アースとアースループの違い、わかりますか?(その2:多重アース)

前節でオーディオ機器のアースについて結論のみ示しましたので、ここではアースについてもう少し詳しく説明してみたいと思います。

例として2つのアンプ(例えばプリアンプとパワーアンプ)を相互に信号ケーブルを接続した場合を考えると、図のように表現できます(ここではアンバランスアンプを例にとって説明しています)。信号ケーブルを接続すると+-が相互に接続されるわけですが、マイナス側はどこかで必ずシャーシーにアースされているので(そうしないとアンプを触ったときにブーンといってしまいます)シャーシー間も信号ケーブルによって相互に接続された状態になります。

アンプを接続した際のアースを説明する図

ここまでは、あたりまえの話なのですが、ここでアンプ背面にあるアース端子を相互に接続すると、次の図の様になります。緑線がアース間配線で、こうすると結果的に薄緑色で示したアースループが出来てしまいます。こうなるとアースループ内を通る磁束が電流を発生し、結果的にアンプ間に電位差が発生しノイズ、歪の原因になります。信号ケーブル、アース線の配置によっても影響が変わりますので、ケーブルを変えたら音が激変したなどと大騒ぎすることになったら、笑うに笑えません。
(ただし、レコードのカートリッジ出力はそもそもマイナス側がアースに接続されていないので、必ずアース線を接続する必要があります。)

アンプを接続した際のアースループを説明する図

また、”私はアース線は接続していないぞ”といっても実は自動的に接続されていることもあります。3Pの電源コネクターの真ん中はアースですので、3Pプラグ、ジャックの立派な電源ケーブルを使うと、結果的に(本人は接続した覚えがなくとも)電源タップのところでアースが接続されていることになります。
アンプのアースループ・コンセントを介してのループ

さらに大きなアースループを作るのは別のコンセントに接続した場合で、場合によっては部屋中に大きなループが出来ることになります。ここまでくるとアンテナです。大掛かりな室内の電源ケーブル交換工事をして、専用ACコンセントを作ったら音質が変わったなどと言う事になるやも知れません。ここまでループが大きくなると、逆にループの影響はひょっとすると少なくなるかもしれません。ループを通過(出入り)する磁束の差分で電流が流れるので、磁束を発生する機器を大きく囲めば磁束の差分は+-ゼロになるからです。とはいえ、ループを作らないように注意することが肝心で、そんな考察をしても始まりません。

アンプのアースループ・コンセントを介してのループ2

また、オーディオ雑誌、オーディオショップのHPなどでもアースは接続するようにという内容の事を書かれていたりするのを目にします。アースをどうすべきかはアンプを実際に作っている人間でないとわかりませんし、アース方法は、強電分野の決まりはありますが、特にオーディオ用としてどうするのが良いのかは、これといった根拠のある定説もなく、自分で考えるしかないと思います。ただ巨大なアースループを創るのだけは絶対に避けるべきなのですが、知らず知らずそうなっていたり、そういう状態でオーディオ装置・ケーブルの評価がされているとしたらそれは、そら恐ろしい話ということになります。

以上述べたことは実はいわば「多重アース」と呼ぶべきことでアースループとは異なります。本当に怖いのは多重アースではなくアースループです。アースループについてはまた別途考えてみたいと思います。

アースとアースループの違い、わかりますか?

今回はオーディオ的見地からアースについて述べてみたいと思います。というのも、アースについて誤解されている方も多く、またオーディオ関係の記事をみても、ほとんどの方がアースに関して間違った記述をされているからです。アースというのは実は非常に奥の深い話で、アンプを実際に作っている人でも、理解されていない方のほうが多いのではないかと思います(ひょっとしたらわたしも)。

最初にお断りしておきますが、アースというものには2種類あり、一つは強電分野の、安全上絶対に必要なアース。もう一つはオーディオ機器のアース端子のように地面へのアースが安全上必須ではないアースです。

結論から言うと次の様になります。
1.オーディオ機器は(使用していない機器も含めて)信号ケーブルを接続しておくことにより、アースラインをなるべく相互に接続する様にする。
・ピンケーブルで信号ラインを接続するだけでアースはつながります。
・使用していない機器も含めて、すべてオーディオ機器の信号ラインをつないでおいた方がいいのです。(結果的にアースがつながります)
・わざわざアースラインを分離するようなプリアンプやセレクターがありますが、これは逆効果です。
・PCなどデジタル機器の場合はケースバイケースですが、接続しない方がいい場合が多いかもしれません。

2.オーディオ機器のアース端子(アンプの背面についているもの)には何も接続しない。
・接続すると電力機器のノイズが混入してSNが(おそらく音も)悪くなります。
・この点が大いに誤解されています。アンプ背面のアース端子はむやみに壁コンセントのアースに接続してはいけません。
・ただしレコードのイコライザアンプはもちろんアース線も接続する必要があります。

3.ただしアースループはなるべく作らないこと、必然的に出来てしまう場合はループを最小にすること。

・録音機器の様にRECINとPLAYOUTなどINとOUTを接続する必要が有ると、必然的にアースループが発生します。この場合はとりあえずケーブルの配置でループを最小にするしかありません。

要点は以上3点ですが、図解しないとわかりにくいと思いますので、おいおい具体例をあげて説明していきたいと思います。

(家庭用機器でも冷蔵庫、洗濯機など比較的大電流が流れる機器、水が関係する電気機器は感電防止上、アースする事が必要ですのでくれぐれも注意してくさい。)

音質の良いコンサートホール・悪いコンサートホール

オーディオ的見地からコンサートホールについて述べてみたいと思います。
よく言われている通り、コンサートホールによって楽器から聴こえてくる音はかなり異なります。私が行った事のあるコンサートホールの中でダントツで音響効果が優れているのは”ティアラ江東”です。ここはピアノの一音を叩いた瞬間に音質の良さがわかるホールです。30mくらい離れた位置で聞いても、まるで間近で演奏しているかの様に聞こえしかもピアノの持つ力強さもそのまま再現されます。

私が最初にこのホールに行ったのは高嶋ちさ子さん(バイオリン)と加羽沢さん(ピアノ)のデュオコンサートです。曲名は忘れましたが、最初ピアノの一音を叩いた瞬間にその音質に驚いたことを今でも鮮明に覚えています。
この音響効果を聞くために行く価値が有るくらい、いいホールです。オーケストラよりもピアノ1台とか小規模編成の方がはっきり良さがわかると思います。

反対に音響効果の悪いホールはサントリーホールと東京フォーラムのホールA(最も大きなホール)です。サントリーホールはとにかく音が来ないのです。屋外で楽器を演奏すると反響がないので寂しい、低音の抜けた音になるのは誰でも経験が有ると思いますが、そういう音の傾向です。それもそのはず、サントリーホールは舞台の後ろ側にも座席が有るので、反響する後壁が近くに無いのです。したがってオーケストラなどでも低音の厚みが全く足りず、誰がどれだけの演奏しても寂しい音になってしまいます。
サントリーホール側は音響効果の良い事を歌っている様ですが、そういうことを平気で宣伝する方々の耳を疑ってしまいます。ヨーロッパの何とか方式を取り入れた(真似た)といっているようですが、ヨーロッパの場合壁が大理石なので、普通に作るとやたらと残響時間が長くなるので、それを避けるために工夫された方式なのではないかと思います。それを形だけ取り入れて日本で作っているので、逆効果なのだと思います。(ただ怖いのは、世間一般ではサントリーホールを名ホールという人が多い事で、ひょっとして私の耳がおかしいのでしょうか?)

東京フォーラムの方はコンサート専用のホールではないので、音響効果をとやかく言っても仕方が無いのかも知れませんが、運営面も含めてひどいので言わずにはいられません。先日あるジャズシンガーのコンサートで初めて行ったのですが、2階席とチケットには書いてあったのに実際には7階でした。建物内部の階表示は実際に7Fになっているのです。客席が急斜面のようになっていて、まるでマンホールの上からコンサートを聴くような感じになっています。さらに驚いたのはPA装置のひどさで、私の耳で聞く限り左のSPから一切音が出ていませんでした。これは何かの事故だったのだと思います。左に位置していたギターの音は全く聞こえず、真ん中のピアノの音もまるで3歳児用のおもちゃのピアノのような音しかしないのです。右側の太鼓のようなやつの音だけが異常に大きく聴こえるという始末。PA担当の人は演奏中に音の出方をチェックしていないのだろうか?連れの妻(本当は私の方が連れ)もおかしいとは言っていたがそれほど気にしていない様子、他の観客の方は特に不思議がる風でもなく普通に聴いていらしゃったのが、さらに驚きでした。私はコンサートに行ってもどうしても音響効果が気になるので、職業病かもしれません。

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コンサートホールに関しては新しいブログを書きました。

ぜひこちらも御覧ください。

音が良かった世界のコンサートホール !勝手にランキング!

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アンプの歪成分のFFTスペクトル解析

はじめに

アンプの性能を表す方法のひとつとして歪率特性があげられます。ここでは、通常議論される高調波歪率よりも一歩踏み込んだ議論を紹介したいと思います。

測定方法

歪率の測定には、発信機と歪率計を内蔵したオーディオアナライザー(VP-7223A)を使用しています。測定条件にもよりますが残留歪率は 0.0005%-0.001%です。歪率計には歪波形をモニターするための基本波除去後のモニター用出力端子がついていますので、この歪波形をFFTで解析して高調波歪の成分を調べてみました。FFT解析にはパソコンを使用し、現状最も高解像度、広帯域のサウンドボード(192KHz,24bit)を使用しました。周波数は約90KHzまで測定可能です。歪率計で基本波が100dB程度除去されていますので、FFT解析装置の解像度100dBと組み合わせて原理的には200dBくらいの分解能になります。ただし実際にはノイズなどの影響で170dBくらいがいいところでしょう。また注意していただきたいのは歪率系のモニター出力の絶対値は、勝手に内部でATTが動作するため当てになりません。歪率の絶対値はスペクトルからではなく、別に記した全高調波歪率を参考にしてください。あくまでFFTスペクトルは歪の周波数分布を見るために使用してください。一応測定されたFFTスペクトルのY軸はは、歪率系で測定された歪率の値にあわせて規格化しています。また、FFTスペクトルの縦軸はV・sでスペクトルのピークの値が直接歪率の絶対値を示すわけではありません。ですのでFFTスペクトルを見る際はあくまで相対的に比較して下さい。
測定条件は10KHz、1Vです。

アンプ歪率のFFT解析ブロック図

歪率のFFT解析結果

結果は下表の通りです。
横軸は周波数、縦軸は歪成分のスペクトルの大きさになります。AVアンプ、プリメインアンプで10KHzの基本波が除去し切れていないように見えますが、これはわずかなハム成分(50Hz)が乗った10.05Khzなどのスペクトルです。オーディオデザインのアンプはSNが良いのでこの成分がありません。

プリアンプの歪成分の周波数解析

アンプ

歪成分のFFTスペクトル

コメント

AVアンププリアンプ部
THD+N=
0.011%
AVアンプの歪成分のFFTスペクトル ・3次高調波成分(30KHz)が最も大きな歪成分です。
・3次高調波の他に7.5次(75KHz)にも大きな歪成分がありますが、これは発信器の出力にわずかに含まれる歪がなぜか強調されているようです。
・他に40-60KHzに無数の非高調波の歪成分があります。
プリメインアンプ
プリアンプ部
THD+N=
0.0054%
アンプの歪成分のFFTスペクトル 高調波歪の主成分は2次と3次成分ですが70-80KHz付近の歪も大きくなっています。
オーディオデザイン
プリアンプ
THD+N=
0.0023%
オーディオデザインアンプの歪成分のFFTスペクトル 基本的に目立った歪成分がありません。非常に優秀です。
歪成分が無いだけでなく、10KHz以上のベースライン(基底)部分も大きく減少しています。

FFT解析のまとめ

歪成分のFFT解析を行うことで、アンプの性能をより詳細に知ることが出来ました。また周波数特性の優れたオーディオデザインのアンプが結果的に歪率特性も非常に優れており、歪成分をほとんど発生していない事がわかりました。

(2007/08/20)

お薦めのCD

オーディオの好きな方に自信を持ってお薦めできるのがこの一枚です。

「フィーリング グッド」
ランディークロフォード&ジョーサンプル

演奏、歌はもちろんいいのですが、録音が抜きん出て素晴らしいのです。録音がどう良いのかというと、音の厚みというのが自然でかつ圧倒的に優れています。実際の楽器よりも力強い様な音がします、かつ変なブーストをしていない、きわめて自然な音なのです。
私の再生装置はどちらかというと中低域の音の厚みがもう少し足りないので、特にこのCDをかけると完全と思えるほどの音を出します。

Joe Sampleさんの手がけたCDはすべてこの自然な音の厚みに優れているのですが、中でもこの1枚が特に優れています。

このCDを自分の再生装置で聞いていると最高なのですが、このCDを大型SPシステムで聞くといったいどんな音になるのだろうかと思います。ひょっとすると低域過剰になるかもしれません。

オーディオ好きの方には是非一度聞いていただきたいCDです。