オーディオデザイン2009年の○と×、そして今年の抱負

早いものでもう年が明けてしまった。
昨年1年間の活動を振り返ってトピックを挙げてみるとみるとこんな感じになる。

○アンプをオーディオ雑誌に記事として掲載してもらった
○オーディオアクセサリー、無線と実験誌で賞をいただいた
○プリアンプ、パワーアンプの注文が増えた
○オーディオフェアの出展時の音質がまあまあになった
○事務所を引っ越して広くなった

×(多忙すぎて)新製品を一つも出せなかった
×生産体制を増強できなかった

といったところだ。総じて言えば充実した年だった。もともとオーディオ業界にいた訳ではないので、業界雑誌にどう取り上げていただくかはまるで検討がつかなかった。これからはより積極的に売り込む事を念頭に入れて活動していきたいと思う。

昨年の悔いはなんといっても新製品を一つも出せなかった事。忙しすぎて新製品発表まではこぎつけなかったが、仕込んでいるネタはしこたまあるので、今年はいくつか出せたらと思う。単に製品を作って売るだけなら新製品を作るのも難しくはないのだが、今回は売れてからの事も考えて作りやすさにも十分留意した方法で進めている。

これまではいいものを作ろうと、音質、性能的にはかなりのものを作ったつもりだが、まったく抜けていたのは売れてからの事だ。作りやすさを考えていなかったので、注文がある程度くるとてんてこ舞いになる。手作業が多すぎるのだ。生産の効率も含めて考えると、また違った技術にもチャレンジしなくてはならないのでその辺のノウハウ習得にも時間がかかる。大手メーカーであればなんてことないだろうが、生産性の向上を今の規模でやるのはそれはそれで結構考えなければいけない事が多い。昨年は新製品としてチャンネルデバイダーを最初に考えていたが、いろいろと内部の根本的な改良を進めているので、これは遅れるかも。

今年は是非とも新製品をいくつか出したいと思っている(何を出すかは今のところ秘密です)。

今年もよろしくお願いいたします。

オーディオ評論家の先生に装置を評価してもらう様になって -(その3)そうはいかないよ編-

アンプの評価をオーディオ評論家の方にしていただくようになって、きわめて正確な評価に驚いたといったが、それだけでうまくいくほど世の中は甘くない。実際に自社のアンプが雑誌の記事になってその内容をみて正直ショックを受けた。なぜかというと極めて普通の内容で、ほとんど褒めてもらっていないような感じだったから。褒めてもらっていないというと大げさだが、褒め方が普通というか、特にいいとは言っていただけてないような感じである。こう褒めていましたよと教えてもらった褒め言葉が、1行も、どころか一つも入っていない・・・・・・・。期待が大きかっただけにショックだった。

あとで、実際に関係者の方にもそれとなく聴いてみたりしたのだが、それが普通というか、そんなものなのだそうだ。この場合とは逆に、さほど良くない製品も中にはあるかもしれないが、だからといってそういってしまってはメーカーも怒るし、広告にも影響するから、逆に悪くは書かないケースもあるだろうし、無難にまとめるのが当たり前なのだろう。評論家の方からみれば、毎週いいものがたくさんあって年に何百台も試聴して、いちいち表現を考えていられないだろうし、普通の表現パターンにまとまるのが当たり前なのである。ましてや弊社の場合、本当に製品を安定して市場に供給しているか実績が見えないわけだし、そんな知りもしないメーカーの製品を下手に褒めて後で苦情が来たら先生としてもいい迷惑だろう。

その後他のオーディオ雑誌を通じて他のオーディオ評論家の方にもご試聴いただき、記事にしていただいた。今度は記事を見ただけなので詳細というかほんとにどれだけいいのかこちらとしてもわからない。最初にご試聴いただいた評論家の方が(内々のメモを見る限り)超人的に鋭かったという事で、これまでの話が必ずしも一般的という事ではないのだろうとも思う。

ただ一ついえる事はオーディオ雑誌の記事を読む際には、単に言葉・表現をたどるだけではなく、その評論家の方の嗜好やいつも使う表現などもつかんでおいて、その方の言い回しの裏を探るぐらいの読み方をしないと、製品が果たしていいのか悪いのかわからないと言う事だろう。

まあノストラダムスの大予言みたいなもので、読んでいる方で適切な解釈をしなければいけないという事ではないだろうか?

それでも今年はオーディオ雑誌で取り上げていただいて、記事にしてもらえただけでも大きな進歩であるし、音元出版のオーディオ銘機賞やMJ誌のテクノロジーオブザイアーも頂戴できたので、それだけでも大変ありがたいし、名誉な事だと思っている。

少なくとも、今年はまな板への乗り方がわかったので、来年はそこでどうアピールするかまで少しは考えてやっていかなくてはと思っている。

やりたい事、やるべき事がまるで妄想の様に膨らむ今日この頃です。

これだけは知っておきたい音響工学(その3) -壁の影響は壁に聞け-

前回は壁(床、天井も同じ)の反射の影響を説明したが、ここでは実際にその影響を実際の部屋で調べる方法を紹介する。

壁の反射の影響をざっと調べる方法は意外と簡単である。

どうするかというと、
「影響を調べたい壁に耳を近づけて見る」

ということだ 。

そうすると、その壁が音響特性にどの様な影響を与えているか壁が教えてくれる、のである。

これ、冗談ではなくほんとの話です。

もう少しまじめに解説すると、例えば床の反射による周波数特性への影響を調べてみたいと思ったら、スピーカーから音楽を流しながら、耳を床に近づけるのである。そうすると床からの反射の影響がなくなり(正確には高域に移動するだけだが)、床の反射による周波数特性の乱れのない音が聞こえるという仕組みである。

シミュレーションで説明するとこうなる。

次の様な床の反射があるだけの環境で通常の高さ(1m)と耳を床に付けた(0.1m)状態の周波数特性を計算してみると、こうなる。
yukakabe-layout.jpg

yuka-kabe-simu420.jpg

青は耳の高さ1mでの周波数特性、ピンクは高さ0.1mでの特性である。ピンクの場合低域の谷が見事になくなっていることがわかると思う(実際にはなくなっているのではなく、高域側に移動しているだけだが)。実際にマイクを通常の高さから床につけて測定してみると、低域の落ち込みが一部減少し(実部屋では壁がたくさんあるので谷が解消する事は無い)、高域が荒くなる結果となる。聴感上も床に耳を付けた方が低域の力強さが向上する、ただし高域がちょっと荒くなるが・・・・。耳を床につけるのは、実用性がないが、小型SPであれば床に直置きした方が力強さは増す。というよりも、通常の設置方法では床からの干渉効果で低域に谷ができて音がへなへなになっている場合が多いというのが実情だろう。

同様にして、天井、左右の壁、後ろ壁の影響も耳やマイクで確認する事ができる。

オーディオ評論家の先生に装置を評価してもらう様になって -(その2)驚いた編-

その1・トラウマ編では過去の苦い経験を書かせてもらった。ここでは本題の自社アンプを評価してもらった事について書いてみたい。
結論から言うと、
・きわめて正確な評価にビックリした、
・つまりオーディオ評論家の凄い実力を再(初?)認識した、
・ただ世の中そう甘くはないよ
ということだ。

今年になってまずパワーアンプの評価をオーディオ雑誌社にお願いした。いきなり編集部をたずねるのも敷居が高いので(以前のトラウマもあるし)、普段広告をお願いしている広告代理店の方に紹介してもらって同席していただいた(というより、そろそろ出版社に売り込んでみたらという代理店のお薦めが最初にあったのだ)。試聴の際は、弊社が持ち込んだ初めての製品という事もあってか編集長も同席してくれたらしい。

この時の試聴結果に関して、幸いな事に後で編集長からオーディオ評論家の先生による評価結果を内々に教えてもらえた。その内容(残念ながらここでは紹介できないが)を聞いて本当に驚いた。なぜ驚いたかというときわめて正確だったからである。私もお客様にデモ機も含めていろいろなオーディオ装置との組み合わせて多数評価してもらっているので、どういった評価になるかは見当がつくし、作っている本人なのでこの辺がこの位音質の向上に効いているというのは当然頭にある。そういったもろもろの情報量がまったくないにもかかわらず、出版社のオーディオ装置による(おそらく小一時間位の評価?)ですべて見抜いていたからだ。ひょっとしたら、作った本人よりも正確に結果を捉えているのではないかと思えるくらいだ。

担当されたオーディオ評論家の先生のパワーアンプに対する評価は、ほぼべた褒めといった内容で、かなり気に入っていただいた様だった。「ただし一般にには(ちょっとネガティブな)こういうことを言われることもあるででしょうね」というコメントもあったのだが、そこもぴったりだった。

考えてみればオーディオ評論家の先生方というのは毎日いろいろなオーディオ装置を聴いているので一般の方とは比較にならない位の情報量の蓄積があるし、オーディオ装置の性格を的確に把握できる様でなければ勤まらないのだ。

多分オーディオ評論家の先生方というのは「絶対音感」と言う様なものをお持ちで、このソフトのここがこう聴こえるはずだという基準があるので、ちょっと聴いただけで装置の特質を見抜くのだと思う。

こちらとしては色々なお客様に購入・試聴していただいているし、その方のオーディオ装置・試聴結果をかなりいただいているので、全体的にこうというデータベースの様なものは持っているつもりだが、ほぼそれを網羅した内容になっていた(たった1回の試聴で)。

それともう一つ、編集部に持ち込めば、編集長がメーカー・製品のポジション・特性・音質を考えてもっとも適切なオーディオ評論家の方を選ぶはずである。海外製か国産か、高解像か柔らかさか等、さまざまな要素を加味して、良さを引き出してくれるようなオーディオ評論家を選んでくれているのだと思う(そうでないと後で苦情が来て広告が来なくなるので)。その時点で組み合わせの最適化がある程度出来ているので、結果的に評価・執筆される記事の内容は褒める内容が当たり前となる。という原理があるのだと思う。

ところが、事はこれだけでは収まらない、
・・・さらに話は続きます。

オーディオ評論家の先生に装置を評価してもらう様になって -(その一)トラウマ編-

今年の弊社の大きなトピックとしては製品をオーディオ雑誌の編集部に持ち込んで記事にしていただく機会があったことだろう。普通の会社であれば当たり前のことかもしれないが、弊社規模の会社が製品を編集部に持ち込むのにはちょっと勇気がいる。お蔭様で何人かのオーディオ評論家の方に製品を評価してもらえた。実際に自社の製品の評価をお願いしてみて(実際にお願いするのは編集部にだが)、オーディオ評論家の方々への認識を新たにした部分があるので紹介したい。

その前にオーディオ雑誌記事のトラウマについて紹介したい。弊社の製品が一番最初に雑誌に紹介されたのは、ある真空管アンプの雑誌である。弊社では真空管アンプはやっていないので、パッシブプリアンプのPPA-1を取り上げていただいた。後でわかったのだがパッシブアンプ特集とかで数十台のパッシブプリを集め一気に評価するという企画だ。編集者の方は「デモ機を出せるなら記事にするので送って欲しい」くらいの内容を電話で伝えてきただけで詳細はわからなかった(宛先の住所もネットで調べた位だ)。記事になってみて驚いたのだが、PPA-1の評価としてはほとんど「ぺけ」に近い内容だった。しかもその中身は普段お客様からいただく反応とはまったく類似点がないもので、ここでの記事の内容は例えば「いつも聞いている音が出ていない」とのことだった。
さらに悔しいのはPPA-1はLパッド型といって常に2本の抵抗を選ぶ最高級の方式だが、抵抗を直列につないだP型とごっちゃになって一緒に”ラダー型”として紹介されていた。パッシブプリのアッテネーターの技術解説のページもあるのだが、この辺をの解説そのものが間違っているというか、そのそもLパッド型とP型の区別がついていないのだ。

この特集で扱われたパッシブプリの半数以上はセイデン社のアッテネーターを使用しており、後でセイデンの社長から「うちの一番いいアッテネーターをあんな良心的な価格で出しているお宅の製品の記事の内容があれじゃーあまりにかわいそうだね」と慰められたくらいだ。

ちなみに、その時評価に使用していた装置はこれ
スピーカー:アルテックA7
パワーアンプ:アルテック1569A  1569Aってこれですよこれ
(ただしリンク先のブログの内容は本内容に関係ありません。写真がきれいなのでリンク先とさせていただきました。誤解の無い様にお願いします)

何でもこのパワーアンプは50年前位のものらしい。真空管アンプ自体は回路は対して変わっていないので、それはそれでいいのだけれど、それだけ古いとそもそも部品だって正常な状態ではないと思います、コンデンサにしろトランスにしろ。

A7はいいとしても、このラインナップを使って装置(パッシブプリ)の評価をするということ自体、ビックリする。取って置きのササニシキを出したら、出した先はカレーライスの品評会で、タイ米の古米に負けてしまったようなものだ。

あるいは実際にはほとんど聴かずに無名のメーカーだからこんなもんだろうくらいで記事を書かれたのではないかと勘ぐっている(パッシブプリを真空管アンプで使用する方ももちろんいて、通常は同じ様な反応が返ってくるので)。

コレが3年前の出来事で、それ以来、評価してもらうというスタンスを取ってこなかった(というかそういう気持ちになれなかった)。

ただ今年、アンプを評論家の方にご評価いただいて、ものすごく正確な評価だったので、評論家の方に対する認識は一変した(とはいっても記事の内容ということではない)。
その話を次回にしたいと思う。