MMカートリッジの周波数特性   -負荷容量はマイナスが正解-

MMカートリッジの周波数特性は負荷インピーダンスによって大きく変わります。その影響で音質も大きく左右されるので、実際の特性がどうなっているかを調べることは重要です。今回新型フォノイコDCEQ-200を使用してMMカートリッジの負荷依存性を測定してみました。

使用機材と測定方法

プレーヤー パイオニア PL-50LⅡ カートリッジ オーディオテクニカ VM-750SH

測定方法レコードで周波数特性を実測しました。テストレコードにオシロで周波数特性を直視できるスイープ信号がありましたのでこれを利用しています。

測定結果

負荷インピーダンス

47kΩ -100pF

マイナス100pF負荷は当社フォノイコのみの新技術です

気持ちがいいくらい平坦になっています。

47kΩ +100pF

7-10kHzが盛り上がっています

47kΩ +300pF

2kHzあたりから盛り上がり始めています

考察

測定結果ではマイナス100pFが最適となっています。マイナス100pFといってもプレーヤーからのケーブル容量100pFが加わりますので、これで負荷容量がキャンセルされて0となります。その結果LCRの共振がなくなって平坦になるというわけです。

肝心の音質は・・・

肝心の音質ですがマイナス100pFのフラットの状態ですと、MM特有の高域のギラギラがなくなって、非常に高品位な音になります。MCカートリッジと比較しても何ら遜色はありません。

測定に使用したVM-750SHは非常に高解像で繊細な音もでるのですが、反面通常のフォノイコでは高域が強く聞こえて聴きにくいという面もありました。マイナス100pFで受けると、高解像で非常にバランスの良い音になっています。MCカートリッジを含めて考えても最上位の音質になります。

B&W 804D3を導入しました それでどうなの? その3 測定編

804D3にフレーム+スパイクをつけて劇的に良くなったことを報告しました。ここでは特性を測定した結果について報告します。

測定はREWとMyspeakerという2つのソフトを用いて行いました。マイクはUMM-6という測定用マイクです。REWは周波数特性はきれいに測定できるのですが、過度応答の測定結果が極めて疑わしい結果だったため、過度応答のみMyspeakerで測定しました。

周波数特性

マイクの位置はMidとツイーターの中間の高さで50㎝くらいの距離で測定しました。本当は1m以上離した方が良いのですが、あまり離すと部屋の影響が大きくなってしまいます。50cmという距離だと各ユニット間の距離差で多少つなぎ目でディップが出ます。

PL200

見事にフラットな特性です。200Hzのディップは床からの反射波との鑑賞の影響です。それ以外は大きな凹凸もなく、お手本のような特性で、普通の部屋でこれだけの特性が測れることが驚きです。理詰めでキチンと設計されていることがわかります。

804D3

こちらは結構でこぼこ荒れています。200Hzのディップは仕方ないのですが、kHz帯で結構暴れているのです。スピーカーの周りにデザイン上(?)リングを出っ張らせているので、周波数特性にも影響しているのだと思います。測定中に気づきましたが、ツイーターとスコーカーのつなぎ目の位相があっていないので(多分)、マイクの高さをずらした時の方が特性がフラットになります。

804D3(2)

804D3の特性をMyspeakerで測ったのがこちら。ほぼ同じ特性です。

DS-9Z改

参考までに、こちらはDS-9Z改の特性密閉なので低域は落ちていますが、結構フラットでした。

過度応答特性

最初にお断りしておきますが、過度応答特性はどうも測定するたび(日が変わるたびに)に結果が大きく変わる様に思います。どれだけ信ぴょう性があるかわかりませんので、あくまでこんな絵が撮れました程度に考えてください。

PL200

1kHz以上の応答が見事ですぐに消えています。低域はもともと秒を単位にとるとどうしても長く残るので波数で表現したいところです。このツイーターはハイルドライバ型で、トランジェント特性が極めて優秀な点が反映されていると思います。

804D3

PL200に比べるとkHz帯で多少長引きます。ちなみにこの特性はフレーム(台座)を作る前に取りました。

8040D3(フレーム付き)

フレームを追加した後に測定したのがこちらです。なんと高域のトランジェントが大幅に悪化しています。これが測定上の問題なのか、本当にそうなのか不明です。

DS-9Z改

ついでにDS-9Z改のスペクトル応答を。高域はなんと804D3よりも立派です(ほんとか?)。ただの安いシルクドームツイーターなのに・・・。

ということで、興味本位に測定してみましたが、測定上良いものがいい音ということではありませんので、ああこんな特性も取れるのね、くらいに見ていただければと思います。特に過度応答については聴感上とあまり相関がないので、今後も検討していきたいと思います。

B&W 804D3を導入しました それでどうなの? その2 フレーム自作編

1月にB&W804D3を導入して2カ月が経ちました。その間少し進捗がありましたので紹介します。

導入後やったこと 

これまでに行ったことは次の3点です。

1.エージング

2. バイワイヤリング

3. 台座を作ってインシュレーター設置

以下詳細に説明します。

1. エージング

前にも紹介しましたが、エージングを行いました。エージングといっても通常の音量で行うと何年もかかる場合はありますので、爆音で加速度的なエージングを行いました。爆音にすると苦情が来る可能性がありますので、高音域だけとしてツイーター周りにクッションを設置します。通常の大音量試聴のさらに数倍の音量でツイーターの慣らしを行ったつもりです。1日で相当の効果がありました。

ちなみにCDM7ーNTは数十年経って良くなった   ・・・なので普通のエージングで待ってはいられない

ちなみに数十年前に購入したCDM7-NTは数十年経って相当良くなりました。低価格機種ですのですべてがよいわけではないのですが、そのなりっぷりは大したもので、帯域のバランスの良さ(最高)、高域のすがすがしさ(ちょっとアルミ臭いが)、豊かな低音(ちょっとゆるいが)は手放すのが惜しいくらいでした。このスピーカーは最初はアルミ臭い高音が目立ってはっきりした音は出ていたのですがそれほどいいとも思えませんでしたが、数十年たってよくなってきた気がします。

2. バイワイヤリング

基本的にあまりケーブルには凝らないタイプなのですが、手持ちのバイワイヤリングができるケーブルに変えてみました。これは今までに試したバイワイヤリング接続の中でも一番音が変わりました。中高域の雑味が消えて(もともと雑味があるように聞こえていたわけではないのですが)上品になりました。結構な変わり方で、これはもうバイワイヤリング指定ですね。ちなみにパワーアンプ側が通常の1ペア(+と-)でスピーカー側が2ペア(+x2,-x2)の端子がついているワイヤーワールド社のEquinoxを使用しました。

スピーカー側バイワイヤリング用端子
アンプ側(シングルエンド端子)

3.オリジナルの台座を追加

804D3の底部ネジ穴はかなり内側に付いているのでスパイク足の取り付けが外からは困難で、しかも(おそらく)不安定です。付属のゴム足を取り付けた状態ではいつ倒れるか心配で仕方ありませんでした。そこでアルミのフレームを製作してスパイクが外に出るようにしました。

アルミは12mm厚で外側にM6(付属スパイクサイズ)とM8のネジを切り赤くアルマイト処理してみました。

本体がRを描いているのでもっと丸みを帯びた形状の方がデザイン的には良かったかもしれません。まあ今回は試作みたいなものです。

このフレームをM6ボルトでスピーカー底面に取付けてから、外側にスパイクを設置したのがこちらの写真です。

フレームを追加した足回り
後ろから

全体としてはこんな感じです

このように設置すると予想以上に京子、じゃなかった強固な設置となり、スピーカ上部を揺らそうとしてもピクリともしなくなりました。

肝心なのは音ですが、これはもう激変(といっていいかも)。低域が豊かになりその結果、高域の強い癖”あくが”目立たなくなった気がします。低域不足で迫力がなかったのが、それが全く気にならなくなり、鳴りっぷりも立派なものになった気がします。高域の独特の癖はまだかなりありますが、さらにエージングしていけばもっとよくなるでしょう(ちなみに加速エージングはまだ1日しか行っていません・・・多忙なので・・・)。

804D3設置後の工夫のまとめ

以上最近804D3に対して行った3つの工夫を紹介しました。その効果、インパクトはおよそ、

エージング 3

バイワイヤリング 1

フレーム+スパイク 10

位の割合でしょうか。

おかげで804D3もだいぶ聴けるようになってきました。

プリント基板CADソフトEagleに代わるDipTrace(4) まとめ編

これまで基板設計ソフトDipTraceの操作方法について説明してきました。最後にまとめてみたいと思います。

基板設計編で説明したほうが良かったのですが、基板レイアウトのメニュー画面はこのようになっています。

PCBLayoutのメニュー画面

Eagleと異なるのは配線後の調整メニューで配線を移動するコマンドを選ぶと配線の平行移動ができますし、また節(node)を選択して移動したり、節の削除ができます。配線の移動にしても、自動的にホールや他の部品などを避けて配線されるので非常に効率的に配線できます。基板外形のコマンド、ベタ基板の設定メニューなども装備されています。

Eagleと異なるのはレイヤー選択でTopかBottomを選択しそのレイヤーのみの編集ができることです(Topを編集しながらBottomの編集はできません)。

いずれにしても、Eagleの私が最終的に使用したversion6よりもはるかに優れています。DipTraceを使用してから基板製作の効率が数倍に向上しました。

ガーバーデータ作成

また基板発注のためのガーバーデータを作成するのも簡単で、File/Export/Gerberを開きExportAllを押してGeber+NC Drillを選択するとドリルデータを含んだガーバーデータ(Zipファイル)が作成されます。Eagleの様に別途ドリルデータを作ったり、Zipファイルにまとめる必要がありません。

部品の作成

部品の新規制作・編集もEagleよりもはるかに簡単で直感的に操作できます。

例えば新規のトランジスター部品を作る場合、まずComponentEditorを立ち上げます。左メニューのComponentからTransistorNPNをクリックするとトランジスタの一覧が下に表示されます。似たトランジスタを選んで右クリックしてコピーを作ります。コピーしたトランジスタの名前を変更してからpatternをクリックすると以下の様な画面が開きます。

トランジスタの回路をパターン図が表示され、パターン図を変更したい場合は右のパターンライブラリから適切なものを選択します。

回路図をパターンの配線を結び付けるには(これはEagleでは大変な作業でしたが)、左の回路の端子から右のパターンの端子にマウスをドラッグするだけです。

回路図のエミッタとパターン図の#1をマウスドラッグで接続した例

画面を見ながら間違いなく接続できるので、特にマイコンやDACチップなど端子数の多いデバイスを新規設計する際にも非常に便利です。

探しにくいコマンド

最後によく使うコマンドで探しにくいものをまとめておきます。

・F12 未配線の線の最適化(部品配置変更後見やすくするため)

・F10 部品名、部品番号の個別位置調整

・View/Object/CopperPour べた基板の表示の有無

・Object/UpdateAllCoperPours 配線変更後のベタ基板の再設定(これを手動でやらないとルールチェックでエラーになる)

・File/RenewLayoutFromSchematic 回路図変更後基板レイアウトにそれを反映させる(Eagleと違ってこれをやらないとレイアウトに反映されない)

・View/ComponentMarking 部品の番号、値を表示するかどうかの設定

最後に

回路・基板設計ソフトDipTraceは機能面でEagleよりもはるかに優れていますし、また価格も安く非営利なら無料でも十分な機能が備わっています。

是非皆さんも使ってみていただければと思います。

プリント基板CADソフトEagleに代わるDipTrace(3) 基板レイアウト編

今回はいよいよ基板レイアウトの設計について説明します。

基板レイアウトの生成

SchematicsのファイルメニューからConvert to PCBを実行します。

すると基板レイアウトの画面が開きます。

左上のマークが赤のSchematicsから緑のPCBLayoutに変わっています。こちらが基板設計の画面になります。左の欄は部品ライブラリーで、右側の欄に部品の属性や接続の情報が表示されます。

部品のレイアウト変更

部品の配置がバラバラですので、手動で配置を修正していきます。部品はドラッグで移動できますし、配置の整列などももちろん行えます。部品を回転させたい時は部品をクリックして選択した状態でキーボードのRを押すと部品が90度回転します。

自動配置のコマンドもあるのですが、実際に使ってみるとかえっておかしくなる様でしたので今回は使用しませんでした。

およそ自分のイメージ通りに整理したのがこちらです。

レイアウト変更の際、未接続の線が入り組んでわかりにくくなったときはF12を押すと最短の結線に最適化されます。

またEagleでは回路図と基板図が常に自動的に同期していましたが、DipTraceでは自動的には同期しませんので手動で同期します。

回路図を変更した後に基板レイアウトを同期するにはPCBLayoutのFileからRenew Layout from Schematicを選んで実行します。

基板枠とベタパターンの生成

次にObject Place Board Outlieを選択して基板サイズを設定します。

適当にサイズを設定しても、右クリックでboard property を選んでcreate rectangleを指定すると矩形が指定できます。

さらにObject からplace copper pour を選んで矩形を描いてからpropertyを開きBorderタグで Depeending on Bordsを指定すると自動的に基板の少し内側にべたパターンが設定できます。

基板の内側(ここでは1mm)に自動的にベタパターンを生成できる

同様にbottomパターンでもべたを設定します。

DipTraceではTopとBottomパターンは同時に編集できません。Bottomを編集する際はツールバーのTop(1)と表示されているプルダウンメニューでBottom(2)を選択して行います。

次にパターンの配線をしてみましょう。自動配線機能がありますので使ってみましょう。

自動配線の後デザインルールチェックも行われ、問題個所に赤丸が表示されます。たくさんの赤丸が表示されていますが、これは配線パターンとべたパターンがぶつかっているためですので、Object Update all copper pourを実行して、ベタパターンを再設定します。

再度Verification Check Design Rules(F9)を実行するとエラーはなくなりました。

配線パターンを見る場合はべたパターンがない方が見やすくなります。

View Object Copper pour のチェックを外すとこうなります。

ここまで来たら3Dパターンを見てみましょう。

3Dボタンを押すと

3Dパターンが表示されました。(端子台の3Dモデルは含まれていないようです。)自由に回転もできます。これくらいですと3D表示は必要ありませんが、複雑なパターンでは威力を発揮します。

こういった複雑なパターンでは3D表示が威力を発揮する