電解コンデンサをたくさん並べるバカ

タイトルは高城重躬さん著『オーディオ100バカ』にあやかっています。(特定の個人・団体を馬鹿にする意図はありません)

はじめに

オーディオアンプの電源回路は、音質を決定づける重要な部分であり、特に電源平滑コンデンサーの選定と配置は、その性能を左右します。

パワーアンプの内部で、大容量の電解コンデンサーの代わりに、小容量のコンデンサーを多数並列に並べる設計手法を見かけることがあります。これは一見、物量を投入した合理的な手法のように思えますが、電気回路設計の定石から見ると、実は高周波特性の改善にはほとんど寄与しません。

本稿では、コンデンサーのインピーダンス特性に基づき、電源部のパスコン(バイパスコンデンサー)構成における正しい考え方と、なぜ「多数並列」構成が有効ではないのかを解説します。

 

大容量コンデンサーの弱点とパスコンの定石

パワーアンプで使用される大容量電解コンデンサー(例:数万〜数十万μF)は、低周波領域において電源を安定させる上で不可欠ですが、高周波領域ではその性能が低下します。

コンデンサーは本来、周波数が高くなるほどインピーダンスが小さくなる特性を持ちますが、大容量の電解コンデンサーは内部のインダクタンス成分(ESL)が原因で、ある周波数を超えるとインピーダンスが上昇し、コイルのように振る舞い始めます。

アンプの動作の安定性には、オーディオ帯域をはるかに超える100MHz程度までの広帯域にわたって、電源インピーダンスを低く保つことが必要です。この高周波領域をカバーするために、回路設計では以下の定石が用いられます。

【定石】容量を段階的に変えたコンデンサーの並列接続

大容量コンデンサーの特性が悪い高周波域を補うため、容量を数桁ずつ小さくしたコンデンサーを並列に接続します。

例えば、数十万μFの後に、数万μF、数百μF、そして高周波特性に優れた0.01μF(フィルムコンデンサーなど)を組み合わせることで、低域から高域まで幅広い周波数帯で電源インピーダンスを最小限に抑えることができます。



「小容量多数並列」構成が持つ根本的な問題

一部のアンプで見られる、「少ない種類・小容量のコンデンサーを多数並列に並べる」構成(例:1,000μFを10個並べて10,000μFとする)は、以下の理由から、定石的な抱き合わせ構成に比べて電子的なメリットが少ないと考えられます。

1.インピーダンス特性の飽和
多数のコンデンサーを並列にしても、それらがすべて同容量であれば、高周波でインピーダンスが上昇し始める周波数帯はほとんど変わりません 。そのため、特に必要な100MHzまでの超高周波域を効果的にカバーすることができません。

2.部品コストと実装上の非効率
多数の部品を並べることは、実装コストを増大させます。それよりも、インピーダンス特性に優れた良質な単一のコンデンサーを使用する方が、コスト的にも性能的にも有利になるケースが多いのです。

回路設計の観点から見ると、この手法は「見た目のインパクト」を重視したものであり、高周波における電源インピーダンスの定石を理解していない構成と見なされます。

 

まとめ:オーディオデザイン社の考えるベストプラクティス

当社では、定石に基づき、以下の点を重視した設計を行っています。

1.低インピーダンスコンデンサーの採用
大容量コンデンサー(例:180,000μF)に並列で、高音質化のためにESL(等価直列インダクタンス)が低く抑えられたオーディオ用コンデンサーを採用しています。オーディオ用コンデンサーは、通常の汎用品に比べて構造的に低インピーダンス化されており、同一容量でもサイズが大きくなる傾向があります。

2.デバイス近傍への最適配置
数百μF、10μF、0.01μFといった小容量のコンデンサーは、増幅を行う半導体デバイス(アンプICなど)の電源端子にミリ単位で極力近づけて配置することが常識です 。これは、高周波ノイズを最短距離でバイパスし、アンプの動作を安定させるために不可欠な措置です。

結論として、電源設計においては、単にコンデンサーの数を増やすのではなく、インピーダンス特性の定石を理解し、容量の異なるコンデンサーを適切に組み合わせ、デバイスに近接して配置することが、真に音質に貢献する安定した電源特性を実現するための鍵となります。


 

本コラムは右のYouTube動画をAIを利用して要約し、加筆・修正したものです。

詳細はYouTube動画もご参照ください。

2025/10/10

パワーアンプのコラム