アナログ・レコード 10Hzの攻防

はじめに

レコード再生において重要な10Hzの低域共振に付いて解説します。 この10Hzという周波数は、レコードプレーヤーのトーンアームとカートリッジの構造によって宿命的に発生する「アーム共振」の周波数であり、適切な対策がなされていない場合、音質だけでなく機器の破損にもつながる危険性がある重要なポイントです。
 

トーンアーム共振のメカニズム

アナログレコードの再生において、トーンアームとカートリッジは必ず共振現象を起こします。

カートリッジの針の根本にある発電機構は、ゴムのダンパーで支えられています。このダンパーがスプリング(バネ)の役割を果たし、トーンアームの重りがバネの上に乗っている状態となり、特定の周波数で共振するメカニズムが発生するのです。

この共振の周波数は、一般的に10Hz程度に設定されています。



10Hzの共振が必要な理由

人間の可聴帯域は最低で20Hzですが、10Hzはそれ以下の周波数であるため、通常は聞こえません。しかし、この10Hzという設定には明確な理由があります。

・20Hz以上(音声帯域):人間が聞き取れる最低音域である20Hz以上は、音声を正確に拾うため、アームは動かずカートリッジがレコードの溝を忠実にトレースする必要があります。

・10Hz以下(超低域):レコードの「反り」による非常にゆっくりとした動きを拾わないよう、アームが反りに沿って動いてトレースすることで、反りの信号を音として拾わないようにしています。

つまり、オーディオ帯域(20Hz以上)をしっかりトレースしつつ、レコードの反り(超低域)の影響を避けるため、共振周波数を20Hz以下かつ超低域側(約10Hz)に設定する必要があるのです。10Hzは、「音声帯域」と「レコードの反り」の間の、いわば緩衝帯として機能しています。



10Hzピークの危険性:ウーファーの振動とアンプへの負荷

レコードの再生では、低域を大きく持ち上げる「RIAAイコライゼーション」という処理が行われます。このため、10Hz付近の共振によるピークを非常に拾いやすい傾向があります。実際の測定データでは、一般的なトーンアーム(MM/MC問わず)で10Hz付近に15dBもの大きなピークが存在することが分かっています。これはアンプをもう一台追加したほどの増幅率に相当します。

この巨大なピークにより、再生中にウーファーがプルプルと大きく震える現象が見られます。この動きは聞こえませんが、針のトレースを乱すだけでなく、アンプにも大きな負荷をかけ、機器の損傷につながる可能性があります。

 

必須の対策:サブソニックフィルターの重要性

この問題を解決するのが、サブソニックフィルターです。

15dBものピークを抑制するためには、単なるおまけのような-6dB/octのスロープではほとんど効果がなく、理想的には急峻な-18dB/octの減衰特性で10Hzのピークを抑制する必要があります。

音質劣化を嫌うためアンプを増やしたくないという意見を踏まえ、オーディオデザインでは、アンプを追加せずとも急峻なサブソニックフィルター回路を組み込むことで、この問題を解決しています。



危険な組み合わせと設計上の注意点

DCアンプの使用は危険

サブソニックフィルターを入れずにDCアンプ(直流までゲインが変わらないアンプ)を使用すると、もともと低域のゲインが大きいフォノイコライザーと10Hz共振の相乗効果で、パワーアンプが振り切れるほどの信号が入り、パワーアンプやスピーカーを破損する危険性があります。設計者でもこの事を知らないケースがあるため、非常に注意が必要です。

リニアトラッキングアームの注意点

直線的にトレースするリニアトラッキングアームの中には、構造上、アームが極端に短く軽くなっているものがあります。短いアームは共振周波数が上昇し、可聴帯域に近い20Hz付近に入り込んでしまうリスクがあります 。こうなると、レコードに収録された低音信号そのもので共振してしまい、サブソニックフィルターも効きづらくなるため、選択には注意が必要です。

改造トーンアームの注意点

一部のトーンアーム(例:パイオニアPL-50)では、オモリをゴムで連結して10Hzの共振を抑制する設計が採用されています。しかし、経年劣化でオモリが垂れるのを嫌がり、ゴムの部分を硬化させてしまう、自称「強化型」の改造品が販売されていることがあります。これは共振を抑制する本来の機能を失わせる行為ですから、避けるべきでしょう。

 

まとめ

今回ご紹介した「10Hz」に関する知識は、安全かつ高音質な再生を実現するために非常に重要です。
レコードプレーヤーやアンプを選ぶ際の判断基準として頂ければ幸いです。


 

本コラムは右のYouTube動画をAIを利用して要約し、加筆・修正したものです。
詳細はYouTube動画もご参照ください。

2025/12/2