はじめに
オーディオアンプに関する3大勘違いの一つとして、A級アンプとAB級アンプの音質論争に焦点を当て、アンプ設計者の視点からその原理と実態を解説します。
一般的に「A級アンプの方が音質が良い」という認識がありますが、実際には設計の完成度が重要であり、A級には見過ごされがちな大きなデメリットも存在することを指摘していきます。
A級とAB級の動作原理に関する誤解
A級アンプが音質的に有利とされる根拠として、「出力トランジスタの直線的な部分のみを使うため、歪みが少ない」という解説がしばしば見られます。
しかし、設計者の観点からすると、これは誤解を招く説明です。
A級アンプとAB級アンプの違い
1.増幅部の違い
アンプの増幅自体は中段のトランジスタ(ここは必ずA級動作)で行われており、A級やAB級という分類がされる最終段は、電流を増幅する役割を担っています。
2.動作の違い
A級:信号の有無にかかわらず常に多くの直流電流(アイドリング電流)を流し続け、最大出力になってもトランジスタが遮断(カットオフ)しないように動作させます。AB級:信号のプラス側とマイナス側でトランジスタが交互に動作し、信号がないとき(待機時)の消費電力を抑えます。
AB級の「クロスオーバー歪み」はNFBで解消される
AB級アンプの音質上の欠点として挙げられるのが、トランジスタがオン/オフを切り替える際に発生するパルス性のノイズ(クロスオーバー歪み)です。
しかし、このノイズはNFB(ネガティブフィードバック/負帰還)をかけることでほとんど解消されます。NFBを効果的に機能させ、パルスノイズを綺麗に取り除くためには、アンプの帯域が適切に(数百kHzまで)伸びていることが重要です。
このため、「よくできたAB級アンプ」と「A級アンプ」を比較した場合、前者がより歪みが少なく、透明感のある音を出すことも珍しくありません。重要なのはクラスではなく、設計の質(アイドリング電流の大きさや帯域幅の広さなど)なのです。
補足:特にAB級では、音の硬さを防ぐためにアイドリング電流を大きく設定する必要があります。そのため、良いアンプは結果的に筐体が熱くなる傾向にあります。
A級アンプの構造的なデメリット
A級アンプの構造上、音質に悪影響を及ぼす別の問題点が存在します。
A級は信号がない待機時でも大電流(3A〜4A)を流すため、電力を多く消費し発熱します。この大電流によって、電源回路(ダイオードやコンデンサ)でパルス性のノイズが発生し、これがアンプのアース回路を伝って出力に出てきてしまいます。
この電源由来のノイズはNFBをかけても消すことができないため、特に50Wや100Wといった大出力のA級アンプでは、音質に悪影響を与える主要な原因になり得るのです。
音楽信号におけるA級の優位性は低い
実際の音楽信号を再生する際、低音楽器などの振幅が大きい信号成分があるため、信号がゼロ点を横切るクロスオーバーの頻度は意外と小さいのです。
この事実から、A級アンプにクロスオーバー歪みがない事で享受する音質的メリットは、一般的な音楽信号においてはさらに低くなると言えるでしょう。
「A級」表示への注意点
近年のアンプには、「A級アンプ」と称されていても、厳密には全動作領域がA級ではないものがあることにも注意が必要です。
・「純A級」:全出力でA級動作
・「A級100W」の曖昧さ:例えば、「A級動作領域は30Wまでで、それ以上はAB級動作になるが、最終出力が100WなのでA級100Wと表示する」といった、純粋なA級とは呼べない解釈で販売されているケースがあるようです。
したがって、「A級だから音が良い」という固定観念にとらわれず、アンプの設計思想や技術的な完成度こそが音質を左右する最も重要な要素であると理解することが大切です。
本コラムは右のYouTube動画をAIを利用して要約し、加筆・修正したものです。
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