調節するのに対して、中心周波数以上、以下で音量を調節するところが異なります。

400k_3

実際には(2)の方が回路的には簡単なので、(2)を実現する帯域バランス調整回路を考えました。630Hzを中心に高域、低域を+-1dB又は+-2dB調節する回路です。CR型でこの回路を構成すれば音質劣化もほとんどありません。

この回路は新型のフルバランス・プリアンプDCP-240 実装しましたが、結果は非常にgoodでした。

スピーカーの40万の法則について  -気ーづいちゃったよ-

40万の法則とは

オーディオ装置、特にスピーカーについて再生帯域の上限と下限の積が40万だとバランスが良いという法則がありました。最初に知ったのは確か、ラジオ技術誌かなんかだと思います(元々、同誌に記事を書かれていた池田圭先生が発見されたそうです)。これは、それまでオーディオ再生装置の銘機を調べてみると、何故か低域と高域の再生限界の積が40万になっているというものでした。例えば20-20kHz、40-10kHz、100-4kHzが40万積に該当します。
これを聞いた時は、確かに経験的にはその通りだと思いましたが、何故そうなるのかは皆目見当が付きませんでした。

オリジナルのデータはこちらにあります

40万積の法則の原図らしきものがこちらのブログに掲載されていました。

再生周波数帯域が狭くても、結構心地よく鳴る装置というのがあります。例えば表現が古くて申し訳ないのですが、よく出来たラジカセとか。ミニコンポでも10kHzで(自然と)切れている方が(超低域が出ないので)バランスよく聴こえたりしたことがあります(結果的に40万積に近くなっている)。

4040万積の法則の解釈

昔は、経験則としては最もだと思っていたのですが、最近ふと気つきました(気ーづいちゃった気ーづいちゃったって言うギャグの人は最近どうしているのだろう)。要するにこれは帯域バランスが良いということではないかと。

 

40_2周波数を横軸として可聴帯域を表現するとこうなります。エイヤで真ん中(約630Hz=√40万)で区切ってそれより上を高域、下を低域とします。低域の量と高域の量はそれぞれの面積になるので、低音限界が20Hzで高音限界が20kHzだと丁度両者の面積は同じになって、高音と低音の量感が同じになります。つまり帯域のバランスが取れているのです。

つまり再生帯域の積が40万になっている状態は、言い換えると帯域幅の中心が、可聴帯域中心の630Hzに一致している状態です。結果的に高域と低域の量感のバランスがおなじになるのです。

40_3たとえば低音域が40Hzしか再生できなくて、高域も10kHzまでしか再生できない場合も、両者の量感は同じになって帯域のバランスが整っていることになります。80Hzと5kHzの組み合わせでもおなじです。この低音と高音の量感が整っている(同じ)というのは、数学的に表現すると再生帯域が40万積になっていると言うことが出来ます。

40_4逆に40万積の法則を満たしていない場合は、低音域が切れているのに、高音だけ伸びていると高音域の量感がまさって、バランスよく聞こえないのです。この時は40万積の法則が崩れています(もっと大きな数字になる)。

40万積の法則と言うので、その原理(理由)がわかりにくかったのですが、実は帯域バランスが優れているということの数学的表現だったのではないかと思います。

(もちろん池田先生は経験則として導かれたのだと思いますが)

ディナウディオConfidence C4の周波数特性を測ってみました

ディナウディオのConfidence C4を導入しました。早速、周波数特性等を測定してみましたので報告します。

事務所の試聴スペースの間取りと写真はこのような感じです。

リスニングルームのレイアウト

新試聴室 010-640

C4layout

試聴スペースのレイアウト
図のアスペクト比がちょっとおかしいが、寸法は大体あっています。
写真は矢印から撮っています。

 

 

写真はこのレイアウト図の矢印から撮っています

リスニングスペースとしては(都心としては)比較的広めのリビングルーム程度の大きさはあります。スピーカーはこの辺が良かろう、というところにポンと置いて特にそれ以上の調整はしていません。

測定は測定用の無指向性コンデンサマイクECM-800をUSBインターフェースのマイクアンプを通してPCに接続し、スピーカー特性測定用ソフト「Myspeaker」を使用して行いました。

測定結果

周波数特性はこちらになります。

測定位置はソファに寄りかかった位置、ちょうど赤顏印のあたりです。

C4L-SinSweep

C4(左CH)の周波数特性(ソファ上)赤顔印あたり

200Hzから500Hzあたりがやや凹んでいますが、全体的にフラットで良い特性です。どこまで信頼できるかわからないところもありますが、20Hzまで落ちていません。高域も普通は1KHz以上でなだらかに低下していきますが、10KHzくらいまでほぼフラットです。

C4LR-SinSweep

C4(右CH)の周波数特性(ソファ上)赤顔印あたり

右CHも同様の特性ですが右壁の方が近いせいかやや低域が暴れています。

ソファに寄りかかった位置から50cm位前にでた位置(青顔印と赤顏印の間位)で測定した周波数特性です。200-500Hzのくぼみも改善されて全体的によりフラットになっているのがわかります。

C4R2-SinSweep

Rch赤顔印と青顏印の間で測定

 

 

さらに前にでて青顏印で取得した周波数特性です。200Hz以上でよりスムーズな特性になっています。やはり後ろ壁よりも少し離れた方が良いようです。

C4R1m-SinSweep

Rch青顔印(背面壁から1m)で測定

同じく背面壁から1m離れた位置で測定した左CHのC4の周波数特性。

C4L1P5m-SinSweep

Lch青顔印(背面壁から1m)で測定した周波数特性

RCHと同様にかなりフラットになりました。 ただこの位置ですとSPに近づきすぎていて、高域も完全にフラットに出ていますので、ややはっきり聞こえすぎる感があります。まるでヘッドホンの様なバランスです。こう考えると、C4を理想的なバランスで鳴らすには前後の距離が8m位欲しい所です。

改善案としては、現在の位置からSPを少し後ろに動かした方が良いかもしれません。

 

C4の歪率特性

次に歪率特性を測定してみました。黒が周波数特性で、緑線が第2次高調波、青線が3次高調波歪、グレーがノイズスペクトルです。両歪とも40dBUpさせています。

500Hz以上では歪率は-60dB(0.1%)程度とスピーカーとしては非常に優秀ですグレーのノイズレベルまで低下していますので、実際はもっと小さいかもしれません。100Hz以下の低域においても-40dB以下で、通常スピーカーでは大振幅となる低域ではもっと上昇しますので、かなり優秀だと思います。

C4-Distortion

 

残響時間測定 

残響時間は部屋の特性で本来スピーカーには依存しないはずですが、C4からパルス音を発生させて、残響時間を測定したのが下の図です。

全体的には0.2秒で、50-200Hzで約0.3秒程度に伸びています。

C4L1m-BppReverb

C4で測定した残響時間特性

 

累積スペクトラム特性

累積スペクトラム特性は各周波数ごとの立ち下がりの様子を3次元的に表現したちょっとかっこいいグラフです。トーンバースト波形を全周波数で見ているようなものでしょうか?
C4R-Accumulate

これを見ると高域の方がきれいに音が切れているように見えますが、時間軸でみているので低域はどうしても減衰するのに時間がかかります。時間ではなく、波数(あるいはサイクル数)でみた方が公平なトランジェント特性になるかもしれません。1KHz以上の周波数では一度立ち下がった後には波形が一切見えずきれいです。低域では200Hz以下が盛り上がってますが、インパルス応答はSN比が悪く、信号の変動分を低域と勘違いする傾向があるのであまりあてにはなりません。200Hz以下が信用できるとすると、50Hz以下で特にレベルが低下していないことがわかります。50Hz以下は部屋の定在波などでずっと鳴りっぱなしなのかもしれません。

C1,C2に比較してC4は低域が出すぎるというプロの方のコメントを複数聴いたことがあるのですが、無響室の周波数特性ではどのモデルもフラットです。C4が50Hz以下の超低域が出ているので、部屋の定在波などの影響で、低音の切れが悪いように聞こえているのかもしれません。

以上、ディナウディオのConfidenceC4スピーカーを導入したので、基本特性を調べてみました。非常に参考になる特性が取れましたので、これらを参考にして今後のセッティングを詰めていきたいと思っています。

スピーカーシステムの周波数特性を改善してみました

画像

事務所の試聴スペースのレイアウトを変更してスピーカーシステムのおき方などを大幅に変更して、周波数特性、聴感上の印象も良くなったことを以前に報告しました。

さらにスピーカー後方にパネルを設置した所さらに音が良くなった気がしたので、再度周波数特性を測ってみました。
ちなみに現在の事務所のスペースは後ろの物置のスペースも含めて30m2位(約20畳)あります。配置の断面図はこんな感じです。

new-layout.gif

スピーカーシステムの配置図

試聴位置の方角から写真で見るとこんな感じです。

SPシステムの配置の様子

SPシステムの配置の様子

JBL4429L-backBoard-SinSweep

反射パネル設置後のJBL4429(左CH)の周波数特性

スピーカーシステムの後ろはレイアウトの都合上2m位はスペースが空いています。後ろのスペースが空きすぎていることもあって、ウーハー1本のB&Wではちょっと低音が物足りない感じがしていましたので、写真の様な高さ1m位の合板(に壁紙を貼った自作パネル)を置いてみました。このパネルは45cm幅2枚を蝶番でくっつけたもので、ほぼ任意の角度に開いて設置することができます。
すると期待していた以上に音が良くなりました。低音の量感がまし、最低域も伸び力強さも出る様になりました。聴感上よくなったので、理由を探るためにも再度周波数特性を測定してみました。
その結果がこちらです。

以前にこのコラムで書いた反射パネルを設置する前の周波数特性がこちらです。

JBLNewLayoutLeft2-SinSweep

反射パネル設置前のJBL4429の周波数特性

反射パネルを設置したほうが70Hzあたりの谷がなくなって120Hz以下のレベルが全体的に上がっています。それと以前にあった2Khzあたりの盛り上がりがなくなって、周波数特性が全体的にフラットになっていることがわかります。これはSP中央にもパネルを設置したので、

凸凹が少なくなったのだと思います。

また、スピーカーをB&WのCDM-7NTにした時の周波数特性はこちらです。

B&W 左の周波数特性

B&W 左CHの周波数特性(反射パネルあり)

 

B&W左CH 反射板設置前

B&W左CH 反射パネル無し

B&Wの場合も、以前あった80-100Hzのピークが消えて、40-100Hz帯域がほぼフラットに出ています。この違いは聴感上は非常に大きく、とてもこのユニット構成が鳴っているとは思えない力強い音になりました。このB&Wの中高音はもともとやや癖があり、うるさいのですがそれに負けない低域が出ているので、ものすごくよく聴こえるようになりました。

 

事務所のレイアウトを変更したので、スピーカーの特性を測ってみました

久しぶりにコラムを書いてみようと思います。

実は最近事務所のレイアウトを変更しました。スピーカーの位置を変えて来客用のドアの近くに試聴スペースを移動しました。以前は採光の理由から入口付近が荷物置き場になっていて、常に試聴スペースを確保する事ができませんでした(来客の度に部屋を整理する必要がありました)。

これで繁忙期などにも試聴対応しやすくなりました。とはいってもまだ試聴のご案内はしてませんが・・・。

肝心の音も全体にフラットに聞こえて、低音の抜けなども良くなった気がしたので、周波数特性などを測定してみました。

測定結果は以下のとおりです。

JBL4429の周波数特性(左CH)

JBLFreqLeft

B&WCDM7TNの周波数特性(左CH)

BWFreqLeft

 

B&WCDM7NTの周波数特性(左+右)

BWFreqL+R

以前のJBLの周波数特性がこちら

JBL4429-3m-Lch-SinSweep

これはSPからの距離が3mのところで測ったもので、これもかなり良かったが、今度の新しいレイアウトでの周波数特性も相当良い。

 

使用している測定ソフトはMyspeakerというソフトで、フリーでも使用できますが、表示に制限があるので、購入したものです。

周波数特性だけでなく他にもいろいろと測定できます。

例えば累積スペクトルがこちら

JBKAccumRightJBL カッチョ良い

BWAccumLeftB&W

高域の切れはホーンのJBLのよりB&Wの方が良い(ほんとか?)

 

JBL-Zan残響特性がこちら

低域がちょっと長いのは聴感と同じ。

JBL-DistJBLの歪率特性(歪は40dBUp表示) 高域の歪みが非常に少ない(ホーンだからか?)

 

位相特性はこちら

JBLPhase

BWPhase

これみんなMySpeakerというソフトでマイクがあれば測定できるのだから凄いです。

新しいレイアウトは少し音が良くなった気がします。