ヘッドホンの周波数特性の測定結果と考察 

5月11日のヘッドホン祭りで周波数特性の測定イベントを行いました。たくさんの方に参加して頂き、ありがとうございました。
当日多かったが、この周波数特性をどう解釈すればいいの?というご質問で、ごもっともとです。

というわけで簡単に特性について解説してみたいと思います。

まず測定上の癖というか欠点ですが、今回用いた測定方法はホワイトノイズをFFT解析するという方法で、早く測定できる代わりに誤差は大きい測定方法です。
それと縦軸は随時ノーマライズしていますので、絶対値は意味がありません。
一つを例に取ると、例えばこれでは

100Hz以下は信号レベルの変動で(超低周波と勘違いします)すので当てになりません。50Hz付近が盛り上がるのはPCのハム音のせいです。1KHz以下の鋭いピークは回りの雑音で、ザーというノイズの再生レベルが低い時に周りのノイズがめだってしまいます(測定者本人にしか再生レベルはわからないので)。

またフラットな特性がいいかといえば必ずしもそうではなく、ヘッドホンの中には意図的に周波数特性をいじっていると思われるものもありました。

それと、これはもうその熱意にはびっくりしてしまうのですが、カナル型イヤホンとこの測定マイクをくっつけて無理やり特性を測定しようとしていた方がいらっしゃいましたが、それは無理というものです。カナル型イヤホンの特性を取るには少なくとも耳(外耳道)の模型を作って測定する必要があるでしょう。需要があれば次に考えてみたいと思います。

そういった点に注意して測定データを見てもらえればと思います。以下測定順に並べてみます。

#1

#2

#3

#4

#5
このヘッドホンは純オーディオ用ではありません。10代の女性が使用されているものでおしゃれで選んだのだと思います(勝手な想像ですが)。多少の上下はありますが全体的に非常にフラット、立派なものです。普通のものにもこういった優れた特性の物があるのですね。感心してしまいました。

#6
全体的に平坦ですごいですね、高域にピークがありますのがちょっと気になるところです。

#7

#8

#9
ほぼ平坦で、なだらかに右下がり。この微かに右下がりの特性というのは電気的に作るのは非常に難しいです。聴感上はこの方が自然でいいと思います。スピーカーの場合も試聴位置では部屋の特性によって高域がダラ下がりになります。さすがに老舗メーカーの素晴らしいヘッドホンです。残念ながらこの製品はもう販売されていません。

#10

まだ他にもあるのですが、長くなりましたので、今のところはとりあえずこのへんで。

ヘッドホンの周波数特性って結構むづかしい かも

これまでヘッドホンの周波数特性を次の2種類の方法で測定した結果を比較してみました。
・聴感上の音量比較から(掲載コラム
・バイノーラル用マイクによる測定(掲載ブログ

それぞれの測定方法は過去のブログをご参照いただくとして、この2つの測定結果を並べて比較して見た結果がこちらです。
上が聴感上の周波数特性、下がバイノーラルマイクによる測定結果になります。

AKG K-702

ゼンハイザーHD-595

ウルトラゾーンPro750

まず一番目に付く違いは聴感上の特性は超低域(60Hz以下)と高域8KHz以上で、だらだらと感度が落ちています(加齢のせいか?!–>違うといってください)。

それと大きく異なるのは3KHz以上で超感上の感度が盛り上がっていることです。この考えらる理由のひとつは外耳道(耳の入り口から鼓膜まで)に起因するものです。バイノーラルマイクは外耳道の外側で測定しますが、聴感上の特性は外耳道の奥で(鼓膜が)検出しているので、外耳道によるF特変化の可能性があります。
もう一つの考えられる理由は、聴感測定で使用した発振器の信号には1%程度の歪がありますので、耳障りに感じて実際の音圧よりも大きく感じてしまったなどが考えられます。

いづれにしても、ヘッドホンの周波数特性は調べて見ると結構奥が深く、単純に結論付けられるものでは無いようです。

ヘッドホン祭でバイノーラルマイクによる測定をする予定ですが、あくまで参考データとして見たほうが良い様です。

p.s.

後で気付きましたが、人間の聴覚は周波数と音の大きさにもよりますが、必ずしもフラットにフラットに感じるわけではありません。この辺はフレッチャーマンソン曲線として知られています。

Clipboard01フレッチャーマンソン曲線

特に小音量の時に低域と高域の感度が悪くなる(ヘッドホンの周波数特性の相違も、大方これで説明できる)。

加齢のせいじゃなくてよかった。

ヘッドホンの歪率特性を計ってみました

先のブログの続きです。今度は歪率を計ってみましょう。
同じ計測系で音源をサイン波にします。周波数が高い方が差が出やすいので5KHzにしてみました。

以下結果を示します。

オーディオテクニカ
ATH-A700

ゼンハイザー
HD-595

AKG
K-702

Ultrazone
Pro750

AKGが飛び抜けて良いように見えますが、AKGのインピーダンスは62Ωと他のヘッドホンに比べて大きいので、アンプ(パソコン)からみて駆動が楽なため、良い結果になっている可能性もあります(結果的に音圧レベルの低い所で測定しています)。

きちんとしたヘッドホンアンプを使用して、音圧レベルを揃えて測定しないと本当はヘッドホン間の測定としては正しくありませんが、今回の測定はあくまで取っ掛かりとして見ていただければと思います。きちんと環境を揃えれば歪率特性も比較できそうだという程度で。

ヘッドホン祭当日の測定サービスは
・Rch周波数特性のみで歪率はなしで(歪率測定は設定変更のため混乱する可能性があるので)
・簡単なアンケートの記入(使用装置、現状の音質の感想など、個人情報は必要ありません)をお願いします
・結果は小型感熱プリンタに出力してお渡しします
という感じで考えていますので、ご協力お願いいたします。

ヘッドホンの装着時の周波数特性を計ってみました

以前コラムでにヘッドホンを頭に装着した状態での周波数特性を紹介しました。その方法は実際にヘッドホンを頭に装着した状態で各周波数の音を聞きながらアッテネータで音量を調節して一定音量に聴こえる様に調節し、アッテネーターの減衰値から周波数特性を逆算するというもので、聴感上正確である反面、測定の手間が大変でした。

ネットを見ていたら、もっと手軽に周波数特性を測定出来る、バイノーラル録音用のイヤホンマイクでヘッドホンのしている例があったので、今回これを試してみました。使用するのはこのバイノーラルマイクです。
ローランドのバイノーラル・イヤホンマイク CS-10EM
カナル型のイヤホンの上にマイクがついています。
仕様の説明ではプラグインパワー式マイクのためパソコンでは使用出来ませんとのことでしたが、実際にはRCHのみパソコンでもマイクが使用できました。

今回測定に使用したパソコンはモバイルのラップトップPCで内蔵のサウンド機能を使用しました。ヘッドホンアンプやサウンドカードは使用していません。

測定にはフリーソフトの音源(WaveGene)とスペアナソフト(Wavespectra)を使用しました。
いろいろと改良されていて以前よりも実用性が向上されていました。
FFTの解析点数は  で、100回の平均値を使用しています。最初のATH-A700の周波数特性のみサイン音源で他はホワイトノイズを使用して測定しました。(ホワイトノイズとサイン波の測定結果ははほぼ同じでした)
後でついでにTHDも計ってみたのですがこの時は5KHZのサイン波を使用しています。

測定は簡単なので、手持ちのヘッドホン(PureAudio用ではないものも含み)を片っ端から測定してみました。
結果はこんな感じです。

オーディオテクニカ
ATH-A700

高域がやや高めで聴感上の結果と一致しています。

ゼンハイザー
HD-595

なかなかいい特性です。3-8KHzがやや落ち込んでいますが、逆にこれが聴きやすい音になっているのでしょう

AKG
K-702

これも見事な特性です。高域が微かに落ち込むものの、ピークがほとんどありません。30Hz以下のピークは測定系による乱れでしょう。50Hzのピークも測定系のノイズ(ハム)です。

Sony MDR-XB300

これはほとんどおまけですが、エクストラバスと言っているだけあって低音の持ち上げ方が凄いです。このヘッドホンはパッドの部分に大量の吸音材が詰まっていて本当はエクストラバスではなくミニマム・トレブルなんですけどね。

Ultrazone
Pro750
これも特徴的な特性です。なんといっても15KHzあたりのピークが強烈です。耳に突き刺さる様な音の原因はこれだったのかも。低音域の200-300Hzあたりにやや落ち込みがあります。高域のピークと低域の落ち込みを補正したら、クセが消えて物凄くいい音になりそうな気がします。

以上ヘッドホンの周波数特性をバイノーラルマイクを使用して測定してみました。THDも測定してみましたが長くなりましたので、次のブログで紹介させて頂きます。

尚、今回使用した測定系を5月のヘッドホン祭りに持って行って希望者の方にはその場で測定できるようにしたいと考えています。
興味のある方は是非弊社ブース(905)にお立ち寄りください。

ヘッドホンアンプ試聴会(フジヤエービック主催)の報告

1/29に青山スタジアムプレイスで行われたフジヤエービックさん主催ヘッドホンアンプ試聴会について簡単に報告します。

試聴会概要
この会はヘッドホン祭りよりも規模的には小さく大きめの一部屋で行われています。
10時半開場で午後5時までほぼずっと人が着ていました。午後4時過ぎはさすがに人が少なくなりましたが、朝からずっといる人もいて精力的です。

評判
弊社のヘッドホンアンプDCHP-100は昨年秋のヘッドホン祭りに出展しているので、製品に対する評価も同じですが、(聞いた中で)これが一番いいといってくれる人も必ずいらっしゃるので、評判はいいのだと思います。
特に今回良かったのがHIFIMANのヘッドホンを持っている人。このヘッドホンは感度が低いのでヘッドホンアンプの差が相当出るらしいです。

感想
これ言っていいんでしょうか?
ヘッドホン祭りもDAコンバーター試聴会も来場者の方は同じ人が多いんです。ですので販売的には大きなインパクトはないかも。でもいつも貴重な意見を多くもらうのでやっぱり有意義、密度の濃い一日でした。

今回の発見
HIFIMANのヘッドホンを使用している人が増えていた。今まではウルトラゾーンの人が多かったのですが、今回HIFIMANを使用している人がちらほら。
今回弊社のブースでずっと聴いているお客様にHIFIMANのヘッドホンをちょっと聞かせてもらいましたが、「これは凄くいいです」。ウルトラゾーンの様なズシッと来る低音に加え、なめらかな中高音(ここがUZとの違い)、非の打ちどころがありません、素晴らしいです。ただこのHPは能率が低いのでアンプは選ぶそうです。確かに弊社のHPアンプでも私が通常使用するレベルより10dBは高かったような気がします。このヘッドホンは欲しくなりますね、どれか一つHPを選べといわれたらこれかもしれません。ただお値段がちょっと(とはいえ弊社のヘッドホンアンプより安いのですが)。ヘッドホンメインの人にはどうってことない値段かもしれません。

アクセサリー
今回新しく作って持っていったアダプターは事務所で試しているときはいいと思いましたが、会場の様なちょっとうるさい所では逆に高音がうるさいくらいの方がアピールするので、ちょっと不評でした。ヘッドホンを常用している人はどれだけ中高音がはっきり聴こえるかが重要な人も多いようです。

持参の曲
皆さんがもってくるCDはアニメの様なものがプリントされていて、曲もきたことがないような物ばかりアニソンとか声優の歌とかゲームの曲とかだそうです。Jazzとかクラシックなんて聴いている人は殆どいないのでは?というかんじでした。デモに使用したの曲をずっと聞き入ってこの曲何ですか?っていう人もいました。若い人もJazz等に普段は縁がないだけで聞けば結構気にいるみたいでした。

お客様は15歳
弊社に立ち寄っていただいたお客様(男性)の中で、話をしていたら高1(高校1年生)だという人がいて驚きました。話がはずんで、いつのまにか人生のアドバイスをしていました。

写真を取っておいたのですが、フラッシュメモリが壊れて読めなくなりました。ということで画像はありません(スミマセン)。