はじめに
オーディオ用DACに10MHzの外部クロックを使用するものがあります。最高の音質を目指す場合、果たして10MHzの外部クロックは有益なのでしょうか?
そのメリット・デメリットついて、解説してみたいと思います。
10MHz外部クロックの目的
DACに外部から10MHzクロックを入力するシステムが存在します。これは、内蔵クロックとは別に、より精度の高い外部クロックを基準として使用することで、音質を向上させることを目的としています。
ここで重要になるのが「ジッター」の概念です。ジッターとは、クロック(基準信号)の周期が微妙にブレる現象のことで、特に短期的な時間軸での精度を指します。このジッターが少ない、つまり精度が高いクロックを使用することで、音質が向上すると考えられています。
DACで実際に使われるクロックは10MHzではない
ここでDAC内部で使われるクロックについて説明します。
DAC内部では、デジタル信号の処理のため、主に2種類のクロックが必要です。
・信号系クロック
デジタル信号のサンプリング周波数(例:44.1kHzや48kHz)に基づいて生成される周波数(例:24.576MHzや28.224MHz)。
・DACチップ用クロック
DACチップ(IC)自体を高速で動作させるためのクロック(例:100MHz)。
ここで注目すべきは、DAC内部では10MHzのクロック自体はどこにも使われていないという点です。
10MHzクロックの使用目的と潜在的な問題点
では、外部から入力された10MHzクロックは何に使われるのでしょうか?
10MHzは、前項で挙げた「信号系クロック」(24.576MHzや28.224MHzなど)を生成するための基準信号として使用されます。この生成には、DDS(Direct Digital Synthesizer)というICが用いられます。
しかし、このDDSによる周波数合成のプロセスには、以下のような潜在的なデメリットがあります。
・ジッターの拡大:低い周波数である10MHzから高い周波数を生成する過程で、元の10MHzクロックのジッター成分が拡大されてしまう可能性があります。
・特性の限界:DDSから生成されるクロックのジッター特性は、高性能な専用の水晶発振器(OSC)と比べると、劣る傾向にあります。
最も重要なのは「100MHz」
例えば現在最も音質で定評のあるESS社の9038系のDACチップの場合、動作させるために例えば100MHz位のクロックを使用します。この外部クロックからの入力を基準として、DACチップ内部でオーバーサンプリングや、ジッタークリーニング処理を行っているのです。
こういったDACチップを使用する場合、DACの音質に最も影響するのは「外部10MHzクロック」ではなく、「(DACチップを動かすための)100MHzクロックのジッター性能」だと考えています。
これらのDACチップの中には、100MHzクロックの精度が悪いと、音質に影響するだけでなく動作自体が不安定になるものもあるほど、重要な要素なのです。
そのため、非常に高価で高品質な水晶発振器(4,000円程度)を厳選して使用しています。一般的な汎用の水晶クロックは100円程度ですから、どれだけコストをかけているかがわかります。
10MHzにこだわることの危険性
10MHz外部クロックが音質上有益だったという話は、「たまたまそのDACシステムがそうだった」というだけであって、必ずしも「10MHz外部クロック方式でシステムを組むことが最高」とは言えないのです。
外部10MHzクロック入力端子を持つDACは、メーカー全体から見れば少数派(2〜3割)であり、多くのメーカーは高性能な内蔵OSCを使う方が「筋が良い」と考えています。
「10MHzクロックが入ること」を条件にDACを探すのは、本当に良いDACに出会える機会を狭めてしまう可能性があります。
例えるなら、山梨出身の人に良い人がいたからといって、山梨県の人ばかり探すようなものです。
特定の機能に固執せずに、評判が良く予算に合うものを広く探す方が、より良いオーディオ体験につながるのではないでしょうか。
本コラムは右のYouTube動画をAIを利用して要約し、加筆・修正したものです。
詳細はYouTube動画もご参照ください。