はじめに
MC(ムービングコイル)型カートリッジを用いたレコード再生において、MCヘッドアンプと昇圧トランスの仕組み、そしてその接続における負荷抵抗の考え方について、テクニカルな視点から詳しく解説していきます。
MCカートリッジの基礎と接続方法
MCカートリッジは出力電圧が非常に小さいため(約0.5mV)、フォノイコライザーに入れる前に、電圧を上げるための機器が必要です。
・MCヘッドアンプ:電気回路で増幅します。
・昇圧トランス(SUT):トランスの巻線比で電圧を上げます。
また、一部のPhono EQはゲインを高く設計しており、MCカートリッジを直接接続できるタイプもあります。
MCヘッドアンプ接続時の負荷抵抗の考え方
MCカートリッジはMM型と異なり、インダクタンス(L)が非常に小さいため、接続ケーブルなどの容量(C)の影響をほとんど受けません。そのため、基本的には抵抗値のバランスだけを考えれば良いというシンプルさがあります。
適切な負荷抵抗(入力インピーダンス)は?
一般的には、カートリッジの内部抵抗に対して2倍〜5倍程度の抵抗で受けるのが良いとされています。
・例:内部抵抗10Ωのカートリッジなら、受け側の抵抗は20〜50Ω程度。
これは、負荷抵抗が小さすぎると電圧の伝達率が下がり、音が小さくなりすぎるためです。
注意:1MΩなどの高抵抗受けは非推奨
一部で「1MΩ受け」などが試されることがありますが、負荷抵抗が大きすぎると、カートリッジとケーブルが形成するループが雑音検出器のような働きをしてしまいます。
具体的には、時速の変化(ノイズ)によって流れる雑音電流が、大きな抵抗値によって大きな雑音電圧に変換されてしまい、S/N比が悪化します。
ただし、音質変化として聞こえる(解像度が上がったように感じる場合もある)ため、中にはこの音を好む人もいますが、理論的には不利な接続です。
独自の音質向上テクニック:「大吟醸」説
ここで新説として紹介したいのが、あえて低い抵抗値(例えば内部抵抗10Ωに対し、3Ωなど)で受けるという手法です。
負荷抵抗を小さくすると、信号レベルは落ちてS/N比は悪化しますが、ノイズの影響が少なくなり、音質が穏やかで優しく聞こえるという現象があります 。
これは、日本酒の「大吟醸」で米の外側を削るのと同じく、余分な部分を削ぎ落とすことで良質な部分が際立つ、という考え方に似ています。
ただし、アンプ側のS/N比が非常に優れていて、信号レベルを落としても実用的なリスニングレベルでノイズが気にならないことが条件となります。
ボリュームを上げても「サー」というノイズが気にならない環境であれば、試してみる価値があると言えるでしょう。
昇圧トランス接続時の考え方
昇圧トランスは、主に電圧を昇圧することを目的としており、真空管アンプの出力トランスのようなインピーダンス変換を主な目的とはしていません。
動作の仕組み
内部抵抗10Ωのカートリッジを10倍昇圧した場合、Phono EQ側から見ると、内部抵抗は10Ωの2乗倍、つまり1kΩとして作用します。
この1kΩは、一般的なPhono EQの入力抵抗(47kΩ)に対して非常に小さいため、ほとんど電圧がロスすることなく伝達されます。
そのため、トランスの場合はヘッドアンプに比べて接続条件に余裕があり、メーカー指定の条件で使えば良いとされています。
音質傾向
トランスは音色自体を変化させる傾向があり、一般的に温かい方向に変わり、低音がゆるくなる傾向があります。
MCカートリッジのS/N比の限界
実は、カートリッジのコイルやケーブル、そして抵抗自体もノイズ(熱雑音)を発生させています。
MCカートリッジの内部抵抗から発生するノイズ電圧を計算すると、一般的なカートリッジのS/N比は70〜80dB程度と推定されます。
これは、ヘッドアンプのS/N比と近い値であり、このノイズがMC再生のS/N比の限界の一つとなっていると言えます。
まとめ
MCカートリッジの性能を活かすためには、以下のポイントを意識しましょう。
1.接続の基本:MCはMMと違い、負荷容量は気にせず負荷抵抗に注目する。
2.推奨値:基本は内部抵抗の数倍で受ける。
3.応用テクニック:アンプのS/Nが良い場合、あえて低い抵抗値で受けることで、しっとりとした優しい音質が得られる可能性がある(大吟醸説)。
4.トランスの活用:メーカー推奨設定を守り、ヘッドアンプとは異なる音色の変化を楽しむ。
5.MCカートリッジ自体にSN比がある
理論的な「正解」だけでなく、実際に耳で聴いて好みの音を探すのもオーディオの醍醐味です。ぜひご自身のシステムで試してみてください。
本コラムは右のYouTube動画をAIを利用して要約し、加筆・修正したものです。
詳細はYouTube動画もご参照ください。